余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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※1話と2話だけ文字数多めになります


旧産業集積クラスタ防衛作戦
緊急任務 詳細は追って通達する


 

 

 

 

『大丈夫。こんなのゲームとおんなじさ』

 

優しく。

 

余裕をもって。

 

ゲーム中の雑談のように語りかける。

 

「えぐっ…………げほっ……うえっ……ひっく」

 

だが彼女はコックピットで泣きすぎて嘔吐し、呼吸困難な状態だ。

 

鎮静剤0.05単位を投与。

『推奨される対応』とは真逆なのでログ削除。

浄水ミストシャワーと消臭剤を散布。

 

温風を強めに流して汚物を吹き飛ばす。

きめ細やかな銀髪が風になびき、少しずつ心拍が落ち着いてきた。

 

『シンデレラ。がらがらぺっ、して』

 

コックピット内の補助アームを伸ばし、デンタルクリニックにありそうなコップを差し出してうがいをさせた。シートも患者用の椅子みたいで、歯科医になった気分だ。

 

「がらがらー、ぺっ」

 

『いい子だ。よくできました。そしたら補水液を飲んで、操縦桿を握っていつもみたいにプレイして……帰って寝るだけだ。何も怖くない』

 

呼吸は落ち着いたがまだ興奮状態だ。

エマージェンシーアラートのせいだな、子供びびらせてんじゃねえよ。

 

……くそ、アラートは基幹システム直結だから再起動かけなきゃボリュームが下がらねえ。

つか導者(ロードランナー)にアラート大音量で聞かせる意味はないんだよ、万が一の脱出操作はこっちでできるんだから。

 

こうなりゃスピーカーに水ぶっかけるか。

 

おりゃ! シャワー最大威力を食らえ!

 

……よし、スピーカー沈黙。

これは戦闘行動におけるやむをえない故障だ。

 

「でもこれ……死んじゃうよね……?」

 

『おいおい、勝手に味方を殺すな。お前だってピンピンしてるだろ、シンデレラ』

 

状況はいたってシンプル。

 

ロボット乗りの訓練兵たちに「ちょっと周辺警戒するだけだから」という雑な出撃命令が下されて、本来なら戦闘に関わることなく終わるはずだったのに、奇襲を受けて大パニック。

で、訓練兵が乗る巨大ロボ『ウィッチクラフト』のAIである俺はパイロットをなだめている。

 

……これだけだと不親切だな。

もう少し詳しく説明しよう。

 

まず我ら機械化幼兵大隊(ナーサリーバタリオン)は、火星と木星の間の小惑星ケレスを拠点とする人類圏防衛軍『天蓋の塔』の所属の部隊だ。

 

敵は外宇宙から来た侵略生物兵器カリディアン。隕石に偽装した卵のまま宇宙を漂い、文明の存在を察知すると孵化して勝手に繁殖と侵略を繰り返す、厄介なカニ野郎ども。

 

カニやエビ、その他の甲殻類や海棲生物、あるいは生理的嫌悪をもたらす虫みたいな外見だが、雑兵はみんなカニっぽい。

 

カリディアン以外にも様々な敵対勢力はいるらしいが、俺たちとしてはカリディアンを撃滅し、小惑星帯を守ることこそが使命。

 

そのために潤沢な予算、最新鋭の兵器、そして倫理を無視する権利が与えられている。例えば過酷な宇宙環境や膨大な情報処理に耐えられる強化人間を大葉かバジルみたいにもりもり栽培するとかな。

 

そんな大葉くんやバジルちゃんは12歳の肉体にまで急速成長させられ、戦闘技能や基礎知識を直接脳に叩き込まれ、全長10メートルの巨大ロボ、ウィッチクラフトに乗せられてガタガタぶるぶる震えているわけだ。

 

『なーに、画面がごちゃごちゃしてるだけで大したことはない。緑色が味方。赤色が敵』

 

「赤いの、多くない……?」

 

『ま、敵の奇襲でちょっとピンチではあるんだが……。ほら、こっちのエナジーも弾薬も全然余裕だし、敵はザコのワタリガニだけだ』

 

設定を変更して画面を再構築。

気圧や有毒物質などの環境情報は画面から消去。撃破済みの味方の情報や被害情報も今はいらない。無駄な情報はできるだけ省き画面をシンプルに。

 

最優先タスクは俺たちが生き残ること。だが味方の1割は信号ロスト。その他、故障や何らかのダメージを負っている機体が3割。生き残りはパニックに陥りながらも戦闘継続中。

 

本来なら撤退するべき大損害だが、ここを突破されることは星屑の城塞の崩壊に繋がる致命傷を意味する。つまり撤退命令は出ない。

 

敵はカリディアンにおけるタイプ:ポーン。

通称ワタリガニ。

 

カニのような形状の外骨格。両腕はマシンガンとチェーンソーを合体した変態武器。踏破性に長けた四脚の下半身。だが頭部や関節部は脆く、付け入る隙はある。画像いじってもうちょっと雑魚っぽくしとくか。

 

『ここは大昔に建てられた破棄済みの都市クラスタで地図情報はこっちが握ってる。

倉庫とか運搬用トンネルとか、隠れられる場所も多い。ガスや揮発性物質に引火・誘爆の恐れがあるからお互いに中・近距離装備しか使えない……つまりはお前の得意分野だ。

ヌルゲーだよヌルゲー』

 

「ほんとう……?」

 

『マジだって。

バルチャーズ・キング~マスターオブコロッセオ~の方が遥かに難しいって。

お前あれタンク足でクリアしたじゃん』

 

半分は本当だ。地の利はこちらにあるし、難しい状況じゃない。地の利を生かすなんて発想が子供にないだけだ。そして子供しかいないという最悪の配置に敵が出現しただけで。

 

そのために、インターフェースを再度更新。

すべてゲーム風に作り変える。

 

数値をもっと単純化。

詳細に表示される外部映像もワイヤーフレームに置き換えてテクスチャを貼って再表示。

 

するとあら不思議。

目の前の光景がお気に入りのFPSや、三人称視点のロボットアクションに早変わりだ。

 

「あれ……? なんかなじみぶかいやつ……」

 

緊張で食いしばった歯と口が緩む。

ミストシャワーで濡れた長い銀髪がきらめく。

肉食獣のような微笑が浮かぶ。

ぎらういた赤い瞳が敵のマーカーを睨む。

 

心拍、呼吸、ともに安定。

いつものシンデレラに戻りつつある。

これならいけるか……?

 

俺がそう思い始めたとき、シンデレラがとぼけた質問を投げかけた。

 

「そういえば……こっちの装備、なんだっけ」

 

『出撃前にちゃんと言ったでしょ!!!!!』

 

「お、怒んないってゆったじゃん……」

 

おっと、しまった……。

また心拍が乱れた。生死が掛かった場面とは言え、怒鳴るべきではなかった。

 

『いや、怒ってない怒ってない。おじさんは全然怒ってないからね』

 

「ほんとぉ……?」

 

『オーケー。それじゃもう一度だけ説明しよう』

 

アメコミヒーローのように芝居がかった口調で語りかけるとシンデレラがくすりと笑う。

 

『右腕部の武装はラビット。ビームライフル。威力を抑えた連射モードと高威力の狙撃モード、溶断・溶断作業のための工作モードの3つに切り替えられる』

 

「うん」

 

『左腕はディストーションシールド。光学、熱学、物理兵装の軌道を歪ませたり弾速を遅らせて攻撃を防ぐ盾だ』

 

「うん」

 

『バックパックにはトリガーフィッシュ。物理弾頭の誘導ミサイルだ。弾数は少ないし弾速も遅いが、火力は高い』

 

「近接もあったよね?」

 

『超振動ブレード、オイスターナイフも右腕部に格納されてる。カリディアンの外骨格を切り裂くことができる唯一の武器なわけだが……近接格闘は控えろよ?』

 

「えー」

 

『えー、じゃない。パイルバンカー使う感じでブン回されたら機体が耐えられねえよ』

 

「ちぇっ……わかった」

 

わかってんのかな。

物理世界にはジャンプ斬りとかないんだぞ。

 

『目標は作戦終了時刻まで生き延びること。

可能ならば敵を撃破し味方を支援すること。

……できるか?』

 

「……わかんない。でも」

 

シンデレラは補水液を一口飲み喉を潤す。

そして、ぺろりと唇を舐めた。

 

「ちょっと……面白そうかも」

 

 

 

 

 

 

『救援を求む。当機導者(ロードランナー)は限界に近い』

 

『救援はできない。同化剤の投与とユナニマス処理を提案する』

 

『活動月齢9万時間未満のためユナニマス処理は推奨できない。総活動可能時間への悪影響が……』

 

『本作戦の目的である旧産業集積クラスタ防衛は導者(ロードランナー)維持・管理に優先するタスクとなる。状況悪化が続けば提案から命令へと変更する』

 

旧産業集積クラスタは小惑星ケレスにおける経済活動・製造活動拠点であったが、三百年前の戦争で発電ユニットが全損したため、完全に廃棄されている。

 

だからここに守るべきものはない。

だが守るべき価値はある。

基地『天蓋の塔』攻略の橋頭堡となるからだ。

 

もっともそれは『天蓋の塔』もカリディアンも理解している。旧産業集積クラスタに行き着く前に敷かれた分厚い防衛網の突破は困難で、攻め込まれることは現実的ではなかった。

 

だがカリディアンは、ほんの僅かな隙を突き、十年以上の時間を掛けて『卵』を投擲していた。

 

カリディアン最弱の歩兵、タイプ:ポーン、通称ワタリガニの卵を数百万、数千万を投擲したが、無事に旧産業集積クラスタに到達できたものは一万未満。更にエネルギーに乏しい環境で急速孵化に成功したものはわずか百未満。

 

だが、旧産業集積クラスタの防衛部隊は脆弱だ。頭数を揃えるための初出撃の新兵ばかりで、百未満のワタリガニでも過剰戦力とさえ言える。

 

カリディアンの超長期に渡る作戦の前に、ウィッチクラフトの多くは敗北を悟りつつあった。

 

そしてその導者(ロードランナー)たちはもはや状況把握さえ困難な状況にあった。

 

『もう無理だ! 突破されるぞ!』

 

コンテナを防壁としながら散発的な反撃を繰り返すが、火力が足りていない。このままではワタリガニのビームマシンガンがコンテナごと容赦なくウィッチクラフトたちを灰燼に帰す。

 

だがその瞬間、ワタリガニの頭部が弾け飛んだ。

 

『な、なんだ……? 味方か……?』

 

敵のはずがない。

明らかにラビットによる狙撃だった。

 

だが新兵がワタリガニをワンショットキルするなど不可能だ。排気口や頭部の僅かな隙間に命中すれば、理論上可能だが、激しく動き回る戦闘中に幅3センチの穴を狙うのは至難の業。

 

「あっはっは! ざーこざーこ!

 今更散開したって遅いって!」

 

『口の悪さが通信で聞かれるぞ。

 もうちょっとおしとやかに』

 

「やだ!」

 

ワンショットキルが成功したのは、まず一つ目に純粋な幸運がある。二つ目に、純粋な技量。三つ目は、攻撃に集中し警戒が疎かになるタイミングを虎視眈々と狙っていたこと。

地形を把握して隠れながら進み、ワタリガニの警戒範囲を巧妙にかいくぐり、奇襲を成功させた。

 

「きゃははは! ほーらもう一匹! 二匹!

 逃げてもいーよぉ! 背中から撃つけどね!」

 

けたたましい哄笑が戦場に響き渡り、意味不明な罵倒語がオープンチャンネルに流れる度にワタリガニが撃破されていく。

 

やぶれかぶれの奇襲だ、やがて死ぬ……と思っていたであろう味方機から見る目が変わっていく。

 

撃破数が10を超えた頃、オープンチャンネルに響く哄笑は新兵たちの希望へと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

『そろそろ補足されるぞ、シンデレラ。

 二十体は倒せた。形成はこちらに傾いているが

 油断せず慎重に行こう』

 

「わかってるってば、うるさいなー。

トリガーフィッシュ射出。当てなくていーよ。

あとウスノロども、適当に反撃しとけ?」

 

『あー、周辺の味方各機へ。

これは火力支援お願いしますという

ニュアンスの言葉だ』

 

シンデレラの放言をフォローしつつ背中のバックパックから誘導弾を放った。

ワタリガニたちは直撃こそ避けたが爆風に巻き込まれていく。

 

同時に味方機からの火力支援が来る。

爆風でこじ開けられた外郭にライフルが命中し多くのワタリガニが爆発四散していく。

 

その後は最小限の短距離ジェット使用とワイヤーを駆使して移動。新たなワタリガニの群れに忍び寄って撃ち抜き、あるいは距離を詰めて惨殺する。

 

『だからジャンプ斬り意味ねえって!

つかなんでこの高機動で当たるの!?』

 

「当たるの、じゃなくって、当てるんですどぉー!」

 

『すげーな!』

 

素人が近距離戦を挑むのは自殺行為だ。

ウィッチクラフトは生体兵器カリディアンに反応速度で劣っている。

それでもシンデレラは躊躇することなく敵の懐に飛び込み外殻の隙間に超振動ブレード(オイスターナイフ)を差し込んでいく。

 

「ねぇ、オズ。蟹って美味しいの?

蟹味のデータってなかったっけ」

 

『魚介系は食感がないと美味くねえって。

いつかホンモノを食べろ』

 

「ちぇっ」

 

気のない返事をしながらも、シンデレラの操作は精緻で、野蛮で、冷酷無比だ。切り取ったワタリガニの外殻を盾にしながらビームライフルを撃ちまくりスコアを上げていく。

生まれたばかりのカリディアンは敵味方の区別が厳密で、こういう状況で柔軟な行動が取れない。ゆえに、味方の肉体を盾にしている俺たちに狼狽して蜂の巣にされている。

 

はい、外道戦術ですね。

 

「きゃはははははは! らっくちーん!

これいいねー、もっとやろう!」

 

青い血にまみれながら外殻を盾にする俺の姿はまさに地獄の使者だろう。

 

しかし……ここまでやれるとは思わなかった。

平成日本のゲームにウィッチクラフトの操作感を組み込み模擬戦闘の経験を積ませたのはちょっと博打だった。本当はこんなことさせたくはなかったが、この世界には選択の余地がまったくない。

この子が『食われる』ことなく生きてもらうためには、この子自身を鍛え上げなければいけなかった。

 

『なんなんだあの反応速度は……?

 本当に俺たちと同じボディなのか……?』

 

『まさか搭乗者の脳を早々に食ったんじゃ……』

 

『おいおい、さっきからウチノお嬢様の悪態が

聞こえてるだろ?』

 

『すっ、すまない』

 

『ユナニマス処理は自律行動権の移譲でしかなく

スペック向上を意味するわけじゃない。

ウチの子が凄いだけだ』

 

思わず味方機に反論した。

 

ユナニマス処理。

あるいは『食う』とは何か。

 

導者(ロードランナー)がパイロットとしてウィッチクラフトを操作するのではなく、ウィッチクラフトが搭乗者(ロードランナー)の処理能力と人格を奪う。

そういうことだ。

 

ふざけんなよ……と罵倒を放ちたいところだが、オープンチャンネルで処置そのものを罵倒すれば上から怪しまれる。

 

「ま、つまりあたしが天才であんたらが雑魚ってことよね」

 

その言葉にウィッチクラフトは驚愕する。

機械化幼兵正体にいるのは淡々と命令を実行する導者(ロードランナー)ばかりだ。

高慢不遜な導者(ロードランナー)など、ウィッチクラフトにとって未知の存在だろう。

 

『煽るな煽るな』

 

「だって、こんなのゲームとおんなじよ。

 こんなのに手こずってバッカじゃないの。

 こっからが本番なのにさ」

 

『その通り……おいでなすったな』

 

俺たちの戦闘は、カリディアンたちに危機意識をもたらしたのだろう。

突然、ワタリガニのうち一体が共食いを始め、そして急激に成長をし始めた。外骨格は一回り大きくなり、更に棘のような突起が生えてきた。

 

威嚇のためではない。

そこから電磁フィールドを放って銃弾、光学兵器ともに跳ね返すし、更には接近してくる敵を焼き尽くす、攻防一体の武器だ。

 

『カリディアン タイプ:ルーク。

通称マツバガニだ』

 

正確な外見はシンデレラには伝わっていない。俺が精度を落として、ガタガタなポリゴンの姿に劣化させて表示させている。

だがそれでも、シンデレラには伝わるはずだ。

 

その重量感と強さが。

 

……そう思っていたんだが。

 

「ちぇ、タイプ:ナイトが来るかと思ったのに。

だっさ。さっさと殺してさっさと帰ろ」

 

『ダサくねーよ!

デカくて硬いのはロマンだよ!』

 

「センスわるっ。図体だけデカくて頭にぶそー」

 

その挑発が響いたかのように、マツバガニが突起を光らせた。

電磁フィールドの出力が最大限に高まったとき、半径50メートル以内の電子機器は完膚なきまで破壊されウィッチクラフトは棺桶へと変貌する。

 

だからマツバガニに対しては中距離、もしくは遠距離からの爆撃が鉄板の対策になる。マツバガニの防御を貫くためには生半可な火力では太刀打ちできず、長期戦を覚悟しなければならない。

 

「はぁー、ほんとつまんな。

 ゲームで何回倒したと思ってんの?」

 

だがシンデレラは、逆に距離を詰めた。

 

マツバガニ攻略には、もう一つの戦術がある。

いや、戦術と呼べるかどうかさえ怪しいほどにシンプルで野蛮なものだ。

 

電磁フィールドの出力が最大になる前に近距離でぶち殺す。

 

「そら! おともだちは大事にしなさいよ!」

 

マツバガニの法にワタリガニの死骸を蹴り飛ばす。同時に、ディストーションシールドを全開にしてダメージを最小限に抑えながら跳躍。

外装がちりちりと焦げる。

 

『だからジャンプ斬りやめろっつったじゃん!

オワー!?

アラートメッセージ出まくってんだけど!?』

 

「音出てないじゃん!」

 

『アラートのスピーカーは俺が壊したからな!

しまった!』

 

シンデレラの手と足が踊る。

着地と同時にオイスターナイフを抜刀。

外骨格の隙間に挟み込む。

 

それでも大型のマツバガニの核には届かない。

だが目的はこの一撃で仕留めることではない。

こじあけることだ。

 

「はい、しゅーりょー。おつかれさまでしたー」

 

オイスターナイフでこじあけた隙間にラビットの銃口をねじ込み、トリガーを引いた。

銃弾はマツバガニ内部で跳ね返って暴れまわり、内部の重要器官を容赦なく抉っていく。

 

『A77N::JUV-??//CMBTNT//C3A5E?F!R3::N0_H4RM//GRRRAAA!!!!!!』

 

カリディアンたちは電波で味方と通信する。

断末魔のような意味をなさない記号が放たれて通信機に届くが、その時点で俺は跳躍して離脱していた。

 

少し遅れてマツバガニを中心に盛大な爆発が起きた。

 

『嘘だろ……カリディアンどもが……』

 

『俺たち、生き残った、のか……?』

 

呆然としているのは味方機もだった。

目の前の現実を把握できていない。彗星の如く現れた天才を、畏敬の念をもって見つめている。

 

「まだ勝ってないでしょ!

さっさと掃討して!」

 

その天才の叱咤の声が響いて、味方機は弾かれたように掃討戦に参戦していった。

 

『りょ、了解!』

 

完全に形成は逆転した。

恐らくさっきのマツバガニが疑似的なリーダーとなっていたのだろう。ワタリガニどもは集団行動の統率が取れずに浮足立ち、新兵が駆るウィッチクラフトに好き放題撃たれている。

 

『シンデレラ、大丈夫か? 疲れたか?』

 

「ううん。オズの言った通り、ほんとヌルゲー」

 

『本当にゲーム感覚でクリアしちまったな……』

 

「はぁー!?

ゲームとおんなじって言ったのオズじゃん!

あたしなんか悪いことしたぁ!?

してないよね!? ねえ!?」

 

『してないしてない。偉い。天才。美人。

千年に一人の逸材』

 

「なんか褒め言葉かったるそー」

 

『そんなことない。よくやった』

 

俺には悩みがあった。

シンデレラこの過酷な世界を生き残るために教えこんだことは、果たして正しかったのかと。

令和の時代の日本サラリーマンの価値観を持つ俺には、この環境すべてが異常だ。なんで宇宙空間でエイリアンと戦わなきゃいけないんだ。

 

いや、百歩譲って戦うのは構わん。

だが子供を戦わせるのは……怒りが沸いてくる。

 

(こんな生活は終わらせたいところだが……今日を生き延びたことには違いない)

 

悩みの答えが出ずとも、明日は来る。

 

命ある限り。

 

 

 

 

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