トランス・デバイス TSメカ娘戦闘団の異世界冒険開拓記 作:えぴっくにごつ
第1小隊は各班各員が降車、車輛による隊形から徒歩の形態隊形へと移行し。引き続きそのミフェンの町を目指す行程を進める。
偵察を兼ねてその一番先を先行するのは、存住が同行する分隊、小隊の第1分隊だ。
広がる土地の中を、ゆるやかに曲がりくねり通る轍に沿って。警戒の意識を周囲に向けながらそれぞれは歩み進んでいる。
「――あれか」
間もなく、その最中で分隊は一度立ち止まり。
軽く警戒態勢を作った分隊の先頭で、一人の男性が双眼鏡を覗きながら声を零した。
第1小隊の小隊長である人で、階級は二尉。
状況をいち早く掌握したい都合もあり、今は先行する第1分隊に自らも同行している。
明かせば彼にあっても「着装」状態となれる。女性へと性転換することもできる身であるのだが。
小隊長の転じて成る姿は、13~14歳程の外見年齢の大分小柄な美少女。
一方、現在の男性時はなかなかの高い身長を持つ身体。
そんな小隊長は、その身長差に難儀して行動に弊害が出ることも時にあった。
そういったところから。身体が強化される等の着装の利点を十分理解し、嫌悪しているという訳でもないが。状況から男女の姿を使い分けている人なのであった。
今も視界不良を嫌って男性のままの姿で居るその彼に。
他名にあっては揃って、着装から女体化した者と、元よりの女性からの者で成る第1分隊の面々が。背後に待機控えている光景は。
まるで女子高の引率教師と女生徒たちといった様にも見えた。
そんな小隊長が今に零した言葉は、向こうに見た光景からのもの。
肉眼でも丘や傾斜の先にわずかに見えているが、それは町。
その襲撃を受けたと言う、ミフェンの町と見えるそれであった。
「動きは見えます?」
「いや、まだ見えない。火の手なども上がっている様子は無いな」
そのミフェンの町を双眼鏡越しに観察する小隊長に、背後で控える第1分隊長の二曹の彼女が尋ねる声を掛ける。
それに小隊長が返したのはそんな言葉。
言葉の通り、ここからではまだ町には騒ぎの様子は見られなかった。
「もっと近づかないとだな――行くぞ」
小隊長は覗いていた双眼鏡を降ろし、腕を翳して進行の再開を促し。
背後で控え警戒していた分隊各員も、それに続き動き出そうとした。
「――ッ!」
「それ」に。
進行方向から見て左方の向こう遠くに、キラと、何かの光が一瞬だが確かに瞬いたのはその時。
それに、存住始め該当方向を向いていた数名が。
そして二曹に、「それに狙われる」小隊長自身が気づく。
「――小隊長ッ!」
「ッ!」
直後。二曹が地面を蹴って飛び、その前に立っていた小隊長の身体を。足元を構わず掬うようにタックル。
それを受けた小隊長は態勢を崩され、沈み落ちるように倒される。
甲高くも、乾いた音が響き届いたのはそのほぼ同時の直後。
そして空を切り裂くような気味の悪い音を伴い。
小隊長のすぐ近くを、今程まで小隊長の頭があった場所を、「それ」は高速で掠めて飛び抜けた。
「スナイパーァッ!」
同時に、分隊の中から誰かが張り上げる。
その通り、今のは「敵」からの狙撃。
今程の一瞬の発光、おそらくスコープの反射のものあろうそれは。左方の向こう遠く、丘の上に茂る藪から見えた。
「身を隠せッ、傾斜に入れッ!」
次に指示を張り上げたのは、第1分隊の次席者の三曹。
その指示を受けるが早いか分隊各員は飛び退く勢いで、敵スナイパーの位置方向から、
轍を挟んで反対側の傾斜地に飛び込みカバーしていく。
また前方向こうには、窮地を救われもしくは救う形となった小隊長と二曹が。
互いに崩れた姿勢をしかし支え合いながら這い動き、同じく轍の側の傾斜地へと飛び込み退避する姿が見える。
「ッ」
そんな各員の動きの中で、唯一すぐには退避を見せない姿がある。
それは存住。
存住は険しい表情で、自身の得物であるM110狙撃銃を膝立ちの姿勢で素早く構えると。
側方向こうへ大雑把な狙いだけを着け、引き金を引き、甲高い発砲音を響かせた。
狙うは、敵スナイパーが潜むと思しき向こう丘上の藪。
そこへ精密さは二の次で牽制を目的として一発を撃ち。さらに二発三発、四発と連続的に射撃を撃ち込む。
「あーちん!ムリは禁物ぅッ!」
そんな存住へ背後から声が飛ぶ、それは藍晴のもの。
一人轍の上に残って牽制を行う存住の姿を、危なっかしく思って警告するもの。
その言葉を聞くと同時に存住は、そこまでと判断するかのように。
また一発を発砲しながらも立ち動き、急く後ろ歩きで下がり、他の皆と同様に轍の側の傾斜地へと飛び込み退避。
その直後の次。
連続的な甲高く唸る音が、向こうの丘から響き届き、そして空気を切り裂く嫌な音に気配が、こちらの真上を掠め始めた。
「ッ、機関銃だァッ!」
また誰かが叫ぶ。
その通り、それは機関銃のものに他ならない。
「ハァ、マジだったなッ」
その敵機関銃からの攻撃の嫌な気配感覚を感じながらも、存住は面白くなさそうに零す。
歓迎し難い気配に想定は、当たってしまった。
逃れて来た人々が証言した通り、「敵」は銃火器の類を持ち扱う、捨て置けない存在であるようだ。
その次には、すでに攻撃を受けたと言う反撃のための要件は満たされたことから。
分隊各員はそれぞれが判断から得物火器を向け、応戦のための射撃行動を開始。
その各銃声が響き上がり始めた。
「っ……すまんッ」
「いえ、間に合って良かった」
その方や。
今に危機を間一髪の所で救われた小隊長は、状況に顔を険しくしながらも、まずは二曹に礼を述べる。
それに二曹は、今しがたの状況に肝を冷やした色を見せつつ声を返す。
「小隊長、敵は北東の方向ッ。おそらく藪の中に火力陣地ッ」
そこへ、別の隊員から知らせの声が飛ぶ。
「了解、続けて各個に攻撃ッ。別途指示あればまた伝える」
それに小隊長は了解を返し。
すでに始められていた応戦行動に、引き続きの実施を指示。
「よっし、ぶっ放すっしょぉッ」
各員の応戦射撃行動が、その銃声が活発さを伝え始める中で。藍晴の快活な声が上がる。
その藍晴は自身の担当火器であるM240Bを突き出し、二脚にて据え構えると。おおまかな狙いの後に引き金を引き、射撃を開始。
M240Bは苛烈な音を上げ、そして「お返しだ」とでもいうようにその銃火火線を向こう敵方へと叩き込み始めた。
「イクサ21、31、こちらは接敵。攻撃を受けている、至急合流をッ」
《了解、音を聞いてます。現在急行中》
そんな分隊各員の戦闘の動きを見つつ、小隊長は後続の他分隊へ通信を繋ぎ、合流応援の指示を向けている。
そしてそれに返される通信の向こうの声。
「こちらは敵を轍を挟んで北東側に見てる、合流の際は位置関係に注意しろ」
併せて小隊長は自分等と敵の位置関係を伝え、注意を促す言葉を向けるとそれで通信を区切り。
次には今にカバーする傾斜地を這って少し登り。視線を覗かせて向こうを見る。
引き続き見え伝わり来るのは、敵からの機関銃火に。それに伴うライフル類のものらしき散発的ないくつかの発砲。
しかし接敵した最初こそ、威勢の良い気配を見せ伝えていたそれは。
こちらがまた苛烈な反撃応戦を開始した影響か。早くもそこに目に見えての減退の色を見せていた。
「臆したか」
そんな伝わり来る様に、端的にしかし微かに呆れの混じる色で零した小隊長。
「――!」
しかし、小隊長は直後に「その音」を聞く。
嫌な気配を感じると同時。小隊長は双眼鏡を繰り出し構えて、向こう敵方の奥に視線を向ける。
そして敵の潜む藪木の向こう奥に、わずかな間だが「それ」が。武骨な姿が通過した動きが見えた。
「あァ、クソ」
見えたそれに、思わずの悪態を零した小隊長。
「――戦車ァーーッ!!」
そして次に。向こうの藪木を周り抜けて、その影からヌォと鈍重な動きで現れた姿形に。
分隊の内から誰かが、怒号の近い声で張り上げた。