余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
『……おいおいおい! もしかしてこれ全部、
カリディアンの有精卵ということか!?』
『一体なんのためにこんなものを……?』
ヘルムとツヴァイハンダーが、動揺を抑えながら疑問を口にした。
俺は、とりあえず思いつく推測で答えた。
『偽装ってのはつまるところ、
本物とすり替えたり……
本物と誤認させるためにある。
こっちの基地内にどうにかして
搬入するつもりだったんだろうな』
『……ライオンハート、よく見つけてくれた。
これは焼き払った方がよさそうだな』
と、ヘルムが言ったが、そこにライオンハートが慌てて静止した。
『持って帰った方よくないスか?
もうすでに基地の中に持ち込まれてたなら
超ウルトラやべーっスよ。
分析して戦闘糧食の違いをハッキリさせて
基地内の分を検品しないと』
ライオンハートの言葉に、ウィッチクラフトたちがどよめいた。
俺も流石に心配になる。最悪、
『あ、ありえないだろ流石にそれは!』
『もちろん、ないとは思うっス。
思うっスけど……こうして現物が
見つかってるわけで……』
『むむ……そう言われると……』
ツヴァイハンダーが否定しつつも、懸念を否定しきれないでいた。
というか
「これ目玉焼きとか作れるやつ?」
「オムレツ食べたいですぅ……」
「僕、プリンがいい!」
「ばかねー、プリンは牛乳がなきゃダメよ」
あっ、全然平気でしたね。
『食べちゃダメ!
変なもん口に入れるなよ!
絶対食うなよ!?』
えーつまんなーいという反論は一切無視する。
他のウィッチクラフトたちがお前たちの食欲にビビってるじゃないか。
『なんでお前たちの
元気なんだ……?』
『ちょっとヤンチャなくらいが可愛いてのが
ウチの教育方針でしてね。それより……』
『そうだな、まずはこの卵のことだ。
オズ、お前はどうすべきと思う?』
『……俺も、ライオンハートに賛成だ。
焼却処分はやめた方がいいと思う。
カリディアンの戦略を読み取る上で
貴重なサンプルになると思うし……。
それに、資源管理AIガジャが
基地内にカリディアンが潜伏していないか
神経質になってた』
『ふむ……ガジャまでも懸念してたのか』
個人的にもカリディアンの情報は欲しい。
カリディアンとは何なのか、なぜ俺たちと戦い続けているのかという真理に近付きたい。
『だが持ち帰ると言っても……どこかで
孵化する可能性があるんじゃないか?
重要なことは認めるが、流石にリスクが
高すぎる』
ヘルム隊長の危惧ももっともだ。
船の中で孵化したエイリアンに襲われてしましました……なんて王道コズミックホラーは俺も勘弁願いたい。
『で、でも! 有精卵の確保は
やっぱ大金星っスよ!』
『では持って帰るとして、どう安全を確保する?』
『凍結保存はどうだろうか?
輸送船内に極低温の液体窒素があったはずだ。
孵化に適さない状態を維持できれば
研究や分析も可能だろう』
と、ウッドマンが提案した。
カリディアンは活動時に熱を発している。恒温動物、あるいはバッテリーやエンジンで動作する機械と同じだ。逆に言えば熱を封じ込められた状態で活動できる万能生物などではない。
もちろん凍結することで卵が死ぬ可能性の方が高いが、分析するとしても高位AIは生存状態まで求めることもないだろう。
『よし……グッド!
ウッドマンは凍結作業に専念!
ツヴァイハンダーとトマホークが輸送船と
作業者の護衛!
他ウィッチクラフトは搬入口の防衛だ!
作業中は絶対に邪魔を入れさせるな!』
『了解!』
号令が響き渡り、全員が配置に付いた。
同時に新手のカリディアンが奥からやってくる。
って、シャコが出てきやがった。
プラズマを全力で放たれたらヤバいぞ。
「オズ! あれやっちゃうよ!
ピノキオ、援護して!」
俺が言うよりも早くシンデレラが即応した。
ベタ踏みで一足飛びにシャコの懐に飛び込みカトラリーを展開。エネルギーが溜まり切る前の拳を切断し、その勢いで核を貫いた。
更にその横から飛び出てきたヤドカリの攻撃を回避し、すかさずライオンハート=ピノキオが殴り飛ばす。
『なんて早業だ……援護する暇もねえ……』
どこかのウィッチクラフトが賛嘆を漏らす。
「喋ってる暇あったら援護して!」
『わ、わかった!』
俺たちを制圧できる数を寄越してきている。
どんどん敵が増えてきて、俺たちが遊撃的に敵を倒しても次第に圧が増していく。
こっちに敵が戦力を割いているということは宇宙港側が楽になっていると思いたいが……。
『オズ、ライオンハート! 防衛線まで下がれ!
でかいのが来るぞ……!』
ヘルム隊長が多数のカリディアンを麻痺させて俺たちの退路を作る。
ありがたく利用して下がったが、安堵は一切できない。まったく遭遇したことのないカリディアンの反応が近付いてきたのだから。
遭遇例も乏しく、シミュレーター上においても正確な再現ができないために現れることはない。
『W4RN!NG//4TT4CK::PR0P-F0RC3//5T4ND-D0WN//KRRRRAAA』
音声機器を侵食する咆哮が響き渡る。
タイプ:クイーン。
まるで近世ヨーロッパの貴婦人が大きなスカートを履いているような姿だが、当然それはお洒落でもこだわりでもない。
重量センサーと電磁波の探知が、スカートの中の何かに警戒を放っている。
『なんだ……突然軽くなったぞ……?』
重量センサーの数値が変化。
相手の重さがみるみるうちに軽くなっていく。
「やば! みんな避けて!」
そして、クイーンが姿を消し……いや、違う。
ありえない速度で移動を開始したのだ。
『重力制御だ! ビームは撃つな!』
「きもっ! 動きヤバすぎ!」
逆さまになった状態で天井に張り付いたかと思えば壁を歩いてこちらを攪乱する。
軌道が意味不明すぎて移動予測使用不能、ロックオンが間に合わない。シンデレラさえも目で追うのが精いっぱいだ……ということは他の味方は目で追うことすらできていない。
「なんかこっち撃ってくるよ!」
気付けばクイーンは俺たちの真横にい位置して、スカート内部をこちらに向けてくる。
そこに脚はない。代わりに、ミサイルランチャーのような何かの発射口がびっしりと並んでいる。
そこから針のようなものがじゃきりと音を立てて装填されていくのを捉えた。
『避けろぉー!!!!!』
俺の言葉で全員が弾かれたように動きビーム砲火を浴びせた……が、すべて捻じ曲げられ、傷一つ負わせることはできない。
あのスカートの底面は砲口であると同時に、強力なディストーションシールドとなっている。
砲口から銛のようなものが凄まじい勢いで放たれていく。
『電磁フィールド全開! 俺の後ろに隠れろ!』
ヘルム隊長が立ちはだかりバリアを張る。
だがクイーンの放った銛はそれを素通りして味方機に命中する。
『ぐわっ……!?』
『なんだこれ……まずい、爆発する!』
『なんで盾が効かねえんだよ!?
実弾だろこれ……!?』
『くそっ、俺がなんとかしてやる!』
『やめろパンジャンドラム!
無茶だ!』
味方機やドローンが銛に貫かれて爆発し、黒煙をまき散らすと共に破片が散乱する。
あれは針であると同時に爆弾だ。どこかが貫かれたら一撃死となる。
「なにこれクソゲーじゃん!」
『意味が分からん、なんだこりゃ……!』
シンデレラの罵倒語を嗜める余裕すらない。
だが幸いにも銛の外装部の破片が足元に転がってきて急いで分析した。
これは……カルシウムと鉄、その他希少金属をベースにしたものだ。カリディアンの外骨格と何ら変わりない。
だったらなぜ……と思ったが、外装にほんの僅かな残滓が見える。
これは……げっ……N粒子だ!?
『銛はN粒子によるシールドキャンセラーだ!
電磁フィールドじゃ防げないぞ!』
『なんだと!?』
タイプ:クイーンのデータが乏しく、また個体差が激しい理由もわかった。
『こいつはN粒子搭載型カリディアンだ!』
武器もユニークなものである可能性が高い。ていうか重力制御をしてくる時点で想定するべきだった。
高位AIの3機ほどの出力はなさそうだが、こんな敵が増産されたら溜まったもんじゃないぞ……!
『どうするんだ!
攻撃が弾かれるならどうしようもないぞ!』
『敵の攻撃だって無限じゃない!
耐え凌げば……』
『耐久力はこっちが薄いに決まってんだろ!
機体性能だけじゃない!
敵はタイプ:クイーンだけじゃないんだぞ!』
「どっちにしろ敵が変態軌道して
盾が強いだけでしょ!
カリディアンは核をぶち抜いたら殺せる!
びびってどーすんのよ!」
『そうだ!
トリガーフィッシュで攪乱する!
その後、一斉放火用意!』
ヘルム隊長がトリガーフィッシュをタイプ:クイーンに撃ちながら叱咤した。
それは軌道を逸らされる瞬間に爆発し、黒煙で敵の視界を防いでいく。少しばかりの猶予時間を得た俺たちは陣形を整え、タイプ:クイーンに一斉放火。
たとえ光学兵器の弾道が逸らされるとしても銛を放つ隙は生まれない。ヘルム隊長も中々の巧者だ、復帰が早い。
『凍結作業が終わり次第、速やかに撤収!
タイプ:クイーンを引き付けただけで
十分に第三部隊の援護になったはずだ!
倒しきれとは言わん!
全力で食い止めて生還するぞ!』
『了解!』
『こちら凍結作業班!
あと5分持たせてくれ……!』
ウッドマンから連絡が来た。
くそ、5分か……厳しい戦いになるな……。
「別にさー、倒しちゃっていーんでしょ?」
『やれるもんならやってみろ!
成功したら俺の兜でも何でも
好きなもん持っていけ!』
シンデレラの軽口にヘルム隊長が気前よく応じる。
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helmet:
>>oz-admin
オズ、万が一ということもある
お前に隊長代理の権限を付与する
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ヘルム隊長が、突然ダイレクトメッセージで語りかけると同時に、俺に権限を付与してきた。
これは……
ん? 何も変わらないな?
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oz-admin:
ヘルム隊長
これ、もらっても何も起きないんだが?
helmet:
そりゃ起きたら困る
あくまで代理だからな
仮に俺が行動不能や通信不能となったとき
お前にも一時的に指揮権が付与される
oz-admin:
あ、なるほど
helmet:
指揮権があれば撤退可否判断、
命令違反のウィッチクラフトへの懲罰、
そして高位AIへの戦略会議提案が
可能だ
oz-admin:
戦略会議提案?
helmet:
ラタの作戦に文句が言えるってことだ
ただし妥当な作戦であれば文句は通らん
検証し、正しく問題提起すれば
修正できる可能性がある
oz-admin:
そんなことが……
helmet:
それを使う機会はまず無いとは思う
だが万が一、俺が行動不能になった場合は
隊を頼んだぞ
oz-admin:
俺もそんな悪夢みたいな想定はごめんだが
確かに預かった
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「んじゃ、クイーンの武装とか
もらっていいわけね?」
俺がヘルム隊長から権限をもらっている横で、シンデレラがなんとも現金なことを言う。いや俺も欲しいけどさ!
『おいおい、流石にクイーンは……
いや……勝てるなら許す! 行ってこい!』
ヘルムのお墨付きを得たシンデレラが、犬歯をむき出しにして笑みを浮かべた。
猛禽の瞳が輝き始める。