トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
「――がッ……かぁァ……あぐぁ……っ!」
一方、また地上の。
擦り鉢状の地形の中心近く、ヤガシラノヒリュウが「墜ちた」その場所では。
空対艦ミサイルの着弾の影響で、雪が消え焼け焦げた地面を。
這いずり、あるいはよろめきヨタヨタと歩く。数名の『少女たち』の姿があった。
それは先程に見た、ヤガシラノヒリュウの『首』、それぞれの人格を担う少女たちだ。
空対艦ミサイルの凶悪なまでの一撃に、その巨体を千切り裂かれたヤガシラノヒリュウは。
その影響で、すでにその『首』の半数は事切れていたが。
しかし残る半数の『首』は、生存本能からか無意識のままに、それぞれの少女の身体へ変貌し。その姿形となったことによって生命を繋ぎ保っていた。
しかしそれでも、負ったダメージは致命的なものであり。
生き残りの『首』の少女たちの、その体は酷く傷つき、その動きは文字通り這う這うの体といった様だ。
しかし、その生き残った『首』の少女たちの顔には、いずれも悪鬼の如き形相が浮かんでいる。
低俗なものと、取るに足らぬ存在だと見ていた人間に、ここまでの仕打ちを受けたことは。
『彼女たち』にとっては憤怒激昂するに足るものであり。
今に彼女たちを襲い苛んでいる、全身を裂いて焼くような激痛すら。彼女たちの感情を煽り揺さぶり、その憤怒に拍車を掛けていた。
「おの……れェ……っ!ニンゲン……風情がァ……っ!!」
その中で、焦げた地面を這いずり進んでいるのは、代表首の人格の少女。
その彼女の顔もまた、牙を剥き、憤怒と憎悪に染めた表情を作り。
そして透るものであった声色を低く変え、呪詛の言葉を唸り吐き上げている。
「……!」
しかしそんな彼女の目の前、頭の上に直後。異質な音が響き聞こえると併せて、シルエットが差して及んだ。
「――」
キィィと、異質な音を発し響かせながら、宙空をフワリとした動きで降りて現れたのは。
金属の翼を携える、蒼き美少女。
仙導であった。
「おの、れェ……!」
「コロす……っ……コロス……!」
その次には、代表首の少女の背後左右に位置していた、別の『首』の少女たちが。
仙導を、その憎悪に憎しみをぶつける相手と判別し。眼を剥き牙を剥き、仙導に襲い飛び掛かろうとする気配を軒並み見せる。
しかし。
銃声が、いくつかの発砲音が。それを阻むように立て続けに響いたのは直後。
「がぅぁ……っ!?」
「あ゛……!?」
同時に、『首』の少女たちは立て続けに、打ち弾かれたように仰け反る。
そして次には糸を切られた人形のように、崩れ倒れ。地面に沈み動かなくなった。
「――ッ」
一方の仙導の側。仙導のその背後左右の地上に、散会展開した形で歩み進み現れたのは。
生図に、隊長の一尉、他に数名の空自隊員。そのいずれもが、各装備火器を突き出し構えた姿。
各員は、上空での行動を解いて降りて来た仙導に、合わせるように合流から随伴、援護に付き。
そして今に仙導に牙を剥こうとした『首』の少女たちを、しかしそれを認める前に撃ち退け、無力化したのだ。
またさらに、仙導に各員の背後頭上には。低空で滞空して支援に着く、航軌院の姿もあった。
「――」
仙導に、生図に一尉に隊員各員。その皆のヤガシラノヒリュウ『たち』に向ける目は、警戒を確固とする尖るものながらも、同時に酷く冷淡なもの。
「悪い事は言わない、投降するんだ」
そんな中で仙導は代表し、最早死に体の、しかしまだ唯一息のある代表首の少女に向けて。
そう宣告の言葉を、静かにしかし冷酷なまでの声色で向ける。
「くがぁァ……!ほざけぇッ……!ちっぽけな、ニンゲン如きがぁァ……!!」
しかし、代表首の少女が返したのは。
その死に体の様になって尚、仙導に食って掛からんとする様相での憎悪の言葉。
「ゆるさぬ……みとめぬ……!ちぎり、すりつぶし……塵屑にしてくれようぞォ……!!」
透る色の面影の無くなった掠れた声で。代表首の少女はその腹積もりを張り上げ訴える。
「くぉォ……ぐカァぁぁぁ……っ!!」
そして、倒れ這うその半身を、死に物狂いの動きで仰け反り起こし。
元は愛らしさを見せるものであったであろう、その口をしかし獣のようにかっぴらき。
少女はその喉奥に発光を、弱々しいそれではあるが、光線の兆候を宿し見えた。
――ドゥンッ!
しかし、強烈な。だがどこか淡々とした色での、一発分の発砲音が阻むように響いた。
それは仙導のF-EAデバイスに装備されるガトリング砲、GAU-22/Aのもの。
それが仙導の念じた「攻撃」の意志を受け取り、唸らせた砲火のもの。
「きゃびゃ゜――っ?」
その撃ち放たれた一発の25mm機関砲弾。
それは、代表首の少女の頭に飛び込み。そしてその口、頬を破り喉奥までを貫通。
少女の顔半分から首回りは、その凶悪な貫通力によってまるでボロ切れのように千切れ散る。
そして奇妙な悲鳴ともつかぬ「音」を上げた少女は。
一瞬、まるで呆けた感情を表すかのように体を降着させた後。地面にぐしゃりと崩れ沈んで、動かなくなった。
それが、ヤガシラノヒリュウのという存在の。
人間を供物として求め喰らって来た、恐るべきそれの。
えげつなく凄惨で、しかしあっけない最期であった。
「――はァッ、後味がいいものじゃないなッ」
少しの間の、そのヤガシラノヒリュウの最期の姿を見守るような静寂の後。
倦怠感と皮肉交じりの声を零して、それを破ったのは生図。
ヤガシラノヒリュウの最期を見て、脅威存在が絶え沈んだことを確かとし。
構えていたMINIMI Mk.3を降ろし控えながら、その内心を零した一声。
他各名も、苦く難しい色であったり、倦怠混じりであったり、それぞれの色に様子を見せながら。
絶え果て沈んだヤガシラノヒリュウ『たち』の様を見降ろしている。
またその向こう背後には、こちらに歩み合流して来た、同様の色に様子の呉市に門手と。
そして驚きながらも同時に、複雑な色をその顔に混ぜて見せているレイノの姿もあった。
「今は、長居は無用だ。不時着地点に戻り再編成し、応援と回収を待とう」
そんな、今に生図が背後から寄越した声に、また他各名に答え返すように。
仙導が発したのは、これ以降の行動を促す言葉。
そしてまた次には、その行動の先手を務めるかのように。
場の上空を、F-3Aデバイスユニットの少女が一機。轟音を響き降ろして飛び抜けた。