トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
時系列は少し遡り。一方の門手と呉市、それに二人に連れ出された巫女の少女の元へ。
結論から言うと、三人はからがら無事であった。
「……」
「ぁぅ……」
「ッ……」
三人が居るのは、連なる山々の一つのその根元。
そこにある、えぐれて適度な窪地となっている場所に。呉市は、巫女の少女を抱きながら、身を押し込むような形で隠れ。
門手はそんな二人を庇うような位置に形で、しかし同じく体を這わせて押し込む形で窪地に身を隠しながら。視線を最低限だけ出して、向こうの様子を伺ってる。
次にその向こうに、山肌の影より現れたのは小型の龍だ。
何かを探すような動きに様子を見せながら、山肌に沿って飛ぶ姿を見せるその龍は。
しかし幸い三人が死角に位置していたことから、それに気づき見つけることはなく。
向こう明後日へと飛び去って行った。
「……行ったみたいだな」
それを見て零す門手。
先の被弾の一幕から。しかし呉市は、残るデバイスの出力を駆使して離脱を試み。
そして同時に門手によって行われた、敵を攪乱する援護行動の甲斐もあり。
三人はヤガシラノヒリュウたちの目から逃れ、空域からの離脱に成功。
その後の呉市の軟着陸の成功から、今の場に身を隠し潜め。
今に、ヤガシラノヒリュウの配下の追っ手をまた撒いた所であった。
「ふぅ……」
門手の声を聞き、目先の危機は回避できたと見て。その緊張を最低限だけ保って解く色を見せる呉市。
「ちょ……貴方っ……もう、離してください……!」
しかし、そんな呉市に抗議の声が上がったのは直後。同時に呉市の腕中に伝わる動く感覚。
視線を降ろせば、呉市に抱き留められていた巫女の少女が、その腕中で身じろぎをし。
そして呉市の乳房に抑え埋められた頭を、微かに困惑と恥じらいの見えるその顔を。上目遣いに作って、訴える姿を見せていた。
「あ。あぁ、すまない」
彼女にさせていた状態に呉市は今に気づき。巫女の彼女の身を解いてやる。
「……っ……」
その巫女の少女は、少し急く動きで呉市の体を降りて離れると。
次に見せたのは、呉市に門手から合間を取っての。二人を少し睨んでの、何か警戒するような色だ。
「あ、あなた方は……なんということをっ!」
そして次に彼女がその顔に血相を浮かべて二人に向けて発したのは、そんな責めるような声だ。
「こんな……ヒリュウ様に、このような無礼の数々……!許されざる行いです……っ!」
続けて巫女の少女が訴えたのはそんな言葉だ。それはここまでに二人が行った、ヤガシラヒリュウに対する戦闘行動を咎めるものであろうそれ。
「おいおい、ずいぶんな言われようだな」
そんな彼女の言葉に、次に返したのは門手。門手はその美麗なモデル顔に、微かに険しい顔を作り不服の声を向ける。
「そりゃあ、俺等の判断で勝手にやったことだが、助けたつもりなんだがな?アンタ、あのヤガシラの何とやらに生贄に連れていかれた巫女さんだろ?」
門手は続けて、自身等の行動の理由を告げ。併せて巫女の少女にその身の上を尋ねる言葉を向ける。
「そのような行い、願ってなど……!私は巫女の命として、その使命を受けてヒリュウ様の元へと参った身なのですっ!」
しかし門手の言葉に、巫女はまた訴え返すと。
次には血相を作ったその顔のまま、その身を翻してこの場を離れようとする動きを見せた。
「お、おいッ。どこへ?」
「ヒリュウ様のご機嫌を損ねてまった……このままで島が、ヒリュウ様のお怒りでどんな仕打ちを……っ」
呉市はそんな彼女を呼び止めるが、しかし彼女がそれで止まる様子は無く。
彼女は何か焦り急く様子で、そんな呟きを漏らしながら。ふらつきを伴うおぼつかない足取りで、向こうへと歩み進もうとする動きを見せる。
「私が……ヒリュウ様のお怒りをお沈めしないと……この身を捧げないと……巫女として、供物として……っ」
まるで、いやその通り。無我夢中の中で漏らされたうわ言の様相で、そんな言葉を漏らす巫女の少女。
それは『生贄の巫女』という立場への、歪な責任感か使命感か。もしくは一種の陶酔か、はたまたそう思い込むことでの『逃避』か。
ともかく彼女のその様子には、正気ではない色が垣間見えた。
「ッ――しっかりしろッ!」
そんな彼女に、呉市は次には一歩を踏み出して追い付き。
そしてその肩を強く掴み、彼女のその体を引き戻した。
「っ……!?」
呉市はそのまま彼女のその体を、また翻させて引き寄せ戻し。対面の形となると同時に彼女のその顔を、頬を、自身の両手でハッシと捕まえて挟み包んだ。
「妹さんが、君の帰りを待ってるッ!」
そしてその彼女の瞳を見つめ、次に呉市が発したのはそう訴える一言であった。
「!!……妹……クシナ、が……?」
聞かされたその存在に、次には彼女も血相を、焦燥を作っていたその表情をしかし変えて目を見開く。
そしてその名を、門手と呉市が島であった巫女の少女、クシナのその名を零した。
「君は、お姉さんのレイノさんだね?妹さんのことを覚えているんだね?」
それを切り口と見て、呉市はクシナより聞いていた名前を出し。巫女の少女に確かめるための言葉を向ける。
「……は、い……っ」
それに彼女は、驚愕に包まれる様子をその表情に見せながらも。戸惑う声色で、しかし肯定の言葉を返す。
そこまでの様子から、巫女の少女改めレイノの「気持ち」は引き戻せたと見て。
呉市は彼女の顔、頬を挟み包んでいた両手を放して彼女を解放。
そのレイノは驚きの様子のまま、ふらりと一歩引き下がる。
「君を生贄の巫女として捧げた島の一派は、シンムの国がすでに拘束無力化した。そして国と島は、ヤガシラノヒリュウを対応すべき脅威生物と見て動いている。生贄としての役目を果たし向ける相手はもういない」
「!……」
そんなレイノに、次に横から言葉を割り入れ、関係する各事項を紡ぎ伝えたのは門手。
その知らされた各事項から、レイノはまた驚きに微かに目を剥く。
「君の覚悟を無碍にしたくはないが――これは間違ったことだ」
そしてまた次には、呉市が敢えての厳しい声色での言葉を向け。
「覚悟は、抗うことに向けろ」
そして、そう訴える一言を貫くまでの声色で、レイノに発し向けた。
「ぁ……ぁぅ……」
次には、状況に対する諸々へのショックからか。同時に、張っていた緊張の糸が切れたか。
レイノはその場に崩れるように座り込み、次にはくしゃくしゃと泣き始める。
「帰るぞ――」
そんなレイノに、呉市は多くは紡がず。端的にそんな訴える言葉だけを向けた。