余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
「いよーし! ピノキオ!
プラズマいつでも撃てるようにしといてよ!」
「はいはーい」
ピノキオがいつもの調子でシンデレラの無茶ぶりに応える。
少しずつピノキオの感情がわかってきた。いつもよりほんのちょっと声に抑揚があるので、この子もやる気になっている。
『どうするつもりっス!?
重力制御を突破するのは難しいっスよ!』
ライオンハートが焦って質問するが、俺もめっちゃ聞きたい。
『シンデレラ、勝算はあるんだな?』
「えー、ライオンハートもオズも
わかってないのぉ?」
『変則機動に見せかけて、一定のリズムが
あるのはわかる。
それを利用するんだろう?』
「なーんだ、わかってんじゃん」
『それに加えて、重力制御を移動に使って
俺たちの死角を取ればいいのに、
それはやってこない。
何故だか知らんがタイプ:クイーンは
躊躇している気配がある。
だが、そこを突くんだとしても
具体的にどうすればいいかはわからん』
今までのタイプ:クイーンの軌跡を解析。
超高速での移動と停止を繰り返している。重力方向の切り替え時に、一瞬の停止時間が発生して空中で制止している。
それは0.2秒から0.3程度だ。
そして常に、停止しているポイントは常に俺たちと一定距離が離れている。
もう少しギリギリを攻めて接近した方が効率的だろうに安全マージンを広めに取っている。
なぜだ? トリガーフィッシュのような爆弾でさえ重力で防げるのだから、ウィッチクラフトをそのまま轢き殺せるんじゃないのか?
いや……衝突事故を過度に恐れている? あるいは恐れているというより、できないのか?
トリガーフィッシュの実弾と俺たちウィッチクラフトの体との違いは、質量だ。
タイプ:クイーンの重力制御は方向の切り替えや自分自身の急加速・急減速に特化していて、質量の大きな物体を反射させるほどの出力はないんじゃないか?
トリガーフィッシュ程度の重さなら防げる。だがウィッチクラフトほど重いものはどうこうできない……もしくは重力制御のためのエネルギーが持っていかれる?
……ひとまずその仮定で移動パターンを再計算。
ウィッチクラフト、その他遮蔽物となるものから常に10メートル離れた場所でのみ移動可能として……かなり絞り込めた。
『……なんとかなるかもしれん』
「でしょ?
NPCの敵パターンみたいなもんで、
わかっちゃえば全然楽だと思う」
『シンデレラ、すぐに気付いたのか?』
「見てりゃわかるじゃん。
銛の再装填だって時間かかるっぽいし、
向こうはこっちを一気に殺せるほど
強くないんだって」
「予測進路上に速度調整した
トリガーフィッシュを置きに行って
進路を塞ぐとか、どうかな?
ブービートラップみたいな感じ」
『ピノキオもわかってたっスか!?』
「なんとなく?」
あるいは俺が、タイプ:クイーンはN粒子を活用して無敵の力を振るうのではないかと恐れ過ぎていたか。
なんであれ……光明は見えた!
『全機! 20秒後に勝負を仕掛ける!
このタイミングで今から送る座標に移動して
体でタイプ:クイーンを足止めしてくれ!
ただし……行動開始は19.5秒まで
こらえてくれ!』
クイーンの移動不能時間は0.3秒。その間に次の座標を決めて移動し、また0.3秒の硬直時間が発生する。足して0.6秒以内に移動予測箇所をウィッチクラフト全員で潰せば、相手を追い詰めることができる。
『0.5秒で体当たりしろってか!?
無茶な!』
『耐えて時間を稼いだ方が……』
うっ……ちょっと無茶な作戦だったか。
だが手をこまねいていてはジリ貧だ。卵の作業完了前にこっちが全滅しかねない。
敵への増援の可能性も高い。ヤドカリ程度なら問題ないが、タイプ:クイーンが増えたらもはやどうしようもない。
『何だから知らんが了解した!
時間がない、やるぞ!』
『そうだ! 新入りに情けないところを
見せるんじゃあない!』
そこに、ヘルム隊長とツヴァイハンダーが威勢よく応じた。味方各機もやるしかないと覚悟が決まったようだ。
よし、行けるぞ……!
『シンデレラ、いけるな?
タイプ:クイーンが足止めされた瞬間を狙って
一気に勝負に出る』
「わかってる! ピノキオ!
そっちに行ったら任せたわよ!」
「もちろん、おっけおっけ」
ライオンハート=ピノキオが静かに拳に電撃をチャージし始めた。
相手に見えないよう他の機体の背に隠れて息をひそめ、乾坤一擲の一撃を放つ瞬間を狙う。
こちらもブレードの出力を一瞬で全開にできるよう準備をしながらカウントダウンだ。
『3……2……1……今だ!』
一斉に各機が動いた。
タイプ:クイーンの進路が妨害されて、丁度、俺=シンデレラとライオンハート=ピノキオの中間地点でタイプ:クイーンがウィッチクラフトと衝突事故を起こしていた。
『いけ、シンデレラ!』
ペダルをベタ踏みして一気に加速してブレードを展開。下半身のスカート部を両断した。
『R!GHT::HUM4N3//M3D!C4L-0xA7//W0UND3D//KRRRAAAA』
『もういっちょー』
同時にライオンハート=ピノキオも動いてタイプ:クイーンの上半身を狙った。
『やったか!?』
どこかのウィッチクラフトが快哉を叫ぶ。
タイプ:クイーンを仕留めた……かと思いきや、スカート部が爆発を起こした。しかも爆発に指向性がある。タイプ:クイーン側にはダメージは生じていない。ライオンハート=ピノキオに一方的なダメージが与えられる。
『んなっ!?』
そしてスカート部をなくしたタイプ:クイーンは、二足歩行形態に変形していた。くそ、足は飾りじゃないってか。その足でピノキオの攻撃範囲から離脱し、左腕部から小型の銛を射出する。
「ゴメン! 加減しすぎた!」
重水プラズマナックルの攻撃範囲はブレードより格段に広いが、恐らく同時打ちを避けるために範囲を絞ったのだろう。俺たちの被害を覚悟して全力で撃つ、という判断ができなかったのは流石にやむをえまい。
「変形する方がずるいのよっ!
このっ! こいつっ!」
俺=シンデレラがビームライフルで反撃するがスカートを脱ぎ捨てた後の敏捷性が凄まじい。ヤドカリなど目じゃないぞ。くっそ、メイン武装を捨てたんだから弱くあれよ!
『さっきの銛よりは弱い!
コックピットさえ避ければなんとか
反撃できる!』
「ディストーションシールドを貫くのは
一緒じゃん!」
『気合で避けるんだよぉ!』
「なんでこーゆーときに気合とか
根性とか言うの! 根性出すの
あたしなんですけど!」
『根性の天才だからだ!』
「嬉しくない!」
最悪なことに、左腕部のレンコンみたいな射出口から放たれる銛は爆破力や貫通力こそ下がったが、シールドを突破する貫通力は失われていない。
『腕の一本や二本は何とかなる!
誰か援護してくれ!』
『今行くっス!』
『あと1分で作業完了する!
これ以上タイプ:クイーンの相手を
する必要はない!』
ウッドマンから良いニュースが飛び込んでくるが、悪いニュースがある。
俺たちがタイプ:クイーンの足止めを止めた瞬間、各個撃破されていくだろう。
あの鉄壁スカートを脱ぎ捨ててきたということは、こいつは手負いの獣だ。余裕があったときよりも恐ろしい。命を捨てて俺たちを殺しに来る。
『こなくそっ! もっと砲撃集中してくれ!
あと壊れた人もさっさと逃げてくれ!』
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
しっつこいのよアンタ!
ぶっとい脚さらして無様なのよ!」
シンデレラの罵声が響き渡る。
だがシンデレラは回避かビームでの銛の撃墜に終始しており、接近できずにいた。
シンデレラのストレスが溜まっていく。
過集中に陥る。
視野が狭窄し、反応速度が上昇していく。
一点突破の演算力が突出して射撃制度が神がかっていく。高速射出される銛の中心をライフルで撃ち抜いて少しずつ距離を詰める。タイプ:クイーンが同距離を後ずさるがそれだけ銛の射出精度が落ちて撃ち落とすまでもなくなり更に距離が詰まる。
一歩、また一歩とタイプ:クイーンとの距離が縮まり、30メートルはあったはずが今や5メートルまで近付いた。
4メートル。
3メートル。
相手の吐息の匂いさえ嗅ぎ取れる距離まで詰まる。
『W4RN!NG//4TT4CK::PR0P-F0RC3//5T4ND-D0WN//KRRRRAAA』
耐え切れなくなったのはタイプ:クイーンだ。
左腕部のレンコンを投げ捨ててブレードを展開。
複雑な刃紋はまるで名刀の面影。
ヤドカリの超振動ブレードより遥かに強力だ。
N粒子で強化されている可能性はある。
『今だシンデレラ!』
「わかってるってーのぉ!」
カトラリー展開。
今まで蓄積したエネルギーを全放出してブレード戦を仕掛ける。俺たちの作り上げた剣がタイプ:クイーンの必殺の一撃を受け止められるか。
それは。
『D34TH=N0//B4TTL3-3ND//5URR3ND//F4M!LY::H0M3//GRRRAAAA』
互角だ。
両者ともにブレード破損。
中央部から破断したブレードがくるくると回転しながらあらぬ方向に飛んでいく。
だがそれは敗北を意味しない。
勝利の笑みを浮かべているであろうタイプ:クイーンの背中に重水プラズマナックルが叩き込まれ、手元に残ったカトラリーがタイプ:クイーンの胸元を貫いた。
『GRRRYYYY……』
タイプ:クイーンの目の光が次第に消えていく。
そしてようやく、完全に沈黙した。
体を支える力が失われて、タイプ:クイーンの首や手足ががくりとぶら下がる。
電波、熱、様々な方法でサーチするが、すべての反応がロスト。
数秒の沈黙の後、シンデレラが絶叫した。
「…………っしゃああああ! 勝ったあああああ!」