トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
「行ってしまわれるのですね……っ」
翌日。
場所をまた同じくする、高台の公園の展望場にて。
門手と呉市、そしてクシナとレイノの姉妹の相対する姿があった。
「名残惜しいが、俺等は向こうの拠点を長く離れているのは好ましくなくてな」
寂しそうにそう零したクシナに、呉市は自身の思いと、しかし抱える状況からの事由を答える。
門手と呉市は、大陸の特動隊基地にこれより帰投する運びだ。
元より、クリュウの島への介入は帰路がてらの偵察行動という体であったのであり。それが事態の拡大から遅れ、今にずれ込んだというのが実際の形なのであったが。
騒ぎの元凶であったヤガシラノヒリュウは倒され、その一派残党の掃討作戦も、シンムの国の軍各隊によって大掛かりに始まっている。
念のためカナタの島の日本国出張所の警備のために、護衛艦やはぎと警備班ももうしばらく逗留することになっており。
損傷した呉市のデバイス装備も、変わりのものを持って来てもらい交換復旧は完了している。
特動隊基地の防空即応体制の主要の一角である二人が、これ以上基地を離れてここに留まる理由無かった。
ちなみに仙導は、此度は必要なものであったとはいえ。
やはり隊長が長らく基地を空けている状況は好ましくないと、敷浪から通信にて注文が寄越され来て。
昨日の内に航軌院を連れて、一足先にトンボ帰りしていた。
そしてちょうど、後の役目の手はもう十分だとでも言うかのように。
やはぎの艦載ヘリコプターのSH-60Kが、ローターを回す轟音を立てて上空を飛び抜けた。
「別に今生の別れでもない。また機会に恵まれれば、顔を合わせることもあるだろう」
寂しそうな顔を作るクシナに、呉市はそんな言葉を向けてやり。
そして続けて、クシナの少し後ろ背後に居るレイノにも視線を向ける。
「……っ」
しかしレイノはその凛とした顔に、少しぶっきらぼうな、そして気恥しそうな顔を作り。
そっぽを向いてしまう。
どうにも、状況が状況であったとはいえ、最初の対面でつっけんどんな態度を取ってしまったことや。
その後にしおらしい部分を見せてしまったことなどが。
本来は少し「意地っ張り」なきらいのあるらしいレイノの心情を苛み、呉市等へ向ける顔を無くしてしまっているようであった。
ちなみに、生贄騒動の被害者でもあるが同時に当事者でもあるレイノには。
シンムの国の役所機関などから聴取などがあり、そしてこれ以降もいくらかが控えているが。
幸い彼女に及ぶところは、そこまでに留まるとのことであり。
以降はカナタの島の市長夫婦、クシナの養父母の元へともに迎え入れられるとのことであった。
「姉さま……っ」
そんな、引くに引けなくなってか、意地を張る仕草を見せたレイノに。
クシナは困った顔と、同じくの声を向ける。
「苦手な印象を持たれちまったようだな」
「それも、しょうがないだろう」
レイノからそんな反応を受けてしまった呉市に、門手が揶揄うような声を向けるが。
呉市自身は端的に、ここまでの状況背景からそれを受け入れる声を零す。
「あんまりボヤボヤしてると、また敷浪さんに渋い顔されちまう」
「だな。名残惜しいが、出発するよ」
そして門手が次にはそう訴え、呉市はそれに同意し。クシナとレイノに向けて伝える言葉を向けると、場を発つべく身を翻そうとした。
「!……まっ!」
しかしその直後。
一瞬その顔に迷いを見せたレイノが、しかし意を決した様子で声を上げて踏み出し。歩み出そうとした呉市を追いかける。
「?、っと」
「ぁぅ!?」
しかし、レイノの声を聞き留めた呉市が、そこで脚を止めてまた振り向いたことで。
目測を誤り勢い余ったレイノは、呉市の身体にぶつかり。そしてデバイススーツに包まれ飾られる呉市のその豊満な乳房に、頭を突っ込み埋める形となってしまった。
「っ、どうした?」
「……っ……」
思わぬ形になってしまったことに戸惑いつつ、呉市はレイノの体を支えてやりながら、自分の乳房に顔を埋めるレイノに尋ねる声を向ける。
一方のレイノは、恥ずかしい形になってしまったことに、その顔を真っ赤に染めながら。呉市の乳房の中でその視線を不機嫌そうに背ける。
「……その……」
「?」
「っ……また……お会いできますか……っ?」
しかし、次にはレイノはその細腕を呉市のくびれる腰に回して抱き捕まえ。
そして呉市の乳房に埋まる己の頭を、しかし名残惜しむかのようにより押し沈めながら。
まるで、「これはわたしのだ」と主張するような仕草を見せながら。
次にはぶっきらぼうな顔色でしかし上目遣いを寄越し、小さな声で、ねだるようなそんな言葉を寄越した。
そんな二人の背後横では、門手とクシナがそれぞれ、「あんら」「あらぁー」というような色を顔に作って。少し囃し立てるような気配を寄越しながら様子を見守っている。
「――ははっ。あぁ、また必ず会いに来る」
そんなレイノの姿から、呉市はレイノが「求め欲するもの」を察し。
同時にそんないじらしい彼女の姿に、保護欲に似た愛おしさを覚え。
小さく笑いを零すと同時に、そう答えを返し。
そして少しの間、レイノに自身の身体を「堪能」することを認めてやった。
それから。再会を誓いと、次までの別れを交わした後。
門手と呉市はカナタの島を飛び立ち、基地への帰路へと入った。
その、大空を轟音を響かせて飛び去って行く、可憐で優美な二名二機の姿を。
巫女の姉妹は、その姿が大空の中に消えて見えなくなるまで見送り続けた。
和の島で航空作戦編、終了です。