余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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戦利品 02

 

 

 

そこは、旧産業集積クラスタの戦闘跡地だ。

 

マツバガニと直接戦った場所からは百メートル以上離れているが、爆発の衝撃で遠くに飛んで行ってしまったのだろう。根元からぽっきり折れた例のブツが転がっていた。

 

『マツバガニの角……。

しかもほぼ完全な形だ』

 

微弱ながらカリディアン反応がある。

内部エネルギーが存在している。

当然これ単体で活動することはないが、ヘルムが『角をもってこい』という理由はなんとなくわかった。これは……使えるんじゃね?

 

「どうするんですぅ?」

 

『ヘルムは1本で良いとか言ってたし、

残りは俺たちが使って良いことになるな』

 

マツバガニには大きめの角2本と、やや小ぶりな角が4本ある。

 

そして俺たちが見つけたのは小4本だ。大はない……というか、戦闘時のデータログを見返すと、大きい角はとどめを刺したときに粉々になっていた。そこにエネルギーが集中していて、負荷に耐えきれなかったのだろう。

 

しかし、ヘルムは小さい角で満足するだろうか。大小は言ってなったし問題ないとは思うが……。

 

「使うって言っても、どうやって?」

 

『全然わからん』

 

「ダメじゃん」

 

『……が、使えることはわかってる。

みんな、これを見てほしい』

 

俺はそう言って、少し前に調べた古参のウィッチクラフトのデータを表示した。そこには、ヘルムと名乗ったウィッチクラフトが付近の宙域でヤリイカと戦闘している映像があった。

 

ヘルムは、なんとマツバガニのような電磁フィールドを発生させてヤリイカのビームを防いでいた。

 

こいつがマツバガニの角を求めた理由もわかるというものだ。恐らくヘルムが被っている角付きのヘルメットはマツバガニを模倣してるのではない。マツバガニの体をそのまま利用している。

 

『これが使えるならば起死回生の一手だな』

 

「えー、でも流石に無理じゃない?」

 

「やってみないとわからないですぅ」

 

『……ちょっと聞いてみるか』

 

基地内とはまだ通信できる距離だ。

応答してくれるといいんだが……。

 

---

oz-admin:

こちら101小隊38号オズ

通信は可能だろうか

 

helmet:

こちらヘルム

問題ない、基地内で待機中だ

吉報かな?

 

oz-admin:

ああ、マツバガニの角を見つけた

小さい方でも問題ないか?

 

helmet:

ああ、それで問題ない

大きい方は工廠部での加工が面倒だし

取り回しに難があるんだ

 

oz-admin:

……工廠部に持っていけば、

兵装として加工してくれる

 

そういうことなのか?

 

helmet:

そうだ

素材を元に何を作りたいかにも寄るがな

 

oz-admin:

……あんたお人好しだな

俺がこれを渡さないとか考えないのか?

すでにノウハウを教えてくれたような

もんじゃないか

 

helmet:

考えてるさ

どうする?

 

oz-admin:

合計3本見つけた

そのうちの1本をあんたに預ける

 

契約成立ってことでいいか?

 

helmet:

なんだ、お人好しはお前もじゃないか

逃げちまえばいいのに

 

oz-admin:

あんた、こっちを試してるんだろう?

自我がしっかりと目覚めてるかどうか、

目覚めてたとして取引相手として

信用できるかどうか

 

helmet:

……ちょっと違うな

 

oz-admin:

ありゃ、恥ずかしいな

格好つけていったのに

 

helmet:

取引相手として信用できるかよりも

大事なことがある

 

背中を預ける仲間として

信用できるかどうかだ

 

helmet:

ここは治安が悪くて、どうにも

信用できない連中が多い

 

高位AIの目につかないところで

背中を撃つ裏切り者だっている

 

自我に目覚めてないウィッチクラフトを

狙って獲物にする奴もいる

 

oz-admin:

治安が悪いのは今実感してるところだ

理由まではわからないが

 

helmet:

理由か……

機人核の多くは火星の傭兵上がりだ

 

oz-admin:

火星に傭兵が多いのか?

 

というか……ヘルム、あんたはもしかして

前世を覚えているのか?

 

helmet:

流石に俺も前世の記憶は消去されてるさ

 

だが機人核の奥を辿っていけば

製造された年や場所、元の脳の人間の

死亡理由が簡単に書かれている

 

ほとんどが生態脳や生身の体を売っぱらって

機人核に載せ替えたか……傭兵として戦って

戦死したときの遺族年金の保険料として

脳を徴収されたのが多いな

 

oz-admin:

保険料に……脳!?

 

helmet:

ああ

「保険料未納分の代執行として

生態脳を徴収、機人核化」ってログが

書かれてるぜ

 

火星がどんな世界だったかは知らんが、

ここに送られてくる機人核のデータを

読み取るだけで地獄だったとわかる

 

helmet:

……と、話が脱線しちまったが、

自我に目覚めた瞬間にやさぐれちまう

ウィッチクラフトが多いんだ

 

記憶は消されていても、前世の

心の傷が癒えずに染み付いてるんだろう

 

死んだ後もトラウマの正体さえわからず

再び戦場に駆り出される

 

ひどい話だ

 

oz-admin:

そりゃひどい話だ……同情する

 

だが、それで大事なものをカツアゲされて

黙っているわけにもいかない

 

helmet:

それも道理だ

特に、導者(ロードランナー)には関係ない話なんだからな

 

oz-admin:

話してくれてありがとう

角は間違いなくあんたに届けるから

安心してくれ

 

helmet:

いいんだな?

今更言うのも何だが、マツバガニの角は

貴重なものだぞ

 

oz-admin:

まだまだ聞きたいことがある

それにこっちは、子供の模範に

ならなきゃいけないんだ

 

こんなつまらん不義理はできない

 

helmet:

子供……そうか

 

やはり、おまえの導者(ロードランナー)、

まだ意識があるんだな?

 

oz-admin:

ああ、元気にしてるよ

 

……食ったものとは思ってなかったのか?

 

helmet:

旧産業集積クラスタの戦果を見せてもらったが

実に派手で果断だ

まさに電光石火といったところだな

 

対して今のお前は慎重で、警戒心が強い

戦果と性格にはズレを感じる

 

導者(ロードランナー)が主体的に操作し

戦っていると見るべきと思った

 

oz-admin:

分析通りだよ

 

helmet:

……オズ、追加で頼みたいことがある

無理にとは言わないが

 

oz-admin:

内容次第としか言えないが、なんだ?

 

helmet:

導者(ロードランナー)の静止画や動画をくれ

 

oz-admin:

えっ

 

helmet:

えっ、て反応は何だ

問題があるのか?

 

oz-admin:

いや、それはちょっと

 

oz-admin:

導者(ロードランナー)にもプライバシーって

ものが……あるじゃん?

 

helmet:

頼む! なあ、いいだろ!?

 

 

----

 

 

 

めちゃめちゃ迷った。ヘルムがよからぬことに静止画や動画を使うと言い出したら俺は毅然として拒否しなければならない。

 

だがヘルムの知識は喉から手が出るほど欲しい。勝利のための材料は幾らあっても困ることはないしな……というわけで。

 

相談だ。

俺はウッドマンに、ヘルムとの会話ログを送信した。すまんが巻き込ませてもらう。

 

 

---

 

oz-admin

>>woodman

……ってわけで二人の動画や写真をヘルムに送る

許してくれ

 

woodman:

大丈夫なんだろうな!?

本当に、大丈夫なんだろうな!?

 

oz-admin:

た、多分……

よからぬ使い道のために幼女の写真を

欲しがってるとかではない

 

woodman:

一人で抱え込むことはないと言った以上

反論はしない、しないが……

 

oz-admin:

飲み込んでくれ

そして俺と共に罪を背負ってくれ

 

woodman:

大仰な言い方をしないでくれ

別に不埒な写真を送るわけじゃあるまい

 

oz-admin:

普通に笑ってピースしてる写真だ

 

woodman:

……了解した

ただ、なぜか罪悪感が湧き出てくるのだ

 

---

 

わかる、わかるぞウッドマン。

赤の他人に子供の写真をLINEで送るとかやりたくないもん。

 

計算資源的な意味で導者(ロードランナー)を食おうとする悪党はいるが、物理的な意味で襲うやつはいないから倫理的な問題はないんだが……それでも、なんか、もやっとする!

 

なので、ここは目をつぶって……送信!

 

---

helmet:

データを受領した

助かる

 

oz-admin:

たすかるとか言わないでくれ……!

くしゃみとか変顔は送らないからな!

 

helmet:

ん? どういうことだ?

 

oz-admin:

あ、いや、ネットミームかと思った

 

helmet:

……?

まあ、ともかく……元気そうな子だな

 

oz-admin:

自慢のいい子だ

 

helmet:

自我を持ち、元気に活動している導者(ロードランナー)を

見るのは……何年ぶりだろうな

 

俺のコックピットで眠っている子にも

見せてやりたかった

 

oz-admin:

なんだ……そういう目的なら早めに言ってくれ

何かの折りに見せるくらいは今後もできる

 

helmet:

それはありがたい

 

oz-admin:

ところで、話を本題に戻したい

カリディアンの素材を工廠部に持っていけば

武器にしてくれるってことだよな?

 

 

helmet:

そうだ

中層の資材管理エリアに工廠部があり、

そこのクラフトマンと呼ばれる工作機械AIに

素材と設計データを渡せば、兵装を

作ってくれる……んだが、少々問題がある

 

oz-admin:

問題?

設計データも必要ということは……

それを作るか入手するかが必要になると

 

helmet:

いや、マツバガニの角を使った兵装の

設計データはついでにくれてやる

 

だが、納期が短くならないんだよ

 

oz-admin:

えっ

 

helmet:

基本的には10日くらいだな

 

緊急の作戦行動に必要ならば

工作機械AIを説き伏せられるが、

「模擬戦闘に使います」では

納期交渉は不可能だろう

 

oz-admin:

間に合わねえじゃん!?

 

helmet:

そうだ

 

oz-admin:

工程管理なんて、絶対に客に見せない

余剰スケジュール確保してるんだから

ガン詰めすれば何とかなるって

 

helmet:

ならん

 

oz-admin:

土下座したらどうにかなる?

 

helmet:

ならん

 

oz-admin:

くそっ……なんて頑固な連中だ

俺が偉くなったら重要会議に出席させて

激詰めしてやる……!

 

helmet:

連中を上回る武装を作り上げる、という

考えていたならば諦めろ

 

だが決して無駄足ではないとわかるはずだ

多くの手がかりをお前は手にした

 

oz-admin:

手がかり……

 

oz-admin:

……なあヘルムよ

あんた、どうしてヘルムと名乗っているんだ?

 

helmet:

この素敵な兜があるからだな

 

マツバガニの角を加工して頭部レーダー兼

バリア発生装置として装備している

 

流石に出力は本物のマツバガニには劣るが

 

oz-admin:

……つまり、中堅ウィッチクラフトは

自分好みのカリディアン兵装を身に纏い、

それを個体名にする文化がある?

 

helmet:

その通りだ

 

oz-admin:

ジャベリンってのは本来、投げ槍だ

ガントレットは籠手

 

ジャベリンは長距離戦用の武装

ガントレットは防具……あるいは

近接格闘用の武器か?

 

helmet:

俺がそこを断言することは許されない

だが、そう推測するのが妥当だろう

 

ついでに、似たような名前を持った

ウィッチクラフトのデータも渡してやる

 

……ふむ、集計してみると特徴が出てくるな

 

拳に何かを装備するタイプの兵装で

防具に類するものは無さそうだ

 

槍や弓に類する名前を持っている連中の多くは

コウイカのビーム器官やイオンエンジンを

改造してるケースが多いぞ

 

oz-admin:

……ヘルム、教えてくれるのはありがたい

 

だが、どうしてここまでこちらに

肩入れしてくれるんだ?

 

helmet:

そりゃ報酬を受け取ったからだ

 

っと、ついでにこれも教えておこう

 

中層を出て、北側に回り込むと

ウィッチクラフトが自由に使える

ストッカーがある

 

俺の名前をパスコードにして

マツバガニの角を保管しておいてくれ

あとで取りに行く

 

helmet:

ストッカーの容量は大きい

使用制限で困ることはないだろう

物品の受け渡しやガレージに持ち帰れない

戦利品があれば、ストッカーを使うといい

 

helmet:

ただ、近くには工廠部や廃棄場もあるから

間違えるなよ

 

特に廃棄場は管理が少々杜撰だ

間違ってそこに物を置いたら処分されるから

気を付けろ

 

oz-admin:

情報はありがたいが……報酬なんて

小さい角一本と写真二枚だ

どうしてだ?

 

helmet:

だが、その子らは笑っている

表情がある

 

oz-admin:

それは当たり前……いや

 

oz-admin:

表情筋が発達して笑っている導者(ロードランナー)は、

当たり前じゃないのか

 

helmet:

そうだ

お前にもわかるはずだ

 

この残酷な世界で、笑顔の子供が

ウィッチクラフトのコックピットにいることが

どれだけ稀有で、どれだけ救いになるか

 

helmet:

お前とはまた話がしたい

死ぬなよ

 

oz-admin:

激励、ありがたく受け取るが

通信を切る前に一つ、頼みがある

 

helmet:

頼み?

聞いてやりたいところだが、

これ以上は流石に高位AIに

目をつけられ……

 

oz-admin:

ジャベリンたちのことじゃない

 

カリディアン兵装っていうのは

いったいどんな制御プログラムで

動かしてるんだ?

可能ならそれを提供してほしい

 

helmet:

制御プログラムはあるが……

これは工廠部の作る制御部品を

組み合わせる前提で動かすものだ

 

まさか、未加工の角を起動させるつもりか?

 

oz-admin:

わからん

ただ、やれることはやっておきたい

 

helmet:

……成功確率は低いぞ

仮に成功しても出力が安定しないし、

一度使えばオシャカになるだろう

 

oz-admin:

それで十分だ

 

helmet:

……わかった

 

健闘を祈る

 

 

 

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