疎遠だった親友がTSして家に転がり込んできた話   作:you are not

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第3話

「いやぁ、俺の息子が娘になったらこんなに可愛くなるとはねぇ」

「娘って言うな!」

「じゃあ元息子?」

「それも嫌だ!」

「難しいなぁ」

 何が難しいんだよ。俺は深くため息を吐くしかできなかった。

 

「成功ね」

 母親が眼鏡を押し上げる。

「おい、人をモルモットみたいに!?」

「マウスで実験はしたわ」

「そういう問題じゃねぇんだわ」

 

「まあまあ、ベルフェちゃん。細かいことは気にすんなって」

 父親はケラケラ笑いながら、俺の頭をぽんぽんと叩く。

 

「ちゃんと女の子になったんだから、よかったじゃん」

「よくない、全然よくない」

「顔も俺に似てイケてるじゃん」

「それは元からだ」

 

「そう?まぁいいや。とりあえず、これプレゼントね。全裸じゃ外行けないっしょ」

 父親が指を鳴らす。すると、俺はいつのまにか一着の服を着ていた。

 

 水色のワンピースだった。

 

 膝丈くらいの長さで、シンプルなデザイン。腰のあたりには細いリボンが付いている。変に装飾が多いわけでもなく、普通に可愛らしい。あと、なぜか黒のパンプス履かされていた。

 

「……何これ」

「俺ちゃん特製手作り」

「…………」

「ベルフェちゃんのために作っただけあって、似合ってんじゃん」

「……お前を、殺す」

「おぉ、怖っ」

 悪びれるでもなく、父親は楽しそうに笑う。

 

「んじゃ、可愛い子には旅をさせよってことで」

 人差し指をくるくると動かすと、部屋の窓が開き、俺の体はひとりでに投げ出される。

 

「えっ、おい、ちょ、待て待て待て!」

「しばらく帰ってこないでねー」

「クソ親父ィィィ!!!」

 俺は二階の窓から、外へと投げ出された。

 

「……旦那君。本当にこれでよかったんだろうか」

「しょうがない、ここにいてもあの子は腐るだけだから……当人たち同士で解決してもらうしかないっしょ」

 

 

―――☆―――☆―――

 

 

「くそっ、魔力展開!」

 雨粒が顔面を叩く中、俺は掌から魔力を放出し、地面とキスする前に衝撃波で相殺した。

 

 体が濡れることも気にせず、濡れたアスファルトの上に、両足で着地することに成功する。

 

「……はぁ」

 ワンピースのスカートを払い、ゆっくりと顔を上げた。

 

 目の前には、見慣れた家の門。

 

 その向こうには、さっきまで俺がいた家がある。

 

「帰る……あばばば」

 俺が門の取っ手に触れると、びりびりと電流が流れた。

 

「くそ、無理か」

 手を引っ込め、掌を見るが怪我は何もなかった。

 

「………どうすりゃいいんだ」

 雨音だけが響く。

 

 俺は道路の真ん中で、水色のワンピースを着たまま立ち尽くしていた。

 

 濡れた髪が頬に張りつく。女の長い髪って、こんなに邪魔なのかよ。ワンピースも雨を吸って、肌にまとわりついているし。

 

「……ん?なんか入ってる」

 ふと、その時。履かされていたパンプスの靴底に違和感を覚えた。

 

 俺は左の靴を脱いで確認すると、折りたたまれた手紙が入っていた。

 

 紙を開き、そこに書かれていた住所を見て、俺は固まった。

 

「……ネフェリムの、家」

 名前を口にしただけで、胸の奥が痛くなった。

 

 ―――――会いたくない。

 

 絶対に会いたくない。今さら、どんな顔をして会えばいい。

 

 俺はあいつに、あんなことを言った。それに対してあいつは……

 

「……クソ」

 紙を握り潰す。

 

 捨てよう。こんなもの、捨ててしまえばいい。そうすれば、あいつに会わなくて済む。

 

 俺は一人でどこかに行けばいい。そう思った。

 

 けれど。

 

「…………」

 握り潰した紙を、結局開く。

 

 家を追い出された今、確実に助けてくれるところはここしかない。きっと、あいつなら俺を見てすぐに気づいてくれる。温かく迎え入れてくれる……こっちの気持ちも考えずに。

 

「……死ぬよりはましだ、そうだ。そう思い込め」

 重い足取りながらも、俺はかつて、親友だと思っていた奴の家へと向かっていた。




拗らせてるって話。

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