トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
万が一の可能性を鑑み、戦闘飛行班という即応性を有する特性から、まず指定され急派された門手と呉市だが。
しかし島の状況は予断を許さないものではあるものの、戦闘飛行班を張り付け続けるまでのものでは無いと判断され。
護衛艦やはぎ、及びそれが乗せた警備班が島に到着すれば、出張所及び職員の警護はそれに引継ぎ。
門手と呉市は特別活動区の基地へ帰還する運びとなった。
場所は、島の機関に施設が集まる中心部区域のその端。
出張所から近くにある、高台に設けられた公共の公園施設内。
警備交代のための「やはぎ」及び警備班の到着まで、半ば手隙となった門手と呉市は。
島の食事処で昼食に興じた後、今は一応即応待機を兼ねてのものであるが、その公園にて屯する時を過ごしていた。
ちなみに門手と呉市は、戦闘機ベースのデバイススーツ姿の二人は。少し特異で島の人々の目をいくらか集めたが。
しかし、「着装」は。カナタの島及びシンムの国では「変術」とよばれるそれの存在は、変わらず同じくのものであり。
そしてシンム人は、日本人と極めて酷似した容姿姿をもつ民族であったことから。
「遠方異界の地から来た、しかし似通る同胞」として。
またその同胞の、「空を駆け戦う変術の姿」として。
日本人は、門手と呉市は受け入れられ。島の人々の目に当たりは、少しの驚きの色はありつつも友好的なものであった。
「イケニエたぁ、また何かの御伽話のお手本みたいだな」
そんな、日本人からしても似通る所を覚える地であるからこそ。
その『ヤガシラノヒリュウ』とやらの脅威と、それを元凶とする生贄騒動に見舞われているカナタの島に。
二人は気掛かりな、心配なものを覚えてならず。
屯の最中の二人の内から門手がその心内を含めて、そんな呆れつつも苦い色の声を零した。
「だな、何か力になれることがあればいいが」
次に呉市も同意の言葉を零す。
「――ん?」
その呉市が、近くにある気配を感じ、そしてその姿を見たのは次だ。
それは二人の場所から近く向こうの、公園にある簡易な展望場。
そこに見えたのは、佇む一人の少女の姿だ。
見て伺える容姿は、十代半ば程の美少女。
あどけなさを残しつつも可憐なその顔は、ショートボブの黒髪で飾られてる。
年相応のその身体に纏うは、お手本のような紅白で成る巫女装束。
そんな巫女装束の少女は、展望場から向こう遠くを、そこから望める海岸線の向こうの大海原を。何か憂いを帯びた表情で見つめていた。
「?――!」
そんな彼女はしかし、次にはこちらの気配に。門手と呉市の存在に、そして視線を向けられている事に気付いたようであり。
そして次にはバツが悪そうな、やや慌てるような仕草をおもむろに見せて。隠れるかのようにその顔を一度背けて伏せる。
「あら、お邪魔をしちゃったか」
その少女の目に見えて狼狽えている反応を見て、門手がそんな言葉を零す。
しかし少女はまた次には、二人の存在を大変に気にする様子で。バレバレの動きでチラチラとこちらを伺う視線に動きを向けて来た。
「?、俺たちが気になるのか?」
その少女が見せる動きから、伺い察する声を零す門手。
「目立つのはお互い様か――すまない、邪魔をしてしまったかいっ?」
そしてそんな彼女に対して。こうなってはそのまま反応を示さず、あるいは立ち去ったりすることも悪いと考え。
次には呉市が声を張り、まずは詫びるそんな言葉を彼女へと向けた。
「!……い、いえ……っ!」
そんな彼女は、こちらから返事が返って来るとは思ってなかったのか、少し驚く色を見せると。
しかし次には透る声色での張った声を返し。そして少しおっかない足取りを見せながら、こちらへと向かって来た。
「ご、ご無礼を……っ、すみません……っ」
少女は二人の前までトコトコと小走りで駆け寄って来て立つと。まずはそんな謝罪の言葉をまた微かに戸惑う色で紡ぐ。
「無礼なんてことは何もないさ。こちらこそ、驚かせてすまなかったね」
そんな彼女を宥め安心させるため。呉市がそう詫びて促す言葉を返す。
「いえ、そんなことは……あの、お二方は異界の……「ニホン」、でしたか?その「空の
それを受けた彼女は、受けた詫びにまた戸惑う色を見せつつも。
門手と呉市の二人を、そんなワードに表現の言葉で呼び尋ねた。
「あぁ、俺たちのことを知ってくれていたかい」
「昨日、飛び参られた姿をお見かけしました。おじ様からどういった方々なのかも、聞き及んでおります」
少女からの尋ねるそれに、門手が肯定の意味を含めるそんな言葉を返し。
それに少女は、彼女が二人の存在についてを知るわけを紡ぐ。
「――変術をされた、心髄に
「そこまでわかるのか?」
そしてしかし次に、少女がまた紡いだその言葉に。
二人は少し驚き、呉市が聞き尋ねる言葉を返した。
男性の場合は女性に変じてしまう着装の術だが、着装そのものは男女問わず可能だ。
そのため、その当人の事を知らない初対面の他人などであった場合。着装者であるからといってその本来の性別を判別するのは難しいことだ。
しかし少女は、今はそれぞれ金髪モデル及び茶髪ギャルな美少女の姿体である二人を。その正体が、精神が男性であることを判別して見せた。
「あ、すみません……落ちぶれ者ですが、巫女であった身ですので……」
そんな少女は次にはまた申し訳ないと思ったのか詫びてしまい。併せて今についてそんな理由らしきものを紡ぐ。
その言葉には、何か背景がありそうな色が嫌でも見えた。
「……何か思いつめた色で海を見ていたね。どうかしたのかい?」
あからさまな少女の様子に、二人は放って置けぬものを覚え。
ここまで話しては乗り掛かった舟と、思い切って踏み込むことにし。呉市が代表するように尋ねる言葉を向ける。
「……「姉」の居る方を、見ていました――」
その尋ねる言葉に。少女はそんな切り出す言葉を零した。
少女は、クシナという名。
そして件の生贄騒動で捧げられ、連れていかれた娘というのが彼女の姉なのだと言う。
また聞けば、島に古くから住まう住民たちの中には、『ヤガシラノヒリュウ』を神として崇める一派、族がおり。
その中には、『巫女』の血筋というものが存在。
その血筋に生まれた子は、女子であった場合はもちろん、男子であった場合も『変術』にて女子へと身を変え。
巫女として『ヤガシラノヒリュウ』に関わる『神事』を担い。そして必要とされれば『ヤガシラノヒリュウ』に、生贄として身を捧げる運命を定められた存在。
クシナの両親も、過去にその生贄と捧げられたそうだ。
そしてクシナと彼女の姉であるレイノという少女は。その両親の、その血筋に生まれた娘なのだという。
しかしだ。
元より一枚岩では無かったその古くよりの住民の一派は、間もなく内部分裂を。言ってしまえば内ゲバを起こし。
さらにそこへ、島のまっとうな発展を望む市政が。島の武警団、及びシンムの国本国からの応援の武士団を突入介入させ。
『ヤガシラノヒリュウ』を神として崇める一派は崩壊。
その際にクシナはからがら保護され。当時から今までの島の長、市長夫婦の養子として育ったとのことであった。
しかし姉のレイノはその混乱の際に、一派の残党に連れ去られたと見られて生き別れとなり。
そして地下に逃れ息を潜めていたその一派の残党が。それを密かに支援していた島の一部住民とともに此度に事を起こし。
姉のレイノは生贄に捧げられ。そのそれまでの生存が、行き違う形で発覚したというのだ。
「マジかよ」
そんな彼女の並みならぬ背景、生い立ちを聞かされ。門手は苦く険しい顔を作って声を零す。
「……お姉さんのことは、覚えているのかい?」
「朧げな記憶ですが……幼い頃、泣きじゃくる私を抱きあやしてくれた事を覚えています……」
聞き尋ねた呉市の言葉に、クシナはそう答え返し。
また憂いを帯びた、もの悲しそうな瞳で向こうの海へ視線を向ける。
「申し訳ありません……お会いしたばかりの方に、こんな面白くもない話を聞かせてしまって……」
そして向こうを望んだまま、そんな詫びの言葉を紡ぐクシナ。
「――何か、なんとかできないか」
そんなクイナを前に。
呉市が、門手に尋ねるように。いや自身に問いかけるように。
真剣な様相で、そんな言葉を発し紡いだのは次であった。