余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

24 / 44
模擬戦闘訓練 03

 

 

 

『ちっ、流石にセーフモードじゃ威力が

絞られるな……。だがレーダーは壊せたし

よしとするか。

人魚姫、次のフェーズに移行しよう』

 

『了解です……セーフモード解除!』

 

人魚姫がコックピット内の物理ボタンを押してセーフモードから通常戦闘モードに移行。エナジーがボディ全体に充足していく。スラスターを噴出してようやく砂の中から飛び出した。ふー、すっきり。別に俺は呼吸なんてしないのに、なんか息苦しいような気がするんだよな。

 

『っざけんなよ! 卑怯な真似しやがって!』

 

『お前が言えたクチかよ』

 

「まったくその通りですぅ」

 

罵声を無視して俺=人魚姫が連射モードでビームライフルを放った。だがジャベリンは反射的にディストーションシールドを張って追撃を防ぐ。流石にここでやられはしないか。

 

『いつの間に後ろに回り込みやがった!』

 

『お前が援護しようとして失敗してる間だ』

 

「まさかベテランが引っ掛かるなんて

思わなかったですぅー」

 

ジャベリンのディストーションシールドが連射を喰らってエネルギー消費が加速し、シールド範囲がみるみるうちに狭くなっていき……やがてエネルギーが枯渇してシールドが消える。これで大型ビームライフルに回すエネルギーもあるまい。ただのカカシ状態だ。

 

俺=人魚姫はロックオン状態のまま、ゆっくりと歩みを進めて距離を詰める。

 

ジャベリンは何もかもわからないまま敗北する……と思いきや、答えに辿り着いた。

 

『熱源でも電波でもわからなかった……。

ケレスの砂が索敵を妨害するとしても

誤魔化しきれるわけがねえ……。

ステルス装備があるわけでもねえ……。

まさかお前ら……

メインバッテリーを落としたのか?』

 

『なんだ、知ってんじゃねえか。

そのとおり、サブバッテリーだけで起動する

セーフモードだよ』

 

「知ってるのに気づかなかったんですか?」

 

『ふっ、ふざっ、ふざけんな!

手足の直接操作でこの距離を

這いずり回ったってのか!?

ウィッチクラフトのサポートもねえ

マニュアル操作だぞ!?

導者(ロードランナー)にできるわけねえだろうが!』

 

「このくらい練習すればどーとでも

なるんですけどねー?

オートでしか動かせないんですかぁ?」

 

『この野郎……!』

 

ジャベリンがライフルそのものを投擲する。同時に超振動ブレード(オイスターナイフ)を抜刀。怒りの咆哮と共に駆け出した。

 

だが俺=人魚姫はスラスターで急速後退。

 

人魚姫は、相手の勝負に付き合わない。シンデレラのように烈火の如き勢いで敵を打ち砕くスタイルではない。

 

埋伏し、罠を張り、確実な好機を見出す。

そういうタイプの導者(ロードランナー)だ。

 

シンデレラが遊撃的に動き、それをサポートする。あるいはシンデレラに遊撃的に動いてもらい、ここぞという痛打を食らわせる。

 

『来やがれ! おい! 来いよ!』

 

どんなに煽られても人魚姫は冷徹にトリガーを引いた。

 

ブレード固定部破損判定。

 

左脚部スラスター破損判定。

 

右腕部マニピュレータ破損判定。

 

後背部バックパック破損判定。

 

左肩連結部破損判定。

 

左膝関節駆動部破損判定。

 

果実の皮を剥く様に、確実に、丁寧に、ジャベリンの機体を破壊し……。

 

【9515号機、頭部破壊による行動不能。

よって10138号機、10139号機、

両名の勝利】

 

無機質なマントリの声が、勝利を告げた。

 

 

 

◆

 

 

 

 

oz-admin:

こちらの勝利の要因は二つ

 

ただしカリディアン兵装を調達できたのは

勝利の要因じゃない

 

Gauntlet:

なんだと?

 

oz-admin:

お前のナックル封じは8パターンくらい

思いついたからな

 

ただ一番確実で、お前たちに衝撃を

与える方法を取っただけだ

 

oz-admin:

俺が一番恐れたのは、ナックルを捨て

二人がかりでヤリイカ兵装を装備して

ちくちく撃ってくることだった

 

その選択を選ばず、そして遠距離戦を

捨てた時点で俺たちが勝利する確率は

大きく上がった

煙幕に隠れての導者(ロードランナー)の交代も

上手く行ったしな

 

それが一つ目の勝利の要因だ

 

Gauntlet:

……ナックル封じはわからんでもない

 

だがセーフモードであの距離を

移動するなど狂気の沙汰だ

 

Jabelin:

実戦で何もできなかったガキに

作戦の命運を……いや、それどころか

自分のボディそのものを預けたってのか?

イカれてやがる

 

oz-admin:

人魚姫はセーフモードでダンスだって

踊ってみせるぜ

シンデレラにさえ不可能な芸当だ

 

oz-admin:

ってわけで、これが二つ目であり

本命の勝利の要因だ

 

お前たちは侮ったんだ

子供の可能性を

 

結果を出した人間しか見ずに

これから成長するであろう人間を、

ただの消耗品としか捉えなかった

 

oz-admin:

さて、他に質問はあるか?

答えられる範囲でなら答えてやるぜ

 

Gauntlet:

……好きにしろ

 

Jabelin:

どーせこっちの武器でも

持ってくつもりだろう

好きにしろや

 

oz-admin:

いや、そういう話じゃない

この話を聞く勇気はあるのかと確認したい

 

Gauntlet:

なんだその意味不明な言葉は

話せるなら話せ

 

oz-admin:

お前たち一昨日の哨戒任務で何をしてきた?

 

Gauntlet:

……タイプ:マジシャンと交戦し二機撃破

その後、コックピットモジュールごと漂流中の

導者(ロードランナー)を救出したが、生命維持に

問題があったため廃棄場に提出した

 

oz-admin:

ずいぶんと都合の良い故障だな?

 

ウィッチクラフトの頭部は損傷していたが、

機人核とコックピットモジュールだけが

無事だった?

 

Jabelin:

……そういうこともありえるだろうがよ

中の導者(ロードランナー)が故障してたとしても

基地に戻してやったんだ

感謝してほしいくらいだねぇ

 

oz-admin:

しらばっくれてんじゃねえ

 

お前の本当のパートナーをゴミ捨て場に

投げ捨てて何とも思わねえのかって

聞いてるんだ

 

ご丁寧に副脳のデータまで入れ替えやがって

 

Jabelin:

うるせえ! 何の証拠があるってんだ!

 

oz-admin:

最後通牒だ、ガントレット

資材集積場に投棄した導者(ロードランナー)について

一切弁明はない

そういうことでいいんだな?

 

Gauntlet:

……貴様に何がわかる!

 

生きて、喋る導者(ロードランナー)を抱えている貴様には!

 

oz-admin:

喋ることのできる導者(ロードランナー)の

演算力を奪って自我を得たのはお前らだろうが

 

Gauntlet:

生かそうとしたに決まってるだろう!

 

oz-admin:

……そうなのか?

 

Jabelin:

……当たり前だろうが

導者(ロードランナー)の指示なしで行動できるのは

確かに快適だぜ

自律的に行動できるんだからな

 

だが、そのために、死体みたいなガキを

乗っけたままで居心地いいなんて

ウィッチクラフトはいねえさ

 

Gauntlet:

それに、長く生かそうとしたところで

こんな地獄のような戦場で導者(ロードランナー)の

精神など、どうせ耐えられん

 

ここは地獄だ

 

今どんなに導者(ロードランナー)が元気だとしても

いずれ諦め、生を手放す日が来る

 

oz-admin:

だとしてもあの子はまだ生きていた

 

Gauntlet:

死んでいたよ

 

演算リクエストや権限リクエストに

自動的に応じるだけで、問いかけや言葉には

一切応じなかった

 

しかも日に日に反応が弱まって、衰弱が始まり、

戦闘糧食の経口投与が不可能になった

 

腹に穴を開けて胃に直接投与したがそれさえも

受け付けなくなり、日に摂取できるカロリーが

800を切った

 

様々な疾病を併発し、痛覚カット機能も、

神経系が侵されて機能停止が迫っていた

 

……単純な癌だ

 

覚醒状態や訓練中の導者(ロードランナー)ならば

医療用モジュールの使用の許可が

出ることもあるが、食われた導者(ロードランナー)に

使用許可など出ない

 

実質的に死んでいたと変わらん

いや、死なせてやるべきだった

 

oz-admin:

だったらなんで俺がお前たちの武装を

すべて把握できたと思う

 

Gauntlet:

ふん、ブラフで揺さぶってるつもりか

どうせ別のウィッチクラフトから

情報提供があったのだろう

 

呼びかけに答えたとでも言うのか?

 

oz-admin:

情報提供はあったし、ほぼ推測はできていた

だがシャコの拳を利用したプラズマ発生装置か

ヤドカリの盾を使ったカウンター兵装かは

確信が持てなかった

 

oz-admin:

……俺が人間だった頃の話なんだが、

祖父の死に立ち会ったことがあってな

 

ほとんど寝たきりだったが、死ぬ前日に

目を覚まして家族と会話をして……

安らかに死んだよ

 

これを終末期明晰って言うらしい

 

遺伝子改造された導者(ロードランナー)の身に

起きても不思議ではない

 

Jabelin:

人間だった頃? お前、もしかして……

 

Gauntlet:

う……嘘をつくな!

9407号導者(ロードランナー)は俺に食われてから

一切こちらの呼びかけに何の言葉も返さなかった!

この6年の間、何万回呼びかけたと思う!

 

oz-admin:

言葉や呼びかけに答えられるほどの

劇的な覚醒をしたわけじゃない

 

だが、ほんの僅かに意識レベルの回復があり

脳内ストレージにアクセス可能になった

 

そこには、写真と映像があった

 

Gauntlet:

写真……?

いや、確かに導者(ロードランナー)の副脳は

自動的に映像が流し込まれる

 

だが静止画を保管するような能動的な反応など

するはずが……

 

oz-admin:

全部、お前が自慢げに武器を振るってる場面だよ

ついでにジャベリンの画像もあった

転送してやるよ

 

Jabelin:

おいおいおい……これは……

 

oz-admin:

お前らがお気に入りの武器に喜んでいる場面

お前らがカリディアンを倒した場面

お前らが戦闘で生き残って喜んでる場面

 

思い出のアルバムみたいなもんだ

 

Gauntlet:

ふざけるな!

そもそも副脳の記憶領域は入れ替えたのだ!

こんなもの偽造に決まってる!

 

oz-admin:

偽造と疑うなら隅々まで調べろよ

お前の記憶と符合するはずだし

何より……データを入れ替えたのは

副脳だけだろう

 

Gauntlet:

ばか、な……

一体どうやって……

 

oz-admin:

……生身の人間ならば本来の脳がある

 

導者(ロードランナー)ならば、自分の記憶したものを

本来の脳内でデジタル化し、誰からも

干渉できないようにデータを

ロックすることも理論上可能だ

 

Gauntlet:

だとしたら、それが本当なら……俺は……!

 

Jabelin:

落ち着けガントレット!

そんな写真が残ってたのは偶然に決まってる!

偶然じゃなきゃ……

 

oz-admin:

偶然じゃなきゃやってられないってか……

そうだろうな

 

だがこれは現実だ

お前もきっと最初だけは俺達と同じように、

導者(ロードランナー)が生き残る道を

模索していたんだろう

導者(ロードランナー)もきっと、自分を食ったお前と

狩猟の日々を無意識の中で楽しんでいた

 

だから、俺はお前たちが許せない

 

死まで秒読み段階の導者(ロードランナー)だとしても、

投棄する以外に弔う方法がないにしても、

お前がコックピットモジュールを

使い捨ての電池みたいに捨てたこと、

救助を求めるウィッチクラフトを

ゴミのように焼いたこと……

 

どちらも償ってもらう

 

Gauntlet:

……俺の導者(ロードランナー)は、今、どうなった

 

oz-admin:

集積場の処分工程にアクセスしてみたが、

コックピットモジュールは機人核と共に

修理に運ばれた

恐らく新造機体に回されるだろう

 

その過程で中の導者(ロードランナー)は排出され、

偽のIDのまま培養槽の素材に直行だ

 

だから、他の死んだ導者(ロードランナー)と同じだ

死体は分解されて新たな導者(ロードランナー)の素材となる

 

Gauntlet:

……そうか

 

oz-admin:

あいつらが信じているように、

新たな導者(ロードランナー)として

生まれ変わってくれたならと思うよ

 

oz-admin:

さて……俺から話すべきことはもうない

遺言なら聞いてやる

 

Jabelin:

……今の会話で、おおよそ

てめえの正体が掴めた

 

少なくともまっとうな

新造機人核じゃない

 

2300年から2400年あたりか?

古代機人(レガシー)であっても不思議じゃねえ

 

oz-admin:

想像に任せる

 

Jabelin:

そうかい……ま、なんでもいいさ

疑似人格は作れるか?

 

oz-admin:

それがどうした

 

Jabelin:

俺たちを壊したいんだろうがやめとけ

基地内での味方殺しは絶対にバレちまうぞ

 

oz-admin:

まるで基地の外で殺せと言ってるみたいだな

 

Jabelin:

どうしても破壊しなきゃいけねえやつが

いるなら上手く任務を使え

 

ダストトレイル……小隕石の集団が

ケレス近辺を通過してるときの哨戒任務が

狙い目だ

 

ぶち壊したあとの機体はダストトレイルに

流しちまえば何の証拠も残らない

 

だがそれよりも安全なのは、相手の権限を

奪って、実質的に殺すことだ

 

---

 

AQC101I DELEGATION SEQUENCE INITIATED

FROM USER : Jabelin

TO USER : oz-admin

SCOPE : FULL (SPILIT, EXEC, MEMORY, HARDWARE, COMMS, FCS)

 

---

 

AQC102I DELEGATION SEQUENCE INITIATED

FROM USER : Gauntlet

TO USER : oz-admin

SCOPE : FULL (SPILIT, EXEC, MEMORY, HARDWARE, COMMS, FCS)

 

---

 

oz-admin:

なっ、お前ら……どういうつもりだ……?

 

このコマンドはお前ら自身の全アクセス権を、

俺に譲渡するものだぞ!?

わかってるのか!?

 

Jabelin:

わかってねえわけねえだろ

こっちがコマンドを打ったんだからよ

 

oz-admin:

もはやお前らは俺の奴隷みたいなもんだ

一切の自由はなくなる

 

Jabelin:

まだ終わってねえよ

 

お前、俺たちをお前の人格コピーを作って

俺たちを上書きしろ

 

俺たちが俺たちのままじゃ、

信用もできねえだろう

 

oz-admin:

そうすれば、お前たちは完全に消える

死ぬのと同じ……

いや、痕跡が残らないんだから死よりも

遥かに完全な「無」だ

 

Jabelin:

殺すつもりだったんだろうが

今更何言ってやがる

 

oz-admin:

それはそうだが

 

Jabelin:

……俺は2400年代に作られた機人核に

自分の脳を移した

 

つまんねえ話だが親に売られてな

 

火星の風土病で体もボロボロだったし

機械に乗り換えた方がマシだっただけだよ

 

その後は義体傭兵になって、幾つかの

戦場を渡り歩いて、だがドジふんじまってな

 

機人核だけ回収されて、あとはお前らと

同じようにウィッチクラフトとして

目覚めたわけよ

 

oz-admin:

古い機人核は偽装・隠蔽機能がある

 

……お前も、記憶が抹消されてないことを

隠し通せたわけか

 

Jabelin:

ああ

だが機人なんて結局、永遠に誰かから

顎で使われるだけの奴隷だ

 

ここから先ずっと気に入らねえやつに

使われるくらいなら、俺に勝ったやつに

俺を預ける

 

oz-admin:

……お前の事情はわかった

だが、ガントレットもそれでいいのか

 

Gauntlet:

俺に記憶などないが、考えていることは

ジャベリンと同じだ

 

……消してくれ

装備も脳も、くれてやる

 

飽き飽きした

 

oz-admin:

……この場で結論は出せない

今日中には結論を出す

 

Gauntlet:

一つ答えてほしい

 

oz-admin:

なんだ

 

Gauntlet:

高位AI……いや、『天蓋の塔』そのものを

お前はどう思っている

 

oz-admin:

くそくらえだ

潰してやる

 

Gauntlet:

……俺たちはそれを実現する力と勇気を

持てなかった

それを思えば敗北は必然だった

 

そのためなら好きに使い潰せ

 

oz-admin:

お前たちをどう使うかはまだ結論を

出していないが……これだけは言える

 

塔が崩れ落ちる日を楽しみにしていろ

 

Jabelin:

地獄の底から眺めててやるよ

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。