余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
『……つまり古参兵とコミュニケーションを
取るということだろう?』
ウッドマンがちょっと呆れた様子で答えた。
『ま、そうなんだがな』
『しかし大丈夫なのか?
コンタクトを取った古参兵が、連中と
同類という可能性も……』
『もちろんそのリスクはある。
だから人魚姫と似たような支援能力に
特化したウィッチクラフトを探し出した』
『ならば異存はない』
『そこはもっと疑念を抱いても
いいところだぞ?』
ウッドマンは人魚姫が絡むと色々と判断が甘くなる傾向があるな……。まあ俺も他人のことは言えないが。
『いや、人選にしっかりと方針を
持っているならば問題ない。
人魚姫の名を出されたから
譲歩したわけではない』
すみません邪推しました。
……などと会話を楽しんでいたら、早速、古参ウィッチクラフトからお返事が返ってきた。えーと、なになに……。
【礼儀正しいメッセージを受け取り、喜ぶと共に謝罪を伝えたい。俺は82期12号だが、ヘルムと呼んでくれ。
きみたちが欲してるのはご指導ご鞭撻、という一般的な教育やスキルアップではなく、ジャベリンとガントレットの武装や性能についてだろう? 残念ながら、それを語る権限は俺にはない】
『ちっ、ここにも根回しがされてやがる、が……』
メッセージには続きがある。
……このウィッチクラフト、なかなか話せるやつだ。
【しかし、禁じられているのは対戦相手の情報だけだ。一般論として、実践投入されたウィッチクラフトが自身の装備を拡充するノウハウなどは教えても問題ないだろう。
そして俺が君たちに情報提供した……という事実もジャベリン、ガントレットには伏せられる。対戦相手が一方的に有利になることはないだろう】
ふむ……。
ジャベリンとガントレットに与するつもりはない、ということか。
【その上で俺からの情報提供を望む場合、こちらは対価を要求する】
『対価? まさか……』
ウッドマンの声が曇る。
メッセージの相手も
だが、この相手……ヘルムと呼ばれるウィッチクラフトが要求してきたものは、更に予想外なものだった。
【101期小隊はしばらく基地周辺や旧産業集積クラスタの哨戒任務に充てられるはずだ。
そこでオズ、君が仕留めたマツバガニの死骸を回収してもらえないだろうか。特に電磁フィールド発生器官となる角の部位が重要だ】
『カリディアンの死骸? なぜだ?』
『わからん、わからんが……
これは回収しておいた方が良さそうだ』
追伸に、こんなことが書いてある。
【仮にこちらの要求を拒むとしても、強敵のカリディアンを撃破したときその主兵装となっている器官は回収した方がいい。
生き残りのカリディアンに食われでもしたら、みすみす敵の成長を見逃すと同時に自己の成長をも放棄することになる】
ふむ……いきなり当たりを引いたかもしれないな。
ヘルムには何か思惑があるのかもしれないが、それを探ることを含めて接近する価値はある。
『その話、乗ってみようじゃないか』
◆
運よく俺たちは、模擬戦闘の開始前に旧産業集積クラスタの哨戒任務に潜り込めた。
訓練時間が減るのは仕方ない……と言いたいところではあるが、俺は任務中にも可能な、ちょっとした課題をシンデレラと人魚姫に与えることにした。
「あーもう、足が
「けっこう疲れるですね、これ……」
それは、できる限りAIのサポートを受けずにウィッチクラフトを動かすマニュアル操作だ。
ウィッチクラフトのコックピットには、操縦桿、フットペダル、各種ボタン類といった、現代人にも馴染みやすいコントロール装置が存在している。
だがすべてを使わずとも最低限、操縦桿と脳波だけでコントロールが可能だ。
というかその方が普通である。人型巨大兵器なんて複雑怪奇な代物を一人の人間がポチポチボタンを押して操作すること自体、ちょっと無理があるのだ。
ただ、脳波だけの制御はできない。技術的には可能だが禁止されている。ぶち殺したいと思った瞬間にトリガーを引いてぶち殺したという結果が起きてしまってはフレンドリーファイアだらけだ。
本当に撃って良いか?という決断のために物理的なトリガーが存在し、指でトリガーを弾かない限りビームも弾頭も発射されない。
だから俺たちウィッチクラフトは、『機体をこんな風に動かしたい』という
だが、本質的には機械だ。
手足の着いた戦車であり、短時間航行が可能な船であり、多目的工具だ。
人間の模倣は可能だが、ウィッチクラフトが本当に得意とする動作や苦手な動作とする動作は人間とは少々異なる。それを把握し、より適切なイメージで俺たちを駆動してもらうために、あえてマニュアル操作をシンデレラたちに学んでもらっているのが理由の一つ。
「でも、エナジーゲインが全然残ってるね。
まだ5%しか消費してないよ」
マニュアル操作時は普段は操作できない電源供給の量を
エネルギーの節約になるし、敵に発見される確率も減らせる。発する熱量も電磁波の量も減るからだ。まあ目視で見られたらどうしようもないが。
「私の方は3%ですぅ」
「え、なんで?」
『シンデレラの動かし方だとバランサーに
若干の負荷が掛かってるな。
人魚姫のように無駄のない歩き方の方が
エネルギー節約になるし、なにより静かだ』
「うっそ!?」
「えへへー、私の方が上手いですぅ」
「ぐぬぬ……やるわね……」
人魚姫がご満悦の笑みを浮かべて、シンデレラはなかなか悔しそうだ。
ま、ご満悦なのも当然だろう。シミュレータにおいてシンデレラ(俺)VS人魚姫(ウッドマン)という対戦を何度もやっているが、ほとんどにおいてシンデレラが勝利している。障害物が多く遠距離戦主体でようやく互角で、人魚姫が明確に「勝った」と言える勝負は少ない。
だが、こうして慎重かつ正確な操作を求められるシチュエーションでは人魚姫に分がありそうだ。
『で、目当てのものは見つかったか?』
「手伝ってよぉオズぅ。疲れたぁ」
『だーめ。つか実際に歩いてるのは俺だぜ?』
「オズはウィッチクラフトだから
疲れないじゃん」
『そうやって注意を払うのもトレーニングだ。
画面上に情報は出すから、そこから必要な情報を
自分で取捨選択するんだ』
ウィッチクラフトの画面には数多くの情報が存在する。敵味方、熱源、電磁波、大気の組成や有害物質情報、アクティブレーダーの返り値やパッシブレーダーの反応、カメラアイの拡大率や明度輝度など。
だがすべてを表示するとなるとあまりにも膨大だ。
「うーん……
カリディアン用のレーダーを最高強度で出して」
『それだとワタリガニの反応も出ちゃうぞ?』
「探してるのは角でしょ? マツバガニの死体と違って、熱とか電磁波がまだ残ってるかもしれないじゃん。だから他のレーダーの情報と組み合わせれば絞り込めるかなって」
『よし、やってみよう』
「だいじょうぶ? 間違ってない?」
『間違ってたっていいんだ』
「ええー、当たってるとか外れてるとか
言ってよぉ」
『せっかちだなシンデレラは。
実験ってやつを楽しんでみようぜ』
「オズってば、本当てきとー」
シンデレラはぐちぐち言いながらも、どこか楽しそうに複数のレーダーのサーチ結果を組み合わせ、それでもなお大量のデータを様々な見方で分析し、欲しい情報を絞り込んでいく。
探索の基本的な流れだ。普段ならば俺たちウィッチクラフトが勝手にパッパとやってるから
そんな大人の都合で学ぶことを制限させたら、悪い大人の食い物にされるだけだ。
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woodman:
マニュアル操作を教えたり
探索の仕方を教えるのは、
操作技術向上のため……
だけじゃないだろう?
oz-admin:
セーフモードは反応を極小にできる
レーダー探知に引っ掛からない
模擬戦闘の場所を考えると
覚えておいて損はない
woodman:
そうじゃない
oz-admin:
……なんだ、わかってたか
woodman:
セーフモード時のマニュアル操作は本来、
機体の故障や友軍から離れて宇宙で
孤立したなど、非常時のためのものだ
模擬戦闘に備えて……というより、
模擬戦闘を利用して非常事態の
訓練をさせているな?
oz-admin:
どっちが主目的ってわけでもないな
強いて言えばどっちもだ
woodman:
なるほど、了解した
oz-admin:
模擬戦闘訓練を優先した方が
よかったか?
woodman:
不満があるわけでは……あ、いや、
あるかもしれない
より正確に言えば、懸念か
oz-admin:
マジか
すまん
woodman:
責めているわけではない
オズの判断には信を置いている
だが一人ですべてを決定するのは
常に危うさを伴う
「万が一が起きたときにどうするか」
が求められるのは
オズ自身もそうだろう
oz-admin:
それは……いや、まったくその通りだ
woodman:
すべてを相談しろとは言わないが、
すべてを自分だけの責任にするな
我々はすでにチームなのだ
oz-admin:
精神年齢が追い越されちまったな……
ありがとう、ウッドマン
woodman:
では、本命の目的を話してもらおうか
概ね推測はできてるが
oz-admin:
簡単な話だ
マニュアル操作とセーフモードの
オンオフを理解していれば
気に入らねえウィッチクラフトの
コックピットに送り込まれたとき、
そいつを封じ込めることができる
「お前のサポートなんかいらない」
ってな
oz-admin:
ま、実際に封じ込めるのは
とっても諸刃の剣だが……
できるのとできないとでは大違いだ
woodman:
そうだな、我々が負けたときは
必要になる力だ
同時に、我々が
強いられる恐れもある
oz-admin:
マニュアル操作を習熟していない今なら
まだそこまでの脅威じゃあない
止めさせるか?
woodman:
続けるべきだ
oz-admin:
なぜ?
woodman:
ウィッチクラフトと
フェアな関係ではないのだ
導者《ロードランナー》には自由がない
我々とて自由はないが、それでも我々は
この子たちを管理・監督するという名目で
支配していることに他ならない
woodman:
支配に抵抗する手段があるならば、
喜ばしいことだ
その手段を濫用しないように教え込むのは
管理監督する我々の責任であるだろう
oz-admin:
疑似人格にお前の爪の垢を飲ませたい
woodman:
冷却用の不凍液か廃オイルしか出ないさ
汗も涙も流すことはない
oz-admin:
冗談だ
そのうち……ちょっと後ろ暗いことも
相談させてくれ
woodman:
何もかも一人で背負うな
オズはそういうアニメをたくさん
見てきただろう
oz-admin:
まったくその通りで禿げ上がりそうだ
oz-admin:
……ん?
なんかレーダーに反応があったな
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意識をコックピットに戻すと、シンデレラがぴょんぴょん跳ね飛びそうなくらい喜んでいた。
「ねーねーオズ! 見つけた!」
「私も見つけたです!」
シンデレラと人魚姫が、レーダーを駆使して目当てのものを見つけた。
俺たちに頼りきりになることなく、創意工夫を凝らす。
この子たちは日進月歩どころか秒速分歩で成長していく。