余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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小学校大作戦 01

 

 

 

ウッドマンとライオンハートにプレゼントしたのは、俺が使ってるいつものやつだ。

 

暗号化した絵本やアニメ、ゲームのデータ、そしてサボり中に訓練しているように見せかけるチートプログラムである。ここでのチートってのは超すげえってことじゃなくて元来の意味のズルってことだ。

 

二機とも訓練をサボらせることに少々渋っていたが、どうせ操縦方法を反復するだけの人間心理を無視した雑なプログラムだ。サボったところで対して変わらんし、ウチの子は実戦でエース級の戦果を叩き出した。

 

二人は今一つ納得していない様子だったが、とにかくデータを押し付けて……劇的な反応が起きた。

 

『オズ。なぜ赤い靴の女の子は足を

切断しなければならないのだ。

サボタージュにペナルティがあるのは

理解するが、古代地球の人間には

欠損部位の再生手段がない。

あまりにも加虐嗜好すぎる』

 

『落ち着けウッドマン、絵本の内容は

少々理不尽なんだ』

 

『人魚姫が泡となって消えるのは

どういうことでしょうかオズ。

それに人魚は美のモチーフとなっております。

陸上に適応した姿となって他の非編集人に

埋没するより、人魚の姿のままのほうが

王子を魅了できるのではないでしょうか』

 

『そもそも人魚姫にはアカウンタビリティが

足りておらず、王子には推測に推測を重ねて

誤った結論を導き出している。

姫、王子という統治者側として非合理的だ』

 

『合理性と人外フェチは持ち出さないでくれ。

古典的ラブストーリーなんだこれは』

 

『オズ、ここを教えてくれ。

導者も同じ疑問を抱いている』

 

『とりあえず自分たちで相談し合ってみてくれ。

道徳の授業みたいなもんだ』

 

『オズ! 導者に桃太郎の続きはないのかと

聞かれている!』

 

『そこはめでたしめでたしで

綺麗に完結したんだよ!』

 

一日目から質問攻めにあった。

 

くそっ、俺はシンデレラと一緒に聖戦士スターアローを見たいっつーのによぉ……!

 

星座とか星とか、元ネタになったギリシャ神話とかを教えて、あれがデネブであれがアルタイルだよって教えてやりたいんだよ……!

 

そんなことを思いながらウッドマンとライオンハートの質問に答え、シンデレラはゲームを進めながら技量を磨いていき……。

 

訓練期間が終わりを迎えた。

 

 

 

◆

 

 

 

「引っ越しって言ってもあんまり変わんないね」

 

我ら101小隊は1ヶ月の訓練期間を経て、正式に部隊に配属となった。

 

今までは下層のC35ブロックとかいう基地の下の下の下にいたのだが、今は中層という地上と直結したブロックに移った。

 

とはいえ、住環境が大きく変わったということはない。俺たちがいるガレージや導者のカプセルベッドがある区画が丸ごとエレベーターのごとく移動しただけだ。

 

異なる点といえば……。

 

『あいつらが新入りだぜ』

 

『へぇ……あの奇襲で生き延びたエースか』

 

『どうせラッキーだろ』

 

『お手並み拝見といきますか』

 

ご近所のブロックからこっちを値踏みする、嫌らしい先輩方がいること。

 

訓練機のように機械的な雰囲気がない。明らかに自我を獲得している。確実に彼らの多くは、『食った』ことで演算能力が増しているのだ。

 

導者(ロードランナー)が活動限界を迎えるか、あるいは撃破されるそのときまで戦い続ける、哀れな奴隷剣闘士たち。

 

彼らが俺たちの末路だ。うんざりするね。

 

だが彼らとのコミュニケーションはいずれ必要となるだろう。敵対することもあれば共闘することもあるだろうし、そうでなくとも情報収集は必要だ。現役の兵士たちがどんな社会秩序を構成し、高位AIとどんな関係を維持しているのか……。

 

そこには環境改善のヒント、あるいは環境からの脱出のヒントがあるはずだ。いや……ヒントを得なければならない。

 

101小隊の導者は誕生(ロールアウト)して1ヶ月。残り23ヶ月しかないのだから。

 

だがそんな生活の中でも潤いはある。

 

「ねーねーオズ。あれなんだっけ?

前に星座がどうとか言ってたよね」

 

『あれってどれだよ』

 

「あの3つ並んだ星」

 

『あー、オリオンのベルトか』

 

シミュレータ上の訓練のみならず、外に出て訓練をすることが可能になった。

 

しかも、どんな訓練を行うべきかウィッチクラフト側にある程度の裁量権がある。

 

訓練内容は自動的に記録されて高位AIも閲覧できるので、あまりだいそれたことはできない。それでも、自由を得られたのは大きな収穫だ。

 

しばらくしたらウッドマンやライオンハートとフォーメーションを組むなど、連携する訓練をするべきだろうが……初めてくらいは俺とシンデレラだけでやりたい。

 

そんなわけで俺は基地の外のクレーターにある岩場で機体制御訓練をする……という名目で外に出たのだった。

 

相変わらず惑星ケレスは、星が眩く見える。

 

大気がないために青い空は見えないが、そのかわり星の光を遮ることもない。満点の星空の美しさは地球では味わえないものだ。

 

「おりおん?」

 

『狩猟の女神に愛された狩人さ。

死後に天に昇り、星座になった』

 

「あ、ギリシャ神話だっけ。

ちょっと読んだけどなんかきらーい。

みんな嫉妬深いし乱暴だし」

 

訓練中、俺は夜空を眺めながら星座や、星座の元ネタになった神話をシンデレラに教えている。

 

ギリシャ神話のスケール感は嫌いじゃないようだが、神々の性格や人間模様はあまりお気に召さないようだ。

 

『ま、そういう時代だったんだろうよ』

 

「あたしだったらギリシャの女神みたいに

ヒスしないし? 理解ある女だもん」

 

えへんとシンデレラが胸を張る。

うん……うん?

 

『えっ』

 

「……今、えって言った?」

 

『言ってない』

 

「言ったもんログ見れば絶対わかるもん!」

 

『会話ってのはログよりも記憶に残すもんさ』

 

「まーたオズは原始人みたいなこと言う。

ギリシャ神話と平成って変わってなくない?」

 

現代日本社会に対してものすごい罵倒された。

こ、こいつぅ……!と思いながらも、皮肉を言えるくらいに急成長したことが喜ばしい。

 

そんな感慨深さを抱いていたとき、味方機から通信が入った。

 

 

---

 

woodman:

オズ、渡された絵本はすべて読了した

アニメもゲームも楽しんでいる

そろそろ導者(ロードランナー)を引き合わせたいが

どうだろうか

 

lion-heart:

こちらはもう少し時間が掛かります

一週間以内には消化できると思いますが

先に進めていても問題ありません

 

oz-admin:

了解した

……オペレーション・プライマリ発動だ

 

 

 

◆

 

 

 

基地の名前は『天蓋の塔』。

 

そして部隊名は機械化幼兵大隊(ナーサリーバタリオン)。

 

ナーサリー、つまり保育園。

 

名付けたやつは死ぬべきだ。子供を保育園から出さないまま永遠の輪廻に閉じ込めている。

 

いや、輪廻だと思っているのは当事者だけで、二年の使用期間を終えたパイロットは、コックピットという棺桶でただ死を待つのみ。

 

それを否定するために俺は、小学校大作戦(オペレーション・プライマリ)を発動する。

 

今のシンデレラの情緒は恐らく小学生レベルといったところだろう。ウィッチクラフト操作や科学的な知識がインプットされているので口は達者だし、何より、良い子ではある。

 

だが俺以外の人間とコミュニケーションできるかどうかまだまだ未知数だ。

 

人と話す。

 

人と接する。

 

人と協調して何かに取り組む。

 

そんな経験をしてほしい。

 

高位AIからの命令とインプットされた知識だけで自分の世界観を構築するのではない。人と接して、人と話し、友達を作って多くの経験をしてほしいのだ。日本の子供たちが小学校という社会にデビューするように。

 

そのため俺はウッドマンとの共同机上訓練を実施している。シミュレータ上で連携を組みながらナイト……つまりヤドカリと戦うという内容だが、実際には不正プログラムを走らせてサボタージュしている。

 

そうして捻出した時間を利用して、シンデレラは初めて「生身の人間と遊ぶ」という経験をすることとなった。

 

相手はウッドマンのパートナーである39号導者(ロードランナー)。

 

ウッドマンはその子を、とある絵本になぞらえて名付けた。

 

人魚姫、と。

 

「ばーかばーか! 人魚姫のぶぁーかー!」

 

「ばかって言う方がばかですぅー!

あーっかんべぇー!」

 

今、シンデレラの前の前のバーチャルモニタには青い髪の美少女が写っている。

 

シンデレラより少し背が高く、体つきも少しだけ大人びた雰囲気だ。

 

シンデレラの美しさを例えるならばまるでアンティークドールだが、人魚姫はまた異なる雰囲気を放っている。

 

清流を泳ぐ岩魚のような、あるいは大海原を跳ねるイルカやシャチのような、生気と躍動感のある美しさだ。

 

そんな女の子同士が、とんでもない変顔をしてあっかんべえをしたり、泣きわめいたりしている。

 

どうしてこうなった。

 

「ばかじゃないもん!

それにウイルスマンはかっこいいもん!」

 

「でもウイルスマンってあんこもちマンに

いっつも負けてますけど?」

 

原因は推しヒーローの違いによるものだった。

 

こ、子供らしくていいんじゃないかな(ふるえごえ)

 

 

 

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