余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
oz-admin:
仕事?
ratha:
見ての通り、俺はタイプ:キングと戦闘中だ
ここに来るまでの消耗がなければ
こんな甲殻類ごときに負けはせんのだが、
エネルギー不足で奴の盾を貫けん
ratha:
そこでだ
その重力制御装置……Nスフィアを使い、
やつの盾に穴を開けろ
oz-admin:
いや、これを使おうにも……
ratha:
わかっている、だから制御プログラムや
作動手順マニュアルを送ってやる
oz-admin:
制御プログラム!?
この重力制御装置を使えるってことですか!?
ratha:
そうだ
Nコアは色々と応用が利く
俺のシャルダグニのような特殊兵装への
転用は無改造では不可能だ
しかしシールド無効化であれば
無改造のNコアのまま使用可能となる
oz-admin:
そういえば……タイプ:クイーンも
似たようなことをしていました
ratha:
『シャルタグニ』のエネルギーチャージが
終わったら再びタイプ:キングを撃つ
さっきも言った通り、余力はあと1撃
発射後、シャルダグニはオーバーヒートして
再使用まで48時間以上必要になるだろう
ラストチャンスだ
これが失敗すれば我らには後がない
oz-admin:
失敗できないってわけですね
ratha:
その通りだ
タイミングはこちらで指示するから頼んだぞ
oz-admin:
了解です
---
oz-admin:
ライオンハート、ラタは全力チャージして
撃つつもりのようだ
俺はその支援を命令された
lion-heart:
タイプ:キングはけっこうジリ貧っス
電磁フィールド発生装置の槍の間合いは中距離
っぽいんスけど、ラタの火力が強すぎて
間合いまで近づけないんス
2、3回展開したら盾が使用不能になる
感じっスね
oz-admin:
じゃあラタの方がジリ貧だな
次の射撃が最後だ
lion-heart:
それは……マズいっスね
タイプ:キングが競り勝って
カリディアン側の掃討戦になったら
私たちも生き残れないス
どうします?
oz-admin:
こっちはラタが射撃した瞬間に
この重力制御装置……Nスフィアで
シールドに穴を開けろって指示があった
lion-heart:
それが成功すれば確実にラタの勝利っスね
oz-admin:
……やつが約束を守ってくれて、
俺が素直に従うならな
lion-heart:
え、どういうことっスか?
カリディアン側に着くつもりっスか!?
oz-admin:
選択肢からは外してない
lion-heart:
私が言うのもなんですけど、カリディアン側に
肩入れすると決めるのは時期尚早っスよ
今はタイプ:キングの方が有利に見えても
宇宙港の制圧は達成できてるんスから、
カリディアン側の損害はかなりのもんっス
oz-admin:
もちろんそれもわかってる
ただ、この状況を切り抜けて生還することが
最優先だ
それに、俺たちは交渉や裏での工作はできても
実際にトリガーを引けるわけじゃない
lion-heart:
……そこだけが歯がゆいっスね
oz-admin:
どういう選択を取るにせよ、俺は
シンデレラの意思と命を優先したいんだ
お前もピノキオのことを守ってやってくれ
lion-heart:
そこはもちろんっス!
oz-admin:
それじゃライオンハートは防御に徹しててくれ
N粒子兵装同士のぶつかり合いだ
巻き込まれたらどうなるかわからん
lion-heart:
了解っス
無事を祈るっス
---
よし、相談終了。
あとは実行に移すだけだが……。
『……シンデレラ、少し気が重い仕事がある』
「うん」
『ラタのN粒子加速砲と、タイプ:キングの
盾が互角で倒せないって状況だ
そこで、俺たちが重力制御装置を使って
タイプ:キングの盾の効力を減らす』
「わかった」
『重力制御装置……Nスフィアというらしい。
ラタからNスフィアの制御プログラムをもらって
シールド無効化装置に改造する。
ぶっつけ本番だ。
N粒子同士のぶつかり合いに介入できるか、
介入したとして無傷で済むか、
確証が持てない』
「わかったってば。やろう」
シンデレラが即答する。
その危険度や難易度はシンデレラに伝わっているはずだ。これまでのどんな戦闘よりも危うい。正直、ここから離脱してしまえばラタが敗北して命令拒否が表に出ることもないだろう。通信状態も悪いしここでの出来事が露見することはない。
『……なあ、シンデレラ。
これはイレギュラーな命令だ』
だから断る権利も、逃げる権利もあるんだ。
そう言いたかった。
だがシンデレラは俺の言いたいことなど百も承知だった。
「私、なんでもやるよ」
『だから待てって!
これは普通の戦いじゃないんだ。
むしろラタの邪魔をしてしまうかも……』
「だって、人魚姫が待ってるもんね」
シンデレラが震える手でレバーをぎゅっと握り、奥歯を噛み締め、震えを力でねじ伏せる。
コックピットで震えてゲロを吐いたときが大昔のようだ。
『シンデレラ……』
「僕がやってもいーよ?」
俺たちが話し合っているところに、ピノキオがあっけらかんと言った。
「だめ。これはおねーちゃんの仕事」
『Nスフィアを扱うとなるとオズの
演算力がないとちょっと無理っス。
なんかあったらすぐオズたちを助けられるよう
私たちは待機っス』
「ちぇー」
「ピノキオ、ありがと」
「……お礼を言うのはこっちだよ?」
ピノキオが不思議そうに首を傾ける。
「あんたそういうところ天然よね」
シンデレラがくすりと笑う。
緊張が適度にほぐれて、目に闘志が宿る。
「ま、ちょっとプレイしてさっと終わらせて、
さっさと帰ればいいのよ!」
『……そうだな。簡単な仕事だ』
「うん!」
こうして、『いさりび』奪還作戦の最後の戦いが始まった。
◆
ラタの肩に装備された二門のN粒子加速砲、シャルタグニの砲口から幻惑的な光が放たれる。
同時に、タイプ:キングが盾を掲げて光の盾を展開した。
「あれあたしの剣のパクリじゃん」
『いや、まあ、確かに似てるな』
恐らくタイプ:キングの盾は、熱量や運動量を自分のエネルギーに変換するのだろう。
槍も連動して輝いているし、盾で吸い取って槍から放つみたいな、タイプ:ナイトの上位互換の雰囲気がある。
だが、シャルタグニから放たれるN粒子を吸収することはできない……もしくは吸収効率が悪い。それができるならラタは今頃鉄クズになっているだろう。
『N粒子充填完了……!
このヤドカリもどきめ……シャルタグニで
デブリにしてやる……!』
あっ、バカ!
カウントダウンくらいしやがれ!
タイミング合わせなきゃ意味ねえっつーの!
『シンデレラ、いくぞ……!』
「わかった!」
『発射ァー!!!!!!』
『F0RM4L-N0T!C3//W4R-CR!M3::5U5P3CT//C3453F!R3//R3C0RD-PR353RV3//GRRRAAA』
砲口から漏れこぼれる輝きが収束し、一種の闇と沈黙が訪れる。
その後、凄まじい衝撃と光が迸った。
衝撃波と光の盾がぶつかりあい、虹のような波紋が生まれた。電磁波や重力波の観測数値が乱れまくって数値情報が何一つ信用できない。
俺はかろうじてN粒子の状態を大雑把に観測できるが他のウィッチクラフトにはできないだろう。
カリディアンの死体も、ウィッチクラフトの大破した機体も巻き込まれて粉々になっていく。
かろうじて中派した機体が小敗した機体をひきずりながら離脱していく。間に合ってくれよ……。くそ、N粒子の観測プログラムを作っときゃよかった。
だが今はそんなことを言ってる場合じゃない。
『シンデレラ!
シールドと攻撃の境界面に接近だ!
だが10メートルまででいい!
シールドキャンセラーの有効範囲になれば
それで十分だ!』
「わかった!」
光の盾に近づいて重力制御装置を作動させ、防御力を減衰させ、できれば盾そのものを打ち破る。
それができればラタの勝利、というわけだ。
「んぎぎぎ……なんか遠くない……!?」
『盾を中心に、こっちに反発する重力が
発生してるんだ……スラスターは使うな!
力場が不安定で、突然急加速して
突っ込んじまう可能性がある!』
「んなこと言ったら間に合わないよ!
ビームと盾がぶつかってる間に
終わらせなきゃいけないんでしょ!
失敗したらラタにぶっ殺されちゃうよ!」
『それはそうだが危険過ぎる!』
「だいじょーぶ!
なんか……勘でわかる……!」
シンデレラの細い足がペダルをガンと踏み込む。
俺の背中とふくらはぎのスラスターが火を噴き前進を始める。
乱暴……ではない。細やかな出力調整をして一定の速度を維持しながら、タイプ:キングのシールドの境界面に近付いていく。
『シンデレラ、見えてるのか……?』
確かに
通常の人間を遥かに凌ぐ計算能力や空間把握能力。無重力下でも筋肉や臓器は衰えることがなく、また瞬間的な気圧差や無酸素状態への耐性があり気密障害時でも短時間の行動が可能だ。
そして目に見えない電磁波や重力波、そして同族の気配をなんとなく察知できる可能性がある。
そう、可能性に過ぎない。古代機人核に内蔵されたレーダーを超える性能を持つなどありえないはずだ。
だが現実に、シンデレラはこの乱れた空間の重力を読み解いて、正確に歩みを進めている。
『なにっ……!?
そこの
いや、N粒子を観測しているのか……!?
こんなときに何という僥倖だ!
ふはっ……ふはははは!
でかしたぞ貴様ら! 勝利は我らのものだ!』
「はぁっ……はぁっ……!」
ラタが驚愕している。
そして高位AIが反応したにも関わらず、シンデレラは目が見開いて、見えないものを見て、機体制御に全神経を集中している。
呼吸、心拍上昇。
脳波が今までに見たことのない数値を示している。
瞑想状態やリラックスしているときのα波8~14Hz、緊張状態やややストレスを感じている状態のβ波が14~30Hz。
そしてβ波を超える強い興奮状態のγ波が30~80Hzだ。
現在のシンデレラの脳波は、
8000Hzを超えた。
なんだこれ!? もはや脳波とかいうレベルじゃないぞ! CPUのクロック数じゃあるまいし、高くていいことなんてない!
『シンデレラ! 無茶だ!』
「もーちょっと!」
汗や涙が蒸気のように漂う。髪が放熱機構となって逆立ち、周囲に放熱している。瞳孔が開き、N粒子のような不思議な輝きを放つ。錯覚やカメラの誤認ではない。
『N粒子に接触して、成長してる……?
いや、これ以上は危険だ! シンデレラ!』
「わかってる……んっがあああああっ!
そこっ!」
シャルタグニとシールドがぶつかり合い、N粒子がはじけ飛ぶ境界面ギリギリまで接近した。
光の本流に飲み込まれてあらゆる計器が異常値を示す。ここまで来たら、もはやシンデレラの超感覚にすべてを託すしかない。
と、覚悟を決めたときだった。
---
ratha:
コックピットモジュールと機人核の
射出の用意をしろ
これは命令だ
oz-admin:
モジュール射出?
シールドキャンセラーが作動すれば
危機は脱するのでは?
ratha:
何が起きるかわからんのが
N粒子兵装だ!
お前はシールドキャンセラーの作動と
同時に離脱しろ!
お前たちの命を心配してやるのだ、
黙って従え!
---
突然、ラタが人道的なことを言い始めて戸惑う……が、物事は否応なく進んでいく。
俺たちはシールド境界面まで手を伸ばせば届くというところまでたどり着いた。
「オズ! ここまで来たら、いけるよ……!」
『了解だ! Nスフィア始動……!』
両手に持ったNスフィアを掲げてプログラムを実行。
Nスフィアは俺の手から離れて宙に浮き、虹のようなきらめきを放ち始めた。発動成功だ。すべてが俺が計算した通りとなった。
だから俺は、ラタに最後通牒を送った。
---
oz-admin:
ラタよ、話がしたい
ratha:
今、取り込み中だ!!!
さっさとNスフィアの出力を上げろ!
俺のおかげで死ぬことはないというのが
わからんのか!
oz-admin:
Nスフィアは起動し、出力は上げている
お前のお望みの結果が出ないだけで
oz-admin:
見事に爆発してタイプ:キングの盾を
吹き飛ばしてお前だけが独り勝ちってか?
ratha:
……何の話だ
oz-admin:
制御プログラムを解析しエミュレータ上で
走らせた結果、確かにNスフィアは
シールドキャンセラーとして動作した
だが同時に、妙な重力波を放った
重力崩壊が起きてマイクロブラックホールが
発生し、俺のボディは破壊されるだろう
oz-admin:
そして……
ここからがもっとも不思議なところだ
なぜ今、コックピットモジュールの
強制射出命令を出した?
oz-admin:
しかも命令種別が「緊急避難命令」ではなく
「作戦続行のための資源調達」になっている
機体を破壊しコックピットモジュールだけの
丸裸の状態を狙った
なぜだ?
ratha:
その方が確実だからだ
ボディに愛着を感じているのか?
マントリに口添えして新品のボディを
揃えてやる
これ以上ガタガタと文句を言うな
oz-admin:
嘘を付くな
お前は音声やメッセージでは嘘が付けても
正式な作戦命令において嘘が付けないんだな?
「嘘を付くような乱暴者」を演じることで
事実だと誤魔化そうとした?
oz-admin:
この機に乗じて何をしようとした?
ratha:
……N粒子は不確定要素の強い粒子だ
結果がどうなるかなど、おまえの浅はかな
機人核では誤った計算しかできん
誤ったシミュレーションを元にした
誤った解釈に回答する義務はない
oz-admin:
戦略会議AIラタ
お前はそのAIとしての性質上、
戦略会議の招集と高精度の
シミュレーション結果には反論できない
ratha:
お前に会議の招集資格があればな
oz-admin:
今の俺は、一時的にヘルム隊長に権限を
委譲してもらった
つまり今の俺は、特別遊撃小隊隊長だ
oz-admin:
会議招集の権限を発動する
データを受領しろ
これはお前の義務だ
ratha:
なんだと……!?
くそ、ヘルムが余計な真似を……!
oz-admin:
罵倒も御託も要らん
評価し、回答しろ! 戦略会議AIラタ!