トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
山の稜線の向こうより、優雅なまでの様相でその姿を現したヤガシラノヒリュウ。
さらにその巨体を中心に、背後に周りからは。配下、お供であろう小型に中型の龍たちが複数続いて現れ、周囲を抑えるためか散り配置していく。
「ッ」
またさらに、門手と呉市等の背後の雑木林からも物々しい気配が及ぶ。
振り向き見れば、先の残存からさらに増援であろう鬼たちの隊伍が。雑木林を抜けて現れ、広がりこちらを囲う様子が見える。
間もなく、龍たちに鬼たちはこちらを囲い封じる形を完成させ。
門手に呉市等は、場で完全に包囲される形となった。
「ッー!」
呉市は状況の不都合に口を鳴らしながらも、レイノを降ろしそして背中に庇う形で立ち。
また併せて門手と呉市は、互いに前後各方を警戒する立ち位置を取って身構える。
「まっずッ」
そしてだがそんな立ち位置に、警戒の意識を取り構えながらも。窮地と言える状況に門手はそんな声を零す。
その三人の前方向こうで、次にはその現状の脅威の際たるであるヤガシラノヒリュウが動きを見せる。
堂々と、ゆったりとしたまでの動作で、宙空を羽ばたいて飛び来たヤガシラノヒリュウは。
三人を見降ろす形でそのすぐ前の宙空に滞空する。
「――ふん、不愉快なヤツ等が。ついに姑息な策も尽きたという所か?」
そのヤガシラノヒリュウが、その八つ携える首の中心に位置する一つが。
開いたその顎から、声を――言葉を紡ぎ降ろしたのは直後だ。
「ッ!」
「言葉をッ?」
なかなかに想定外であったそれを聞き、認識し。門手は目を剥き、呉市は驚きを小さく零して露わにする。
「フン――」
その二人の反応に、ヤガシラノヒリュウのその言葉を発した頭は、また不愉快なものを覚えたように一声を吐くが。
しかしそれを言葉にすることはせず、代わりに『見せてやるか』とでもいうような気配を漂わせると。
次に、『それ』は始まった。
次の瞬間、ヤガシラノヒリュウノその巨体全体が、眩くも妖しい発光を帯び始めた。
それはすぐに、その巨体の全体を覆い包んだかと思えば。
また次にはなんと、その巨体はみるみるうちに縮小を伴う「変形」を見せる。
「は?」
「ッ」
そして間もなく。その「変形」が終わると同時に、その姿を包んでいた妖しい発光は収まり。
門手に呉市が先までと変わらないその宙空に見たのは、驚きの姿であった。
そこに在って見えたのは、少女――いや、少女たち。
ヤガシラノヒリュウの首数と同じくの、八人の少女たちだ。
外見年齢は、それぞれが十代前半程から、二十代前半程と差が見えるが。
いずれもが可憐な容姿顔立ちで、そして髪型は違えているがいずれも紅蓮色の髪を携えている。
またいずれもが赤色の鱗を、際どい水着を思わせる形でその身体に付随させている。
そして少女たちのそれぞれの背には、巨大なものから小さなものまで、差があるが龍の翼が生え。
八人の少女はそれぞれ、宙空の各位置でそれぞれの翼で羽ばたき滞空。
その姿の組み合わせが、まるで一つの巨大な生物を形作っているかのようであった。
「あれ、が……ヒリュウ様の、お姿……?」
そんな出現した少女たちを前に見上げ、レイノが零したのはそんな言葉。
そしてその通り、変貌から出現した八人の少女たちこそヤガシラノヒリュウ。
その一つの姿形なのであった。
「成程ッ」
「これも着装、変化の類似例か」
そのレイノの言葉を背後に聞きつつ、同時に今しがたに目の当たりにした光景現象から。
門手に呉市はそれぞれ察する言葉を零す。
今にヤガシラノヒリュウが見せた姿形の変貌も、「着装」と類似したものと見えた。
「先の場での動きから、少し脅威かと見たが……手負いとなり、その力も残り少ないといった様子じゃのう?」
そんな、八人の少女となったヤガシラノヒリュウから。
その中心に位置する十代後半程の気の強そうな容姿の美少女が、反した古風な言い回しで次にはそんな言葉を寄越す。
それは、向こうから見ての門手と呉市の脅威度の評価と。しかし今の二人の様子を見て、それが損耗したものであることを見抜いての言葉。
「あらぁ、かわいそう」
「ねーぇ。さっきのムカついたし、とっとと潰しちゃおうよーっ」
そんな八つの首の、人格の代表であろう少女の言葉に。
他の首、また別の人格なのであろう美女が揶揄うような声を紡ぎ。
また別の幼い容姿の少女が、無邪気にしかし残酷な言葉を紡ぎ発する。
「最近「島」に、前の住民どもとは違う者どもがやってきて、我らに対する敬意の見えぬ行いの数々が目に余ると思っていたが――貴様等はそれとも違うように見えるな?」
そんな、別の『首』たちが好き勝手に宣う言葉を、しかし『代表首』の少女は相手にせず。
次にはそんな言及を添えての尋ねる旨を、こちらに降ろし向けて来る。
おそらくそれは、カナタの島の拡大開発を進める現在の市政、及びシンムの国本国のことをまず示し。
しかし門手と呉市が、それともまた違う存在であることを察して尋ねるもの。
「はッ、ここらを荒らしまわってる、賊みたいなのが偉そうに言うぜッ」
そんな代表首の少女からの言葉に、まず門手が返したのはそんな皮肉を叩きつける言葉。
「こちらは、日本国の特別活動隊だッ!現在はこちらの活動における事情、及び地元コミュニティとの協力の関係から、この周辺地域にて作戦活動を展開しているッ」
今の門手が放った一言は、包囲を作るヤガシラノヒリュウの配下たちに反感を与え、その配下たちは怒り湧き立ちかけたが。
しかしそれを先回りして抑えるように、呉市は透りながらもビリと響き張る声で。
こちらの存在に立場、目的を簡潔に伝える言葉を発し向けた。
「ニホンだぁ?」
「……最近、異なる地よりやってきた異質な者等が何か動き回っていると聞いた。それがそんなような名だった気がする」
その呉市の言葉に、ヤガシラノヒリュウノのまた別の『首』、人格を担う少女たちが。
男勝りと言った風体の少女が訝しむ声を上げ。
それに答えるように、静かで冷たい印象を覚える美女が、覚えのあった事項をつまらなそうに紡ぐ。
「フン、得体が知れぬが。我らを邪魔立てする小賢しい輩と言う点で変わりは無いな」
そんなまた背後で好き勝手を零した『首』たちを、しかしまとめるように。代表首の少女はそんな軽んじるような言葉を紡ぐ。
「此方からも尋ねるぞ。なぜそちらはこの近隣を襲い、ましてや生贄などと称して人を要求するッ?」
そんな代表首を始めとするヤガシラノヒリュウ『たち』に向けて、呉市はまた声を張り、そう相手方の行動理由を聞き尋ねる言葉を向ける。
「ハハ、何を――糧を得て、腹を満たす為の行いに理由がいるか?」
その問いかけに対して代表首の少女が返したのは、嘲るような色でのそんな回答。
「はン、そういうッ」
聞いたそれから、次には門手がまたそんな皮肉る色を含めての声を零す。
ヤガシラノヒリュウの一派は、糧を得るために「襲い攫う」ことを手段とする者たちであるようだ。
ましてや、その対象は人。
苦い所を覚えるものだが、であるならばその生存権を争う事も最悪避けられない。
そんな所を知るに至り、いよいよ荒事を感じて身構える門手に呉市。
「ひ……ヒリュウ様……!」
しかしそんな所へ、か細くも場を割る形で声が上がった。