家族に捨てられた天才少女は、人懐っこい同級生に溺愛される   作:めろんちゃん

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第22話二人きりの夜

 

 猫と遊んだ日から数日後。

 

 夏休みはまだ中盤に差しかかったばかりで、街にはのんびりとした空気が流れていた。

 

 エレノアは歩きながら、ふと空を見上げる。

 

「もう夏休みも、半分くらい終わっちゃったね」

 

「……そうだね」

 

 リシェルは小さく頷く。

 

 エレノアは少しだけ間を置いてから続けた。

 

「でもさ、まだやりたいこといっぱいあるよね」

 

「……うん」

 

 その返事を聞いて、エレノアは少しだけ笑う。

 

「実はね、お父さんとお母さん、今日から旅行なんだ」

 

「だから今日と明日、家に一人でさ」

 

 少しだけ視線を落としてから、エレノアはリシェルを見る。

 

「……もしよかったら、また泊まりに来ない?」

 

 リシェルは一瞬だけ目を瞬かせた。

 

 すぐに、以前の夜のことを思い出す。

 

 静かで、少しだけ温かかった時間。

 

「……うん」

 

「行く」

 

「ほんと?」

 

 エレノアの声が少し弾む。

 

「うん」

 

「じゃあ決まりだね」

 

     ◇

 

 夕方、二人はエレノアの家へ向かう途中、商店街に寄った。

 

「晩ご飯どうする?」

 

「外で食べる?」

 

 エレノアがそう聞くと、リシェルは少し考えてから首を横に振る。

 

「……作ってみたい」

 

「え?」

 

 エレノアは思わず足を止める。

 

「リシェルが?」

 

「うん」

 

「本で少し見たから」

 

「できるかは分からないけど」

 

 その言葉に、エレノアはぱっと笑顔になる。

 

「いいじゃん、それ!」

 

「一緒に作ろうよ!」

 

     ◇

 

 買い物を終え、二人はキッチンに立つ。

 

「じゃあシチューにしよっか」

 

「私は野菜切るね」

 

「じゃあ私はお肉担当!」

 

 包丁を持つリシェルの手つきは、思ったより落ち着いていた。

 

「意外と慣れてる?」

 

「……一人のとき、簡単なのは作ってた」

 

 その言葉に、エレノアは一瞬だけ言葉を止める。

 

「そっか」

 

 それ以上は何も言わず、にこっと笑った。

 

「じゃあ今日は二人だから、もっとおいしくなるね!」

 

「……うん」

 

     ◇

 

「いただきます」

 

 二人で手を合わせる。

 

「おいしい!」

 

「リシェル、ほんとに上手!」

 

「……エレノアも」

 

「一緒に作ったから、美味しいのかも……」

 

 その言葉に、エレノアは嬉しそうに笑った。

 

     ◇

 

 夜。

 

 片付けとお風呂を終え、部屋には静かな時間が流れていた。

 

「ねえ」

 

 エレノアがふと思い出したように顔を上げる。

 

「今日さ、パジャマパーティーしない?」

 

「……パジャマパーティー?」

 

「うん」

 

「前はバタバタしててちゃんと見てなかったし」

 

「せっかくだし!」

 

 リシェルは少し考えてから、小さく頷く。

 

「……分かった」

 

     ◇

 

 先に出てきたのはエレノアだった。

 

 ふわふわしたピンクのパジャマを着て、少しだけ落ち着かない様子で立っている。

 

「ど、どうかな?」

 

 リシェルは少しだけ見てから答える。

 

「……似合ってる」

 

「かわいい」

 

「っ……」

 

 エレノアは一瞬固まってから、顔を赤くする。

 

「そ、そういうの急に言わないでよ……」

 

「じゃ、じゃあ次リシェル!」

 

     ◇

 

 扉が開く。

 

 白いシンプルなパジャマ姿のリシェルが静かに立っていた。

 

 濡れたような白銀の髪が肩に落ちている。

 

「…………」

 

 エレノアは一瞬、言葉を失う。

 

(……なにこれ)

 

(かわいいとかじゃなくて……きれいすぎる)

 

「エレノア?」

 

「えっ、あ、うん!」

 

 慌てて首を振る。

 

「すごく似合ってる!」

 

「ほんとに」

 

「……ありがとう」

 

 リシェルは少しだけ視線を逸らす。

 

「エレノアも、似合ってる」

 

「っ……!」

 

「そ、そういうの……普通に言うのやめてよ……!」

 

 部屋に小さな笑い声が広がる。

 

 窓の外では、夏の夜風が静かに揺れていた。

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