トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
「取り巻きは大分蹴散らしたと見えるが――」
再び上空。何度目かの進入からの航空爆撃を完了し、また一旦の離脱から旋回に入る最中の仙導は。
その飛行行動と同時に、側方眼下へ視線を降ろしながら零す。
周辺、擦り鉢状の地形一帯に散在していた、ヤガシラノヒリュウの一派、その配下の龍や鬼たちからなる敵部隊は。
その大半は、仙導を始めとする飛行隊からの航空攻撃と、そして地上の臨時戦闘捜索救難隊からの戦闘攻撃の手によって。
次々に排除から無力化され、雪上に屍となって落ち、沈むか。もしくは戦意喪失により敗走していた。
しかし問題は、一番の脅威は残っている。
擦り鉢状の地形の中心、その真上宙空。そこに滞空し、その巨体をうねらせて暴れるヤガシラノヒリュウの姿が今も見えた。
そのヤガシラノヒリュウには、地上の臨時戦闘捜索救難隊による各方からの集中砲火が向けられている。
しかしその浴びせられる銃砲火に対して、しかしヤガシラノヒリュウは煩わしそうな色こそ見せながらも。
その堅牢な図体にて、それ等を弾き退ける様子を見せている。
そして、ヤガシラノヒリュウのそれぞれの『首』たちは。
そのそれぞれの顎をかっぴらき、各方に向けて短く中威力程度の光線、レーザーを手当たり次第の様相で撃ち向けている。
瞬間にも地上では、そのレーザーの一発が危うく戦闘小隊の一個班の近くを掠め、その向こう背後の地面を叩いて爆発。
その一個班が慌て急いて、配置場所を変える動きが見える。
「ッ」
その歓迎し難い状況光景に、仙導は旋回行動の中で小さく口を鳴らす。
《トリーズナー1-1よりファー・アウェイ01ッ。周辺の敵部隊勢力は大半が沈黙、しかし重要脅威は未だ健在。これに至急の火力投射を求むッ》
次には地上の航空誘導員より、捲し立てる声での要請が通信にて届く。
その重要脅威である暴れるヤガシラノヒリュウに、急ぎでの航空攻撃を求めるものだ。
「了解。少し待て、これより掛かる――ストラトス04、取れるか?」
その要請に仙導はそういった旨で答え、次にはコールサインにて別方へ呼びかける。
その相手は、応援に駆け付けたF-3Aデバイスの二機編隊。
《どうぞ》
「強力な一撃が必要だ、「頼んだもの」は抱えて来たか?」
呼びかけにすぐに返り来たF-3A編隊機からの返事に。仙導が続け向けたのはそんな尋ねる言葉。
《もちろん、二番機が現在スタンバイ状態》
「よし、直ちに開始願いたい」
仙導の尋ねた言葉に、また返されたのは肯定と併せての向こうの状態を伝える言葉。
それを聞いた仙導は、次にはそう願う言葉を向ける。
《了解、始めます。上空よりの援護をお願いしたい――》
それにまた通信で、答える声が返されると同時。
仙導の位置より向こうの上空に、尖る旋回行動で「そのため」の動きに入る。
二機のF-3Aデバイスの少女たちの姿が見えた。
「ッ!」
「きゃぅ!?」
「っとぉ!」
一方、地上。
暴れうねるヤガシラノヒリュウの向こう正面。
呉市にそれに抱えられたレイノ、そして門手が。ダッシュから突っ込むまでの勢いで、雑木林に飛び込む瞬間がそこに見えた。
「下がってッ、身を隠してッ!」
そしてそんな三人を庇い守る形で、その前に基地警備教導隊や航空救難隊の空自隊員からなる一個班が配置。
向こう正面のヤガシラノヒリュウに、我武者羅の様相で銃火攻撃を撃ち向ける。
つい先程に、三人は臨時戦闘捜索救難隊の隊員等に合流から回収され。
そして隊員等に援護されながら身を雑木林に飛び込み隠したのが、今の動きに光景であった。
「無駄に硬ってェトカゲだなッ!」
飛び込んだ雑木林の中で身を起こしながらも、次にはまたヤガシラノヒリュウの巨体を見て。
銃砲火を弾くその様に、呆れに皮肉交じりの声を上げたのは門手。
「すぐ航空投射の一撃が来るッ。堪えろ、備えろッ!」
そんな門手に答えるついでのように、銃火を撃ち向けながらも、そう知らせ伝える声を張り上げたのは基地警備教導隊の空曹。
「ッ!あれをッ」
だが、その次に呉市が「それ」を認め気づいて声を上げる。
向こう正面の宙空で暴れるヤガシラノヒリュウ。
その八つ携える内の中心に位置する首が、その顎をかっぴらき。その喉奥に発光を宿す様子が見えた。
例の巨大な光線、レーザービームのその前触れ。
おそらく、他の首が吐く中威力の光線とは別物のなのだろう「本攻撃」の気配。
今度こそそれを吐いて撃ち放ち、こちらを塵屑へと変え屠るつもりだ。
「まずいッ、またあのデカいレーザーを吐く気だぞッ!」
門手も同じくそれを認め気づき、周りの味方各員に知らせる意味も含めて張り上げる。
それの阻止を願い、我武者羅のそれで各方から各隊各員の集中砲火が集められ、ヤガシラノヒリュウの巨体を猛攻のそれで撃ち叩くが。
しかし、今度は小手先の術で止まりはしないとでも誇示するように。
ヤガシラノヒリュウは浴びせられる集中砲火にも関わらずに動きを続け。次にはその中心の首が、「クン」と光線を吐く直前の予備動作を見せる。
「ッ!退避をッ――」
それを見て、これ以上は限界だと、基地警備教導隊の空曹が張り上げ訴えるが。
その喉奥に宿される発光が、「射撃」の直前の膨張を見せたのはその僅差の直後。
そしてついに「それ」は次の瞬間に、吐き、撃ち放たれるかと見えた。
――ヒュゥッ、っと。
しかし――ヤガシラノヒリュウと、門手に呉市等に隊員等の間の宙空真上に。
「何か」が、空気を裂いて断ち切るまでの様相、気配で割り入り飛び込んで来たのは、僅か一瞬早くの瞬間。
そして直後。
「それ」、太くも尖るシルエットのその物体は。
まさに貫き刺す如きの様相で、その高速速度でヤガシラノヒリュウの巨大な胴体に叩き込まれ。
ゴズッ――と。その堅牢な肌を刺し貫いた音を、ごく一瞬だが確かに周りの皆に伝えたのと同時。
――巨大な爆炎が巻き起こり。
それにてヤガシラノヒリュウの巨体を巻き包み、そしてその炸裂にて、暴力的なエネルギーにて。
その堅牢な体を、しかし千切り砕き裂いた――
「ッゥ――!」
「ぁぅ……!」
「うォ……!?」
門手に呉市にレイノの三人に、三人を庇い配置していた一個班の隊員等は。
正面向こうで巻き起こった巨大な爆炎に、そしてそれにヤガシラノヒリュウの巨体が巻き込まれて消えた光景に。
伝わり来るその衝撃をビリビリと感じながら、それを身構え堪えながらも。
剥いた眼に、その視線を釘付けにしていた。
「ッ――これは……!」
間もなく爆風衝撃が収まり、しかし向こう正面にさらに大きく濛々と上がる爆炎に煙を見ながら。
呉市は、今の現象の「正体」に察しを付けて一声を零す。
その直後。
その正体を先んじて明かすかのように、皆の頭上上空を轟音を立てて。一つ、一機のシルエットが飛び抜けた。
それは応援の「ストラトス04」の、F-3Aデバイスユニットの一名一機。
そしてそのF-3Aユニットこそ、今の一連の現象光景の体現者。
――空対艦ミサイル ASM-3。
F-3Aユニットがその身、機体に抱え装備して来たその凶悪な得物が。
厳密には大型の航空目標などにも使用できるよう、改良調整をされたそれが。
ヤガシラノヒリュウの企みを阻止し、その巨体を爆炎で包み千切り裂き。そして皆を救った正体であった。
「……ハッ、デカブツの得物様々だなッ」
向こうに飛び抜けて旋回に入るF-3Aデバイスユニットの、少女のその姿を見て。
今の一連の起こりの理由正体を察し、呆れ交じりの声で発し上げたのは門手。
他、空自隊員の各員が。似たような呆れ脱力した色でF-3Aを見上げ、あるいは歓声を張り上げて上空に手を振っている。
「……ヒリュウ様を……討ち倒したと言うの……?」
そんな中、今も呉市の腕中に抱かれ庇われたままのレイノは。
しかし呆気に取られた色で、信じられないものを見る様で、同じく向こう上空を飛ぶF-3Aデバイスの少女を見上げている。
「そうだ、君を縛るものはもう何もない」
それに呉市は、無自覚に脱力するレイノを抱き支えてやりながら、そんな言葉で答えてやる。
「――今日は、「フレンド」に持っていかれてばかりだったな」
しかし次にはその呉市も、何か微かに倦怠感の混じる色でそんな言葉を零しながら。
救い庇われてばかりであった今日という日を思い返しながら。
皆と同じように上空を。大空を背景に優雅なまでの様子で旋回する、F-3Aの姿を見上げて追った。