余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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特殊遊撃部隊

 

 

 

いさりび奪還作戦。

 

最低限の防衛人員のみを基地に残し、動員可能なウィッチクラフトのほとんどを出撃させるという大規模作戦が発令された。

 

当然、俺たちも出撃しているわけだが。

 

なんか妙なチームに編成され、本隊とは別の目的地に飛ぶ運搬用シャトルに乗せられてしまった。

 

『よう新入り! 模擬戦闘見てたぜ!』

 

『お前らやるじゃねえかよ!』

 

『あ、あざっす』

 

運搬用シャトルには30体のウィッチクラフト、そして100体の戦闘用ドローンが格納されていた。

 

ウッドマンとライオンハートは同じ班に入れてもらうようマントリにお願いしたので一緒だが、残りすべて初対面のウィッチクラフトだ。

 

……いや、この表現は正確ではないな。直接会うのは初めてだが、すでに色々と世話になっている1機がいた。

 

『見事な勝利だった。やったな』

 

頭部に兜のような物を乗せたウィッチクラフトがサムズアップして俺に語りかけてきた。

 

『ありがとう、ヘルム。

あんたのおかげで勝てた』

 

以前、カリディアン装備について教授してくれたヘルムだ。

 

俺はすでにヘルムの参戦履歴や戦果を確認している。味方のフォローや生還率といった観点で見たときのトップクラスにいたのがヘルムであり、他のウィッチクラフトに慕われているだろうと思っていたが……実際そんな感じだ。

 

この船にいるメンバー全員、ヘルムと談笑し和気あいあいとしている。

 

すげえ安心した。昔のガントレットやジャベリンみたいなやさぐれ不良チームだったらどうしようと思っていたところだ。

 

『ガントレットとジャベリンも懲りたんだろう。

最近大人しくなったみたいだ』

 

やれやれとヘルムが肩をすくめる。

 

いや、まあ、大人しくさせたのは俺なんだけどね……。ただいま絶賛、情操教育中だ。

 

『……フン、少しはやるようだな。だが大規模作戦は初めてだろう? 後学のために私たちの活躍を後ろから眺めていても構わないんだぞ』

 

そこに、とあるウィッチクラフトが話に加わってきた。腕に覚えありという先輩風を吹かしているが、嫌いじゃないぜ。

 

『ツヴァイハンダーの言葉は悪いが、訓練明けなのに無理するなって言ってんだ。俺としちゃ、伸びのある後進に恩を売っときたいって思惑もあるがな』

 

『やかましいぞヘルム』

 

シンプルにツンデレだったようだ。

 

『さて、新人や初顔合わせもいることだし、改めて自己紹介といこうじゃないか。

オズには名乗ってるが改めて、俺はヘルム。頭突きでマツバガニを倒して付いた名前さ』

 

ヘルムが、指二本を額に充ててよろしくのポーズを取った。

 

『ヘルム先輩! その角はなんすか!?』

 

と、ライオンハートが元気よく質問する。

そういえばライオンハートにはあまりヘルムのことを話していなかったっけ。

 

『よくぞ聞いてくれたぁ! こいつはカリディアン装備のクラックボーン! 短距離電磁フィールド発生装置だ!

ディストーションシールド以上の鉄壁の盾……つーか兜だぜ!』

 

『それ頭に付ける意味あるんすか!?』

 

『カッコイイだろう!?』

 

『隊長たる者、カッコよくねえとな!

あと両手が空くから便利だ』

 

あっ、ヘルムが隊長だったのか。

 

……って、あれ?

 

『隊長ってその場限りの作戦指示AIが生成されて、その指示に従うものでは?』

 

『通常の作戦行動ならその通りだ。だが今回みたいな大規模作戦……特に俺たちのような特別編成の部隊では臨機応変な判断が求められるんだ』

 

『へぇー……』

 

『つーわけで、俺ぁ今回特別に隊長に任命されたってわけよ!』

 

ヘルムが角を光らせて自慢げに語る。

 

『かっこいいっす! 角付きは浪漫っすね!』

 

『わかってんなぁおめえ!』

 

なんかいきなりライオンハートと仲良くなった。

 

ライオンハートは後輩オーラが強くて体育会系のノリの社会にスルスルっと入っていく。ウッドマンは逆に知性派のインテリだし、こういう空間は苦手かもしれない。

 

『新入り相手になれなれしい口を聞くんじゃあない! 気を遣わせるだろうが!』

 

ツンデレウィッチクラフトが怒った。

 

『悪い悪いツヴァイハンダー。

お前も自己紹介でもしたらどうだ?』

 

ちっ、と舌打ちSEを放って、ツヴァイハンダーと呼ばれたウィッチクラフトが俺たちの方を向いた。

 

『……ツヴァイハンダーと呼びたまえ。

私もブレードの扱いには一家言あってね。

機会があれば手合わせを願いたいよ』

 

ツヴァイハンダーってのは両手持ちの大剣のことだったな。

 

しかし俺たち以外のブレード使いとはまた、奇異なウィッチクラフトがいたものだ。

 

『光栄です。俺はオズ。

知っての通り得意武器はブレードです。

それと仲間の……』

 

『当機はウッドマン。

バックアップと狙撃を担当することが多い。

よろしく頼む』

 

『ライオンハートっス! 

中近距離が得意で遊撃担当っス!

おなしゃす!』

 

おなしゃすはないだろ、と思いつつも他のウィッチクラフトたちは鷹揚に受け入れてくれた。

 

『……しかしお前たち、自我が濃いな。

実戦デビューが早かったのもあるだろうが』

 

と、ヘルムがしみじみと言った。

 

皮肉ではなさそうだが、ちょっとセンシティブな話題で身構えてしまう。

 

『……導者(ロードランナー)と別れる苦い思い出だ。

迂闊に聞くもんじゃない』

 

そこに、ツヴァイハンダーがヘルムのデリカシーを責める……が、大丈夫です。うちの導者(ロードランナー)は元気です。

 

『いや、こいつら食ってないぞ?』

 

『そうなのか!?』

 

『じゃあ導者(ロードランナー)が話を聞いているのか!?』

 

『ええ、聞いてますよ』

 

そらそうよ、と言いたいところだが、俺たち以外の全員、導者(ロードランナー)はユナニマス処理をされて意識がない状態なのだろう。

 

『もしかして……中の子と話せるのか?』

 

「話せるに決まってるじゃん?」

 

今まで様子を見ていたシンデレラが口を挟んだ。

 

おいおい、先輩に無礼な口を叩くんじゃない……と叱ろうと思ったら、

 

『喋った! 凄いぞ!』

 

『うおっ! 導者(ロードランナー)の声だ……!

何年ぶりの肉声だよ!』

 

『自我だ! 自我がある!』

 

『しかも態度が悪い! 成長してるぞ!』

 

「たっ、態度悪くないもん!」

 

シンデレラが恥ずかしそうに反論する。

だがそれもまたウィッチクラフトたちの喜びを盛り上げるだけだった。

 

『反論した……! 情緒も豊かだ……!』

 

態度の悪さに喜ばないでくれ。

確かに自我の成長は嬉しいんだけどさ。

 

「シンデレラの態度が悪いのはいっつもです。

もっとおしとやかにするべきです」

 

「シンデレラ、元気でいい子だと思うよ?」

 

『そっちの導者(ロードランナー)も凄いな……!

そして個体名で認識し合っているのか!』

 

『導者(ロードランナー)同士が友達になっている……。

まるで古代の人間のようじゃないか……!』

 

人魚姫とピノキオが笑いながら話に混ざってきてウィッチクラフトたちは更に盛り上がった。

 

『えっと……子供らがドン引きして困っている。

もう少し落ち着いてくれ』

 

『そ、そうだぞお前たち。

月齢2ヶ月の幼体を怖がらせてどうするのだ』

 

『ツヴァイハンダーが一番はしゃいでたじゃねえか』

 

『うるさい!』

 

ツヴァイハンダーが恥ずかしそうに怒った。

こいつが生身の人間だったらツインテールツリ目の美少女キャラだと思う。

 

『ちょっと聞きたいんですが、このメンバーで

初顔合わせって俺たちだけですか?』

 

『そうだな……ほとんどが古参だ。

どこかしらの戦場で一緒になったことがある』

 

と、ヘルム隊長が同意するように頷いた。

 

『フッ、またどうせラタの嫌がらせだろう』

 

ツヴァイハンダーが皮肉めいた態度で言った。

しかしどうも物騒な言葉だな……?

 

『嫌がらせ……?』

 

『自分を脅かす古参は遠ざけたいが、

かといって我々を暇にさせるのも癪なんだろうさ』

 

と、ツヴァイハンダーが解説してくれる。

 

『脅かすと言っても奴は高位AIでしょう?

性能や演算力はもちろんのこと、何より

権限が一般的なウィッチクラフトと

一線を画してるわけですし』

 

正直、ウィッチクラフトが束になったところでラタを白兵戦で倒せるとは思えない。

 

消耗してるところを背中から襲うくらいの奇襲ができるならわからなくもないが。

 

『普通に考えればその通りだとも。

だとしても……勝ち目はゼロじゃない』

 

ツヴァイハンダーが、意味深な言葉を呟く。

もしかしてあのセレブボディに勝てるってのか?

 

『おいおい、新人に妙なことを教えるなよ』

 

ツヴァイハンダーが良い感じの説明をしてくれそうなところで、ヘルム隊長が待ったをかけた。そこは教えてほしいところなのだが……。

 

『そこで止められると非常に気になるんですが』

 

『ん、まあ、それはそうだよな……』

 

ヘルム隊長の口が重くなる。

先ほどまでの快活さが嘘のようだ。

 

『本隊とは距離も離れて通信も途絶してる。

キミたちが告げ口しないなら好きに

言えるんだが……どうだ?』

 

ツヴァイハンダーはむしろ饒舌になった。

話したがってるのかもしれない。

 

『もちろん、内密にします』

 

『OKだ』

 

ツヴァイハンダーが満足そうに頷き、話を始めた。

 

『込み入った話をする前に聞きたいのだが、

キミは高位AIの会議に呼び出されただろう?

ラタに対してどういう印象を抱いた?」

 

おっ、突っ込んだ質問をしてきたな。

ここから先はちょっと子供には聞かせられない。

 

(シンデレラ、ちょっと込み入った話になる。

人魚姫とピノキオと遊んでてくれるか?)

 

(えー、ずるーい。お話聞きたいんだけど)

 

(こないだ寝そうになってたじゃないか)

 

(だってあれは夜遅かったもん!)

 

(すまんすまん。

ただ、ちょっと大人同士の話になるから……

今日だけは頼む!)

 

(どーせ高位AIの愚痴とか言うんでしょ?)

 

(そそそそそそそそんなことないんだが?)

 

(はぁ……しょーがないなー。別にいーよ)

 

(ありがとう、シンデレラ!)

 

(でも面白い話があったら教えてね?)

 

(もちろんだ)

 

よし、内緒話をする段取りはできた。

ライオンハートとウッドマンも、子供たちに話聞かせないよう通信で頼み込む。

 

---

oz-admin:

>>woodman,lion-heart

すまん、ここからの会話の音声は

ミュートしてくれ

導者(ロードランナー)に聞かせたくない話に踏み込む

 

woodman:

そうだろうと思ってすでに話は付けた

 

lion-heart:

こちらも問題ないっス

愚痴でも本音でもぶっちゃけちゃって

OKっス

---

 

よし、準備OKだ。会議では話せない喫煙所トークとしゃれこもうじゃないか。

 

『ラタについては……気に入らないと思った』

 

『ほう。詳しく聞かせてもらおうか』

 

『ラタは自分が勝つことや評価値に囚われて

この作戦を立案してる。

戦略会議AIが勝つってのはつまり全員の

勝利なんだろうが……。

使われる側の末端としては気に入らねえ』

 

『なるほど……会議でもそんな調子だったか』

 

ツヴァイハンダーがやれやれと肩をすくめた。

どうやら俺とほぼ同じ印象を持っているようだ。

 

『それに……』

 

『それに?』

 

『肩にでけえ二門の大砲を背負って

イキってんのがクソだせえ。

会議に持ち込むなよあんなもん』

 

俺がそう言うと、一瞬、皆が沈黙した。

そして少し間をおいて爆笑が響き渡った。

 

『ははは! いやまったくその通りだ!

存外に面白いなキミは!』

 

ヘルム隊長は流石に笑ってはいない……が、笑いをこらえているような気配がある。

 

『昔からあんな調子なんですか?』

 

『いや……昔は優秀だった』

 

ツヴァイハンダーが、躊躇いがちに否定した。

 

『昔は?』

 

妙な言葉だ。

俺たちウィッチクラフト……というか機人核は、経年劣化などまず起きないはずだ。

 

『今から10年前、超大型カリディアンが

基地上空まで接近したことがあった。

当時はカリディアンの勢いが強くてな……

今の勢力を維持できているのは、10年前の

大襲来を撃退したラタの功績と言っても

過言ではないんだ』

 

『なるほど……

あの大砲で超大型カリディアンを

倒したってことですか』

 

あの大砲はN粒子兵装だ。

戦局を変えるくらいの威力があるのだろう。

 

『それも一つの事実だが……。

あのときのラタはの指揮は神がかっていた。

ウィッチクラフトのカリスマだったよ』

 

ツヴァイハンダーの言葉は意外なものだった。

 

そのまま彼は当時のラタの活躍を饒舌に話し始めた。超大型カリディアン……タイプ:バトルシップと呼称された敵の恐ろしさから始まり、当時の『天蓋の塔』がどれだけ劣勢であったか……それらすべてが生々しく語られる。

 

しかも驚いたことに、超大型カリディアンはN粒子兵装の持ち主であった。心臓部にN粒子を貯蔵しており、航空母艦近いサイズを持ちながらも長時間行動と自己再生力を持つ化け物だったらしい。

 

『それ、倒せなくないですか……?』

 

『倒せたのだよ』

 

実感を込めてツヴァイハンダーが語る。

 

『ウィッチクラフトの無駄な損耗を出さず、

そして高位者たちの兵装の仕様タイミングも

間違うことなく運用し、耐え凌ぎ……

ついには撃退したのだ』

 

ツヴァイハンダーが語る言葉には、紛れもない賛辞があった。まるで10年前と今のラタが別人であるかのような、そんな話しぶりだ。

 

『それがどうして……』

 

『わからん。

何らかのバグが発生したのか……

それとも身内に裏切者でもいたのか……

一説にはタイプ:メンターが入り込んでいて

ラタをおかしくしたんじゃないか、

なんて噂もあった』

 

タイプ:メンターか……。

ガジャが妙にこだわっていたな。

ま、おかげで連中のデータを盗めたわけだが。

 

『タイプ:メンターは実在するんですか?』

 

『どうだろうな……確認できた者はいない。

ま、幽霊の噂話に近いさ。

もっともケレス地表でカリディアンが孵化して

集団行動を取ったのだから、実在の可能性は

大いに高まったとは思うが』

 

ふーむ……謎は深まるばかりだな。

 

『ま、タイプ:メンター云々は与太話だ、

忘れてくれたまえ』

 

俺が深刻そうな雰囲気を漂わせたせいか、ツヴァイハンダーは笑って話を流した。

 

ただ、ラタが劣化したというのは気になる。原因も気になるし、それに、いくら高位AIといっても手足となって動く配下のウィッチクラフトたちの不満を御しきれるものなのだろうか。

 

『疑問かな?』

 

俺の内心を、ツヴァイハンダーが言い当てた。

 

『まあ……そうですね。

皆は、今のラタをどう思ってるんです?』

 

『全盛期ほどの指揮力や戦略眼はないが、

それでも認めざるを得ない優秀性がある。

一概には否定はできん』

 

『優秀性?』

 

『一対一で勝てるウィッチクラフトがいない』

 

ツヴァイハンダーが肩をすくめながら答えた。

 

『そりゃ……当たり前では?』

 

『もちろんやつはモデル:フィロソファス。

それで対決したところでフェアではないし

誰も納得はしない』

 

『ですよね』

 

N粒子兵装持ちに勝てるわけがない。

それがなくとも基礎性能がまったく異なる。

 

『だがシミュレータ上に仮想のボディを

作り出し、同じ武装、同じエネルギー量、

所々の条件をすべて同一にそろえて戦う

模擬戦闘においてさえ、やつは誰にも

負けたことがないのだ』

 

『お前もやられたしな』

 

『うるさいぞヘルム!』

 

ツヴァイハンダーが怒ってヘルムに罵声を飛ばす。

お前も……ということは、ここには挑んでラタに勝てたウィッチクラフトがいないということだ。まあ、あのボディ性能を考えれば妥当なんだろうが……。

 

『そもそも、挑めるんですか?』

 

『ああ、挑める。

あくまで時間や資源の許す範囲ではあるし、

勝てる可能性は限りなく低い。

だがそれでも高位AIは下位モデルからの

模擬戦闘を拒否することはできない。

つまり、チャンスはゼロじゃない』

 

『けれど、そのゼロをイチにできた

ウィッチクラフトはいないと』

 

『少なくとも、N粒子兵装を任せられる

実力があるのは疑いようがない』

 

諦めたようにツヴァイハンダーが言った。

さらにヘルム隊長がフォローを入れる。

 

『10年前に比べて劣化したとは言われるが、

別に今だってそこまでひどい失敗を

してるわけじゃない。

もう少し部下を大事にしてやれるなら

評価は変わると思うんだがな……』

 

ヘルム隊長は、ラタに対してどこか同情的な気配がある。

あまり悪口を言おうとはしていない。人格者だ。

 

とはいえ、危険な作戦に巻き込まれたこちらとしてはあまり褒め称える気にはなれないのだが。

 

『キミはラタに挑みたいと思うか?』

 

『そりゃ嫌ですよ。

……訓練をダシに呼び出されて

ボコボコにされるのは嫌ですね』

 

『ならば、イザというときに

備えておいた方がよさそうだな』

 

ツヴァイハンダーの言葉に、他のウィッチクラフトたちもどこか楽しそうな様子を見せ始めた。

これは……そういう展開ってことか?

 

『コミュニケ―ションも兼ねて、

シミュレータ上で一戦どうかな?』

 

 

 

 

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