トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
「呉さん、状態は?」
「飛ぶのは……当然だが無理だ。それにAAMも撃てないな、接続系が損傷したかもしれない。使えるのはガトリング砲だけだが、こっちも残弾に余裕は無い」
一旦、レイノの状態が落ち着くのを待つ間にというように。
門手と呉市は互いの。というより、主として被弾し損傷した呉市の状態の確認を行い、言葉を交わす。
今の言葉の通り、機体、デバイス装備の損傷から呉市は飛行不可能な状態に陥っており。
併せてせっかく抱えて来た空対空ミサイルも発射不可能状態が判明。
かろうじて20mmガトリング砲は使用できる状態であったが、戦闘機ベースのデバイスユニットとしての能力は、ほぼ損失していると言って良かった。
「できれば彼女を先に脱出させたいが」
呉市は、レイノだけでも先んじて脱出させることを考えてそう言葉を紡ぐ。
「現実的じゃ無いな。互いに分かれる形になるだろう?危険だ」
しかし門手からはすぐにそれを却下する言葉が返る。
レイノを先に脱出させるということは、飛行可能な門手が彼女を連れて先に離脱し、呉市はこの場に残されることとなる。
しかし、ここはまだ敵の勢力圏内だ。
そこに戦闘能力を大きく損じた呉市が残されるという危険はもちろん。
門手の側も、レイノを抱え連れて飛行離脱するとなれば、その飛行・空戦能力には著しい制約を受けることとなり。もしその最中を敵に遭遇すれば、また危険に陥ることとなるのだ。
「ッー……どうするか」
門手の却下を受け。呉市も一応言ってみたものの、分かっていたことと言うように苦く口を鳴らす。
今先に、レイノに向けて帰ることを訴えた手前だが。
正直、現在の状況は進退窮まるものであった。
《――ファー・アウェイ02ッ、アクィア1-2及び1-3。門手、呉市、聞こえるかッ?こちらはファー・アウェイ01》
しかし次のタイミングで、そんな所を狙ったかのように。
これまでノイズしか聞こえてこなかった通信に、そう呼びかける音声が響いた。
「!、隊長ッ?」
「!――02ですッ、隊長聞こえますかッ?こちらは両名とも生きてますッ――」
その音声が、他ならぬ仙導からのものであるとすぐに気づき。
門手はそれを声に上げ。
呉市はすぐに通信に応答する声を、併せてこちらが無事である旨を発し上げた。
先のヤガシラノヒリュウによるレーザーの影響が『散った』のか、通信が回復。
地上を行く戦闘捜索班の援護に付きながらも、同時に通信にて呼びかけ続けていた仙導の声がそれにより届き、門手と呉市との交信が叶った。
門手と呉市は両名の無事と、レイノがともに居る旨。他、現状についての一連を報告。
そこから、できるだけ早急な合流回収を目指すべく。
門手と呉市等の側と、戦闘捜索班、それぞれから都合の良い中間ポイントを定めてそこで合流する運びとなった。
先に話された通り、呉市が飛行不可能となった状態と、かといって別れ行動することは危険と考えられる状況から。
三人は合流地点までを纏まって、徒歩にて移動する事となった。
現在はヤガシラノヒリュウ一派から身を隠す効果を期待して、山肌の雑木林の中を通って合流地点を目指している。
形は門手が先頭を行き、間にレイノを挟んで殿を呉市が務める隊形。
「っ……」
その進む三人の中で、門手と呉市に守られる位置で歩くレイノは。
しかし進み始めて間もなく、その顔に少ししんどそうな顔を見せ始めた。
自衛官、及び元自衛官であって訓練鍛錬は受けており、そして何よりデバイスの保護効果の恩恵を受ける門手と呉市と違い。
レイノは普通の少女であり、今のその巫女装束もお世辞にも雪山に適したものではない。
無理もなかった。
「おい、やはり苦があるだろう。俺が君を抱えて行く」
「っ、平気です……!安易に他人に甘えはしません……!」
様子、状態を見かねた呉市が後ろから追い付き声を掛けたが。
しかしレイノはその呉市を振り払うように、先を行こうとする。
そもそも始めから、レイノのことは門手か呉市のどちらかが抱えて行く考えであったのだが。
レイノは妙に己に厳しく、頑な、意固地なところがある少女なのか。それを拒否して己の脚で歩くと言い張ったのだ。
「ヘタな無理をする必要は……」
しかしレイノの姿はどう見ても無理をしており。体力にデバイスの恩恵からそもそもの基礎状態に違いのある呉市等からすれば、レイノを無理して歩かせる理由も何も実のところ無い。
頑なに手助けを拒むレイノを難儀に思いつつ、何とか説くべく続けて声を掛けようとした呉市。
「――!」
しかし、その呉市が嫌な気配を、「殺気」を。背後後方から感じ気づいたのは直後。
「ッ!」
「ぇ、きゃぁっ!?」
そしてまた次には、先を行こうとしたレイノの体にしかし飛び掛かる程の勢いで追い付き。呉市はレイノを掬い上げる形で、かっさらうまでの様で抱き捕まえる。
それにレイノは驚き悲鳴を上げたが。
しかしそれを掻き消すように、瞬間には近くを空を切り裂くように何かが飛び掠め。
そして無数の破裂音が――銃声が、後方から響き上がって届く。
見れば、雑木林に覆われる山肌の山頂方向より。複数の巨体の影が、鬼たちがワラワラと出現して姿を見せ。
そしてその鬼たちは、火縄銃などの火器を軒並みこちらに向けて撃ち寄越し始めた。
「見つかったッ、追いつかれたッ!」
「チッ!呉さん、先に下れッ!」
響く銃声に、近くを掠める銃火火線を聞き感じながらも。
呉市は悪態を張り上げながら、レイノを抱えて山肌を滑るように駆け下り始め。
門手は呉市に先に行くように張り上げながら、自身は前に進めていたその身体を翻す。
「んな豆鉄砲で――やり合えると思うなよッ!」
そして門手はその身体を捻る動きにて、装備するデバイスに備わる20mmガトリング砲を繰り出し向けると。
攻撃の「意志」を念じ――ガトリング砲を唸らせた。
撃ちばら撒かれた無数の20mm機関砲弾は、その射線上の雑木林の木々を容易く貫通して砕き直進。
次には難なく山頂方向にて散会していた鬼たちへと至り、その内の数体を、着弾の炸裂にて巻き込み千切り屠って見せた。
門手はそれを見つつも、ガトリング砲を唸らせた撃ち続けたまま、その身をまた捻る動きで射線を変更。
向こうの鬼たちの隊伍を、火線で軽く薙いで撫でるように砕き屠る。
「ビビったかなッ」
そしてしかし、門手はそこまでで射撃を停止。
門手も残弾は十分とは言えず、ズルズルと戦闘が長引く事は望む所ではない。
鬼たちの隊伍がガトリング砲の掃射に怯み、その攻撃の手を減じた様子を見ると。
門手はそれを隙と見て、一声と併せて身を翻し、先に行かせた呉市等を追った。
呉市と抱えられるレイノ、そして門手は。デバイス装備の身でしかし素早く器用に、雑木林を駆け抜けて山肌を下り。
そう掛からずに雑木林を抜け、滑り込むような走りでその先の地形へと出た。
出た先は、周辺の山に丘地形などの麓が合流する、緩やかで広めな擦り鉢状の地形。
「ッ」
「遮蔽がなくなっちまったなッ」
敵、鬼たちの隊伍との遭遇位置関係から、こちらの方向に来るしかなかったのだが。
しかし出た先が遮蔽物のほとんど無い地形であったことに、都合の悪さを覚えて悪態を吐く二人。
「!、左前ッ!」
「ッ」
そして、まるでこちらの都合の悪い状況を突くかのようにそれは現れ、呉市が声を張り上げる。
側方向こうに見える低めの山の稜線より、飛行物体の影が。中型の龍が二体、姿を現したのだ。
その現れた中型龍たちの、その内の一体が次にはこちらを睨む。
そして『獲物を見つけた』とでも言うような動きで。
グワと大きく羽ばたく前動作を見せ、そして飛び出しこちらに向けて襲い掛かって来た。
「来るぞッ」
それを見て、警告のためにまた声を張る呉市。
「待てよ、もうやってるッ」
しかし、その時にはすでに門手が動いていた。
彼女(彼)の眼前に宙空投影されるHUDには、ミサイル照準のためのシーカーが表示され。
それは今まさに、異なる二つのシーカーを重ねると同時に、音声にてロックオンの完了を知らせる。
「捉えた――FOX2ッ!」
そして門手は「発射」の意志を念じると同時に、身に沁みついたその知らせの言葉を張り上げ。
ほぼ同時の直後、装備するデバイスのウェポンベイが跳ね開き。そこに収められていた得物――04式空対空誘導弾 AAM-5が撃ち放たれ飛び出した。
飛び出したAAM-5は、こちらへ襲い来ようとしていた中型龍に向けて、しかしそれを迎え撃つ形で直進。
まさか飛び向かってくる存在が出現するとは思っても見なかったのか。
その中型龍は驚愕したらしき様を見せ、飛び来る途中でその巨体を強張らせ、そして急停止から旋回を試みる動きを見せかける。
しかし、虚しくもそれは間に合わず。
次には、直進したAAM-5は中型龍の巨体に直撃。
巻き起こった爆炎と炸裂にて、その中型龍を砕き千切り、宙空にて四散させた。
「次ッ」
一撃目の成功に、しかしそれに歓喜する暇も見せずに門手は「次」へと移る。
現れた内の二体目、一体目に続いて襲撃行動に入っていた中型龍は。しかし仲間、相棒が得体の知れぬ攻撃を受けて爆散、千切れ散った様に驚愕したのか。
襲撃行動の途中のその動きに、しかし迷い狼狽える色を見せる。
それが隙と、門手にとっては次のロックオンを完了させるための余裕、チャンスとなった。
「――ロックオンッ」
次にはHUDのシーカーが再び中型龍を重ね捉え、音声がロックオンの完了を伝える。
「FOX2!」
そして門手が再びの張り上げた声とともに、ウェポンベイから二発目のAAM-5が撃ち出され飛び出す。
それは向こうの宙空で、次の動きに迷いを見せた中型龍に、容易いまでに飛び込み直撃。
再びの爆炎と炸裂にて二体目の中型龍を巻き包み、砕き塵へと変えた。
「撃墜ッ――二体だけか?」
出現した二体の中型龍の撃墜を。墜ち行く途中の二体目に、すでに地面に落ち崩れた一体目を、それぞれ見てその無力化を確かとしつつ。
しかし門手は気を緩めず、他にも敵影が居ないか、現れないかを警戒して視線を走らせる。
「龍族に、鬼族を……こんなに容易く……っ」
そんな一方、今も呉市の腕中に抱き抱えられているレイノが。その顔に驚愕を浮かべて、そんな言葉を漏らしている。
彼女の認識からすれば龍族に鬼族は、恐ろしくそして歯向かい逆らうなど考えられないような存在であった。
しかしそんな存在たちを前に、門手と呉市は臆する様子など見せず。どころか携える未知の不思議な武器にて、容易いまでに屠って見せた。
レイノからすれば、それは常識を覆す驚愕であったのだ。
「続けての出現の気配は無いが」
そんな驚愕を浮かべ漏らすレイノに、しかし今は答えず。
呉市は門手のフォローのためにまた視線に意識を周囲に巡らせ、索敵を優先しつつも零す。
「あァ、これでこっちはAAMが空だ」
「20mmもいよいよ少ないな。俺のAAMも、撃てない俺よりそっちに渡して置くか」
その警戒索敵の視線に意識を保ちながらも、そんな言葉に考えを交わす門手と呉市。
此度のカナタの島への警護派遣は急なものであったため。二人の装備してきた火器火力は固定武装である20mmガトリング砲と、AAM-5がそれぞれ二発づつのみというものであり。
それもここまでの戦闘にて消費され、残りの弾薬装備はいよいよ心許ないものとなっていた。
その現状を確認から、二人はそれぞれの苦い色を作る。
「……!!」
呉市の腕中で、レイノが何かびくりと震えて顔を強張らせたのは時だ。
「?、どうした?」
「気配、が……ヒリュウ様が、お近くに……!」
そのレイノに気づき、今度にあっては視線を降ろして尋ねた呉市。
その問いかけにしかしレイノが返したのは。言葉に答えたというよりも、何かに怯えそのせいで漏れ出たものといった様子の声。
「何?――ッ!」
「ッ!」
レイノその様子に訝しんだ呉市だったが。
しかし直後、呉市に門手も。
向こう、今に中型龍たちが現れた山の向こうに。何か大きく、そして異質な気配を感じ取る。
――そして。次にその山の稜線の向こうより、「それ」は現れた。
まるで山の向こうより、また別の山が聳え出現したかと錯覚するような様で。
八つの首を携え、巨大な翼を羽ばたかせその巨体を宙に浮かべる、恐ろしくも圧巻の姿が。
ヤガシラノヒリュウが、姿を現した――