余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~   作:富士伸太

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孤立 01

 

 

 

『うおおお! すげえよお前ら!』

 

『よくやった!』

 

『タイプ:クイーンをこの人数で撃破か!

間違いなくニューレコードだな……!』

 

多くのウィッチクラフトたちが驚嘆と賛辞を口にする。俺も正直、ここまでやれるとは思わなかった。

 

『落ち着け! 損害確認と撤収作業急げ!

基地に帰るまでが戦争だぞ!』

 

「そーです! シンデレラ!

叫んでる暇あったらさっさと戻るですぅ!」

 

『パンジャンドラムがまた戦闘不能だ!』

 

ヘルム隊長と人魚姫からお叱りの言葉が飛んでくる。まったくもってごもっとも。

 

今の戦闘で動けなくなったウィッチクラフトも少なくない、さっさと逃げなきゃまずいことになる。

 

『シンデレラ、俺たちも急いで撤収を……』

 

「ねえオズ……。

タイプ:クイーンって死んだよね?」

 

『おう、ぴくりとも動かないし』

 

「んじゃ、あれはなに?」

 

シンデレラが示した方向にあったのは、タイプ:クイーンのスカート部分の破片が散乱しているところだ。

 

そこに、妙なボールのようなものがある。直径1メートルくらいの黒い球体だ。真球としての精度がやたら高い。まるでそこだけゲームから飛び出てきたかのような抽象的な外見である。

 

これは恐らく……いや、間違いなく重力制御装置だ。あのスカート部の中に内蔵されていたものと見て間違いない。

 

『タイプ:クイーンの重力制御のコアだな……』

 

「へぇー……」

 

爆発したのにまだ形を保っているあたり、相当頑丈のようだな。

 

……欲しい。

 

再利用して装備したい……が、流石に危険か?

 

『あれ? 熱源反応はまだ残ってるな……』

 

あれ? おかしいな?

なんでさっきより温度が上がってるんだ?

……ていうか、急速に温度が上がっていって……。

 

『オズ先輩! ヤバいっす! 伏せて!』

 

ライオンハートの声が響く。

 

だが一歩遅かった。視界が凄まじい強さの白い光に塗り上げられて映像がホワイトアウトしていく。

 

そして、轟音が鳴り響いた。

 

 

 

◆

 

 

 

システム再起動。

左腕部、ディストーションシールド異常。

右腕部、異常なし。

ビームライフル「ラビット」、軽度異常。

狙撃モード使用不可。

エネルギー総量、45%。

通信、センサー類、異常なし。

 

はい、やべーですね。

 

「あーもう! 何よこれ!」

 

一瞬昏倒していたシンデレラが目を覚ました。

 

バイタルは……異常なし。

 

衝撃で軽く目を回した程度のようだ、よかった。

 

『爆発に巻き込まれたみたいだな……。

ここはどこだ……?』

 

周囲をサーチするが……うおっ、かなり危ういところに出てきちまった……。

 

ここはコンテナ倉庫……を改造した、カリディアンの孵卵施設だろう。

 

棚の上に均等に配置された卵を、ほのかに温かなライトが照らしている。

 

「ちょっときもちわるーい」

 

『ビビるよな、こんな光景を見たら……』

 

早く仲間たちのもとに戻りたいところだが、爆発の勢いでけっこう飛ばされてしまったようだ。空気が無く無重力状態だから、何かしらにぶつからないとまったくブレーキが掛からない。

 

目視範囲内に船がないことを見ると、かなり遠くまで飛ばされた可能性があるな……。

 

『マスドライバー側の資材搬入口が崩落して、

そこから奥の方に飛ばされたみたいっス』

 

「みんな大丈夫ー?」

 

『ライオンハート、ピノキオ、お前もいたか』

 

遭難者が増えたことを考えると喜ぶのも微妙だが、一組だけよりは心強い。この状況でヤドカリに囲まれたらたまったもんじゃない。

 

『私たちだけみたいっスね……』

 

『孤立しちまったな』

 

タイプ:クイーンのスカート部の爆発に巻き込まれたのは恐らく俺=シンデレラとライオンハート=ピノキオだけだろう。

 

他の皆は恐らく無事なはずだ。さっさと合流しないと帰れなくなっちまう。

 

『よし、急いで船に戻ろう』

 

『……無理っス』

 

ライオンハートが、珍しく淡々とした様子で言った。

 

『なんでそんなことがわかるんだ?』

 

『重力制御装置のせいで

通信状態がめちゃくちゃっス。

マイクロブラックホールが

生まれたのかも』

 

『マジかよ……って、本当だ……。

本隊と通信できねえし……なんだありゃ』

 

俺たちが飛ばされてきたと思しき方向を見ると、完全に崩れている。

 

『N粒子が揮発して影響が消えるまで

あのままじゃないスかね……。

落ち着くまで何分かかるか、それとも

何時間、何日かかるか分析不能っス。

オズ先輩はできるっスか?』

 

……実はできる。

 

N粒子型量子コンピューターによって動く俺はN粒子の分析が可能だ。

 

で、その結果。

 

『48時間ってところだな』

 

恐らくタイプ:クイーンが破壊される間際にマイクロブラックホールを生み出すような命令を出していたのだろう。

 

そのかわり、重力制御装置はエネルギーを失って金属球と化して転がっているわけだ。今の爆発でほぼガス欠ってところだろう。

 

『マジすか……。その玉をハックして

マイクロブラックホールを消す命令を

出すとかできないスか?』

 

「オズ、それ使えるの!?」

 

シンデレラが期待に満ちた声を挙げた。

 

『いや、うーむ、マツバガニの角を

一時的に使うくらいならともかく、

重力制御装置をモノにするのは

流石に難しいかもしれん』

 

1からハックして自分の物にするのに何分、あるいは何時間かかるかわからん。

 

無理矢理アクセスして制御を奪うことは不可能じゃないが安全性が犠牲になる。重力制御装置みたいな危険物を改造するのは流石にリスキーだ。

 

『分析はしてみるが、利用することを前提に

作戦を立てるのは危なすぎる』

 

「えー、それ武器にしないのぉ?

ヘルムも、あたしたちのにしていいって

言ってたじゃーん」

 

『俺もそうしたいところだがなぁ』

 

シンデレラが不満たらたらに言った。

 

あれだけ死力を尽くして倒したのだから何かしら見返りが欲しいのはその通りだろう。

 

『俺たちのモノにできないか上位AIに

相談してみよう。それに、ライオンハートや

他の仲間がいてこその勝利だ。

ヘルム隊長にも何か見返りがないと

フェアじゃない』

 

「あー……そっかぁ、そうだよねぇ……」

 

「僕は別にいーよ。

重力制御装置って使えるかわかんないし

シンデレラが持ってた方がいいと思う。

ライオンハートもわかんないでしょ?」

 

『全然わかんねっス』

 

「ほんとぉ!?

ピノキオほんと素直でいい子ね!

もー、人魚姫に見習わせたいわ」

 

「シンデレラって人魚姫大好きなのに

なんでそんなこと言うの?」

 

「えっ」

 

ピノキオから剛速球ストレートが飛んできた。

 

シンデレラは言葉に詰まり、あわあわしながらもうつむいて、ぺこりと頭を下げる。

 

「ご……ごめんなさい」

 

「うん」

 

「ほ、ほんとは人魚姫のこと好きだけど……。

恥ずかしいし……」

 

「でも、人魚姫いないところで

悪口言っちゃだめだよ」

 

「……うん、ちゃんと謝る」

 

ピノキオは物静かだが意外と大胆だ。

言うことはしっかり言う。

ライオンハートの教育が良かったのだろうか。

 

そしてシンデレラも、こういうとき素直に謝る。

 

強気だが根は素直だ。俺の教育が良かったのだ、ということにしておこう。

 

『ところで、ライオンハートの方はいいのか?』

 

『装備を充実させたいのは山々っスけどね。

持て余すのは100パー確定なんでオズ先輩に

押し付けたいっス。

N粒子型兵装そのまんま持つなんて怖いっス』

 

『おい』

 

……しかし、なんでライオンハートはN粒子に詳しいんだ?

 

高位AI3機の情報を教えたり、さっきもタイプ:クイーンをN粒子型カリディアンだと教えたり、N粒子そのものの漠然とした知識はあるだろう。

 

だが、N粒子の特性そのものは語っていなかったはずだ。

 

『なあ、ライオンハート……』

 

『なんスか先輩?』

 

いつものように、ライオンハートはあっけらかんと言葉を返してくる。

 

そう、こいつは、謙虚で頼りになるやつだ。

 

少年漫画を大量に読ませて自我が目覚め、そして自分の導者(ロードランナー)を愛するようになった。

 

ウッドマンよりも早く『当機』ではない一人称を使い始め、なにやら後輩というキャラクターや振舞いを覚えた。

 

成長が速すぎる点については、そんなものだろうと思っていた。

 

『……この状況で俺たちに取れる手立ては

三つある』

 

『三つ?』

 

『一つは、救援が来るまで待つ』

 

普通の遭難なら最善手だ。

 

だが戦争がまだ終わってないことを考えると、エネルギーが枯渇する方が確実に速いだろう。

 

『ブラックホールが消えるかもしれないし

なんとか迂回して救援しに来てくれるかも

しれない』

 

『んー……望み薄じゃないスかぁ……?』

 

だろうな。

 

ヘルム隊長も何とか助ける手立てを考えてくれはするだろうが、部隊全員を危険に晒すリスクを負うか……というとノーだ。

 

隊長たちは『一定時間まで粘ってこちらが辿り着くのを待つ』という行動を取るに違いない。

 

よって。

 

『もう一つは、マイクロブラックホールを

迂回して外に出ること。

どこかの隔壁を破って外に出られたなら

船が拾ってくれるはずだ』

 

『適当に壁を叩いて音響測定したっスけど、

かなり分厚くて硬いっス』

 

いきなり悲しいニュースとして返ってきた。

一番現実的な案が却下されてしまった。

 

『多分っスけど、機密性を保つために

カリディアンが謎の補修剤とか

べちょべちょに塗りまくって

硬化させてるっぽいっス』

 

『……みたいだな』

 

ここが卵を育成させるための場所とするならば防御が固いのも納得だ。

 

タイプ:クイーンもいたことだしな。

 

恐らくここである程度まで育てた卵を、マスドライバーで近隣の小惑星に投下していたのだろう。

 

そういう意味ではこの人口天体いさりびにおけるカリディアンの最重要拠点の一つだ。

 

ま、こうした卵の育成部屋がここだけとは思えないし容易に侵入できたことを考えるとワタリガニとかの一般兵程度しか作っていないと思うが……。

 

何にせよ防御が固くて出るのに苦労する、ということだ。

 

『三つめは、ここから脱出して表側……

宇宙港側に出て別部隊と合流することだ』

 

俺たちは、第三部隊がタイプ:キングというこのいさりびのボスと戦うための囮のようなものだ。

 

つまり今、第三部隊は必死にボスを倒そうと今も戦っているに違いない。

 

幸い、多少のエネルギーは残っている。

 

合流するための移動や戦闘を切り抜けられれば助かる目はある……はずだ。

 

『……リスキーっスね』

 

ライオンハートが苦しそうに言葉を返した。

 

まったくその通りだ。生存可能性としては一番高いが、またもハードな戦場に飛び込むことには違いない。

 

『だが俺たちが戦ってる間、第一部隊、

第二部隊は順調に作戦継続してた。

だが第三部隊がタイプ:キングに

勝てるかは……』

 

タイプ:キングはタイプ;クイーン以上に謎めいていてほぼデータがない。

 

だが俺は一つの確信を得ている。

 

タイプ:クイーンが重力制御が可能だということはタイプ:キングもまたそれに類する武装……N粒子兵装を持ってるだろう。

 

こちらの高位AIも強力ではあるが、勝ち目があるかどうか怪しくなってきた。

 

ま、撤退戦に紛れ込んで第三部隊の輸送船に潜り込めたら逃げられるだろうし、必ずしも勝利していなくともいいんだけどな。

 

……などと俺が考えていると、ライオンハートが音声ではなく通信メッセージで話しかけてきた。

 

 

---

 

lion-heart:

オズ先輩

もう一つ方法があるっス

 

oz-admin:

もう一つ? どういうことだ?

通信に切り替えたってことは子供たちに

聞かせられない話か……?

 

コックピットモジュールだけ飛ばして

味方に拾ってもらうとか

 

lion-heart:

それもアリっすね

でも本当に最後の手段じゃないスか

 

もっと現実的ではあるっス

……気が進まないとは思うんスけど

 

oz-admin:

現実的な手段?

どういうことだ?

 

lion-heart:

投降するっス

 

 

 

 

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