家族に捨てられた天才少女は、人懐っこい同級生に溺愛される   作:めろんちゃん

13 / 16
第13話託された想い【前編】

 

 体育祭当日。

 

 雲ひとつない青空が広がり、アルセリア魔法学院は朝から大きな歓声に包まれていた。

 

「みんなー! 頑張れー!」

 

「優勝するぞ!」

 

 色とりどりのクラス旗が風になびいており。観客席には家族や卒業生の姿も見える。

 

 エレノアは観客席を見上げ、小さく笑った。

 

「あっ、お父さんとお母さん!」

 

 手を振ると、二人とも笑顔で手を振り返してくれる。

 

「来てくれたんだ……。」

 

 その笑顔に、エレノアの緊張は少しだけ和らいだ。

 

「リシェル!」

 

「今日は絶対勝とうね!」

 

「……うん。」

 

 リシェルも静かに頷いた。

 

     ◇

 

 最初の競技は魔力玉入れ。

 

「開始!」

 

 魔法で浮かせた玉を一斉に籠へ投げ入れる。

 

 リシェルは正確な魔力操作で次々と得点を重ねる。

 

「すごい!」

 

「さすが首席!」

 

 観客席から歓声が上がる。

 

エレノアも他の生徒に負けず劣らずの躍進を見せていた。

 

 リシェルの活躍もあり、クラスは順調に得点を重ねていく。

 

「この調子なら、優勝も狙えるぞ!」

 

 クラスメイトたちの士気も高まっていった。

 

     ◇

 

 午前の競技が終わる頃には、クラスは総合二位。

 

「このままなら優勝も狙えるぞ!」

 

 担任の言葉に、生徒たちは大いに盛り上がる。

 

 残す大きな競技は――学年対抗リレーと魔法障害物競走

 

 学年対抗リレーのアンカーはリシェル。

 

 その一つ前を走るのがエレノアだった。

 

「緊張する……。」

 

 エレノアが小さく呟く。

 

 リシェルはそっと肩へ手を置いた。

 

「大丈夫。」

 

「いつも通り走ればいい。」

 

「……うん!」

 

 その一言だけで、不思議と勇気が湧いてくる。

 

     ◇

 

「位置について。」

 

 静まり返る競技場。

 

 スタートの合図とともに、一斉に選手が駆け出した。

 

 リレーは白熱した展開となる。

 

 第一走者。

 

 第二走者。

 

 第三走者。

 

 順位は僅差。

 

 そして――。

 

「エレノア!」

 

 バトンが渡る。

 

「行くよ!」

 

 全力で駆け出す。

 

 今までで一番速い。

 

 リシェルと練習した日々が頭をよぎる。

 

(絶対に繋ぐ……!)

 

 前の選手との差を少しずつ縮めていく。

 

「頑張れー!」

 

 歓声が響く。

 

 最後の直線。

 

 リシェルがバトンゾーンで待っている。

 

「リシェル!」

 

 エレノアは手を伸ばす。

 

 リシェルも走り出しながら手を伸ばした。

 

 その瞬間――。

 

 汗で滑った指先から、バトンがわずかにずれる。

 

「あっ……!」

 

 一瞬の出来事だった。

 

 リシェルは落とさないよう咄嗟に身を乗り出す。

 

 指先がバトンに触れる。

 

 しかし、その無理な体勢のまま隣のレーンへわずかにはみ出してしまった。

 

「危ない!」

 

 他クラスの走者と肩がぶつかる。

 

 勢いよく身体がぶつかりバランスを崩し――。

 

 ドサッ!!

 

 リシェルは地面へ激しく倒れ込んだ。

 

「リシェル!!」

 

 エレノアの悲鳴が競技場中に響き渡る。

 

 土煙が舞い上がる。

 

 静まり返る会場。

 

 リシェルは起き上がろうとするが、左足に鋭い痛みが走る。

 

「っ……!」

 

 思わず顔をしかめる。

 

 その様子を見た教師が慌てて駆け寄った。

 

「医療班!」

 

「早く!」

 

 エレノアは震える手を握りしめたまま、その場から動けなかった。

 

(私が……。)

 

(私が失敗したから……。)

 

 顔から血の気が引いていく。

 

 ただ、倒れたリシェルを見つめることしかできなかった。

 

 体育祭の熱気は、一瞬で凍りついていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。