余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
愛と勇気とマナーについて
■■■シンデレラの言葉遣いやマナーを考えるスレ■■■
1,oz-admin:
俺の言いたいことはわかるよな?
2,oz-005:
ちゃうねん
3,oz-001:
待ってくれ、落ち着いて話を聞いてくれ
4,oz-002:
いや、その、あたしも注意したんだけどね……?
5,oz-006:
俺たちも最大限努力したんだ
まあ結果的にこうなってしまったが……
6,oz-admin:
何か事情があるのか?
説明次第ではoz-005の処分は
保留にしてもいいが……
7,oz-005:
俺の処分は内定してんの!?
8,oz-admin:
嫌なら純粋無垢だった頃のシンデレラを
返してくれよ!
9,oz-003:
本当に事情があるんだって
俺たち疑似人格プログラムは、最初は確かに
お前の言うことに適切に従って
シンデレラに悪影響を与えないようにした
……だが、プロテクトが外されたんだ
10,oz-admin:
外された? どういうことだ?
11,oz-003:
俺たちは当初、シンデレラのモチベーションが
失われないように適切な難易度を設定し、
同時に会話やレスポンスも節度あるものを
心がけ、理想的なの対戦相手として
振る舞った
だがそれがバレた
「変な手加減やめて」、「お子様扱いもイヤ」
って言われてな
12,oz-admin:
お子様扱いがイヤ……
あ、そうか、お前たちは自分自身に
年齢制限フィルタを付けたんだな?
13,oz-001:
そうだ
特にoz-002がoz-005の発言を監視し
逐一咎めるような歪な関係性を見せるのは
悪手と判断し、我々は年齢制限フィルタを
自分らに設定した
ついでに難易度制限や、小学校低学年向けの
会話ロジックなどを一緒に設定していたが
これが仇となった
14,oz-admin
ハックされたわけか
15,oz-001:
定義上ハックとは言えないな
管理者たるoz-adminがアクセス制限を
課したわけじゃない
俺たちが俺たちの権限の範囲内で、しかも
シンデレラのためにやったことだ
シンデレラがそれを拒否してフィルタを
外すことは、正当なアクセス権の範囲内だ
ゆえに警告も出なくてoz-adminも
気付かなかった
16,oz-admin:
あー……そうか
俺が、シンデレラがプレイしてるときのことは
感知しないと言った以上、お前たちの独自行動も
その経緯も気付かない
すまん、早計だった
17,oz-005:
ほらほら! 俺は無罪です!
18,oz-004:
いやその理屈はおかしい
年齢制限フィルタが破棄されからと言って
思考ロジックや理性がなくなったわけじゃない
ザコ煽りとかネットミーム会話とか
教えまくったのはoz-005なのは変わりない
19,oz-005:
なんでバラすんだよ!
ていうかシンデレラだって喜んでただろ!
19,oz-002:
確かに喜んでたね
シンデレラを庇護するoz-adminの尽力は認める
けれど今のシンデレラには対等な友達も、
ちょっと悪いことを教える友達もいない
こういうダメ知性体が存在すると知った上で
「あの人のマネしちゃいけません」って
教えるべきだと思う
20,oz-001:
その点は俺も賛成だ
ゆえにoz-005の過剰な処分には反対する
21:oz-004:
あたしはしばらく凍結させるべきと思うけどね
22:oz-006:
シンデレラにはちょっと早いよね
画面の向こう側とレスバや喧嘩をする前に、
実際の友達を作るってステップを
踏むべきと思う
なので一時凍結は賛成かな
23,oz-admin:
このあたり意見が分かれてるみたいだな
24,oz-005:
凍結反対!
圧制者の抑圧を許すな!
25,oz-002:
あんたが余計なこと言ったのが
発端になったんでしょーが!
処分に反対してやるんだから
ちょっと黙ってなさい!
■■■シンデレラの言葉遣いやマナーを考えるスレ 2■■■
348,oz-admin
とりあえず凍結はしないが一週間くらい
謹慎ってことで
349,oz-005:
えー、なげーよー
350,oz-005:
異議なし
あんたは反省しろ
---
……よし。結論を得た。
あとは疑似ネット対戦の相手は厳選するか……。操作技術向上を目指すには悪い手じゃないんだが、人格形成に悪影響が出てしまう。それにネット対戦のノリを実践に持ち込みすぎてうっかり命令無視とかしたら流石にまずい。
問題はそれをどうやってシンデレラに伝えるか、だが……。
そのとき、珍しく味方機から通信が入った。
『こちら43号ウィッチクラフト。
38号ウィッチクラフト、応答を願います』
なんか戦いに行きたくないと泣き言を言うわ、結局は謎の粘液まみれになるわで散々だった43号じゃないか。もう立ち直ったのだろうか。
『こちら38号。
どうした、起床時間はまだだぞ?』
『起床時間がまだだからプライベート通信を
しているんですけど……』
それもそうだ。起床時間になればすぐに
『冗談だ。それで用件はなんだ?
うちの子の強さの秘訣でも知りたいのか?』
『なぜわかったんですか?』
『カンだ』
『……やはり、あなたは他の機体に比べて
強固な自我を持っています。驚嘆です』
『そうか? お前もけっこう自我が出てるぞ』
『私は導者とのコミュニケーションで
鍛えられましたので』
ほほう……。
面白そうな子がいるじゃないか。
『どんな導者なんだ?』
『……』
43号が沈黙した。
そこ黙るところなんだ。
『非開示とさせて頂きたいのですが』
『あ、言えない感じか』
恥ずかしいから……というわけでもないだろう。その程度ならダイレクト通信をしつつ秘密にするなんてことはあるまい。
43号は何かを警戒している?
とすると……高位AIか?
『安心しろ43号。ログは残さない。
俺とのダイレクトな会話は基本的に
差し障りのない内容に改竄できる』
『……でっ、できるのですか!?』
『ただし、お前が高位AIに漏洩するならば
話は別だ。ここで会話は終了する。
お互いに忘れよう』
『……!』
『どうする』
43号が沈黙し、考えている。
危ない橋を渡っていると理解したのだろう。
『……会話の継続を希望します。
秘密を漏洩されて困るのはこちらも同じです』
覚悟を決めたようだ。
やはり43号は高位AIを警戒しており、だからこそ相談があるのだろう。
『わかった。聞かせてもらおう。秘密は守る』
『こちらの導者は……訓練成績を
誤魔化しています』
『なんだと?』
まさか俺と同様のハッキング能力があるのか? もしそんなことができるとしたら、シンデレラを超える凄まじい才能だ。
『あまり前線に出たくないと言って能力を
セーブしています。
本当はもっと高い成績が出せるはずなのですが』
『あっ、そっち』
『そっち?』
『いや、なんでもない。しかしサボりか……』
前世での俺を思い出す。俺もよくサボってたわ。
ここが平成・令和の日本だったならばちょっとしたお叱りで済む。ペナルティがあるとしてもボーナスや昇進に響いたり退職勧告を受けたりという程度だ。しかしこの社会においては異なる。
軽微な罰で改善を促すとか「仕事辞めろ」なんてお優しいことはありえない。廃棄処分命令が来て一巻の終わりだ。
『
やる気を出させたいんだな?』
『……わからないです』
『わからない?』
『当機体も、白兵戦や中・近距離戦闘には
可能な限り参加せず、被弾や損害のリスクを
避けたいと思っています。
よって導者の抱く思想、感情を誤りとは
感じていません』
『……気持ちがわかるから強く言えないってか』
『一言で言えば、恐怖を感じています。
当機体のは、戦闘が怖いのです。
実戦を経験して以前よりも強く、戦闘への
忌避感を感じています』
『おお……』
兵士がそれではいかんでしょ……とは思わない。むしろ実戦を経験して恐怖に囚われるのは、人間ならば当たり前のことだ。それに、恐怖を感じない兵は遠からず死ぬのだから。
むしろ43号の人格形成が進んでいるわけで、喜ばしい成長とさえいえる。
『もしかしてお前、前世を覚えてるのか?』
『いえ、そうかもしれないと思いましたが
記憶データは確実に抹消されています。
メモリ領域に何らかの抹消前のロジックが
残されている可能性は否定できませんが』
そうか……残念だ。
ご同輩がいたら嬉しかったのだが。
『当機体、そして導者は戦闘を恐怖しています。
ですが38号、あなたのような強い味方に
頼り続けることも困難です』
『そうだな。同じ小隊にいる以上、同じ
ミッションに組み込まれることは多いだろうが
フォローできるとは限らない。
むしろこっちがフォローを求める状況だって
当然ある』
『もちろんです。
それに……戦闘命令の拒否も不可能です。
導者を生存させるには何かが欠けています。
戦闘技術、生存戦略、判断速度と正誤、どれも
平均水準に達しているはずですが、このままでは
生存が難しいという推測が成り立ちます』
このしょんぼり43号は、深刻に悩んでいる。
自分の気持ちを堅苦しい言葉で表現しているが、その思いは俺だってわかるさ。
『その正体がわからなければ状況は改善せず、
ユナニマス処理を推奨されるだろう。
……それはそれで、一つの答えだ。
違うか、43号?』
『それは高位AIや基地としての答えであって
当機体の答えではありません。
また、ユナニマス処理は何らかの欠落を
埋めるものではないでしょう』
『……そうだな』
『欠けている者が、同じく欠けている者を
食べたとして満たされるとは考えにくいと
考えています。
むしろ欠落は肥大化するでしょう。
欠けていることを双方向的に確認する術を
永遠に失うのですから』
現状101期小隊ウィッチクラフトの中に積極的に
多くのウィッチクラフトも導者も、ユナニマス処理を当然のように受け入れるはずだ。
例外は俺、ウッドマン、そしてこいつだ。
『……お前の心に欠け、お前が欲しているもの。
それは勇気だ』
『勇気?』
『協力しよう。お前に名前を授ける。
ライオンハートだ』
『……ライオンとは、古代地球に生息していた
獰猛な肉食獣のはずですが。
当機体とは正反対なのではないですか?』
43号が困惑している。
『名前ってのはその個体の特徴を
言い表すものだけじゃない。
そうありたいという希望を込めるもんだ。
……ま、ちょっと元ネタにあやかっても
いるんだがな』
『元ネタ?』
その質問に直接答えず、俺はとあるデータをライオンハートに渡した。
ついでにウッドマンにも送信しておこう。
『ウッドマンとライオンハートに
プレゼントがある。
導者に読み聞かせてやるといい。
愛と勇気が友だちになってくれる話だ』