余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
工場倉庫は地下1層から地下3層までの3つに分かれている。
わざわざ地下に作らなくとも……と思うが、惑星ケレスであることを考慮すれば合理的だ。なぜならそのままシェルターに転用できるからだ。
火事、テロ、災害、その他、周囲の気密性が失われたときシャッターが降りて、空気が失われないようにするという目的があったのだと思う。
その証拠に、緊急用の宇宙服の残骸や消火器、様々な非常時のための備えの痕跡があった。
ただ、俺たちがほしいと思うものはなかった。
「はぁー……全部食われちゃってるじゃん」
2層で見つけたのは空き箱ばかりだ。
小麦粉、コーン、米、液化糖類などなど、多くの食料が空っぽになっていた。
そして3層には、そもそも食料そのものがなかった。
ここは完全にシェルター用途だったらしく、工具や食べ物以外の資材ばかりだ。俺たちの捜索は、徒労に終わった……
と思ったら、大間違いである。
細工は流々仕上げを御覧じろ、ってな。
「あーあ、3層も何もなかったね……。
さっさと帰ってアニメ見よー』
『シンデレラ、持ち帰ってほしいものが
あるんだがいいか?』
「持ち帰ってほしいもの?
ガラクタしかないけど」
『ガラクタじゃないさ。
イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックって
書かれた缶が転がってるだろ。
それを持ってきてほしいんだよ』
「これ? まあ別にいいけど……」
「一体じゃ持ちきれそうにないですね。
分担しましょうか」
「うん」
『助かる。
ちょっと思いついたことがあってな』
ここには4機のドローンを持ち込んでいる。
それをただ遊ばせておくと思ったら……大間違いだぜ。
---
woodman:
>>oz-admin
車両型ドローンで映画館の探索が終了した
カリディアンの痕跡はない
それに……想像以上の成果があった
lion-heart:
すげえっス!
まさかこんな掘り出し物があるとは
思ってなかったッス!
oz-admin:
どうした?
woodman:
設備が、生きている
◆
探索一日目、終了。
俺たちウィッチクラフトは重要情報を
ちなみに、俺たちはウィッチクラフトという本体を自由自在に動かすことはできない。
コックピット内の
だが、裏技的に自由自在に動かせるものもある。
一つは
もう一つは、ドローンを使うことだ。
本体との距離が問題になるが、それでも自分の意思でそれなりに自由に動かすことができる。
子供たちがぐっすり寝ている間に、俺たちは夜を徹して作業を続けた。
---
oz-admin:
各自、進捗報告お願いします
woodman:
シアター設備は、こちら側から電源を
供給すれば復帰する
ドローンのバッテリーを使って電気系統の
チェックは済ませた
明日は本格的に、予備バッテリーを繋げて
復帰を目指す
oz-002:
しかしなんで設備が生きてるんだろうね……?
工場はめちゃくちゃだったってのに
woodman:
恐らくだが、娯楽施設であるがゆえに
戦略上、重要視されなかったのでは
ないだろうか
だがこのシアターには娯楽のために
防音、気密性、データ窃盗抑止の
電磁的セキュリティなどがあり、
「設備を守るための設備」と
偶然重なっているのだ
oz-admin:
気密性……ってことは空気があるのか!?
lion-heart:
まだ呼吸は不可能っスね
酸素や窒素じゃなく、不活性ガスで
満たされてるっス
多分、設備が酸化や劣化が進むのを
防ぐために、昔の人間がシアター内を
ガスで満たしたんだと思うっス
woodman:
だがこれを呼吸可能な空気に入れ替える
ボンベやコンプレッサーの存在も
確認できた
施設の復活を目論んでいた人間が
いたのだろう
oz-admin:
最高だな……!
woodman:
ところでそちらの状況はどうだ?
oz-005:
俺の超絶テクニックを披露してやんよ……!
[image.spoonlight.003534]
woodman:
形状は完璧だな
すばらしい
oz-admin:
バリが出てるからそこだけ研磨して、
あとは着色が終われば完成だ
lion-heart:
応用して別のアイテム作れないっスか?
うちの子、ドラゴンジュエルが
好きなんスよ
oz-admin:
ドラゴンジュエルを見つけるゲームとかも
面白そうだな
何かの記念日に作ってみるか
lion-heart:
よっしゃ! 約束っスよ!
oz-admin:
では各々「はじめてのおでかけ」大作戦、
成功のため、奮戦を期待する
◆
二日目の探索も無難に終わった。
まあ、ミニ四駆みたいな車両型ドローンで捜索して危険がないことは確認済だった。
シンデレラたちも真面目に任務をこなし、事故も起きなかった。幸い、食品工場跡地以外でカリディアンの卵は見つかっていない。空き時間にミニ四駆バトルをする程度の余裕があった。めちゃめちゃ白熱した。シンデレラとピノキオが最終コーナーで競り合いすぎてクラッシュし、人魚姫が優勝した。
そして、三日目が来た。
「あ、あたしも来たいとは言ったけど……。
えっと、あの、その……」
「なんていうか……雰囲気ありますねぇ……」
「おばけが出そう?」
「ちょっとピノキオやめてよー!
言ったらもっと怖くなるじゃないの!」
今、小型ドローン1機(俺)とシンデレラたち3機はシアターに来ている。
正式名称は「プロセルピナ・シアターズ」。
プロセルピナという名前の企業グループがケレスで幅を利かせていたようで、近くのショッピングモールもプロセルピナという名を冠していた。イ〇ングループみたいなもんだろうな。
建物の外観は汚れ、看板は半分くらい砕け散っている。
本来ならば電飾によって楽しそうな空間を来場客に提供していたのだろうが、今の姿はもはやお化け屋敷と変わらない。
その景色に怯えてか、普段は猪突猛進なシンデレラが人魚姫の背に隠れ、そして人魚姫もピノキオの背に隠れ、電車ごっこかおだんご状態だ。
「あだっ……ヘルメットぶつかる……」
「シンデレラ近付きすぎですぅ」
とはいえヘルメットを着用して行動するのは初めてなので、みんなちょっと足取りがおっかなびっくりだ。
「しっ、仕方ないじゃん!
基地の外に生身で出るなんて
生まれて初めてなんだし……ていうか」
「ていうか?」
「人魚姫、意外と身長高くない?」
人魚姫は10センチくらい高い。
肉体年齢としては12歳くらいのはずだが、ギリギリ高校生として通用するかしないかって感じの背丈だ。
一方、ピノキオはシンデレラより5センチくらい低い。
一番おっとりしてて身長も低いピノキオが一番前にいるのも、普段とは異なる人間関係が見えて面白い。
『って、普段から見てるんじゃないのか?』
「カメラ越しには見えるけど、
コックピット出た後は
すぐカプセルベッドに行くし」
「お喋りしたいですけど、周りに見られると
上位者に変な報告されそうで怖いです……」
確かに、みんな死んだような顔をしてカプセルベッドに潜り強制的に睡眠モードに入っている。
『天蓋の塔』には
ウィッチクラフト越しや通信でなく、自分の足で歩きながらお喋りするのは生まれて初めて……ということになる。
「あ、でも最近は通信して人魚姫と寝る前に
お喋りしてる」
「ですね」
「おしゃべりしてるんだ」
ピノキオが興味深そうに尋ねると、シンデレラと人魚姫ははっとした表情を浮かべた。
「あっ、ち、違うのよ!
仲間外れにしてるとかじゃなくて!」
「そ、そ、そうです!
今度混ぜてあげるです!」
「……? ありがとう」
ピノキオは純粋に質問しただけのようで、意味も分からずありがとうと言った。
「それより、この建物、入っていーの?」
シンデレラも人魚姫も、「えっ、入るの?」みたいな顔をしているが、勇気を見せる弟分に何か言うのも恥ずかしい……といったところか。
『ああ。正門が与圧ルームになってるから
まずそこで待機だ』
「与圧……って、え? どうして?」
シンデレラの疑問に答えるよりも先にピノキオが入室ボタンを押す。
がしゃんとゲートが開いて、そのまますたすたと入っていく。この子は案外度胸があるな。少年マンガ大好きな影響だろうか。
「あ、ちょっと! 早すぎよ!」
「待ってくださいです!」
そして与圧が始まる。
室内に空気が充満していき、
『よし、先に進むぞ』
その言葉に、シンデレラと人魚姫がごくりと唾を飲んだ。