家族に捨てられた天才少女は、人懐っこい同級生に溺愛される 作:めろんちゃん
体育祭当日。
雲ひとつない青空が広がり、アルセリア魔法学院は朝から大きな歓声に包まれていた。
「みんなー! 頑張れー!」
「優勝するぞ!」
色とりどりのクラス旗が風になびいており。観客席には家族や卒業生の姿も見える。
エレノアは観客席を見上げ、小さく笑った。
「あっ、お父さんとお母さん!」
手を振ると、二人とも笑顔で手を振り返してくれる。
「来てくれたんだ……。」
その笑顔に、エレノアの緊張は少しだけ和らいだ。
「リシェル!」
「今日は絶対勝とうね!」
「……うん。」
リシェルも静かに頷いた。
◇
最初の競技は魔力玉入れ。
「開始!」
魔法で浮かせた玉を一斉に籠へ投げ入れる。
リシェルは正確な魔力操作で次々と得点を重ねる。
「すごい!」
「さすが首席!」
観客席から歓声が上がる。
エレノアも他の生徒に負けず劣らずの躍進を見せていた。
リシェルの活躍もあり、クラスは順調に得点を重ねていく。
「この調子なら、優勝も狙えるぞ!」
クラスメイトたちの士気も高まっていった。
◇
午前の競技が終わる頃には、クラスは総合二位。
「このままなら優勝も狙えるぞ!」
担任の言葉に、生徒たちは大いに盛り上がる。
残す大きな競技は――学年対抗リレーと魔法障害物競走
学年対抗リレーのアンカーはリシェル。
その一つ前を走るのがエレノアだった。
「緊張する……。」
エレノアが小さく呟く。
リシェルはそっと肩へ手を置いた。
「大丈夫。」
「いつも通り走ればいい。」
「……うん!」
その一言だけで、不思議と勇気が湧いてくる。
◇
「位置について。」
静まり返る競技場。
スタートの合図とともに、一斉に選手が駆け出した。
リレーは白熱した展開となる。
第一走者。
第二走者。
第三走者。
順位は僅差。
そして――。
「エレノア!」
バトンが渡る。
「行くよ!」
全力で駆け出す。
今までで一番速い。
リシェルと練習した日々が頭をよぎる。
(絶対に繋ぐ……!)
前の選手との差を少しずつ縮めていく。
「頑張れー!」
歓声が響く。
最後の直線。
リシェルがバトンゾーンで待っている。
「リシェル!」
エレノアは手を伸ばす。
リシェルも走り出しながら手を伸ばした。
その瞬間――。
汗で滑った指先から、バトンがわずかにずれる。
「あっ……!」
一瞬の出来事だった。
リシェルは落とさないよう咄嗟に身を乗り出す。
指先がバトンに触れる。
しかし、その無理な体勢のまま隣のレーンへわずかにはみ出してしまった。
「危ない!」
他クラスの走者と肩がぶつかる。
勢いよく身体がぶつかりバランスを崩し――。
ドサッ!!
リシェルは地面へ激しく倒れ込んだ。
「リシェル!!」
エレノアの悲鳴が競技場中に響き渡る。
土煙が舞い上がる。
静まり返る会場。
リシェルは起き上がろうとするが、左足に鋭い痛みが走る。
「っ……!」
思わず顔をしかめる。
その様子を見た教師が慌てて駆け寄った。
「医療班!」
「早く!」
エレノアは震える手を握りしめたまま、その場から動けなかった。
(私が……。)
(私が失敗したから……。)
顔から血の気が引いていく。
ただ、倒れたリシェルを見つめることしかできなかった。
体育祭の熱気は、一瞬で凍りついていた。