家族に捨てられた天才少女は、人懐っこい同級生に溺愛される 作:めろんちゃん
夏休み初日。
朝から快晴。
待ち合わせ場所には、少し早く着いたリシェルが静かにベンチに座っていた。
数分後――。
「リシェルー!」
元気いっぱいの声とともに、エレノアが手を振りながら駆け寄ってくる。
「お待たせ!」
「……ううん。」
「私も今来たところ。」
そんな小さな嘘に、エレノアは思わず笑ってしまう。
「ふふっ。リシェル、絶対もっと前から来てたでしょ?」
「……ばれた?」
「うん!」
二人は顔を見合わせて笑い、隣町へ向かう魔導列車へ乗り込んだ。
◇
隣町は王都にも負けないほど賑わっていた。
通りにはおしゃれな店が並び、夏休みを楽しむ人々で活気にあふれている。
「今日はいっぱい買い物しよう!」
「まずは洋服!」
エレノアに手を引かれ、二人は服屋へ入った。
店内には夏らしいワンピースやブラウスがずらりと並んでいる。
「リシェルは普段、白とか青ばっかりだよね。」
「たまには違う色も似合うと思うんだけどな。」
「……そうかな。」
「絶対似合う!」
エレノアは次々と服を選び始めた。
「これとか!」
「あとはこれ!」
「こっちもかわいいよ!」
気が付けば、リシェルの腕の中は試着用の服でいっぱいになっていた。
「……多くない?」
「全部見たい!」
◇
試着室、リシェルは仕方なく渡された服に腕を通していた。
「リシェル、着替えた?」
「……うん。」
カーテンがゆっくり開く。
淡い水色のワンピースに身を包んだリシェルが姿を現した。
ふわりと揺れる白銀の髪。
涼しげな色合いが、その透き通るような肌によく映える。
エレノアは思わず言葉を失った。
「……きれい。」
「え?」
「すごく似合ってる……。」
しばらく見惚れたあと、ようやく我に返る。
「こ、これは買おう!」
「決定!」
リシェルは少し照れながら鏡を見る。
「……そんなに?」
「うん!」
「みんな振り返っちゃうくらい!」
店員も微笑みながら頷いていた。
「本当によくお似合いですよ。」
その言葉に、リシェルも少し恥ずかしそうにしていた。
◇
洋服を買い終えた二人は、そのまま水着専門店へ向かった。
「今度みんなで海へ遊びに行くかもしれないし!」
「新しい水着が欲しいなって!」
「リシェルも選ぼうよ!」
「……水着。」
少し戸惑いながらも、リシェルは頷いた。
「必要なら。」
エレノアは楽しそうに店内を歩き回る。
「これかわいい!」
「でもリシェルなら、こっちかな?」
最終的に選んだのは、白を基調に青いリボンがあしらわれた上品なデザインの水着だった。
「これならリシェルっぽいかも!」
「……着てみる。」
◇
数分後。
「エレノア。」
「着替えた。」
試着室のカーテンが静かに開く。
夏らしい爽やかなデザインの水着を身につけたリシェルが、少し照れくさそうに立っていた。
普段は制服やローブに隠れているすらりとしたスタイルが、水着によってより引き立っている。
白銀の髪も相まって、まるで湖の精霊のようだった。
「…………。」
エレノアは固まった。
「エレノア?」
「えっ!?」
我に返った瞬間、顔が一気に真っ赤になる。
「か、かわいいよ……!」
(こ、これはえっちすぎる‼︎)
「すごく似合ってる……!」
「ほ、本当に……。」
慌てて視線を逸らすものの、また気になってちらりと見てしまう。
「どうかな。」
首を少し傾げるリシェル。
その仕草まで愛らしく、エレノアの心臓はさらに大きく跳ねた。
(かわいい……。)
(ずるいよ、そんなの……。)
胸の鼓動が止まらない。
そんなエレノアの様子を見て、リシェルは不思議そうに近づく。
「顔、赤い。」
「暑いの?」
「ち、違うの!」
「その……。」
「リシェルが、すごく似合ってるから……。」
恥ずかしそうに小さな声で答える。
リシェルは一瞬きょとんとしたあと、小さく笑った。
「ありがと。」
その笑顔に、エレノアは思わず胸を押さえた。
(今日は心臓がもたないかも……。)
◇
買い物を終えた二人は、袋を片手にアイスクリームを買い、公園のベンチへ座る。
「今日はいっぱい買ったね。」
「……うん。」
「でも、楽しかった。」
その言葉に、エレノアは嬉しそうに笑う。
「私も!」
「また一緒に来ようね。」
「……うん。」
夏の青空の下、二人はアイスを食べながら穏やかな時間を過ごす。
少しずつ増えていく思い出は、リシェルの心をゆっくりと温めていくのだった。