【機動戦士ガンダム】七色の新星ガルマ・ザビ   作:おかかと梅干

5 / 5
第5話 2つ目の星

 

ガルマがシャアと別れたあと、副官のダロタが間髪いれずに駆け込んできた。敬礼もそこそこに要件を告げる。ドズル中将から通信が入っていると。

 

5分おきに。すでに20回目だそうだ。徐々に表情の変わっていくドズルを取次するのはダロタには酷であっただろう。

 

ガルマは苦笑しながら通信室に向かった。通信は繋がったままだった。

 

「ガルマァァァ!」

 

通信室にこだまする。人払いしているがたぶん室外まで聞こえていただろう。

 

ガルマの顔を見るなりドズルは涙ぐみ、どれだけ心配したかを10分にわたり喋りつづけた。

 

「なぜすぐに通信に出んのだ。体調がすぐれなかったか」

 

「体調は万全ですよドズル兄さん。昼寝が長すぎたせいか仕事が溜まっていたので片付けていたんです」

 

ドズルは今度はガルマの司令官としての立派な心構えに、感心の言葉を10分にわたり熱弁した。

 

「ガルマ、それで木馬だがそちらでも捕捉できているか」

 

木馬に関しての報告は来ていた。本来であればジャブローに向かうためカリブ海やメキシコ方面に向かうと思われたが、西進を続けているらしい。太平洋に出るつもりか。

 

「ランバ・ラル大尉をそちらに向かわせた。シャアに代わり、やつの部隊に木馬を追わせる」

 

青い巨星の異名をもつ男ランバ・ラル。その指揮する部隊はゲリラ戦を得意とし、重力下での戦闘にも精通している。彼の隊をのせたシャトルは今日中にキャリフォルニアに着く予定だという。

 

「今後はシャアには任せられん。奴は一度宇宙へあげ、どこか補給基地の警備でもやらせる」

 

どうやらシャアは左遷されるようだ。ガルマが暗殺について喋らなかったためその罪を負う事はなかったが、ザビ家の人間を目の前にして危険にさらした事が、軍人としての経歴に大きな傷となったようだ。

 

まったくザビ家の力とはたいしたものだ。七光りと言われても仕方がない。

 

「ドズル兄さん、ひとつお願いがあります」

 

「快気祝いだ。遠慮するななんでもいえ」

 

「では、シャアを私に預けていただけませんか」

 

ドズルはうろたえ大きく目を見張った。

 

「何をいうガルマ。奴は俺の期待を裏切ったばかりか、お前の命を危険にさらしたのだぞ」

 

「私の命を救ってくれたのも彼です。それに少佐の能力は辺境におくには勿体ない」

 

「お前たち二人の仲は知っている。奴を助けたい気持ちもわかるが…」

 

ドズルは一度言葉を区切り、声を低めて続けた。

 

「…今回の奴の行動には不審な点もある」

 

ガルマとシャアの友誼が士官学校時代から続く事をドズルもよく知っている。なにせドズル自身が学校長を務めていたのだから。だが、今回のシャアの不審な行動の片鱗を見ると、素直にガルマのそばに置こうとは思えない。

 

「ドズル兄さん、連邦の木馬は赤い彗星だけの手には負えませんでした。青い巨星といえども思わぬ事態になるかもしれません。それほど連邦の木馬は手ごわい相手です。

木馬は今私の管轄する北米にいます。そうである以上この件は私が対応します。ですが私はまだまだ力不足です。ですからドズル兄さんの力と、優秀な兵の力を貸して頂きたい」

 

「兵を貸すのは構わん。だが──」

 

「お願いします兄さん。私の手で、木馬を討ち果たしたいのです」

 

ガルマが真剣な眼差しでドズルの目を射抜く。それは懇願ではなく、相手に要求を突きつける強引な力強さがあった。

 

「よくぞ言った」

 

ドズルはガルマの中の変化を見てとった。いままでの柔弱が薄れ、自分の責務を果たし、男としての誇りを得ようとしていると。

 

「シャアをお前に預けよう。この件はお前が指揮をとれ。だが約束しろ、お前は前線にはでるなよ」

 

「ありがとうございます兄さん。必ずや木馬をこの手で倒してごらんにいれます」

 

ガルマは力強く宣言した。が、約束については触れなかった。

 

 

ドズルとの通信を終え、ほどなくランバ・ラルの隊を乗せたシャトルが到着した。

 

シャトルから降りてくる数名の人影。いずれも精悍な顔つきをした歴戦の兵顔だ。ただ一人を除いては。

 

長めの金髪を結いあげた細身の女性、クラウレ・ハモン。彼女は凛とした微笑みを浮かべ、小柄なランバ・ラルの後ろに常に付き従う。その姿はラル隊の中では守護天使のように讃えられている。本来軍籍は持たないが、ラルの私設秘書として従軍を許されていた。

 

「あなた、お疲れではありませんか?」

 

ハモンは少し身をかがめるように、ラルに尋ねる。

 

「わしはまだ30代だぞ」

 

ラルは口元に蓄えた髭を少し歪め応える。ラルは重力にひかれた己の体を少しだけ重そうにしていた。最近少しだけ中年太りしてきたようだ。一時期酒浸りの生活をしていた影響が出てきているのかもしれない。だが胸をはり、威勢よく指示を行う。

 

「わしはこのままガルマ様の元へ挨拶に伺う。ハモンお前も同行しろ。他の者は重力下でのMS戦の慣熟を行え」

 

隊員達も初めての地球だ。体は重いのかもしれない。だが内心をおくびにも出さず力強く返答を行った。

 




誤字報告をしていただきまして、いつもありがとうございます!
お礼機能がありませんので、今後もお礼は後書きでさせて頂きたいと思います。

行間を空けました。
少しでも読みやすくなったのでしたら良かったです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

U.C.0070、地球。▼三歳のレン・イズミは、前世で三十五年間を生きた記憶を取り戻す。自分が生まれたのは、人類が宇宙へ進出した未来――宇宙世紀。▼そして九年後には、ジオン公国と地球連邦による一年戦争が始まる。▼レンは原作はある程度知っている。▼ジオン軍のモビルスーツ コロニー落とし サイド7への襲撃▼アムロ・レイがガンダムへ乗り、ホワイトベースの戦いが始ま…


総合評価:1495/評価:6.89/完結:103話/更新日時:2026年08月17日(月) 18:00 小説情報

(魔界の)神様(に)転生!そして伝説へ…(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:ダイの大冒険)

※本作は作者が読みたい原作改変を自給自足する趣味作です。感想や考察はありがたく拝見しますが、展開は作者の予定と趣味を優先して進めます。▼ 大魔王バーンに転生した男は、魔界の惨状を見て理解した。▼ この世界には救いが必要だ。▼ ただし、地上を消し飛ばす必要はない。▼ 地上と魔界を繋ぐギアガの大穴。▼ 魔界を潤す水と光。▼ ロモス統治、ハドラー育成、バラン一家保…


総合評価:12143/評価:7.68/完結:30話/更新日時:2026年07月24日(金) 19:00 小説情報

ヤン・ウェンリー提督の艦これ日誌(作者:灯火011)(原作:艦隊これくしょん)

※試金石です。続きそうなので連載に変更しました。毎日朝7時に更新します。▼運命の日。▼ヤン・ウェンリーは艦これの世界に転生した。


総合評価:5446/評価:8.87/連載:28話/更新日時:2026年09月23日(水) 07:00 小説情報

転生ナルト物語(作者:ドロイデン)(原作:NARUTO)

 社会に絶望し、自殺した男が転生したのは、まさかのうずまきナルトだった。男はナルトとして、理不尽な迫害をしてくる木の葉で、今日も惰性のように生きていく。▼ 作者の原作知識が片寄っているので、暖かい目で読んでくれると幸いです


総合評価:8376/評価:7.69/連載:15話/更新日時:2026年08月01日(土) 04:01 小説情報

ヒカ碁の世界で緒方精次となったからには、打倒saiを掲げたい。(作者:くま子)(原作:ヒカルの碁)

週刊碁で、桑原本因坊と塔矢九段の総譜を見つけた時、ようやく理解した。▼ここが『ヒカルの碁』の世界なのだと。▼なるほど。同姓同名とばかり思っていたが、この幼い身体は、緒方精次その人らしい。▼神は囲碁に没頭できる第二の人生を与えてくれただけでなく、佐為と──本因坊秀策と打てる機会すら、用意してくれているようだ。▼ならば、目指すしかないな。▼ネット最強の棋士、sa…


総合評価:20561/評価:8.98/完結:14話/更新日時:2026年06月17日(水) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>