トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記   作:えぴっくにごつ

28 / 29
Task27:「暴虐の龍と――」

「ヒリュウ様……!」

 

 場を割る形で上がったか細い声。それはレイノのものだ。

 

「ッ!、おいッ」

 

 レイノは庇い立つ門手と呉市の間を出て、ヤガシラノヒリュウの前へと踏み出ようとした。

 少し慌て、呉市がレイノの肩を掴みその歩みを止めたが。レイノは何かを訴えたい色でヤガシラノヒリュウを仰ぎ見つめる。

 

「ほぅ?供物の小娘だな」

 

 一方のヤガシラノヒリュウの代表首の少女は。何か『美味そうな』ものでも見つけたような色に気配で、レイノの姿を見降ろす。

 

「きゃは、可愛らしいっ」

「ほう、美味そうだな」

 

 また他の『首』、人格の少女たちも。同じく興味を誘われたように、しかし妖しい笑みに呟きをそれぞれ寄越す。

 そこに見るにどうにも『彼女たち』が、レイノの身姿をちゃんと確認するのは初めてであるようだ。

 

「と……とと様と、かか様は……どうされたのですか……?」

 

 そのヤガシラノヒリュウの『首』の少女たちの反応に、怯える色を見せつつも。

 次にはレイノは、意を決した色でそんな尋ねる言葉を発した。

 

「ん?――あぁ。お前は、あの人間の『番』の娘か?」

 

 そのレイノから向けられた言葉に、何か思い当たるところがあったのか。代表首の少女はまた面白がるような反応を見せ、そしてそんな言葉を返す。

 

「ッ、彼女たちの両親か」

 

 その会話を聞き、呉市もまたその詳しくに思い当たる。

 

 カナタの島にて、レイノの妹のクシナから聞き及んだ話だ。

 姉妹の両親も、母と、そして『変化』によって少女へと変貌した父が。過去にはヤガシラノヒリュウの生贄に捧げられたと。

 

「ククっ、お前の両親には長らく愉しませてもらったぞ。弄び可愛がってやれば、よく悦び鳴いたものだ」

 

 その存在に思い当たったらしい代表首の少女はと言えば。何か妖しく同時に嘲る色で、そんなあからさまな品の無い言葉選びでの台詞を寄越す。

 

「まぁ――飽いた後の小腹満たしには、少し物足りなかったがな?」

 

 そしてしかし。次に代表首の少女が発したのは、その妖しい笑みに不穏な色を作ってのそんな言葉。

 

「!……それ、は……?」

 

 その言葉が示す所を嫌が応にも察し、レイノはその顔色を青く染める。

 

「ククっ―。お前の父も母も――その柔い肉は、まぁまぁ美味なものであったぞ?」

 

 そして、ヤガシラノヒリュウの代表首の少女が見せ、発したのは。

 舌舐めずりを伴っての、見て刺された者を凍り突かせるまでの恐ろしい笑みと。そして冷酷な色での、明かし知らせる一言だ。

 

「……ぁ……あぁ……!!」

 

 聞かされた言葉に、その顔面を蒼白にして声を漏らし。レイノはふらりとよろめき後ずさる。

 

「――ざッけやがってェェッ!!!」

 

 直後の瞬間、張り上げられた怒号が上がり。

 そして同時に一瞬の回転音の後に、連続的な唸りが上がった。

 

 今のヤガシラノヒリュウの発言、暴露に。門手が憤怒し、そしてデバイスのガトリング砲を撃ち唸らせたのだ。

 撃ち放たれた20mm機関砲弾の群れは、ヤガシラノヒリュウの少女たちへを飛び込み襲う。

 

「――フンっ」

 

 しかし、それは虚しくも撃ち退けられた。

 ヤガシラノヒリュウの人格の少女の一人が、薙いで動かしたその大きな龍の翼が。

 機関砲弾の弾道を阻み、それを退け弾いたのだ。

 

「ッ!?」

 

 攻撃が無力化された。それも20mm機関砲という、強力な得物の火力が阻まれた事実に。

 門手は目を剥き、そして苦く声を零す。

 

「――まったく、どこまでも無礼な異邦人め。少し、仕置きが必要なようだな?」

 

 一方、ヤガシラノヒリュウの代表首の少女は、今の攻撃を意に会するでもなく。

 冷たい眼に顔色で、つまらなそうにそんな言葉を寄越す。

 

 そして次には。

 ヤガシラノヒリュウの『首』の少女たちは、再びそれぞれの身姿を発光に包み。

 「集合」から、元の八つの首を携える、巨大な龍の姿へと形を変えて戻った。

 

「――無礼者への仕打ちとしては、黒焦げにしてやるのが御似合いか?」

 

 そして変貌した龍の姿での、重低音ながらも響く声で。

 ヤガシラノヒリュウの八つの内の中心の、代表の首はそんな言葉を寄越す。

 

 周りに包囲の形を敷く、配下の龍に鬼たちは。主の行いの場に手出しは無用とでも言うように、出張って来る気配は無いが。

 しかし威嚇の気配を軒並み発し、門手に呉市等を、包囲から逃がす気は無い様子を見せて寄越している。

 

「せいぜい、己が愚かさを悔いるがいい――」

 

 そして、その言葉が向ける最後のそれと言うように。

 ヤガシラノヒリュウの代表の首は、その顎をかっ開き、その喉奥に発光の兆候を見せる。

 それは先にも見た「攻撃」の前触れ。

 凶悪なまでの光線・レーザーを吐いて三人に浴びせ、焼き消す腹積もりなのは明確。

 

「門手ッ!この子を連れて離脱しろォッ!」

「ッ!!」

 

 次には。

 呉市は、ショックで震え固まっているレイノの体を抱き捕まえ、そのまま投げ飛ばす勢いで門手へと放る。

 門手はそのレイノの体を受け止め。険しい顔を作りながらも、その場よりの急速離脱のために、次にはエンジン・モジュールのバーナーを点火させる。

 

 しかし、その直前。

 ヤガシラノヒリュウが代表の首が。喉奥に宿すその発光の度合いを増しながら、その首を振るい薙ぐ前動作を見せる。

 

 間に合わない。

 

 そう感じ、門手はレイノの体を咄嗟に抱き庇い。

 そして呉市は、ヤガシラノヒリュウの前に立ちはだかるように。その二人の前に庇い立ち構えた――

 

 

 ――爆音が。

 

 強力な閃光が、三人を飲み込んだ音――では無い。

 全く別種の巨大な爆音が、三人の向こう前方から上がり届いたのは瞬間だ。

 

「――えッ?」

「――ッ!」

 

 それに違和感を、疑問を覚えつつも。

 門手と呉市にあっては、その音に聞き覚えを感じ。そして次に目の当たりにした光景に声を零す。

 

「――……かァ゛っ……ぁ……っ!?」

 

 見れば、ヤガシラノヒリュウが、それもその巨体の全体が。まるで横殴りに打たれたかのように仰け反る形を見せており。

 そしてその周りには、まだ散り晴れぬ爆炎が、大きな「爆発」の跡が漂っている。

 

「ッ!?」

 

 そして間髪入れずに、次に見え、そして聞こえたのは。

 ヤガシラノヒリュウの、今の地形の上空真上を。「何か」のシルエットが、劈くまでの轟音を響かせて飛び抜けた様子。

 

 門手に呉市がそれを追って見上げれば、その向こうの空に。場の真上を飛び去り抜けてからの、尖る軌道で旋回に入るシルエットが。

 

 よく見知った、F-EA戦闘機のデバイスを纏う少女の姿があった――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。