余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
出会った瞬間は「大丈夫そうだな」と思ったのだ。シンデレラと人魚姫は「あんこもちマン大好き!」で意気投合していたのだから。
だがシンデレラがウイルスマン推しで、人魚姫はあんこもちマンに出てくるきなこもちマン推しと発覚した。そこから熾烈な罵倒合戦が始まってしまった。
「負けたらからなに?
あたしが言ってるのはかっこいいかどうかで、
勝った負けたとかの話じゃないんだけど?
話聞いてなかったのぉー?」
「そんなの説得力ないですし?
強くなければヒーローじゃないですし?」
「……強い弱いとかなら、あたしが最強だもん」
「……なんですって?」
「あんた防衛作戦のとき何してたの?
もしかして寝てたぁー?」
「むっかー! ウッドマン!
この人、性格最悪ですぅ!
作戦行動中は助けてあげたのに
忘れてるですぅ!」
『人魚姫、落ち着け。
残念ながら戦績においてシンデレラに
負けているのは事実だ』
「うわーん!」
『だが人魚姫には人魚姫の強さがある。
それは決して戦績一位に劣るものではない。
キミはキミの強さを伸ばしていけばいい』
そう言いながら人魚姫は、ウッドマンのサブアームに涙を拭いてもらっていた。頭もヨシヨシと撫でられている。
……手つきが丁寧だ。
多分いつもやってもらっているのだろう。
そんな甘やかされ人魚姫は、チラッチラッとシンデレラを見ている。
「私、かわいいですよね?」
『少なくとも惑星ケレスにおいてトップの
美しさとかわいらしさを誇るだろう』
「えへへ~、ウッドマンやさしー。
ウッドマンが一番素敵なウィッチクラフトですぅ」
こ、こやつ……煽ってやがる……!
私のウィッチクラフトってばこんなに優しいんですけど? みたいなマウントをシンデレラに取っている。
てかウッドマン……お前けっこう甘やかすタイプだったんだな……。
まったく、子供に飴ばかり与えるのはいかんぞ。ときには毅然とした態度を取らなくては。
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oz-002:
ジュース飲ませすぎたの誰でしたっけ?
oz-004:
溺愛ロボがなんか言ってらぁ
oz-admin:
うるせー
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と、無粋なツッコミを聞き流している内に、シンデレラが涙目になっていた。
「オズぅ……! なんかくやしい……!」
シンデレラも流石にマウントを取られているのを察していた。こういう悔しさ妬ましさを感じるのは恐らく生まれて初めての経験だろうな。
『わかったわかった。けど仲直りしろよ』
俺もサブアームを伸ばしてタオルで涙を拭く。
ついでに髪を結んであげるか。
今日はツインテにしてみよう。
「あー! なんですかそれ!?
かわいいです! ずるいです!」
人魚姫の反応は劇的だった。
シンデレラを指さして歯噛みしている。
そしてシンデレラはものすごい邪悪な笑顔だ。
タワマン階数バトルに勝利した人妻の顔をしている。
「ずるくないもーん。
そっちのウィッチクラフトにやってもらえば?」
『オズ。そのサブアームの動作プログラムを
教えてほしいのだが』
『わかった。
ついでにヘアアレンジのパターンを幾つか
送っておく』
「やったですー!」
「オズ! なんで簡単に教えちゃうの!」
『いいじゃんかよ。髪型をアレンジするなんて
導者の中じゃお前と人魚姫だけだぜ?』
「あたしだけでも別にいいもん……」
『でも人魚姫はお前のことを見て
可愛いって言ってくれたじゃないか。
褒めてくれる子に、お返しもお礼も
しなくていいのか?』
「う……」
シンデレラの言葉がつまった。
シンデレラは絶対に嬉しいはずだ。自分と同じものを見て、キャラは違えど推しを応援してて、自分の可愛らしさを認めてくれる子と、友達になれないはずがない。
『あんこもちマンはいつもお腹空かせてる子に
餅を分けてあげてるだろ?』
「そうだけどぉ……」
シンデレラが、ちらっと人魚姫の方を見て質問をぶつけた。
「あ、あたしって……かわいい、かな?」
「うん。かわいいです!」
人魚姫が屈託なく頷いた。
今まで泣いたり見下したり悔しがったりしてるのをけろっと忘れて、まじまじとシンデレラの髪に見惚れている。
そんな人魚姫に、シンデレラがほだされた。
「い、いいよ……髪結ぶやり方、教えてあげる」
「ほんと!?」
教えるのは俺なんだがな。
ま、いいか。
「でもコックピットから出るときは直してね。
他の子に見られると面倒だから。
あたしたちだけの秘密よ」
「うん! 二人だけの秘密ですね!」
「あと、教えるのはいいんだけど、
そのかわり……」
あ、なんか条件を付けようとしてる。
タダでは渡せないってことだろうか。友達同士で上下関係や序列にこだわるようならば叱らなければならないが……。
「人魚姫が髪型変えたら……あたしに見せて」
そんなことはなかった。
ほっと胸をなでおろす。
「うん! シンデレラに見せてあげます!」
他愛ない会話をしているうちに、俺はウッドマンにデータを渡した。
ウッドマンがコックピット内ミストシャワーと
乾燥機を使って髪をブローしていく。人魚姫は心地よさそうに髪をウッドマンに委ねていた。
『……一緒にアニメでも見ないか?
ウイルスマンとリリーのおとぎばなしとか』
「あっ、それ好き! 人魚姫は?」
「私も好きです!」
二人が嬉しそうに歓声をあげる。
俺はウッドマンにアクセスし、双方のコックピットのVRモニタ上でアニメ映画を再生させた。
二人は盛り上がりながら映像を食い入るように見ており、時折、相手の顔を見ては微笑んでいる。
……よかった。
この寂しい星の下で、同じ境遇の友人ができる。
きっとこれが大きな希望になることだろう。
『オズ』
『おう、ウッドマン』
『我々は導者を守らなければならない。
我々ウィッチクラフトは仮に人間よりも
コストが掛かっている。
だが本来は人間を守るために作られたはずだ。
それが
『お前……仕様書を発見できたのか』
『お前たちのコミュニケーションを見て、
自分が知覚してない機能が多いと気付いた。
古いデータ領域をサーチした結果、
仕様書を発見することができた』
機体のメモリー領域に、ウィッチクラフトという肉体を動作させるためのマニュアルと、そして設計仕様書が保管されている。
設計仕様書を書いたのは、当然ながらこの機体を最初に設計したメーカーだ。出版年とコピーライト表記がちゃんと書いてあった。
それは今からおよそ700年前。
本来ウィッチクラフトは船外や無重力下、その他、人間が生身で活動できない領域で作業をするための一種の建機であったことが設計仕様書から読み取ることができる。
その汎用性の高さから現代の兵器の雛形となったのだろうが、それでも仕様書から読み取れるのは人の命を守ろうとする意思だ。
どんな地獄のような環境にあっても生きて帰ることができますように、と。
コックピットには緊急脱出装置以外にも生命維持機能があり、衛生管理する機能があり、エネルギー消費を抑えてパイロット生存を優先するセーフモードがあり、SOSを高出力で発信する機能などがある。
なぜ上位者がこれを物理的に外さなかったのかはわからない。
まだヒューマニズムが残っている可能性に賭けたいところではあるが、期待薄だろう。
むしろ上位者は、俺たちが人間のためのものであることを隠し、そしてウィッチクラフトたちがパイロットである
推測になるが、法律や製造上の都合で外すことができないから、隠している……あたりが理由だろうか。だがなんであれ、仕様書の知識は
『見つけてくれてよかった。
教える手間が省けた』
『まだ色々と聞きたいことがある。
……どうすれば導者を守ることの優先度を
高められるか、などだ』
『そうだな……腰を据えて考えていこうぜ。
そのためにはまず生き残ることだ』
『了解した』
がんばれウイルスマンという合唱が聞こえる。
今、映画の中では、あんこもちマンとウイルスマンが手を取り合って巨悪を倒し、世界に平和をもたらしたところだった。