余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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ラブリーヒール記念日 02

 

 

 

水面下でスプーンライト製作プランを遂行しつつ日常的な訓練カリキュラムの消化や、基地の周辺警戒と言った日常業務を割り当てられて無難にこなしていた。

 

だが、本命の任務……旧市街地クラスタの哨戒任務に白羽の矢が立てられることはなかった。

 

そもそも哨戒任務の頻度が下がっている。噂では何か重要な作戦準備のために、周辺警戒の重要度が下がっているらしい。まあ、あわや基地に乗り込まれるというところまで追い詰められたわけで、高位AIも「舐められたままでいられるか」みたいな怒りに燃えてるのかもしれない。

 

そんな中で、ちょっとした変化が起きた。

 

『センパイ方、おまたせしやした!

ライオンハートっす! よろしくッス!』

 

カリキュラム消化中に、ライオンハートが話しかけてきた。導者(ロードランナー)を紹介する準備ができたとのことで、正式に皆に自己紹介することとなった……のだが。

 

様子がおかしい。

 

『お前、そんなやつだったっけ……?』

 

ライオンハートはもう少し体育会系ではなくて、文化系というか……。引っ込み思案だったよな?

図書館で本読んでて球技大会とか苦手そうなキャラだったと思ったが、俺の記憶が間違ってるとかじゃないよな? 儚さ指数が急速に減ってるぞ?

 

『センパイが貸してくれた漫画が面白くって!

週刊ステップ漫画は最高っス!』

 

『影響されすぎだろ!』

 

そういえば、ライオンハートからは絵本や児童書以外に「勇気が出るようなお話を読みたいし、読ませてやりたい」と言ってたっけ。

 

それで往年の名作、七つの竜のジュエルを集めて願いを叶える……という伝説を巡って武闘家や宇宙人が戦いを繰り広げる名作漫画ドラゴンジュエルとかを見せた。他にも少年漫画や冒険ロマン系の作品を色々と薦めたが……まさかここまで影響が出るとは思わなかった。誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない。

 

『ま、まあ、楽しいならいいことだ。

ところでそっちの導者(ロードランナー)は元気か?』

 

「えっ、いるの!?」

 

俺たちの会話の様子を見守っていたシンデレラが驚きの声を上げた。

人魚姫は特に声を出していないが、興味が半分、恐怖が半分といったところだ。

 

『そりゃーもちろん!

ああ、きみたちと違って男の子ッス!』

 

「お、男……?」

 

「え、こわ……」

 

『んじゃピノキオ! ご挨拶するっす!』

 

「ぼく、ピノキオです。よろしくお願いします」

 

短い金髪に、緑色の眠そうなタレ目。

ゆっくりした喋り方に丁寧な所作。

……熱血なウィッチクラフトと違って、ずいぶんとのんびりとした雰囲気だ。品の良いおぼっちゃんオーラがあるというか。

 

「ふーん、あんたが新入りね?」

 

「ま、まあ、仲間に入れてあげなくも

ないですけどぉ?」

 

いかん、シンデレラと人魚姫が、公園の砂場を独占してるちびっ子モードになった。

 

『ピノキオはきみたちより本を読み始める

タイミングが遅れたから、顔合わせの

時期をちょっと見計らってたんすけど……。

会話もバンバンするようになってきたし

頃合いかなって!』

 

「タイミングが遅れたっていうには、

けっこう成長してない?」

 

『ウッス! 礼儀が大事かと思いやして!

少年漫画だけじゃなくて国語の教科書とか

マナー講座とかも見せたッス!

そんなわけで姉さん方! ピノキオのこと、

よろしくお願いしやす!』

 

『どうしようウッドマン。むしろ出遅れてるの

俺たちの方だぞ』

 

『……今からでも礼儀作法やマナーを

教えるべきだろうか』

 

俺もウッドマンも頭を抱えてしまった。

子供の保護者として完璧に負けてしまっている。

 

少々不安になってシンデレラと人魚姫を見ると、二人は妙なところがツボに入ったようだった。

 

「お姉さん……。ね、ねえ人魚姫。

あたしたち、お姉さんだったの?」

 

「そ、そう……みたいですね……?」

 

「じゃあ、人魚姫、あたしの妹?」

 

「妹……かもしれないですね……?

 シンデレラは、私のお姉ちゃん……?」

 

「妹」

 

「姉」

 

「「あはははは!」」

 

お互いを指さして大爆笑し始めた。

 

「違和感なーい! 人魚姫甘えん坊だもん!」

 

「シンデレラこそ姉キャラっぽいですし!

 ズボラで年下をコキ使うタイプですぅ!」

 

「言ったわね!」

 

「言いましたもん!」

 

『こらこら、ピノキオを置いてけぼりにするな』

 

「あっ、ごめんごめん。

あたしシンデレラ! 38号導者(ロードランナー)よ。

よろしくね! はじめまして!」

 

「私は39号の人魚姫ですぅ。

そういえばピノキオは何番でしたっけ?」

 

シンデレラと人魚姫が詫びながら自己紹介する。

 

「43号導者(ロードランナー)です」

 

「やっぱ年下じゃん」

 

『みんな同期だし、年上とか年下とかないんじゃないか?』

 

という俺の疑問に、ライオンハートが答えた。

 

『30番台と40番台では分単位で違うッス。

二桁目が同じだと秒単位で同じっスけど。

だからピノキオは5分くらい年下ッス』

 

ほぼ同じじゃね……? と思ったが、子どもたちにとってはそうでもなかったようだ。シンデレラの目がちょっとわくわくしている。

 

「じゃああたしが長女! 人魚姫は次女ね!

 ピノキオは一番下!」

 

「一番違いはコンマ台で同じですぅー!

シンデレラが長女とは限んないです!

てゆーかシンデレラって名前で長女なのおかしいです!」

 

「そ、そこは別にいいでしょ!

 あたしが上!」

 

「私が上かもしれないですし!」

 

「「ぐぬぬぅ……」」

 

まずい、またシンデレラと人魚姫がケンカモードだ。この子たちケンカしては仲直りしてるんだよなぁ……。ピノキオがこのやり取りを見て怖がらないだろうか。

 

『あ、大丈夫ッスよ。何度も見てますし。

てかピノキオ的には初対面じゃないス』

 

「うん。

みんなの活躍は見てたし、知ってる」

 

『あ、そうだった。

シミュレータじゃ何度もやりあってるもんな』

 

「どゆこと?」

 

「今日初めて会ったですよ?」

 

シンデレラも人魚姫も、はてなと首を傾げた。

それじゃあ、少しばかり時間は空いたがネタばらしといこうか。

 

『ふっふっふ……それじゃあ思い出して

もらうのが一番っスね』

 

そう言ってライオンハートが、戦闘シミュレータの画面を立ち上げた。

 

『交流を兼ねて軽く戦ってみないスか?』

 

 

 

◆

 

 

 

 

というわけで、シンデレラと人魚姫がそれぞれシミュレータ戦闘訓練を実施した。

 

装備は自由で、今回はあえてカリディアン装備をOKという設定にしている。いずれ俺たちも使うことになるだろうし。

 

で、その結果……。

 

「……けっこう強くない?」

 

「ガントレットとかよりは明らかに強いですぅ」

 

シンデレラと人魚姫がちょっと驚いていた。

とはいえ、二人が普通に勝ってはいるんだけど。

 

ピノキオはガントレットと同じ重水プラズマナックルを装備してシンデレラと対戦し、けっこう善戦した。

 

プラズマでとどめを刺してくる……と思わせて、その威力の高さをあくまで牽制とブラフだけに使い、ほぼライフルのみでシンデレラを追い詰めた。

 

模擬戦闘のシミュレーションをしまくってガントレットの速攻戦術に慣れたシンデレラは混乱し、けっこう際どいところまで追い詰められた……のだが、「シンプルなド突き合いに持ち込めば勝てる」と気付いたシンデレラにサクっとやられた。

 

そして人魚姫は、接近戦と中距離戦の間で翻弄された。距離を取って遠距離戦に持ち込もうという思惑が最初からバレていたようで、それをさせじと距離を詰められた。

 

そして人魚姫は途中から覚悟を決めてブレードを抜いたが、それが功を奏してピノキオにあっさり勝った。

 

ピノキオは接近戦に自信あり……みたいなアセンブルをしておきながら、接近戦は強くも弱くもない。というかシンデレラと人魚姫が他の導者(ロードランナー)と比べて練度が高すぎる。

 

ピノキオは、普通に戦ってはシンデレラと人魚姫に敵わないことを察していたのだ。

 

対戦相手の心理を突いて惑わし、戦術を妨害してくるやりづらさに二人はなんとなく覚えがあった。

 

「もしかしてあんた……

模擬戦闘シミュレータで出てきた、

謎の疑似人格?」

 

「ですよねですよね!?

初めて戦った感じしないです!」

 

「疑似人格じゃないけど、

模擬戦闘シミュレータにはこっそり

混ざってたよー」

 

「「やっぱり!」」

 

実はピノキオには、すでに二人のデータを渡していた。顔写真だけではなく、シミュレーションでの二人のデータなども含めてだ。

 

模擬戦闘シミュレータの相手になってもらう前に二人にはピノキオを紹介しようと思ったのだが、「邪魔をしたくない」とピノキオが言ったために延期になっていたのだ。

 

実際、新しいお友達を紹介するタイミングには忙しすぎたしありがたかった。大人っぽい判断だなとは思ったが、ライオンハートが社会性を伸ばそうとしていたようだ。

 

ただ、それだけではない本人の性格もあるような気がする。ウチの子たちとは違う意味でマイペースというか…・・・。

 

「あのときはみんな忙しそうだったから

めんどくさ……じゃなくて、影で

応援しようと思って」

 

あっ、そういうこと。

 

そういえばライオンハートが『この子は訓練成績をセーブしてる』とか悩んでたっけ……。生来の面倒くさがりのようだ。

 

『ピノキオは満遍なくなんでもできるし、

楽したくて敵の嫌がることを見抜いて

省エネで倒そうとするッス。

でも天才肌で努力を惜しむタイプだから

これだって必殺技とか得意分野がなくて

才能に甘えてるッス!』

 

「うんうん、そんな感じ」

 

ピノキオが何の反論することもなく、むしろ「わかってるなぁ」みたいな満足顔で頷いている。これはちょっとユニークな導者(ロードランナー)だな……。

 

「……得意技がないのはダメよ!

接近戦はウィッチクラフト戦の華!

きっちり鍛えてあげるわ!」

 

「それ、ちょとつもーしんってやつですぅ。

新入りに変なこと教えちゃダメですぅ」

 

「変なことじゃないもん!」

 

「近接はイレギュラー戦術ですし!

隊列組んでライフルとトリガーフィッシュで

追い詰めるのがフツーです!」

 

「「ピノキオはどー思う!?」」

 

「どっちでもいいかなー?」

 

微笑みながら首をこてんをかしげる。

シンデレラと人魚姫は、決着がつかなかったことに業を煮やしたのか、話がよくわからない方向に転がっていく。

 

「と、ところであんた、あんこもちマンだと

誰が好きなのよ」

 

「あ! 味方につける気ですね!

ずっこいずっこい!

もちろんあんこもちマン派ですよね?」

 

「ウイルスマンの方がかっこいいし!」

 

『こらこら、派閥を作ろうとするな派閥を』

 

「んーと……あんこもちマン号」

 

「あ、のりもの好きですかぁー。

まだまだおこちゃまですねー」

 

人魚姫がくすりと笑う。

意地悪してるわけじゃないが、新入りにはちょっと厳しそうだ。

 

「ウイルスマンが乗ってるドンドドンも好き。

かっこいい」

 

「……そうよね! かっこいいわよね!」

 

シンデレラが身を乗り出して喜ぶ。

そういえば人魚姫がドンドドンをディスっていたっけ。

 

「で、でも、あんこもちマン号だって

かっこいいって言いましたですしぃ」

 

「……!」

 

シンデレラと人魚姫の視線がぶつかり、ばちばちとした電流のエフェクトが見える気がする。

 

「ねえピノキオ!

ラブリーヒールは誰が好き!?

鳥子ちゃんよね!?」

 

「あーずるいです!

ラブリーヒールはゲテモノ・毒が大好きな

ココナちゃんこそ至高ですけど!」

 

「ラブリーヒール知らない」

 

「見なさい!

導者(ロードランナー)ならラブリーヒールくらい

履修しなさいよ!」

 

「そうです! 戦闘機動とか射撃訓練と同じくらい

 大事ですぅ!」

 

『んなこたない』

 

「「オズは黙ってて!」」

 

子どもたちがわーわーきゃーきゃー叫びながらあれが良い、あれは違う、これを見てとか騒ぎまくっている。

 

シンデレラと人魚姫はよく話のネタが尽きないものだと思っていたが、更に一人が加わってやかましさに拍車がかかった。

 

ピノキオはライオンハートと同じく少年漫画が好きなようで、それを察した二人が「じゃあ『はばたけ! ラブリーヒール』を見よう」と提案してきた。

 

これはヒーロー物の文脈を重視した、爽快なノリのラブリーヒール作品だ。レギュラー陣に男の子がいることで少々物議を醸したが、この子たちが見る分にはぴったりだろう。

 

『初めはどうなるかと思ったが……よいものだな』

 

ウッドマンが、仲良く遊んでいる子どもたちを眺めながらぽつりと呟いた。

 

『いやー想像以上にうるさかったけどな』

 

『でもまあ、仲良くなってよかったッス!』

 

『そうだな』

 

シンデレラと人魚姫はとても仲が良いが、かといって二人だけの閉じた世界になってしまうのも保護者としては心配だった。

 

『ただ、練度はこっちが断然出遅れてるッス。

今のところ手癖でなんとか誤魔化せてますけど

射撃精度とか戦闘機動とかは未熟で……。

最近、二人の模擬戦闘を見てちょっと

やる気にはなったみたいなんスけども、

他の導者(ロードランナー)と比べてもやっぱり

モチベが低いッス』

 

ライオンハートが溜め息を付いた。

 

できる子を持つ親の悩みって感じだなぁ……今は優秀であるとしても、このままでは壁にぶつかるだろうと予感している。ライオンハートは快活な振る舞いをしているが、根っこの臆病さは残っているようだ。

 

『だってのに、他の新兵と一緒に

旧市街地クラスタ哨戒に当てられたし

運がないッス……。

せめてもう少しピノキオに練習させてから

任務に就きたかったんすけど』

 

『……え? おいライオンハート、今なんつった?』

 

『もうちょっと練習させてから……。

あ、そうだセンパイ。

ゲームを応用したシミュレータあるッスよね。

あれで二人と対戦したならピノキオの

モチベーションも……』

 

『カスタマイズしたバルチャーズ・キングで

トーナメントとか企画してやる。

そこじゃなくてもっと前』

 

『旧市街地クラスタの哨戒任務を……』

 

『その任務、俺たちにくれ』

 

 

 

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