ゲームのエンディングを変えるために奮闘して死んだら、続編でヒロインが闇堕ちしてた 作:かませ犬S
「そいつと一緒にすんな」
不貞腐れるようにロビンが追い討ちをかけてくる。やめてくれ。
「うん、ごめん」
アデルが素直に謝ったことに驚きはしたが、
俺は何一つ変わってないぞ。
第三者からは姿形は違って見えているが、俺自身には変化ない。少なくとも三年前に死んだあの日のまま。この世界に戻ってきてからも怠けていたわけではなく、毎日のように鍛錬は続けている。
腕は落ちていないはずなんだがなー。どうして、こんなに貶されないといけないんだ?
良かったな、本人で。これで完全に別人だったら、お前の技は偽物だって言われたら普通はキレるからな。俺は本人だから、怒りより動揺が先にきたわけだけど⋯⋯。
「そんなにそのガイドって奴の技は凄いのか」
「はっ!てめぇの剣と比べるまでもねぇ」
だから俺なんだって。思ったことをそのまま口にしてやろうか?
いや、このタイミングでその発言をすると二人を一緒に敵に回す気がするな。お前がガイドだと!?みたいな流れで怒りを買いそうだ。
実際問題、何一つ変わってない俺の技を見て偽物判定してきてるからな。まー、信じて貰えないだろ。
ロビンたちからすれば今の俺は見た目も違う。声も違う。名前も違う。どうしてもこの二人の記憶の俺とは一致しない。同じ技でも違うものと捉えられる。
ロビンたちの目線に立って擁護するのであれば、お前の技なんかより俺たちが知ってるガイドの方が凄いんだぞって言いたいんだよな?言ってる相手が俺だけど。
「けど、君の剣も凄かったよ。ガイドには遠く及ばないけど」
だから、ちょっと貶すのやめろ。引き合いに出されるガイドが可哀想だろ。なんだこれ、イジメか? これが罰なのか⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯」
まぁ、素直に言葉通りに受け取るならこの二人がそれだけガイドだった俺を認めてくれていたってことだ。そういう方向で受け取ろう。
ひとまず、問題は解決したしな。
二人が今から武器を取り合ってやり合うような雰囲気もない。アデルの方も気持ちが落ち着いたらしく、元の位置に戻って腰を下ろすのが確認できた。
「お茶でも飲むか?」
「いいの?」
「あぁ、お前も飲むよな?」
ロビンにも問いかけたが反応はない。だからといって一人だけ省くような真似はしたくない。
二人の姿を一瞥してから焚き木の近くにまで歩み寄る。焚き木を利用してお茶を沸かしていたのだが、見てみるとちゃんと色が出ている。ちょうどいいか。
アイテムポーチから人数分の容れ物を取り出し、お茶を注いでから二人に手渡す。もっともロビンは寝そべったままなので少し離れた位置に落いただけだが。
「珍しいもの、持ってるね」
「そうか?」
アイテムポーチに入ってた容れ物は陶器で出来ているが、市場で普通に売ってた安物だ。ここ数年で製作者の名が広まって急騰した可能性はなくはないが⋯⋯。
「このお茶のパック、まだトレードでしか発売されてないでしょ?」
「あー、そうだったか?」
大陸の中心に商人が集まって出来た小国がある。国の名前は『トレード』───名前の通り、貿易や商売に力を入れている国だ。
武力は持たない反面、貿易によって他国との強い繋がり保持しているためこの国を狙うとその他の国から強い反発をくらうという、物流の力による護りを持っている。
大陸の中心部にあるのと、世界中の食べ物やら雑貨、武器やらが集まる国なので必然的に俺たちも立ち寄る機会が多かった。まぁ、一番の要因はその国に俺の親友であるカーチスの研究所があったからなんだが⋯⋯。
既にお察しの通り、俺がお茶を作るために使用したパックはカーチスにこういう物が作れないかと相談して出来た代物で、俺たちの間だけで終わらず市場にもしっかり流通したので広く色んな人の手に渡っている。
俺がこのお茶のパックを作って貰った時点ではまだトレードでしか発売されていなかった。もしかしたらこの三年で、他国にも流通していたりもするか?
「いつの話をしてんだ。それはとうの昔に世界中に販売経路が広がってる」
なんて予想をしていたら、まさかのところから答えがきた。声に反応して振り返ると、寝転がった体勢から起き上がったロビンが胡座をかきながらお茶を飲んでいた。
「引き篭ってたせいで、てめぇの情報も随分と昔で止まってるなアデル」
声に先程までのバカにしていたような嫌味な感じはない。事実を確認するような聞き方だ。それにしたって言い方があるだろ。
「⋯⋯君はどうなんだい?」
少し苛立った様子でアデルが返すと、ロビンは笑った。
こいつもこいつで、二年以上牢獄に入っていたわけだからアデルと状況はそう変わらないはず。だが、ここまで自信満々ということは俺と離れていたこの一ヶ月で色々仕入れてきたということだろう。
「てめぇと違って、オレさまには裏の情報網がある。オレさまが牢獄に入っている間に起きた出来事から、最新の情報まで全て入手しているさ」
「流石だな」
俺が素直に褒めたのに対して、アデルは何も言わなかった。
アデルからすればロビンが嫌いな奴という印象は変わっていないので、そんなロビンより劣っているのが非常に不服なんだろうな。不満そうに『あ、そ』っと呟いてお茶を飲み始めた。
「物の序でだ、これからどうするか聞いてもいいか?」
「あん? オレさまに任せるつもりか?」
「今のところ、此処に行きたい、これをやりたいって目的はないからな。このまま追手から逃げるにしても、協力した方が確実だろ?」
「協力だぁ?」
クラリスを救うにしても肝心の居場所が分かっていないからな。情報を集めたくてもオーストリン王国では俺は指名手配だ。捕まるリスクが付き纏ってくる。
安全に情報を集めるならオーストリン王国を出て、指名手配の効力のない地で行った方が効率的だ。
「このまま北上して国境を越えるつもりだろ? なら、お前も人手がいるんじゃないか⋯⋯ロビン」
正規の方法を使うのであればオーストリン王国と俺の出身国であるのボレアス王国の間に建てられた国境検問所を通るのが最も安全で最短のルートだ。ただ、指名手配中の俺たちは正攻法では通れない。
国境というのもあって、あの場所には警備の兵も多いからな。そうなると必然と手段は限られてくる。
「はっ! そこの平和ボケした奴と違って、ちゃんと分かってんじゃねーか」
「へぇー、ならその平和ボケしてるボクにも分かるように説明してよ」
ロビンがバカにするように笑えば、アデルが額に青筋を浮かべながら返す。が、ロビンは鼻で笑うだけで答えないという。これではアデルがまたキレるのが目に見えているので代わりに俺が答えることにする。
「ここから北上していくと、国境線沿いに建てられたグラキエス要塞って場所にぶち当たる」
「聞いたことがない場所だね」
「大陸の端の方にある要塞だからな。まず目にする機会はないし、普通の人ならまず赴くことのない場所だ」
国境を護るために造られた要塞ではあるが、十数年前に起きた地震によってボレアス王国側の道が地割れによって大きく崩れ、人の足で進めない状態になっているので戦略的な価値はほとんどない要塞になっている。
「そんなわけで、他の要塞に比べれば警備の兵は少ないから国境を抜けやすい」
「けど、人の足では通れないんでしょ? 要塞を突破して国境を越えても、その先に進めないんじゃないかな? 」
「抜け道があるんだよ。オーストリン王国が知らない、秘密の抜け道が」
俺がこの抜け道を知っているのはゲームの知識によるものだ。ストーリーの中盤くらいで帝国とウロボロスの策謀にハマり、主人公たちはボレアス王国の兵に追われることになる。
その際に逃げ道として使われたのが今から俺たちが使おうとしている秘密の抜け道だ。本来ならボレアス王国の有力者しか知りえない情報ではあるのだが、どうやらロビンも知っているらしい。
俺の答えに『お前も知っていたのか』と言わんばかりに楽しそうに笑っていた。
「そんな抜け道があるんだね」
アデルがこの抜け道を知らないのは俺が介入したことにより、原作と違ってこの抜け道を使う必要がなかったからだ。
あらかじめ俺は原作知識でどうやって罠に嵌められるかを知っていたのでしっかりと回避した。
ゲームのようにボレアス王国の兵に追われることもなくなった俺たちは、罠に嵌めようとしたウロボロスの幹部をそのまま袋叩きにしたわけだ。
「ボレアス王国を逃げ先として選んだのにも理由はある」
お茶を飲み終えたらしく、地面に容れ物を置いたロビンがまるで補足するように話し始めた。
「今、ボレアス王国は公爵の処刑を始まりとするクーデターにより、王国軍と反乱軍で二極化して争い合っている」
「っ───!!」
公爵が、処刑された?
あれほど国のために全てを捧げてきた、あの人が?
「うそだろ」
俺にとっても関係値が深かっただけにショックは大きい。それは俺の横にいるアデルも同じだ。あの人には色々と世話になったから⋯⋯。
「その反乱軍のリーダーとして指揮を取ってるのは、てめぇもよく知る人物だ」
「ボクの知ってる人?」
ロビンがアデルを見て笑った。
ああ、そういうことか。
俺の出身国にいる同郷の仲間は一人しかいない。反乱軍として公爵の無念のために戦う人物もまた、俺には一人しか思い浮かばない。
その人物は処刑されたとされる公爵の妹であり、俺の───。
「マルテナ・シンクレア⋯⋯知ってる名前だったろ?」
弟子の名前だ。
ガイドの出身国変更
ロイツ→ボレアス
理由
ロのつく単語増加による混乱防止