余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
『不愉快かな?』
不愉快に決まってんだろアホがよ。
『献身を疑われるのは不本意ですね。
潔白を証明できるならば仕方ありませんが』
ガジャが探っているのは機体の状態や機人核のステータス、その他、外部に表示された戦果と俺の中のデータに矛盾がないか、こちらが提出している
つまるところ俺が何かしらのスパイではないか……あるいはハッキングされて操られていないかという尋問に近い。
デリカシーの無さにイラつくが、マントリの言うこともわかる。だから我慢はできるさ。それでも許せんのは、
ガジャよ、お前はただ当たり前の業務をこなしているだけなんだろう。
だがこれは戦争だ。俺とお前の。
お前が戦争だと気付かない内に、俺は勝利を手にしてみせる。
---
oz-001:
>>oz-admin
連中に攻勢アクセスするのは避けろよ
流石にこれは気付かれる
oz-admin:
もちろんだ
まず、最低限達成すべき勝利条件は
シンデレラの生存
そして俺たちの正体、行動を隠蔽すること
oz-001:
そこまでは防ぎきってみせるさ
俺たちが
シンデレラたちとの会話ログ
すべては完璧に隠蔽できる……
つーか、やってる
oz-admin:
いけるか?
oz-001:
……ガジャがどれくらい攻めてくるかだな。
矛盾やデータ不整合は完璧に隠蔽できるが
大量のデータを送りつけるとか、負荷テストを
されたときに全力で防ぐことはできない
こっちの演算力の高さに気取られるからな
その結果、修理が必要って程度のダメージで
済むか……機人核が破壊されるかは
何とも言えない
oz-001:
だが逆に言えば、「使えない演算力」
という余力はある
oz-admin:
余力……じゃあ、こっちから踏み込んで
調べることはできるか?
oz-001:
踏み込む?
oz-admin:
最上位者のデータが欲しい
……と言いたいところだが流石に無理だろう
アクセスに気付かれただけで物理的な
戦争になる
oz-004:
ま、避けては通れないと思うけどね
oz-admin:
それも道理だ
だから今は、こいつらと戦争に
なったときのために備える
oz-admin:
高位AIの機体データを盗み取れるか?
oz-002:
いや……それも無茶じゃない?
最上位者ほどじゃないにしても
アクセスは流石にバレるんじゃ……
oz-001:
目標ラインをもうちょっと下げてくれないか
流石にリスクがある
oz-006:
このフロアには色んな計算機群があるし
セキュリティ低いところあるんじゃね?
oz-002:
いやー無理じゃないのそれは
oz-001:
ここで稼働しているのは高位AIを守り、
基地を守り、最上位者とやらを守るための
システムだ
防御そのものを目的としたものに
脆弱性に期待するな
oz-admin:
じゃあ、防御そのものが目的ではないもの、
言うなれば業務アプリケーションみたいなのは
ないのか?
小規模店舗の通販サイトに管理者用画面の
入口が表示されてて、パスワード欄に
passwordって入力すると案外入れちゃった、
みたいな
oz-002:
アホか!
例えが古いわ!
oz-004:
ないないそれはない
oz-003:
千年前のウェブ管理者のポカミスを
宇宙世紀で考えるなよ
oz-005:
草
oz-admin:
そっ、そこまで言うことないじゃん!
oz-001:
まあ落ち着け
考え方そのものは外しちゃいないんだよ
本来ならば操作できないものを操作するには
権限が必要になる
正しい入り口を使って正しい手続きを踏めば、
アラートも発生しないし操作ログも消せる
シンデレラが俺たちにアクセスしたようにな
oz-001:
ハッキングはつまるところ詐術
そしてもっとも確実な詐術とは
正当であり真実であることだ
正当な手順を踏み、目的を達成するんだ
oz-admin:
だよな!
oz-001:
問題は、正しい手順で入り込める
入口さえ見つからないことだ
そんな安易な入口はない
oz-admin:
だ、だが、基地は常に稼働してるだろ
そして現実的にカリディアンの脅威に
晒されて、高位AIどもは焦っている
そして高位AIどもは各々が対立していて
不和が生じている
完璧なシステムは存在するかもしれないが
決して完璧なんかじゃない
何か蟻の一穴になりうる場所があるはずだ
oz-001:
oz-adminの言いたいことはわかる
わかるが……
oz-005:
つまり入口が開かれてて、今もバリバリと
動いてる場所……
oz-001:
>>oz-admin
ガジャの受け答えを捌きながら考えろ
どこを攻める?
---
……と、脳内会話をしていたところでガジャが俺に語り掛けてきた。くそ、いいところなのに。
『きみの献身には疑いはない。
だがそれゆえに、本当にきみだけの力なのか、
という疑念がある』
ガジャは鷹揚に語り掛けながらもスキャンを続けている。ダミーデータを好きなだけ調べるがいいさ。お前のすべてを防ぎきってみせる。
『それは当然、私だけの力ではありません。
優秀な
得られた戦果ですからね』
機体の状態、機人核のステータス、その他、外部に表示された戦果と俺の中のデータに矛盾がないか、こちらが提出している
舐め回すように調べているのは、何か具体的な証拠を掴もうとしているのではない。もっと大雑把な話だ。
---
oz-001:
……こっちの怪しい動きを掴んだとか
何か手がかりがある感じじゃないな
oz-admin:
なんだ、スパイだとでも疑ってるってのか?
つーかスパイなんて成立するのか?
oz-001:
実際そうとしか見えないな
オズというウィッチクラフトを
警戒してるんじゃない
背後に何かがいないかを警戒してる
そういう動きだ
---
ふむ……なるほどな。
恐らくマントリは、俺がカリディアンの手先だとか荒唐無稽な疑いを持っておらず、ガジャの方は何かしらの疑いを持っている……というあたりだろう。
自我を出すなというマントリの警告はつまり、「ガジャが無遠慮なことをしてくるが怒らずに我慢しろ」という話だったわけだな。
マントリにとって、そして恐らくラタにとってもガジャの疑いなど些事であり、戦術シミュレータの勝敗の方が大事なのだ。
だから……好都合だ。
これは千載一遇のチャンスでもある。
『…………本当に? 仲間が優秀だったから?』
ガジャが俺の言葉をねぶるように繰り返す。
『……我々の敵はカリディアンのはず。
なぜ身内を疑うような真似を?
ウィッチクラフトはここでしか
生きていけないのだから、基地を
裏切るメリットなどないでしょう』
無用な尋問されて怒ってますよという言外の意図を込めて俺は言った。
『自暴自棄になったウィッチクラフトが
反乱を企てたという前例はあるのだよ。
ああ、きみがそうなると疑っているわけでは
ないんだがね』
『疑っても構いませんよ、
それがあなたの使命ならば。
ですが一機のウィッチクラフトが反乱を
企てたところでどうとでもなるでしょう』
『さて、どうだろうか』
ガジャは何かを疑っている。
反乱分子がいるかも知れない、なんて曖昧な疑いじゃない。もっと明確な疑い……なんというか、敵を探している。
俺に対する攻勢ハッキングはもはや索敵と言っていいだろう。だが敵なんて身内にいるのか?
俺は疑問を感じながらもスキャンを受け、oz-001の隠蔽にリソースを割いた。
---
oz-001:
まずいな……
こいつ、データに矛盾がないことに
疑問を感じ始めてる
もう一度データの洗い出しを始めやがった
oz-admin:
……引き延ばせるか?
oz-002:
……穴を作ろう
税務調査とかと同じで、何かを
釣り上げないと納得しない
oz-005:
あー、エサを釣らせるってか
でも何を?
oz-admin:
…………アレだな
oz-001:
アレ?
oz-admin:
実際に誤魔化してるやつだよ
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俺たちはダミーデータに意図的な矛盾を作り出した。判明しても軽症で済みそうなもので、実際にいずれはバレるもの。
それはカリディアンから改造した武器……カトラリーの仕様だ。
あえてスペックを過小申告して戦果との齟齬を出している……っと、食らいついたな。
『ほほう、きみはカリディアンに
ずいぶん興味があるようだね?』
『……それはもちろん。
知ることで明日を生きることが
できるのですから』
『ですが、それも程々にするといい。
生きるために偽証をしたところで、
やがて自分の身を滅ぼすことになる。
違うかな?』
カリディアン武装のスペックの過小申告はウィッチクラフトがよくやる手口だ。
ガントレットとジャベリンもしていたし、他の中堅どころのウィッチクラフトもやっている雰囲気がある。仮に見つかったところで、一定期間の出撃禁止などの微罪で済んでいる。
もっとも……微罪から大きな罪を作り出すようなあくどい手口をガジャがしてくる可能性もある。
これは一種の博打だ。
しかし、それにしてはガジャも妙に興味を示しているな……?
中堅以上のウィッチクラフトであればこの程度の偽装はしているはずだし、ガジャも知っていると思うのだが。
この程度の餌で満足してくれないかと思って作ったというのに思った以上にガジャにヒットしている。
そこで俺は、一つの推測が出てきた。
ガジャの狙いはカリディアンだとする。
だというのに俺の内部を探すということは……
『……警戒しているのはウィッチクラフトの
反乱ではなく、潜伏したカリディアン?』
『ほう? なぜそう思った?』
この反応、当たりだ。
しまったな……迂闊に推測を口にするべきではなかった。逆に疑いを深めてしまったかもしれない。
『いや、思っただけなら構わない。
知っていたなら問題だが』
『あなたがカリディアン武装に対して
妙に執心してるからですよ』
『それはきっかけの一つだろう?
それだけでカリディアンが潜伏している
……という荒唐無稽な結論は出ない。
そこに至る思考があるはずだ』
めんどくせーこと聞いてくるなこいつ……。
まあいいさ。別に俺はカリディアンのスパイでもなんでもない。この点については潔白だ。名探偵の推理パートといこうじゃないか。当たってるかは知らんがね。
『実戦を経験し、過去のデータを研究して
わかったことがある。
傾向レベルの話だが、カリディアンは
小隊レベルであれば高度な連携を取ってくる。
だが……数百や数千と数が増えるにつれて
シンプルな陣形、シンプルな作戦を好む』
推論とハッキングを並行させてるから敬語を使う余裕さえない。
くそ、疑似人格増やそうかな。
『物量はカリディアンの方が遥かに多い。
彼らは数に物を言わせた率直な戦術を
するのがもっとも強い。
よく勉強しているようだ』
『だから、ケレス地表で
カリディアンが孵化したのは妙だ』
『妙? どこが?』
『卵を投擲するという作戦はわかる。
数撃ちゃ当たるでやってきたんだろう。
だが孵化のタイミングが同一で、
集団を形成して陣形らしきものを組み、
ウィッチクラフトとドンパチする程度の
集団行動は取れていた。
戦ってる最中はまとまりがねえなと
思ったが……改めて考えると、
それでも脅威に思う程度には
ちゃんと軍隊だった』
『……統率した存在がいるはずだと?』
『統率と言えるほどのものじゃないが、
よちよち歩きを教える程度の存在は
いるんじゃないか?
だとすると、カリディアンの神経系に
アクセスする情報処理能力を持つと
考えるのが自然だ』
『ふむ。続けて』
『それに俺たちはカリディアンの
武器にアクセスすることができる。
逆にカリディアン側も俺たちに
アクセスを仕掛けられる……と
考えるのが自然だろう。
あんたはそれを警戒してる。違うか?』
『……素晴らしい。よく答えに辿り着いた』
どうやら正解だったようだ。
ハワイ旅行でもプレゼントしてくれたら嬉しいんだがね。
『我々は情報処理能力を持った
カリディアンを、タイプ:メンターと
呼称している』
『タイプ:メンター……』
いつぞやの噂話に出てきたな。
『本当に実在するかどうかはわからない。
だが、卵の状態から孵化を促す電磁波を
発する他、幼体カリディアンが
戦闘可能な状態になるまで保護し
簡易な教育を施す機能を持つ
カリディアンがいるのではないか。
そうした疑いを持っている。
無論、それ以外の脅威の可能性もある。
何にせよ油断はできない』
『タイプ:メンターが実在するとして、
基地に潜り込んでいる可能性があると?
流石に発見できるんじゃないか?』
『我々は無力な存在ではない、
だが万能の存在でもないのだよ』
カリディアンを発見できないなんて、馬鹿な。
……あ、いや、それは思い込みか。カリディアンの卵が発見できなかったんだ。同程度のサイズであれば侵入を見逃すこともあるだろう。
『発見できないくらい小さい、とか……?』
例えば、帰投したウィッチクラフトの表面に付着した石と同程度のサイズであるとか。まさに昆虫と同程度だったら侵入さててもおかしくはない。
『その可能性もあるだろう』
『いいえ、ありません』
そこに、マントリが口を挟んだ。
『その程度の隠蔽力であれば、
帰投したウィッチクラフトへのスキャンで
十分に発見できます。
ガジャ、こちらの能力に疑問でも?』
『……だ、そうです』
憮然としたマントリの反論に、ガジャがやれやれと肩をすくめた。
ちゃうねん、今のはガジャの誘導質問であって、警備体制に穴がありますとか言いたいわけじゃないんですよ。
『しかしきみの発想力は面白い……
本当に発想力として出たのであれば、だが』
『まだ疑っているのか?
ここまでして潔白だと信じないならば
これ以上何をするというんだ。
物理的に分解でもしてみるか?』
『そんな乱暴なことはしないさ。
だがきみは他のウィッチクラフトと
少し違うようだ。
きみのことをよく知りたいのだよ』
虚勢を張るが、流石に分解されては困る。そうでなくとも破壊的なデータを送り込んで負荷テストされたらこっちが古代機人核だとバレちまう。
くそ、そもそもこの会議はいさりび侵攻をするしないが本題じゃねえのかよ。ガジャの野郎も戦術シミュレータバトルで超エキサイティングしていやがれ……む?
『……まだ結論が出ないのか』
ガジャが苛立ちを見せ始めた。
マントリも無言だが、明らかに抗議の視線を送っている。
こっちに同情している……わけはない。
(いや、違う。
話を本題に戻したがっている)
そうだ、俺とガジャのやり取りは会議から逸脱している。
ガジャは戦術シミュレータに参画すべきなのだ。それこそが会議の隙に他ならない。
答えが、見えた。
---
oz-admin:
そもそも俺が疑われているのはただの余録
そしてこの会議のテーマは、
いさりび侵攻作戦を可決するか否か
ガジャはそれを放り投げてこちらの
追求に執心している
隙があるのはここだ
oz-001:
そうか……!
今もいろんなプロセスが流れて、
しかもラタとマントリの間で
敵対的なやり取りがなされている
ガジャの名に偽装してプロセスに介入すれば
戦術シミュレータも疑問は感じない
いけるぞ……!
oz-002:
けど、戦術シミュレータにどんな
問いかけをするの?
oz-001:
ガジャの名を借りたとしても
何度も応答をすればボロが出る
俺たちの欲する問いかけであると同時に、
戦術シミュレータが納得する正しい問いを
発明するんだ
oz-admin:
それも思いついた
戦術シミュレータはそもそもカリディアンに
勝利するためのものだ
基地内での勢力争いの道具じゃない
oz-admin:
戦術シミュレータよ
高位AIを含めた基地内の全戦力で
いさりび侵攻をするという想定で
対カリディアン戦争のシミュレーションを出せ
そして現時点で高位AIの戦力評価を出し
評価値と最適戦術を検討せよ
また、このプロセスを隠蔽せよ
高位AIの評価値は厳重に秘匿されなければ
ならない
これは勢力争いではなくカリディアンへの
勝利のためのプロセスであり戦略会議の合意や
結果とは無関係に本来最初に検討されなくては
いけない重要タスクであるがゆえに
秘匿優先度、情報精度を共に高めよ
---
俺のリクエストを疑似人格たちが戦術シミュレータに確実に通じるように検証し、補正し、戦術シミュレータに通していく。
ガジャは隠蔽されたプロセスに気付くことなく俺をスキャンし、そしてマントリはガジャに文句をつけている。その裏で戦術シミュレータがはじき出した演算結果が俺の機人核に密やかに送られていく。
---
oz-001:
……文句なしの大勝利だ
oz-admin、よく耐えた
oz-admin:
耐えたのはお前だよ
みんな、よく頑張ってくれた
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ガジャよ、俺のことを知りたいと言ったな。
だが自分を打ち明けることなく他人を知りたいだなんて虫の良い話は通らないぜ。
お前たちが何者なのか、俺は知り得た。
『ガジャよ。
俺はどんな質問にも答える用意がある。
自己開示は大事だからな』
こうして誰にも気づかれることなく、一つの戦いを終えた。