トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
それからまた間もなく、手配されたより本格的な応援部隊が基地から村に到着。
村の近くに各業務・役目のための車輛が並び天幕が張られ。簡易な幕営地が築かれて必要な動きが始められた。
もっともその主は、確保されたオークたちの掌握。そして伸され倒れていたオークたちの救護看護であったが。
「……ンォぉ……?」
展開、設置された施設設備の一つである救護天幕。
その中に置かれた一台のストレッチャーの上で。頭オークは、今も偉丈夫な美女のままのその人は目を覚ました。
「ンんぁ……?どうなってェ……?」
その女体となって尚も屈強な上半身を、緩慢な動きで起こす頭オーク。
その際に、首回りに感じていた冷たさが引き、同時に手元近くに何かが落ちる感覚を感じる。
手元を見れば、それが落ちた氷嚢であることが分かり。そして同時に己が、見慣れぬ寝床のようなものに寝かされていたことに気づく。
「――目が覚めたか」
「っ!」
そんな所へ背後から通る声が掛かり聞こえ、頭オークはそちらを振り向く。
そしてすぐ傍にて、一人の蒼い美少女――仙導が、他ならぬ自分を倒し沈めた相手が。屈む姿勢で己を覗き込んでいる姿を見た。
「おまえ……?まさか……オレは、助けられたのか……?」
次にはその見えた姿に、周りの光景から。
漠然とだが頭オークは己の置かれた状況を察し。しかし大変に訝しむ色で、そんな言葉を仙導に向ける。
「まだ安静にしていたほうがいい。君の同胞たちも同じく手当しているから、心配するな」
そんな頭オークのぶつけて来た質問の言葉に、仙導はひとまずは答えず。
忠告の言葉と、併せて頭オークが欲しているであろう知らせの一つを答えてやる。
「……どういう腹積もりだァ?何を企んでやがる……?」
そんな仙導に、しかし頭オークは変わらずの訝しむ顔色で、いや睨み凄むまでの色で言葉をぶつける。
頭オークからすれば、あの状況で不覚を取った己は、配下共々そのまま殺されるのが当たり前だという認識であった。
しかしどうだ。目の前の小娘は己を生かし手当までし、群れの仲間も手当をしていると宣った。
襲撃者にする扱いではない。頭オークが、その裏を疑り探ろうとするのも無理は無かった。
「聞かせてもらった。君たちも同胞を、子供たちを食わせるために、苦渋の決断で襲撃という手段に手を出したのだろう」
「何……?」
しかしそんな頭オークに対して、仙導が紡いだのはそんな聞き尋ね返す言葉だ。
「君たちのコミュニティは元より厳しい環境だったが、さらなる凶作でついにその地を離れざるを得なくなった。そして収奪で糧を得ることに舵を切り、この村がその最初の標的だった」
「……っ!」
続け紡がれた仙導の言葉。
それはその通り。頭オークたちの群れ、部族が故郷を離れ、フェイオンの村を襲撃した理由で間違いなかった。
「……だからァ?そんなんを知ったからって、下種な襲撃者に甘っちょろい慈悲を掛けようってかァ?」
しかしそれを聞かされた頭オークが次に返したのは、剣幕での詰問のような言葉。
「舐めるなよ……碌でもねェオレだが、安直で甘っちょろい赦しに飛びつく程、腑抜け腐っちゃいねェぞ……!」
そして、次に吐いて叩きつけられたのはそんな言葉。
その頭オークのそれはしかし、己を軽んじられた事に対する怒りと言うよりも。
まるで何か、『己が己を赦してはならない』。そんなような意志、色に気配が漏れて見えるものであった。
「はァ――君は、大分不器用なようだな」
「なに……?」
そんな頭オークに向けて、しかし次に仙導が零したのは、何か呆れた色を含めてのそんなような言葉だ。
それに頭オークは訝しみながらも、また凄味を含ませた色で返す。
「これは頼まれてのことだ――「私たちのために悪者になろうとしている、グィネおじちゃんを止めて助けてくれ」、と」
その頭オークに、続けて仙導が紡ぎ伝えたのはそんな言葉。
そして併せて次に、仙導はチラと背後に視線を向けて何かを促す。
「!」
そこに見えたものに、頭オークは目を剥いた。
示されたのは、救護天幕の出入り口。
そこには外からこちらを覗き込む、オークの子供たちが。男の子から女の子まで、歳は下は一桁から上は成人手前までが。
皆心配そうに中を覗き込み、頭オークに視線を集めている姿が見えた。
それは、頭オークが頭領を務める部族の子供たちであった。
また明かせば今に仙導が紡いだ言葉は。頭オークが仙導によって倒し崩された直後に、隠されていた所から出て来たオークの子供たちから寄越された要求懇願であったのだ。
「君は、襲い糧を得る決断を下した時、己が悪人となる覚悟を決めたようだな。まったく不器用にも程がある」
そんな子供たちの姿を頭オークに促し見せ、そして次にはまた呆れを混ぜた色での言葉を紡ぐ仙導。
「ところでここからは勝手な宣伝だが――我々のコロニーは人手を、新規参入者を求めている。手頃な参入してくれるコミュニティがあればありがたいのだが」
そして次に仙導が言葉にしたのは、何かわざとらしい声色でのそんな旨。
補足だが、特別活動隊の活動区は拡大を進めるに伴い。地球・日本から、異世界からを問わず新規参入者を欲し募っていた。
「……そうまでして、俺たちに慈悲を駆けたいのか?」
「解釈は好きにしてくれ。しかし、君たちはまだまだ再スタートを切れる。願わくば、未来につなげるための選択を期待する」
次にまた疑い探るような。しかし同時に少しバツが悪そうな顔色で、言葉を向けて尋ねて来た頭オークに。
しかし仙導は、また天幕出入り口で状況を見守っている子供たちを示しながら、そんな言葉を紡ぐ。
「……ハっ!とんだアマちゃんが、得体の知れねぇ他所からはるばるやって来たモンだぜっ!」
そして、しばらくの思考の様子を見せた後に。
頭オークは、呆れを混ぜた皮肉気な笑いを発し上げた。
「いいだろう……お望みならば、図々しくそちらさんに転がり込んでやろうじゃねェか!」
そして次にはストレッチャーの上で、居住まいを正してドカリと座り直すと。
その美麗な顔に、ニカっと一杯の笑みを作り。バシンと己の膝を叩いて見せた。
「言っておくが、穀潰しを招く気はないぞ。たらふく食らいたければ、その分動いてもらうぞ」
「上等だ!」
そんな頭オークに仙導は忠告の言葉を向けるが、頭オークは威勢よくそれに返す。
そして次には仙導と頭オークは、互いの大きさの大分異なる拳を、景気よくぶつけあった。
こうして、緊急事態入電から始まった騒動の一幕は。
無事完了、解決したのだった。