廃墟というのは、もっと宝箱が落ちていそうな場所だと思っていた。
モモイは崩れた道を避けながら、端末の地図と目の前の光景を見比べた。ひび割れた道路の両側には、窓の割れた建物が並んでいる。
「お姉ちゃん、本当にこっち?」
「合ってるって。ほら、この先に大きい建物があるでしょ?」
「さっきも、そう言ってなかった……?」
ミドリの疑わしそうな声が聞こえたが、聞こえないふりをした。地図には間違ったことは書かれていない。多分。似たような建物が多すぎるのが悪い。
「モモイ。あちらの建物も探索しますか? 重要なアイテムが隠されているかもしれません」
隣を歩くアリスが、長い銃身の先で廃ビルを示した。
「うーん、気になるけど、まずは目的地かな。寄り道は帰りにしよう」
「分かりました。メインクエストを優先します!」
アリスは元気よく頷いた。その様子を見ていると、昨日、通路で泣いていた子と同じだとは思えなかった。
部室へ連れて帰ったばかりの頃は、何を聞いても返事が硬かった。どこから来たのかも、これからどこへ行けばいいのかも分からないという。
名前を尋ねて返ってきたのも、AL-1Sという、どう見ても名前ではなさそうな文字列だった。
だから、アリスと呼ぶことにした。
本人も気に入ってくれたようだったし、その方がずっと呼びやすい。いつまでも不安そうにしていたので、気分転換にゲームを勧めた。もちろん、ゲーム開発部の自信作、テイルズ・サガ・クロニクルだ。
アリスはゲームに夢中になり、操作もすぐに覚えた。最初は台詞の意味を一つずつ尋ねていたのに、気づけば登場人物と一緒に喜び、次の冒険を楽しみにするようになっていた。
少しばかり、話し方までゲームに似てしまったが。
「勇者の旅には、困難がつきものです。皆で頑張りましょう!」
「……うん、皆で頑張ろう」
背後から、小さな声がした。
振り返ると、ユズが不安そうにこちらを見ていた。普段は部室から出るだけでも一苦労なのに、今日は自分からついてくると言ってくれた。部長として、部員だけを危ない場所へ行かせるわけにはいかないらしい。
ゲーム開発部はついに四人になった。アリスがゲーム開発部に入部してくれたからである。
学生証がないという問題もあったが、頼れる友人たちがいた。ヴェリタスに相談すると、生徒名簿に名前が増え、学生証まで用意してもらえた。何をどうしたのか、詳しくは聞いていない。
ユウカには、ずいぶん疑われた。
昨日まで一人も見つからなかった新入部員が、急に現れたのだ。しかも、転入の経緯を聞かれたアリスは、自分が勇者であると説明し始めた。横で聞いていたミドリの笑顔が、引きつっていたのを覚えている。
それでも、これで四人。ようやく廃部の心配から解放されると思ったのに。
「人数をそろえればいいって話だったのに……」
「お姉ちゃん、また言ってる」
「だって、今月末までに成果を出せって! そんな急に言われても困るじゃん!」
部室に来たユウカから聞かされたのは、部員が四人いても成果を上げなければ来期には廃部になってしまうということだった。ならば、新しいゲームを完成させるしかない。そのために必要なのが、最高のゲームを作る方法が記されたG.Bibleだった。
先生には、廃墟へ近づくなと言われている。
しかし、代わりに頼った古代史研究会では、参考にできそうなゲームを手に入れられなかった。このまま部室で悩んでいるうちに、月末になってしまう。
危ないものを見つけたら避ける。必要なものが手に入ったら、すぐに帰る。そうすれば、きっと大丈夫だ。
それに、今回は心強い仲間もいる。
「アリス、それ、重くない?」
「問題ありません。アリスはこの剣に選ばれた勇者なので!」
アリスが抱え直した武器を見て、モモイは満足げに頷いた。
真・光の剣:スーパーノヴァ。
武器を持っていないアリスのためにエンジニア部へ相談したところ、一波乱あったが譲ってもらったものだ。
ウタハたちは、アリスが持ち上げたときから大喜びだった。宇宙戦艦を作らずに済んだとか、想定外の運用試験ができるとか、色々と言っていた。
説明は長かったが、強い武器だということだけはよく分かった。
「……皆、止まって」
ミドリが足を止めた。
建物の陰から、人型の機械が歩いてくる。その後ろにも、もう一体。モモイたちの姿を捉えると、揃って武器を持ち上げた。
「て、敵……!?」
ユズが慌てて銃を構えた。モモイも端末をしまい、近くの壁へ身を寄せる。
できれば戦闘は避けたかったが、道の真ん中を塞がれている。別の道を探そうにも、向こうはもうこちらに狙いをつけていた。
「敵との遭遇を確認。皆さん、ここはアリスに任せてください!」
大きな銃身が、オートマタへ向けられる。装置の奥で光が灯り、低い音が次第に高くなっていった。
「ちょ、ちょっと、アリ──」
「光よ!」
ミドリの声が、轟音にかき消された。
目の前が白く染まる。モモイは思わず目をつぶり、壁の陰へ頭を引っ込めた。足元まで震え、遅れて砂や小さな破片が降ってくる。
しばらくして、ようやく顔を上げた。
道は煙に覆われていた。さっきまで聞こえていた機械の足音も、銃声もない。
すごい。
これはもう、序盤で手に入れていい武器ではない。最強装備の勇者が仲間になったのなら、この探索も何とかなるかもしれない。
「……やったか」
「お姉ちゃん、それ、言っちゃ駄目なやつ……」
ミドリの声と同時に、煙の奥で何かが動いた。あの攻撃を受けられるとは思えない。うまく回避したのだろうか。
煙が薄れ、ゆっくりと歩いてくる姿が見えた。
赤と金の装甲。人型ではあるが、先ほどの機械とは形が違う。胸と両目の部分に光を灯したロボットが、こちらを見て立ち止まった。
「やあ、ゲーム開発部」
聞き覚えのある声だった。
「その声……先生!?」
「パンパカパーン! 先生がパーティに合流しました!」
隣でアリスが声を上げた。さっきまで敵を狙っていた大きな銃を下ろし、嬉しそうにロボットへ近づいていく。
「先生って、シャーレの先生!? アリスちゃん、知り合いなの?」
「はい! アリスをここから連れ出してくれた人です!」
「ここから?」
思わず聞き返したが、アリスはロボットの周りを歩き始めていた。装甲を見上げ、不思議そうに首を傾げる。
「でも、色が少し違いますね……分かりました。2Pカラーです! ミドリがキャラクターの数を水増しするためによく使う手法ですね!」
「そ、そういう言い方はしてないよ!?」
先生はしばらくアリスを見下ろしていたが、やがて小さく息を吐いた。
「……少し見ない間に、ずいぶん話せるようになったな。子供の成長は早いね」
アリスが誇らしげに胸を張った。モモイも少し嬉しくなる。自分たちのゲームが役に立ったのだから、制作者としては鼻が高い。
しかし、その喜びは長く続かなかった。
「それで、モモイ。廃墟へ近づくなと言ったはずだが」
「あっ……」
「ここは危険な場所なんだ。さっきのロボットの群れを見ただろう?」
しまった。再会を喜んでいる場合ではなかった。
先生に止められていることは、もちろん覚えていた。だが、まさか廃墟の中で本人に見つかるとは思わない。しかも、ロボットの姿で現れるなんて反則だ。
「で、でも! 私たちが成果を上げるには、G.Bibleを手に入れるしかないんだよ! それに、アリスがいればロボットなんか返り討ちだし!」
「はい。今のアリスは、光属性の広域アタッカーです」
アリスが光の剣を抱え直した。
「パーティ解散エンドを阻止するため、廃墟にある聖書を入手しに来ました。モンスターの群れは、アリスに任せてください!」
完璧な説明だった。モモイは何度も頷いたが、先生は光の剣へ顔を向けたまま動かなかった。
「悪い夢でも見ているようだよ。君が、その武器を持っているとはね」
「あ……アリスには、真・光の剣はふさわしくないのでしょうか?」
「君以上にふさわしい者がいないのが問題なんだ」
褒めているのか、困っているのか、よく分からない。モモイは、話が説教へ戻る前に口を開いた。
「ねえ、先生も一緒に来てよ! そうすれば危なくないでしょ?」
「それは心強いです! 先生がいれば、アリスにバフが入ります!」
「そうだよ! ここまで来たんだし、一緒に――」
「悪いが、探索は中止だ」
先生の声が、モモイの言葉を遮った。
いつもの、冗談を挟みそうな調子ではなかった。モモイは口を閉じ、赤と金の顔を見上げる。
「君たちを連れ戻しに来ている生徒がいる。見つかる前に、ここを離れるぞ」
「……ユウカ?」
「もっと上だ。生徒会長が動いている」
「せ、生徒会長!?」
ミドリと声が重なった。ユズも、驚いたように顔を上げている。
学生証のことが、そこまで大きな問題になったのだろうか。それとも、古代史研究会の方か。どちらにしても、ユウカに怒られるだけでは済まないらしい。
「事情は後で説明する。ひとまず、君たちはシャーレで保護する。僕についてきてくれ」
先生の声から、いつもの冗談めいた調子が消えていた。
モモイはアリスを見た。ここに置いていくつもりはないし、捕まえさせるつもりもない。それなら、先生についていくしかなさそうだった。
「……シャーレに行くの? うーん、それなら、先に部室へ寄ってもいい?」
「何をしに?」
「プライステーションを取りに。まだクリアしてないゲームがあるし……」
「モモイ。ゲームのカセットも忘れないでください」
「分かってるって。それと、着替えとか――」
「おい。大人が真面目に話してるんだ。旅行の準備じゃないぞ。早くしないと――」
「よお、ゲーム開発部」
背後から聞こえた声に、モモイの肩が跳ねた。
振り返ると、崩れた壁の向こうに、小柄なメイドが立っていた。オレンジ色の髪に、スカジャン。こちらを見据える目には、見覚えがある。
「ネ、ネル先輩……!?」
ネルは四人を見渡し、最後にアリスへ目を留めた。
「見ねえ顔がいるな。そいつが、新しく入れた部員か?」
「そ、そうだけど……何でネル先輩が?」
「会長から直々に頼まれたんだよ。ゲーム開発部を全員、連れて帰れってな」
モモイは思わずミドリを見た。妹も、同じようにこちらを見返していた。
C&Cの部長まで来るなんて、聞いていない。
「古代史研究会への襲撃。学生証の不正発行。おまけに、立入禁止の廃墟へ侵入。忙しい奴らだな、お前らも」
「で、でも、それは全部、部活のためで……!」
「言い訳は帰ってからしろ。部活のためなら何してもいいわけじゃねえだろ」
返す言葉が見つからない。隣でミドリが小さくうなだれ、ユズはすでに泣きそうな顔をしていた。
「待ってくれ。彼女たちは、僕が預かる」
先生がゲーム開発部とネルの間へ出た。
「あ? 何だ、お前」
ネルの目が、赤と金の装甲へ向いた。
「シャーレの先生だ。彼女たちの引率は、僕が引き受けるよ」
「先生?」
ネルが眉を寄せた。先生の姿を上から下まで眺めてから、モモイたちへ視線を動かす。
「お前らの知り合いか?」
「う、うん。先生だよ。その、見た目はちょっと違うけど……」
「リオからは、ほかに何か聞いていないか?」
先生が尋ねると、ネルは面倒そうに首を傾げた。
「ほかって何だよ。問題児どもを連れて帰る。それだけだ」
「アリスについては?」
「だから、そいつも部員なんだろ。全員連れてこいって言われてる」
先生が黙った。何か考えているのか、金色の顔はネルへ向けられたまま動かない。やがて、ため息をついたようだった。
「……沈黙は金なんて、教えるんじゃなかったな」
「あ? 何か言ったか?」
「いや、教育方針を反省していたところだ。君の仕事は分かった。僕も先生として、この大問題児たちを放っておくわけにはいかない。シャーレで保護して、事情を聞く。生徒会長には、僕から連絡するよ」
「先生まで大問題児って言わなくても……」
「お姉ちゃん、今は黙っていよう?」
ミドリに袖を引かれ、モモイは口をつぐんだ。助けてくれようとしているのは分かるが、少しくらい言い方を選んでほしかった。
「だったら、その面を上げろよ。先生だって言うなら、顔くらい見せられるだろ?」
「……今は外せないんだ。旧型だから、メンテナンス不足でね」
顔を見せれば済む話ではないのだろうか。ネルの目つきが、ますます険しくなっている。
「ああ。そういや、もう一つ言われてたな」
ネルが、両手の銃を持ち直した。
「妙な赤いロボットが来ても、相手にするな。生徒を連れていかせるなってよ」
「ずいぶん的確な指示だな。もう少し説明してくれてもいいだろうに」
「悪いが、こっちも仕事なんだ。邪魔すんなら――」
ネルの姿が、視界から消えた。次の瞬間、金属のぶつかる音がした。
先生の身体が横へ吹き飛び、道路を滑る。モモイが声を上げるより先に、ネルはその後を追っていた。
「先生!?」
「全員、下がれ!」
先生が片腕をつき、身体を起こす。その胸へ銃弾が浴びせられ、装甲の上で火花が散った。
先生が掌を向けたときには、ネルはもう先生に向かって走っていた。一瞬で距離を詰めたネルが、先生の伸ばした腕を蹴り上げた。放たれた光弾は、空へ向かって飛んでいく。
「ちょ、ちょっと待って! 本当に先生なんだってば!」
「だったら、顔を見せろっつってんだろ!」
先生の肩の装甲が開いた。中からせり出した装置がネルへ向いた直後、甲高い音が通りへ響き渡る。モモイは思わず耳を塞いだ。頭の奥まで響くような、嫌な音だった。
だが、ネルは顔をしかめただけだった。
「ちっ! うるせえな、これ!」
銃声が重なり、先生の肩で火花が弾けた。音が途切れる。
「……最大出力でそれで済むのか」
先生の足元が光った。
赤と金の身体が宙へ浮き、その下をネルが駆け抜ける。放たれた銃弾を受けながら、先生は建物の高さまで上昇した。
あそこなら、さすがに手は届かない。
そう思った直後、ネルが崩れた壁を蹴った。突き出た足場へ飛び移り、そのまま先生へ迫っていく。
「飛べば逃げられると思ってんのか!」
「少しは思っていたよ!」
先生が後ろへ飛び退き、掌から光弾を放った。ネルは身をひねって避け、着地した屋根から撃ち返す。
先生は飛び続けていた。止まれば、その場所へネルが来る。追いつかれる前に距離を取り、光弾で近づくのを防ぐ。それだけで、精いっぱいに見えた。
「モモイ! 今のうちに、みんなを連れて離れろ!」
先生の声に、モモイははっとした。
「で、でも、先生が――」
「早くしろ!」
どうすればいいのか、考えている余裕はなかった。ミドリの手をつかみ、ユズへ声をかける。
しかし、アリスだけが動かなかった。光の剣を抱えたまま、空を見上げている。
「アリス、行こう!」
「先生が、攻撃されています」
いつもの明るい声ではなかった。
アリスの目が、先生を追って動く。赤い装甲にまた弾が当たり、小さな破片が落ちてきた。
「勇者は、仲間を置いて逃げません」
「アリスちゃん?」
大きな銃身が持ち上がった。その先にいるのは、屋根から道路へ飛び下りたネルだった。
光の剣が唸り始め、銃身の奥に光が集まる。
「魔力充填、百パーセント──」
ネルがこちらを振り返り、驚きに目を見開いた。
空中にいた先生も、振り返って叫んだ。
「アリス! よせ!」
「光よ!」
赤と金の身体が、急降下した。
ネルとアリスの間へ、先生が飛び込んでくる。両腕を広げた姿が見えたのは、一瞬だけだった。
光がほとばしった。
轟音と熱い風に押され、モモイは尻もちをついた。目を開けていられない。何かが地面を叩き、跳ね、すぐ近くまで転がってきた。
やがて、音が消えて、モモイは恐る恐る顔を上げた。
赤い金属片が、足元に落ちていた。その先にも、いくつも。
「……先生?」
返事はなかった。
起き上がって、冗談を言ってくれるはずだった。少しくらい加減しろとか、修理代が高くつくとか。そう言って、また自分たちを叱るはずだった。
隣で、重い音がした。アリスが光の剣の先を地面へ落としていた。
アリスが一歩進み、目の前まで転がってきていた、青白く光る円形の部品を手に取った。
「先生……?」
モモイは立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。ミドリも、ユズも、何も言わない。みんな、散らばった赤い金属を見ていた。
瓦礫のそばで、ネルが立ち上がった。
先生が飛び込んだ場所と、アリスを交互に見る。
「おい。何で、かばった。あんな攻撃なんかじゃ、あたしは……」
ネルは口を引き結び、ばらばらになった装甲へ近づいた。
「リオ。お前、何を隠してやがる……」
*
視界が暗くなり、トニーは操作用の装置から手を離した。
壁のディスプレイには、通信の途絶したマーク86の状態が表示されている。遠隔操作不能。全ての部品に赤い警告が出ている。
部屋の外から、爆発音が聞こえた。天井がわずかに震え、机に置いた工具が転がる。
ヒマリのセーフハウスだった場所は、すっかり籠城するための拠点になっていた。
特異現象捜査部でリオと決裂した後、トニーはマーク88でAMASの包囲を突破し、ヒマリを連れて脱出した。廃墟の調査から呼び戻したエイミとトキに合流し、リオを止めるために動き始めたところまではよかった。
今度はトキがいなくなった。
呼びかけても応答はなく、その後、AMASの部隊がここへ押し寄せてきた。リオの指示で動いていた生徒だということは、初めから知っていたのに。生徒への信頼が、ここに来て裏目に出てしまうとは。
外の敵はエイミに任せ、ようやく居場所の分かったアリスには、遠隔操作のマーク86を向かわせた。
トニーは、暗い画面を見つめた。
少なくとも、ネルへの直撃は防いだ。あの射線へ割り込まなければ、どうなっていたか分からない。
ただ、アリスにはどう見えたのか。
「……しくじった」
「ええ。あの子に、トラウマを植えつけてしまいましたね」
隣で画面を見ていたヒマリが言った。普段なら皮肉の一つでも続きそうなところだったが、その声に笑いはなかった。
「もう少し、慰めになる言い方はないのか?」
「今、慰めが必要なのは、あの子の方でしょう」
「分かっているよ」
顔を見せろと言われたときに、事情を説明していればよかった。ミレニアム最強だと言われるネルに無人機だと知られれば、容赦なく破壊されると考えてのことだったが。
まさか、アリスが立ち止まって、自分を助けようとするとは。
昨日まで何も知らなかった少女が、そうするようになった。その変化は喜ばしいことなのだろうが、それにしてもゲーム開発部に任せるのは不安が残る。
『先生!』
通信機から声がした。銃声に続いて、何かがひしゃげる音が響く。
『そっちが終わったなら、こっちの加勢に来てほしいんだけど! 変なデザインのロボットが、こっちに向かってきてる!』
エイミの声だった。
ヒマリが外の映像を別の画面へ映した。壊れたAMASの向こうを、妙な姿のロボットが進んでくる。前衛的な外見に反して、兵器としての性能は堅実らしかった。
トニーは立ち上がった。
「いろんな意味で終わった。今、そっちに行く」
返事を待たず、トニーはマーク88へ右手を伸ばした。