【機動戦士ガンダム】七色の新星ガルマ・ザビ 作:おかかと梅干
ガルマの航空部隊に木馬発見の報告が入った。山脈の谷間を低空で西進しているという。
確かに谷間であれば巨大な戦艦とはいえ、姿を隠しながら移動ができる。だが戦艦を隠しながら移動できるルートなど限られているのだ。進行方向もわかっている。一時的に姿を隠せても、当たりを付けるのは容易い。
ガルマ、シャア、ラル、ハモンは、作戦会議室へ集まり最終的な打ち合わせを行った。
今回の作戦では、この谷間で囮部隊と奇襲部隊で挟み撃ちを行う。
囮として前面からガルマの航空部隊とシャアの駆るドムで足止めの攻撃を行う。
ガルマは前髪をいじりながら呟く。
「奇襲をしかけるには絶好の場所ではある」
続けてシャアはガルマの言葉に付け加える。
「だが囮部隊にはつらいな。谷間ゆえ、航空攻撃を加えるには範囲が絞られる。迎撃側もピンポイントで対空反撃ができる」
「危険を冒さず倒せる相手とはおもっていないさ。あくまで囮だ。それにシャア、地上にはお前がいるのだ。十分敵の目を引くだろう」
囮として目立たせるため、シャアのドムを赤く塗装していた。赤い彗星ここにありと。地上で高速機動を行う赤いMS、これが目を引かないわけがない。
奇襲部隊はランバ・ラルが直接指揮をとる。副官はクランプ少尉。長年ラルの指揮下にある優秀な士官だ。ラル隊は総数6機、すべてMS-07グフで揃えた。後方から隷下のガウで接近。木馬の索敵外からドダイに乗り低空で谷間を抜け奇襲を仕掛ける。木馬と違い小型のMSであれば谷間に姿を隠し気取られる事無く接近できる。
「では始めるぞ。全隊出撃」
新生ガルマの初めての戦いが始まる。
ガルマの率いるガウを中心とした航空隊が木馬の先回りをし、爆装したドップを展開する。木馬がこの動きを察知したのだろう、速度を緩める。
高揚した心を抑えるように、ガルマが指示をだす。
「航空隊、無理な攻撃は必要無い。足止めだけを考えろ。シャア、地上は任せたぞ」
「赤い彗星の名を地に落とすつもりはないよ。やられないように気を付けよう」
ジャイアントバズを携え、赤いドムが降下する。地上に着くやいなや、高速で木馬へと向かう。ドムの機動性を楽しんでいるのであろうか、言葉とは裏腹にその動きは機敏で挑発的だ。
シャアは木馬との邂逅早々、艦橋にバズーカを放つ。直撃するが損傷らしきものはあまり見られない。
「相変わらず頑丈な船だ。あきれ返る」
白いMSが素早く木馬との間に割って入った。牽制のためか頭部のバルカンを撃ってくる。
「来たな白いの。今度は逃がさんよ」
戦場は狭い谷間。とはいえ戦艦が通れる程度の広さはある。シャアにとってはMSを高速で機動させるのに十分な空間だ。
白いMSがビームライフルを放つ。狙われたドムの遥か後方をビームの奔流が抉り取る。
「地上でもあれだけの威力か。連邦の技術は侮れん」
本来ビーム兵器は大気中での威力、速度の減衰が課題であった。だが白いMSのビームライフルは十分に実用的な威力と弾速で大気中でも使用可能なようだ。連邦はMSの開発では大きく後れをとっていた。しかし蓄積された基礎技術と豊富な資金がその後れを取り戻し、部分的にはジオンをはるかに凌駕している。
シャアは砲口を木馬へと向ける。慌てたように白いMSがビームを放つ。
「甘いよ」
シャアはその隙を狙っていた。高速で機体をひるがえし、射撃のために動きをとめた白いMSにバズーカを放つ。直撃し爆炎がMSを包む。爆炎がはれた中から白いMSが姿をあらわす。
「角の一本も折れないか。まったく嫌になる」
赤いキャノンつきとタンクもどきも姿を現した。こちらは上空への反撃を行っている。だが対空戦に慣れていないのだろう。当たれば必殺の砲弾も高速機動するドップにかすりもしなかった。木馬の対空機銃も効果的な弾幕をはれてはいない。
「戦い方は素人同然だな。にも関わらず我々が戦艦ひとつ落とせないとは。少々傷つくな」
対空砲撃が緩いとみたのか、ガルマのガウが前線に出てきた。両翼に備えたメガ粒子砲であれば、木馬に損害を与えられるとにらんだのだ。
「功を焦るなガルマ、囮に徹しろ」
シャアが注意を促す。と同時に苦い笑いがこみあげてきた。
──数日前には殺そうとした相手なのだがな。
ガルマとの対談は、自分が考えていた以上に心中をかえているのかも知れない。
シャアの視界の中で、赤いキャノンが240ミリ砲でガウを捉えている。同時に白いMSのライフルが自分を狙っている事を察した。ジャイアントバズを打てば牽制になる。キャノンと白いMS、どちらに撃つかの判断は刹那もなかった。
高速のホバー機動のスピードを落とさず、だが正確にバズーカを放つ。キャノンの左砲にシャアの放ったバズが命中した。キャノンが大きく体勢を崩す。
ガルマの乗るガウは撃墜を逃れた。同時に一条のビームがドムに放たれる。
戦艦をも貫くビームがドムの左腕を吹き飛ばした。シャアはバズーカを放った瞬間にドムを旋回させている。そのため胴体を貫くはずだったビームは左腕だけを吹き飛ばした。
「当たるとこうも脆いものとは」
ビームライフルの威力に冷や汗が流れ落ちる。
「ガルマ、今は下がれ。ガウでは当たれば落ちるぞ」
「すまないシャア、お前も気を付けてくれ」
「とは言うが、私もいつまでもつか分からんな。白い奴は徐々に戦い慣れしてきている。ランバ・ラル大尉、急いでくれよ」
囮部隊が注意を引いている間に、無警戒の木馬後方をランバ・ラル隊は高速で接近していた。
総数はグフ6機。全機がドダイに乗り低空で谷間を進む。そしてついに木馬を至近にとらえた。
「各機攻撃開始。木馬に取り付け。タンクはわしがもらう」
ラルはドダイを最高速に維持したままタンクへと接近する。気づいたタンクが旋回しラルへと向かう。タンクが両腕の連装砲を向けた瞬間、ラルはドダイの機首を急激に引き上げた。強力な慣性を持ったドダイは上昇せず、底面をタンクに向けたまま突き進む。
タンクは驚いたように連装砲を乱射するが、ドダイの底面は強固にもち堪えた。もともとドダイは地上からの対空攻撃への耐性を高く設計している。ドダイは破壊されることなくタンクへとぶつかる。
その瞬間、グフは高く跳躍する。ドダイの衝突に混乱するタンクを飛び越え、背後へと降り立つ。すでにヒートソードを装備している。灼熱した刃がタンクの首を横なぎに切り落とす。返す刃で右砲身を切り捨てた。青い巨星の異名に恥じぬ熟練した怒涛の攻撃だった。
切り落とした頭部からパイロットが這いずりだし、必死に走り逃げる。
「ザクとは違うのだよザクとは」
だがタンクはそれでもまだ動いた。
「ばかな、コクピットを落としたのに!」
ラルは一瞬動揺した。そのわずかなスキにタンクが連装砲を発射する。グフは慌ててシールドを構えるが続けざまの爆発力に耐えきれず機体ごと大きく吹き飛ばされた。
ラルのピンチに僚機のグフがフィンガーバルカンを放つ。タンクに集弾するがダメージは見られない。タンクが左肩の残った砲を放った。正面から僚機のグフに命中する。ただの一撃でグフはばらばらの破片へと変わった。
タンクは一見MSの出来損ないでしかないが、その攻撃力と耐久力はジオンのMSを超えていた。
ラルは慌てて機体を起こす。シールドが落脱したが、幸いそれ以外のダメージはない。
戦意を衰えさせず、ラルはタンクへと走り寄る。跳躍するかのように一瞬姿勢をかがめ動きを止める。タンクは主砲を放った。だが地面に大きな穴をあけただけだ。ラルは上には飛ばず、地面すれすれを正面に飛んだ。そしてタンクとすれ違いざま、キャタピラにきりつけた。背後に回り反対のキャタピラも切り付ける。これでもう旋回もできない。
とどめをさそうとヒートソードを振り上げる。その瞬間殺気を感じ後方に飛び退った。眼前をビームが通りすぎる。
キャノンが遅まきながら援護射撃を行ってきた。
僚機のグフがキャノンにバズーカを放つ。キャノンは至近弾に姿勢を崩され、直撃弾に揺さぶられながらもラルのグフへ向かい240ミリ砲を放つ。防ぐ事ができないのは分かっている。狙われれば退くしかなかった。
ラルはタンクにとどめを刺せずに大きく距離をあけた。
ラルは戦況を見回した。
キャノンはラルが引いたのを見ると、今度は僚機のグフを攻撃した。母艦に近づかせまいと、続けざまに砲を放つ。グフ部隊はその攻撃力におびえるように、必要以上に大きく避けている。当たらなければ良い。だがこれではなかなか有効な反撃を行えない。木馬にとりつく事も出来ない。
シャアは白いMSと対峙していた。一瞬たりとも止まる事なく、ホバー機動を続けガンダムを翻弄する。だが有効打を浴びせるのは難しいようだ。白いMSに強力なジャイアントバズが直撃しても、その爆発力に耐えている。表面上はダメージが見られない。
ドムは左腕を失っているぶん、分が悪いかもしれない。
タンクは沈黙した。次は何を狙うか。一瞬考え、木馬の艦橋にフィンガーバルカンを放った。やはりダメージは薄い。だが母艦を狙われれば白いMSもキャノンも冷静ではいられまい。動揺を誘い隙を作る。ラルはそう判断を下した。
艦側の機銃がラルを狙うが不規則機動でかわしながら木馬へととりつく。跳躍しヒートソードを突き立てる。僅かな抵抗を感じるが、刃は木馬の装甲を貫いた。
刃を振るい装甲を剥ぎ取り、艦内を露出させるとフィンガーバルカンを打ち込む。さすがの木馬も内側はさほど強固でもないようだ。
ならば。艦尾のエンジンへと向かう。だが機銃の一つが執拗に攻撃を仕掛けてくる。グフでも直撃すれば損傷を受けかねない。
「先におとすか」
舷側の露天銃座には人影があった。艦橋からの集中コントロールに不具合があるのだろうか、人が直接機銃を操っている。
ラルは不規則に動きながら機銃へと近づく。数発がグフの装甲を掠め飛ぶ。
「いい腕だ。だが読みやすい」
グフがヒートソードを掲げ、振り下ろした。
さすがに人を直接切ろうとは思わなかった。銃身だけを切り落とす。
銃座の人影はその衝撃で銃座から吹き飛び、ノーマルスーツのヘルメットが落ちた。長めの美しい金髪が風にたなびく。
「女!? 連邦にも胆の据わったやつがいる」
ハモンとその姿を重ね興味をもち、銃座の女性をズームする。
そして、気がつき目を見開いた。
「まさか、ばかな──」
女性は怯えながらも、だが負けまいとグフを睨みつけている。
「似ている。だがしかし」
ラルはそう直感した瞬間、コクピットを開け放った。
女性はコクピットが空いたことに驚き、腰の銃を手に取り構えている。
ラルは銃口を気にせず、ヘルメットをとり叫んだ。
「アルテイシア様!」
女性がその名に反応するように体をこわばらせる。
「私です、ランバ・ラルです!」
女性の目に戸惑いの表情が浮かぶ。
「ジンバ・ラルの子、ランバです!幼いころご一緒した。お忘れか!」
「おじさま──?」
やはり。確信した。この女性はアルテイシア・ソム・ダイクン様だ。
意外過ぎる場での突然の再会に、ラルは心を動かされた。
だが感動の再会を中断せざるをえなかった。
戦闘機が威嚇射撃をしながら接近している。ラルは慌ててコクピットを閉じ、操縦席についた。
操縦を再開するとすぐさま飛び退る。
「どうする。このままではアルテイシア様の身に危険が及ぶかもしれん」
戦況は?僚機のグフ2機を失っている。自身のグフは小破。シャアのドムは損傷している。だがそれでも白いMSはシャアが抑えている。
このまま攻撃すれば、木馬を行動不能にできる可能性はある。
逡巡するランバラルの元に通信が入った。ガルマからだ。
「残念だが全部隊撤退する。キャリフォルニア基地に連邦の航空機部隊が進行中だ」
「このタイミングでか」
ラルは歯噛みをするがすぐに部隊をまとめる。むしろ好都合かもしれない。アルテイシアの身の危険は避けられる。
「全体撤退だ。だがせめてもの土産だ。クランプ、アコース、連邦の戦車もどきを鹵獲しろ。わしが援護する、ドダイで運べ。シャア少佐、白いMSはお願いしますよ」
「軽く言ってくれるな。だが任されよう」
「コズン、退路を確保。弾は撃ち尽くして軽くしろ」
ラルは部隊に指示をおくると、自らは赤いキャノンに走り寄る。
キャノンは慌てたように両肩の砲を放つ。狙いは全く定まっていない。ラルは避けもせず直進しながらフィンガーバルカンを放つ。
命中。だが損傷がない。
「どいつもこいつも堅牢な」
ラルは直進の勢いをそのままに、ショルダータックルを叩きこむ。
キャノンは大きく吹き飛び、尻餅をつく。牽制のためか尻餅のままキャノンを放つ。だがバランスを崩し後ろへ倒れこんだ。
「無様な。素人か」
ヒートソードを振り上げる。瞬間、構えた右手首が吹き飛ばされた。
先ほどの戦闘機が接近しながらミサイルを放ったのだ。
「ちいぃ、厄介なのはこの戦闘機かもしれん」
近づく戦闘機にフィンガーバルカンを放つ。だが戦闘機は直前でロールし回避する。
潮時か。
「クランプ、タンクは捕えたか」
「もう少し時間を」
二機のグフがタンクを持ち上げ、ドダイに乗せようとしている。だがその瞬間、突如タンクの胴体から爆炎が上がった。
グフ二機は驚き後ずさると、タンクの上半身が飛び上がり、中から戦闘機が飛び出してきた。
「なんなんだこれは」
呆れかえるラルたちをしり目に、戦闘機は一気に空へと逃げ去った。
「まったくバカバカしいにも程がある」
「大尉どうしましょう」
うろたえるようにクランプが問う。
「上半身と頭だけでも回収しろ。むしろ軽くなったわ。急げよ」
ランバ・ラル隊が撤収するのにあわせ、シャアとガルマも撤退した。
急ぎキャリフォルニアへの攻撃部隊を迎え撃たねばならない。
※9/27 誤字修整致しました。いつもご報告ありがとうございます!
一話の中で必ず戦闘を入れようかなと考えていますが、まあ難しいこと。書きたい事を全部書いちゃうと文字数が嵩む嵩む。退屈な会話劇が続かないようにだけは気をつけて参りたいと思います。
毎話戦闘シーンを入れてくるアニメの構成力は、やっぱ凄いな。