トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
「ヒリュウ様……!」
場を割る形で上がったか細い声。それはレイノのものだ。
「ッ!、おいッ」
レイノは庇い立つ門手と呉市の間を出て、ヤガシラノヒリュウの前へと踏み出ようとした。
少し慌て、呉市がレイノの肩を掴みその歩みを止めたが。レイノは何かを訴えたい色でヤガシラノヒリュウを仰ぎ見つめる。
「ほぅ?供物の小娘だな」
一方のヤガシラノヒリュウの代表首の少女は。何か『美味そうな』ものでも見つけたような色に気配で、レイノの姿を見降ろす。
「きゃは、可愛らしいっ」
「ほう、美味そうだな」
また他の『首』、人格の少女たちも。同じく興味を誘われたように、しかし妖しい笑みに呟きをそれぞれ寄越す。
そこに見るにどうにも『彼女たち』が、レイノの身姿をちゃんと確認するのは初めてであるようだ。
「と……とと様と、かか様は……どうされたのですか……?」
そのヤガシラノヒリュウの『首』の少女たちの反応に、怯える色を見せつつも。
次にはレイノは、意を決した色でそんな尋ねる言葉を発した。
「ん?――あぁ。お前は、あの人間の『番』の娘か?」
そのレイノから向けられた言葉に、何か思い当たるところがあったのか。代表首の少女はまた面白がるような反応を見せ、そしてそんな言葉を返す。
「ッ、彼女たちの両親か」
その会話を聞き、呉市もまたその詳しくに思い当たる。
カナタの島にて、レイノの妹のクシナから聞き及んだ話だ。
姉妹の両親も、母と、そして『変化』によって少女へと変貌した父が。過去にはヤガシラノヒリュウの生贄に捧げられたと。
「ククっ、お前の両親には長らく愉しませてもらったぞ。弄び可愛がってやれば、よく悦び鳴いたものだ」
その存在に思い当たったらしい代表首の少女はと言えば。何か妖しく同時に嘲る色で、そんなあからさまな品の無い言葉選びでの台詞を寄越す。
「まぁ――飽いた後の小腹満たしには、少し物足りなかったがな?」
そしてしかし。次に代表首の少女が発したのは、その妖しい笑みに不穏な色を作ってのそんな言葉。
「!……それ、は……?」
その言葉が示す所を嫌が応にも察し、レイノはその顔色を青く染める。
「ククっ―。お前の父も母も――その柔い肉は、まぁまぁ美味なものであったぞ?」
そして、ヤガシラノヒリュウの代表首の少女が見せ、発したのは。
舌舐めずりを伴っての、見て刺された者を凍り突かせるまでの恐ろしい笑みと。そして冷酷な色での、明かし知らせる一言だ。
「……ぁ……あぁ……!!」
聞かされた言葉に、その顔面を蒼白にして声を漏らし。レイノはふらりとよろめき後ずさる。
「――ざッけやがってェェッ!!!」
直後の瞬間、張り上げられた怒号が上がり。
そして同時に一瞬の回転音の後に、連続的な唸りが上がった。
今のヤガシラノヒリュウの発言、暴露に。門手が憤怒し、そしてデバイスのガトリング砲を撃ち唸らせたのだ。
撃ち放たれた20mm機関砲弾の群れは、ヤガシラノヒリュウの少女たちへを飛び込み襲う。
「――フンっ」
しかし、それは虚しくも撃ち退けられた。
ヤガシラノヒリュウの人格の少女の一人が、薙いで動かしたその大きな龍の翼が。
機関砲弾の弾道を阻み、それを退け弾いたのだ。
「ッ!?」
攻撃が無力化された。それも20mm機関砲という、強力な得物の火力が阻まれた事実に。
門手は目を剥き、そして苦く声を零す。
「――まったく、どこまでも無礼な異邦人め。少し、仕置きが必要なようだな?」
一方、ヤガシラノヒリュウの代表首の少女は、今の攻撃を意に会するでもなく。
冷たい眼に顔色で、つまらなそうにそんな言葉を寄越す。
そして次には。
ヤガシラノヒリュウの『首』の少女たちは、再びそれぞれの身姿を発光に包み。
「集合」から、元の八つの首を携える、巨大な龍の姿へと形を変えて戻った。
「――無礼者への仕打ちとしては、黒焦げにしてやるのが御似合いか?」
そして変貌した龍の姿での、重低音ながらも響く声で。
ヤガシラノヒリュウの八つの内の中心の、代表の首はそんな言葉を寄越す。
周りに包囲の形を敷く、配下の龍に鬼たちは。主の行いの場に手出しは無用とでも言うように、出張って来る気配は無いが。
しかし威嚇の気配を軒並み発し、門手に呉市等を、包囲から逃がす気は無い様子を見せて寄越している。
「せいぜい、己が愚かさを悔いるがいい――」
そして、その言葉が向ける最後のそれと言うように。
ヤガシラノヒリュウの代表の首は、その顎をかっ開き、その喉奥に発光の兆候を見せる。
それは先にも見た「攻撃」の前触れ。
凶悪なまでの光線・レーザーを吐いて三人に浴びせ、焼き消す腹積もりなのは明確。
「門手ッ!この子を連れて離脱しろォッ!」
「ッ!!」
次には。
呉市は、ショックで震え固まっているレイノの体を抱き捕まえ、そのまま投げ飛ばす勢いで門手へと放る。
門手はそのレイノの体を受け止め。険しい顔を作りながらも、その場よりの急速離脱のために、次にはエンジン・モジュールのバーナーを点火させる。
しかし、その直前。
ヤガシラノヒリュウが代表の首が。喉奥に宿すその発光の度合いを増しながら、その首を振るい薙ぐ前動作を見せる。
間に合わない。
そう感じ、門手はレイノの体を咄嗟に抱き庇い。
そして呉市は、ヤガシラノヒリュウの前に立ちはだかるように。その二人の前に庇い立ち構えた――
――爆音が。
強力な閃光が、三人を飲み込んだ音――では無い。
全く別種の巨大な爆音が、三人の向こう前方から上がり届いたのは瞬間だ。
「――えッ?」
「――ッ!」
それに違和感を、疑問を覚えつつも。
門手と呉市にあっては、その音に聞き覚えを感じ。そして次に目の当たりにした光景に声を零す。
「――……かァ゛っ……ぁ……っ!?」
見れば、ヤガシラノヒリュウが、それもその巨体の全体が。まるで横殴りに打たれたかのように仰け反る形を見せており。
そしてその周りには、まだ散り晴れぬ爆炎が、大きな「爆発」の跡が漂っている。
「ッ!?」
そして間髪入れずに、次に見え、そして聞こえたのは。
ヤガシラノヒリュウの、今の地形の上空真上を。「何か」のシルエットが、劈くまでの轟音を響かせて飛び抜けた様子。
門手に呉市がそれを追って見上げれば、その向こうの空に。場の真上を飛び去り抜けてからの、尖る軌道で旋回に入るシルエットが。
よく見知った、F-EA戦闘機のデバイスを纏う少女の姿があった――