疎遠だった親友がTSして家に転がり込んできた話 作:you are not
「いやぁ、俺の息子が娘になったらこんなに可愛くなるとはねぇ」
「娘って言うな!」
「じゃあ元息子?」
「それも嫌だ!」
「難しいなぁ」
何が難しいんだよ。俺は深くため息を吐くしかできなかった。
「成功ね」
母親が眼鏡を押し上げる。
「おい、人をモルモットみたいに!?」
「マウスで実験はしたわ」
「そういう問題じゃねぇんだわ」
「まあまあ、ベルフェちゃん。細かいことは気にすんなって」
父親はケラケラ笑いながら、俺の頭をぽんぽんと叩く。
「ちゃんと女の子になったんだから、よかったじゃん」
「よくない、全然よくない」
「顔も俺に似てイケてるじゃん」
「それは元からだ」
「そう?まぁいいや。とりあえず、これプレゼントね。全裸じゃ外行けないっしょ」
父親が指を鳴らす。すると、俺はいつのまにか一着の服を着ていた。
水色のワンピースだった。
膝丈くらいの長さで、シンプルなデザイン。腰のあたりには細いリボンが付いている。変に装飾が多いわけでもなく、普通に可愛らしい。あと、なぜか黒のパンプス履かされていた。
「……何これ」
「俺ちゃん特製手作り」
「…………」
「ベルフェちゃんのために作っただけあって、似合ってんじゃん」
「……お前を、殺す」
「おぉ、怖っ」
悪びれるでもなく、父親は楽しそうに笑う。
「んじゃ、可愛い子には旅をさせよってことで」
人差し指をくるくると動かすと、部屋の窓が開き、俺の体はひとりでに投げ出される。
「えっ、おい、ちょ、待て待て待て!」
「しばらく帰ってこないでねー」
「クソ親父ィィィ!!!」
俺は二階の窓から、外へと投げ出された。
「……旦那君。本当にこれでよかったんだろうか」
「しょうがない、ここにいてもあの子は腐るだけだから……当人たち同士で解決してもらうしかないっしょ」
―――☆―――☆―――
「くそっ、魔力展開!」
雨粒が顔面を叩く中、俺は掌から魔力を放出し、地面とキスする前に衝撃波で相殺した。
体が濡れることも気にせず、濡れたアスファルトの上に、両足で着地することに成功する。
「……はぁ」
ワンピースのスカートを払い、ゆっくりと顔を上げた。
目の前には、見慣れた家の門。
その向こうには、さっきまで俺がいた家がある。
「帰る……あばばば」
俺が門の取っ手に触れると、びりびりと電流が流れた。
「くそ、無理か」
手を引っ込め、掌を見るが怪我は何もなかった。
「………どうすりゃいいんだ」
雨音だけが響く。
俺は道路の真ん中で、水色のワンピースを着たまま立ち尽くしていた。
濡れた髪が頬に張りつく。女の長い髪って、こんなに邪魔なのかよ。ワンピースも雨を吸って、肌にまとわりついているし。
「……ん?なんか入ってる」
ふと、その時。履かされていたパンプスの靴底に違和感を覚えた。
俺は左の靴を脱いで確認すると、折りたたまれた手紙が入っていた。
紙を開き、そこに書かれていた住所を見て、俺は固まった。
「……ネフェリムの、家」
名前を口にしただけで、胸の奥が痛くなった。
―――――会いたくない。
絶対に会いたくない。今さら、どんな顔をして会えばいい。
俺はあいつに、あんなことを言った。それに対してあいつは……
「……クソ」
紙を握り潰す。
捨てよう。こんなもの、捨ててしまえばいい。そうすれば、あいつに会わなくて済む。
俺は一人でどこかに行けばいい。そう思った。
けれど。
「…………」
握り潰した紙を、結局開く。
家を追い出された今、確実に助けてくれるところはここしかない。きっと、あいつなら俺を見てすぐに気づいてくれる。温かく迎え入れてくれる……こっちの気持ちも考えずに。
「……死ぬよりはましだ、そうだ。そう思い込め」
重い足取りながらも、俺はかつて、親友だと思っていた奴の家へと向かっていた。
拗らせてるって話。
面白かったら、評価・コメントお願いします