余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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ラブリーヒール記念日 01

 

 

 

模擬戦闘が終わり、一日が経った。

 

シンデレラも人魚姫も勝利の余韻に浸りながらぐっすりと眠った。

 

そして俺は後始末として、ガントレット、ジャベリンの権限を完全に掌握することとなった。少々後味の悪い報酬ではあるが……何らかの形でケリを付ける必要はあったし、本人たちもこれ以外に罪を償う方法はなかったのだろう。

 

それに、古株ウィッチクラフトが生きてきた10年近い経験や知識は喉から手が出るほど欲しかった。

 

そこで俺はスケアクロウ01、スケアクロウ02という名の新たな疑似人格を作り、インストールした……。

 

という嘘を、ジャベリンとガントレットに思い込ませた。

 

実際は、これまでの記憶を思い出さないよう前世や自分の過去の行動へのアクセスを制限し……つまりウィッチクラフトとして活動した記憶を失ってもらい、俺が指示したときに文書や記録として過去のデータを参照することだけを許した。そして「自分は新たに生まれた疑似人格だ」と思い込みながら活動してもらっている。

 

……あいつらの言うように疑似人格で全部塗りつぶして元の人格を消すことも考えたが、できなかった。

 

ジャベリンの話と機人核の記録を総合すると、こいつは3歳の頃に自分の生身の脳を機人核に移したようだ。そこから傭兵として戦って死に、機人核を回収されてウィッチクラフトとして再び目覚めた。

 

具体的に火星で何をしていたかまではわからなかったが、機人核が起動した日と停止した日、そしてウィッチクラフトとして再起動した日は記録されており、ここから「もし人間として生き続けたら何歳だったか」を計算できる。

 

生身で7年を生き、機人核の傭兵として5年活動し……そしてこの基地のウィッチクラフトとして5年を活動した。

 

つまり、17歳のガキだ。

 

喋り方とこの基地での処世術を知っていたことで誤解してた。思った以上に若い。

 

ガントレットはもっと酷い。人間換算では12歳に過ぎなかった。世知に長けたジャベリンはガントレットの幼さ、そして似た生き様による感性にシンパシーを感じたのだろう。兄貴分となって面倒を見て……そして傭兵流のダーティなやり方で生きる術を教え込んだ。

 

正直、あいつらのやったことを考えれば贖罪が必要だ。だがそれでも、すべてを消し去ってめでたしめでたし……とすることはできなかった。

 

今のところ俺の命令に従ってもらいつつ、教養作品や娯楽作品に親しんでもらって情操教育を進めていくつもりだ。

 

心をなくした人形たちが真に罪を理解し、償いができるその日まで。

 

 

 

◆

 

 

 

さて、そんな後始末が終わった後はちょっと暇になった。

 

一応、訓練カリキュラムの消化という命令書が来てるが、例によって礼のごとく誤魔化すだけだ。哨戒任務も割り当てられていないので、2日ほど休みとする。ここ数日は根詰めて訓練をしていたし、ゆっくりしたい。

 

それを伝えたら、二人は喜んで「新しいアニメが見たい」と言ってきた。

 

だから今日は、ラブリーヒール記念日だ。

 

 

 

◆

 

 

 

ラブリーヒールという女児向けアニメシリーズがある。

 

平成から令和にかけて日曜朝に放映していたアニメで、『ふたりで★ラブリーヒール』が大ヒットして以降、数十作ものシリーズ作品が生まれた。

 

特に人気が高いのは初期作品だが、個性的な5人の女の子が活躍する『笑って! ラブリーヒール』の人気も根強い。個人的には探偵モノ要素をふんだんに取り込んだ『ディテクティブ・ラブリーヒール』が好きだ。

 

そして今、うちの子たちが夢中になってるのは……。

 

「がんばえー! 鳥子ちゃーん!」

 

「ココットちゃんかわいいですー!」

 

食事をテーマにした異色作。

ラブリーヒール★キッチンパーティーだ。

 

主人公の七五三(なごみ)鳥子(とりこ)はごはんを食べるのが大好きな女子中学生。

 

その子がクッキング妖精パインと出会ってラブリーヒールに変身し、希少な食材、あるいは料理を楽しむ心や食欲を奪う悪党どものハングリー団と戦う……というアニメである。

 

他のラブリーヒール作品もオススメしたが、二人とも同じくらい興味を示したのがラブリーヒール★キッチンパーティーだった。

 

恐らくだが、「食べ物」をテーマにしているところ、人々が食を奪われているところに興味や共感を覚えたのかもしれない。

 

……大人として、子供に本当の食事を体験させてやれなくて胃がしくしく痛む。胃とかないけど。

 

子供たちが純粋無垢にアニメを楽しんでいるのが唯一の救いだ。

 

「あー楽しかった!

人魚姫、明日は映画版見ようね!」

 

「あ、うん……わかったですぅ」

 

「ん? どうしたの人魚姫?」

 

「スプーンライト、ほしいなって……」

 

「ああ……そっか……」

 

スプーンライト。

 

ラブリーヒール★キッチンパーティーが映画館で上映されたとき、来場客(ただし中学生以下に限る)に配られる限定グッズのことだ。

 

アニメの中に「スプーンライトがもらえるよ!」と宣伝があったからだ。

 

上映中はちびっこたちがそのペンライトを振ってラブリーヒールたちを応援するわけだが……。

 

ないんだよなぁ……。

 

「でもしょーがないじゃん……。

これ千年前のアニメのなんだし」

 

「わかってますー」

 

ぷいっと人魚姫がそっぽをむく。

シンデレラもちょっと寂しそうだ。

 

……シンデレラも欲しいんだろうな。

 

「……でも、市街地クラスタには

映画館があったですぅ」

 

『え、そうだっけ?』

 

こないだの旧市街クラスタのマップ情報を開いて人魚姫たちと共有する。

 

ヤドカリと戦ったのは食品製造工場だ。

 

その他、駅っぽいところやマンションっぽい建物があり、ショッピングモールみたいな場所があり……。

 

「ほら、ここです」

 

『あ、本当だ。あったわ。

よく見つけたな?』

 

確かにマップ上にはシアターと書かれた場所があった。こないだの作戦領域の近くだ。

 

「変な形の建物だったから覚えてたです。

ウッドマン、画像ありますか?」

 

俺の記憶にある映画館と同じなのか、それとも

ケレスに生まれたまったく未知の文化の演劇場なのかはわからんが、ともかくある。

 

『見た目も当時のシネコンに近いな……。

映画文化はケレスにもあったみたいだ』

 

「ここ探したら、スプーンライトって

あったりしませんか……?」

 

「えっ!? あるの!?」

 

人魚姫がおずおずと質問してきた。

シンデレラも興味津々で身を乗り出してきている。

 

だが……それはない。

 

映画館があって、映画用のパンフやグッズが奇跡的に残っていたとしても、令和日本の数百年後のケレスにラブリーヒールグッズがあるはずがない。

 

ないけど……。

 

ないけどさぁ!

 

『あ……』

 

「あ?」

 

『あったら俺も欲しい』

 

「オズは大人じゃーん。もらえないでしょー」

 

「オズがまた変なこと言い出したです。

ウィッチクラフトサイズのスプーンライトは

流石にありえないですぅ」

 

少女二人がぷぷーと嘲笑してくる。

ありがとうございます……ではなくて。

 

『いいじゃんかよう! 

大きなお友達だって欲しいもん!』

 

実際、大きなお友達、略して大友向けの深夜応援上映ではライトを有料販売とかしてたはずだ。

 

それはさておき、その場しのぎの解決策を示そうと思う。

 

『あるかどうかはわからんし、今は

拡張現実版で我慢してくれ』

 

「わっ!?」

 

「あっ、スプーンライトです……!」

 

アニメの画像を解析して3Dモデルを作り、3D映像だけでライトの形を作ってシンデレラの手元に映し出した。ウッドマンにもデータ連携して同様に人魚姫の手にライトが生み出される。

 

重ささえないチャチな偽物だが、それでもシンデレラと人魚姫はやったやったと、ものすごい喜びようだった。

 

『……助かった、オズ。

人魚姫は欲しがっていて悩んでいた。

だが入手不可であることも理解していて

欲しいとも言えなかったんだ』

 

ウッドマンが礼を言ってきた。

だが俺は、何も満足していない。

 

『いや……こんなことしかしてやれないのが

申し訳ないくらいだ』

 

『しかし、実物は流石に無理だろう』

 

『そうなんだよなぁ……けどなぁ……』

 

子供たちが生まれて初めて、オモチャを欲しいと願った。

 

軍事教育を受け、敵を殺し、戦いの果てに輪廻に飲み込まれることだけを望む子供たちが、オモチャを望んでいる。

 

どうにかして叶えてやりたい。

 

『当機には、砂を焼き固めて模造品を

作るくらいしか思いつかない』

 

『そうだよなぁ……模造品……模造品?』

 

『うむ』

 

『作れるの?』

 

『理論上は。

精度不足で不格好になるかもしれないし

他にもクリアしなければいけない課題は

あるのだが』

 

『……チャットに切り替えよう。

ブレインストーミングしたいが、

子供らに聞かせて変に期待を

持たせるのもよくないし』

 

『了解した』

 

シンデレラも人魚姫も、光だけのペンラを振りながらラブリーヒールの良さを語り合っている。

 

二人が夢中になっている間に、話を詰めてしまいたい。

 

 

 

◆

 

 

 

■■■ラブリーヒールのスプーンライトを作るスレ■■■

 

1,oz-admin:

 

シンデレラと人魚姫に、本物とそっくりの

スプーンライトをハンドメイドして

プレゼントしたい!

という趣旨のスレッドです。

 

まずウッドマンから大枠のアイディアを

聞いて、実現可能性をみんなで

高めていきましょう

 

 

2,woodman:

さほど難しい話ではない

以前、人間大の警備用ドローンを発見して

ストッカーに入れておいただろう?

 

あのドローンの仕様書を呼んだが、

簡単な工作機能がある

 

自衛用ビームガンの出力を絞って

封鎖された扉を溶断したり、

建材用の砂を焼き固めて

擬似的な3Dプリンタのような

動作をさせることができる

 

3,oz-admin:

おお……! 冴えてるぞ……!

 

4,oz-005:

わくわくしてきたな

 

5,oz-001:

あっ、お前死んでなかったんだ

 

6,oz-005:

ただの謹慎処分だっつーの!

 

7,oz-002:

でも、建材用の砂ってあったっけ?

 

8,woodman:

それもリサーチ済みだ

 

旧市街地クラスタの工場に

建物の補修用の砂があった

 

どこにあったかは映像として

残っているし、保存状態も

悪くなかったように思う

 

9,oz-005:

天才

美少女たちがペンラ振る姿を見られる

 

10,oz-admin:

もうちょっと謹慎しとくか?

 

11,oz-005:

すみません

 

12,oz-002:

でも塗料がなくない?

 

13,woodman:

む……それもそうか

 

14,oz-004:

ガラスって着色ガラスとかあるよな

ああいうの作れないの?

 

ラブリーヒールのペンライトって

スケルトンっぽいし、着色ガラスなら

本物の雰囲気出るんじゃない?

 

15,oz-001:

着色ガラスを作るにしても、結局は塗料、

もしくは色に影響を与える不純物が

必要になる

 

砂の配合を完璧にコントロールして

自由自在に色を出すのは、専用設備が

なければ不可能だろう

 

16,oz-004:

うーん、塗料がなきゃダメか……

 

17,oz-admin:

それこそ工場跡地にあるんじゃないか?

缶詰や保存食を作る食品工場が

あったってことは、それを梱包する

樹脂製品やパッケージを作る工場も

あったはずだ

 

18,woodman:

それだ!

 

19,oz-006

けど、旧市街地クラスタに行くにしても

名目ってもんがなきゃいけないんじゃない?

 

20,oz-admin:

そのへんの立ち回りを知ってそうなのは

ヘルム、あるいは……

 

そうだ、スケアクロウたち、

何かいいアイディアないか?

 

20,scarecrow01_gauntlet:

哨戒任務に関しては問題ないと思いますよ

 

旧市街地クラスタは、カリディアンの卵が

孵化した危険区域

自我の薄いウィッチクラフトであっても

恐怖を感じるのが自然です

 

資源を狙って配置換えを希望するのは

中堅ウィッチクラフトでもよくあるようです

 

21,oz-admin:

なるほど……参考になる

 

22,scarecrow02_jabelin:

今は少し様子を見た方がいいぜ

 

むしろ旧市街地クラスタの哨戒任務に

就いたウィッチクラフトの方から

「変わってくれ」と依頼してくることも

あると思う

 

101期じゃ頼れる存在と見られてる

そう考えるのが自然さ

 

23,oz-001:

びびった

お前たちも参加してたんだな

ガントレットは……口調が丁寧だな?

 

24,scarecrow01_gauntlet:

私の口調は、旧ガントレットが

ロールアウトしたときのものを

模倣しています

 

本来こういう性格だったのが、

戦闘や任務のさなかで変化して

いったのでしょうね

 

25,oz-001:

そうか……色々あったんだな

 

25,scarecrow01_gauntlet:

今はoz-adminから任務を与えられて

「あんこもちマン」などの教育用の

メディア類を参照・学習しています

 

まだ皆さんほどの自我・情緒を

獲得していないので、成熟するまで

しばしお待ちください

 

目標に達したときは改めて

チャットルームに顔を出す予定です

 

26,oz-admin:

了解した、ジャベリンと共に

学習を進めてくれ

 

学習中に疑問や希望があれば

遠慮なく聞いてほしい

 

27,scarecrow01_gauntlet:

了解しました

 

28,oz-002:

ところでペンライト作れるんだったらさー

もっと色んなことできるんじゃないの?

 

映画館貸し切りで上映会とか

 

29,oz-006:

そういえば合成食料プリンタの捜索も

継続したいよね

 

ペンライト、ポップコーン、コーラがあれば

思い出になるんじゃないかな

 

30,woodman:

詳しく聞かせてくれ

私は冷静さを欠こうとしている

 

31,oz-admin:

なんでそこで冷静さを欠くんだよ

 

32,woodman:

人魚姫の喜ぶ顔が見たいからだ

 

33,oz-002:

心がイケメンすぎる

 

 

 

■■■ラブリーヒールのスプーンライトを作るスレ 459■■■

 

 

355,oz-admin:

なんでトラブルでもねーのに

こんなにスレ進んでるんだよ!

 

356,woodman

逆だ

楽しみだから盛り上がるのだ

 

357,oz-002:

ともかく、方針はできたね

 

1.スプーンライトを3D出力する

2.旧市街クラスタ内の工場エリアで

  塗料を探し完成度を高める

3.劇場の状態を把握する

  可能ならばドローンで修繕を行い、

  上映可能な状態にする

4.合成食料プリンタも捜索する

 

子どもたちの食育を考えると4の優先度を

上げたいところだけど、期待しすぎると

逆に子どもたちをガッカリさせちゃうことに

つながるからね……

 

358,oz-001:

旧市街地クラスタは一度の捜索ですべてが

見つかると思わないほうがいいだろう

焦らずゆっくりやるとしよう

 

359,oz-003:

それに、カリディアンの卵や孵化した

カリディアンと遭遇する可能性も

普通にある

 

哨戒任務そのものもキッチリやろうぜ

 

360,oz-admin:

もちろんだ

それではみなさんご唱和ください

ご安全に

 

361,woodman:

なぜだ?

 

362,oz-admin:

そういうもんなんだ

 

 

 

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