【機動戦士ガンダム】七色の新星ガルマ・ザビ   作:おかかと梅干

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第2話 彗星の軌道

 

──若さ故の過ちか

 

シャア・アズナブルはコクピットの中で独り言ちた。自嘲気味に歪む口元を他人に見られなかったのは、彼には幸いだっただろう。

 

赤く塗装されたザクIIを崩れかけたビルに身を隠し、時にはビル上に身をさらし、赤い彗星は木馬とMSに対し牽制攻撃を行う。

 

彼の頭上ではガウが緩慢な飛行を続け、黒煙が線をひいていく。

 

後方のビル上へと、赤いザクIIが身を躍らせる。その瞬間、直前までいたビルが爆炎を上げ吹き飛んだ。

 

跳躍したままマシンガンを放つ。タンク型のMSに直撃するがダメージは見られない。

 

後方の空では、ビルの稜線の向こうにガウが消えていくのが見えた。マシンガンの残弾は少ない。

 

シャアは潮時と判断し、クラッカーを周囲のビルへと投げつけた。

 

ビルは崩壊し、大量の埃と煙を上げながら道路上へと瓦礫を積み重ねていく。敵の進路をふさいだシャアはザクIIを翻し、ガウの姿を追った。

 

 

 

シャアはガウを追うコクピットの中で深い息をつき、次にはコンソールに拳を叩きつけた。

 

──自分は何をしている

 

彼シャア・アズナブルの本当の名はキャスバル・レム・ダイクン。ジオン・ズム・ダイクンの息子であり、父を殺したザビ家への復讐者だった。

 

そして今回、復讐の機会を得た。ザビ家の四男ガルマを罠にはめ、木馬によって殺させようとしたのだ。

 

その復讐は完遂されるはずだった。

 

木馬の放った砲撃が外れたとき、シャアの体はひとりでに動いた。心も動いていた。

 

一瞬の安堵と高揚。その感情を自認したのは白いMSに向かい銃弾を放ったあとだった。

 

ガウが安全な場所まで飛び去るまで、シャアは木馬とMSを牽制し続けた。

 

ガウを追い墜落地点が近づくにつれ、焦燥感が胸を襲う。

 

──ガルマは無事だろうか

 

当のガルマを殺めようとした自分が、今その無事を願っている。

 

ガルマを罠にはめ、木馬がガウを攻撃するあいだ、シャアの心を何かが締め付けていた。

 

士官学校時代の数年にわたる交友、ルームメイトとして苦楽をともにした。ときには彼の脆弱さや甘さに蔑みや怒りを覚え、だが一緒に笑いあった。

 

暁の蜂起ではガルマを指揮官とし、命を預けた。

 

ガルマは復讐すべき対象だった。ザビ家であるのだから。

 

ガルマに復讐の真意を告げ、返ってきた怒声。その声に怒りと、戸惑いと、そして悲しみをシャアは感じとっていた。

 

──自分の生まれを恨むがいい

 

その言葉は今となっては誰に向けていたのか。

 

ガウが見えた。爆散はしていない。ガウがキャリーを腹に抱える構造をしていたのが幸いした。膨れた腹部は大地に削り取られていたが、上部のコクピットは強度も高く、姿をとどめていた。

 

自分の口元から笑みがこぼれていることにシャアは気付かぬまま、ザクをガウのコクピットに近づけた。マニュピレーターを足場に使いザクから躍り出る。ガウの割れた風防越しにガルマが見えた。

 

切り傷や打撲がある。火傷もしているようだ。その痛みにうっすらと呻き声をもらしている。

 

シャアはため息をひとつつき、声をだして笑った。

 

「さあこれからが大変だ」

 




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