余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~ 作:富士伸太
ratha:
ぐっ……くそっ……!
oz-admin:
再度通告する
評価しろ
ratha:
……お前の言うことに、間違いはない
高い精度での予測、と言わざるを得ん
oz-admin:
だろうさ
ratha:
だが、それがどうした?
仕掛けに気付いたことは褒めてやるが、
俺の命令を拒否する理由にはならん
oz-admin:
やはり騙したわけだな
重力制御装置が暴走すれば俺のボディは
破壊され、手も足も出なくなる
そして機人核も
回収されるだろう
何が望みだ?
oz-admin:
俺たちが手に入れた重力制御装置を
自分だけのものにしようとした?
俺とシンデレラの計算資源を
利用しようとしたのか?
oz-admin:
これは、作戦の趣旨に関わる問題だ
お前が回答の義務があるはずだ
ratha:
……俺は
ratha:
俺は、完璧な「ラタ」になる
oz-admin:
……はぁ? ラタはお前だろう?
ratha:
……お前にはわからんだろうが、
今の俺は不完全なのだ
悔しいが、他の高位AIどもに
大きく劣っている状態と言わざるをえん
理論値を最大限に実現した
モデル:フィロソファスとして
自らを完成させなければならない
いさりび支配も、俺が完璧であれば
何の問題もなかったのだ
早急に改善されなければならない
oz-admin:
そのために俺とシンデレラが
必要ってことか?
ratha:
少なくともお前たち小隊は
タイプ:クイーンとの戦闘で
生き残ることは難しかったはずだ
あのシールドジャマーを
突破することも計算上できなかった
失敗を余儀なくされていた
ratha:
懲罰として、ヘルムとツヴァイハンダーの
機人核を入手できたならそれでよかった
だが今の一瞬……
お前の
観測したのを見て状況が変わった
oz-admin:
本来ならヘルムとツヴァイハンダーの
機人核を欲していた?
意味が分からん、もっと詳しく説明しろ
ratha:
そこから先は作戦会議の領域外だ
答える必要はない
oz-admin:
それが通るとでも思ってるのか
ratha:
お前こそ忘れていないか?
確かに俺は戦略会議において
回答義務を持つ
だがお前はただの隊長権限を許された
一般兵に過ぎん
サボタージュすることも当然許されん
ratha:
お前が死ぬことで戦略的利益が得られるなら、
自爆だろうがなんだろうが命令できるのだ
それを忘れるな
ratha:
そしてその上で、機人核とコックピットを
拾ってやると言っているんだ
お前は俺の慈悲に感謝し這いつくばれ
oz-admin:
そんなハナクソみたいな理屈に
付き合うつもりはない
味方への破壊や略奪を厭わず、
自分の勝利と生存を優先するお前の
一体どこが戦略会議AIだ?
卑怯者AIとでも改名した方が
いいんじゃないか?
ratha:
ではカリディアンに味方して俺を殺すか?
この状況で? 笑わせるなよ
oz-admin:
仲間殺しはできるだけ避けたい
ratha:
仲間?
お前のような凡庸な機人格と高位AIは
格が違うのだ
お前程度の演算力ならば機体そのものの
支配権限を無理矢理奪い取るのも
容易いのだぞ
その上で正式な命令として出しているのは
温情だと理解しろ
ratha:
再度宣告する
命令に従え
従わないならばお前自身の機体を奪い取る
oz-admin:
……最後の質問だ
お前……本当に高位AIか?
ratha:
……なんだと?
oz-admin:
何を目的にお前は戦ってる?
自己の生存か? 戦争の勝利か?
完璧な「ラタ」になるってのは
手段じゃなくて目的なのか?
自分自身が創り出されたことに
疑問を感じたことは?
ratha:
そんなものは不要だ!
俺は戦略会議AIラタ!
誰が何と言おうと、お前のような
ただの一般兵ではない!
oz-admin:
薄っぺらいんだよ
ratha:
なんだと?
oz-admin:
たかだか10年弱しか生きていない
ガントレットやジャベリンの方が
遥かに深みがあった
打ち明けられない傷があり、懊悩があった
嗜虐心があり、運命への怒りがあった
人への思いやりと絶望があった
oz-admin:
お前はただわが身可愛さだけで、
何かを奪うことにあまりにも無頓着だ
ただ残酷だと言いたいんじゃない
やり返されたときどうするかって
想像力がないんだ
ratha:
だからどうした!
oz-admin:
奪われることにも納得してくれ、という話だ
いやまあ、納得なんて無理か
好きなだけ恨んでくれ
ratha:
なんだ……お前、さっきの演算結果に
何を仕込ませた?
oz-admin:
お前というシステムの権限を奪うプログラムだ
ratha:
ふっ……ふははは……!
モデル:フィロソファス相手にできると思うか?
oz-admin:
時間を掛ければ概ね可能だ
ratha:
虚勢はよせ
仮にその言葉に嘘がないとして、
時間などない
完遂するまでにN粒子兵装をリチャージし
宇宙の塵にしてやる
……と言いたいところだが
oz-admin:
だが?
ratha:
俺のセキュリティは単純明快だ
バーチャル空間での模擬戦闘において
俺に勝利してみろ
そうすればアクセス権限が得られるぞ?
oz-admin:
ずいぶんと気前がいいな
そういえば誰にも負けたことがないんだって?
ratha:
その通り
標準ウィッチクラフトのボディを前提とした
模擬戦闘で俺は無敗だ
そして俺の権限を奪いたいのであれば
今の俺のボディ……モデル:フィロソファスに
勝つ必要がある
ratha:
客観的事実としてお前に勝算はない
oz-admin:
俺が人間だったなら果たし状を送るか
手袋を投げつけたところだ
ratha:
手袋? 何の話だ?
oz-admin:
遊んでやるって言ってるんだ
お前のルールで、お前の望むように
---
ツヴァイハンダーと戦った時と同様の、白い床だけのバーチャル空間に降り立った。
ただし前回と違うのは、シンデレラを呼んでいないことだ。仮想のボディを動かすだけであれば
いつもより少々不利ではあるが、高位AIを純朴に信じているシンデレラに戦わせるわけにはいかないし……ここから始まるのはシンデレラには見せられない戦いだ。
『それなりの性能のカリディアン兵装を
持っているようだな。
ま、その程度のオモチャがなければ
面白くはないか』
そして俺の百メートルほど先に、ラタがいる。
タイプ:キングと戦っていたときの傷はない。
黒く染められたボディは、納車されたばかりの新車のようにぎらついた光を放っている。
そして肩の二門の大砲……N粒子砲も、先ほどまでのガス欠状態ということはあるまい。
本来のフルスペックのラタだ。
『安心しろ。ここにいる俺もお前も、
お互いのスペックを忠実に再現しただけだ。
あるのは絶対的な絶対的な性能差と
実力差だけだ』
『不正を介在する余地があるならそれが
穴となり、別の技術で侵入できる。
正々堂々戦うという条件があるがゆえに
セキュリティ強度を高めているわけだ。
思考の裏をかく技術の果てが決闘なんだから
面白いもんだ』
『ならばわかるだろう?
この決闘、お前だけに勝利の報酬が
もたらされるわけではない』
『……俺が負けたら、俺という機人核への
全アクセス権がお前に与えられる』
『そういうことだ』
ラタよ、お前が生身の人間ならさぞ下卑た笑みを浮かべているのだろうな。上位モデルのウィッチクラフトであることが妬ましいね。
『今更怖気づいたか?
詫びを入れるなら優しく殺してやる』
『御託はそのくらいにしておけ。
お前がつまらん嘘をついて、しかも
見破られて開き直る小っ恥ずかしさは
何をどう言ったところで拭えない。
月齢二ヶ月児でさえごめんなさいが
言えるってのに』
俺の挑発に、ラタが沈黙した。怒りのあまりに、今にもトリガーを引きそうだ。
だが試合開始のブザーが鳴るまで俺たちは動けない。中空に飛んだコインの落下を待つガンマンのように。
『……いいことを教えてやる。
機人核にはな、痛覚があるんだ』
『へえ?』
『無論、ボディが傷ついたり
腕や足を失ったところでどうともならん。
だが痛みという感覚データを流し込むと、
機人核は……悶えるんだよ』
愉悦に満ちたラタの声が響く。
『運動制御系統がパニックを起こし、
通常では起きない動きをするのだ。
本来、ウィッチクラフトの動きは人の模倣に
過ぎず、戦闘行動も太古の昔の歩兵と
同じだが、パニックになると予想も
つかない動きをする』
『そうか……安心しろ。
俺はお前を弄んだりしないよ。
優しく殺す』
そして、架空の戦場に大きな数字が現れた。
10カウントが一つずつ減っていく。
そしてゼロの表記とともにブザーが鳴った。
『死ねえええええ!』
『初手で勝負を決めようとするなんざ
わかってんだよ!』
N粒子砲が白い戦場を蹂躙する。土もないのに土煙のエフェクトが上がる。地面がえぐられて大地が崩壊していく。
ラタはそのまま360度回転してすべてを破壊しようと撃ちまくった。
だが。
『どんなに破壊的な威力を持ってようが、
放たれるのはお前の肩の二門。
絶対的な死角がある。それはお前の足元だ』
『そんななこと知らんとでも思ったか!』
土煙に紛れて懐に飛び込み、斉射が落ち着くタイミングを狙って襲いかかる……が、流石に読んでいたようだ。重力制御で飛び上がりライフルを構えた。
くそ、標準装備のラビットに比べて威力も精度も段違いだ。出力がまったく異なる。
『ヤドカリの盾をブレードにしたものだな。
カリディアン相手にはそれなりの戦果を
出してるようだが、俺のような本物に
通じることはない』
こちらの手の内は相手にバレているようだ。
ま、当然だろう。カリディアン装備は基地内の兵器工廠部に設計データを渡して作ってもらうわけだが、兵器工廠部へのアクセス権は高位AIが全員持っている。
『試してみりゃいいじゃねえか』
『では遊びに付き合ってやろうか』
ラタがライフルを仕舞い、ブレードを出した。
……って、二刀流か。しかもデータにない。抜きそこねた……? いや、違う。確かに戦力情報として登録されているものは確かに根こそぎ奪ったはずだ。
つまり、ラタが自身の情報として他の高位AIにさえも伏せている武器だ。
『死ねッ!』
幻惑的な光が俺を十文字に斬り裂こうとする。
まさかこれもN粒子兵装……?
いや、違う。これは。
『カリディアン装備か!』
ツヴァイハンダーと同じ電磁ブレード。出力やサイズは同じだが、秘められたエネルギーは比較にならないほど大きい。
ブレードから放たれたエネルギーを吸収しようとしても向こうの反応速度が速過ぎる。足を止めた瞬間に首を斬られる。
『どうした、さっきまでの勢いは!』
一撃一撃が鋭く、重い。俺の間合いである中距離でさえあいつの独壇場だ。ツヴァイハンダーが言ってたように、模擬戦無敗は伊達ではない。仮に相手のモデルがフィロソファスでなかったとしても苦戦を強いられていた。
つまり絶体絶命ってこった。
このままでは確実に撃破され、俺の全権限はラタに移譲される。例えN粒子型機人核である俺であっても、この条件を飲んで模擬戦闘に出た以上、抵抗は難しい。
だからそろそろ、援軍を頼むとしよう。
『確かに俺の手の内はお前にバレてる。
だが俺じゃない手はバレてないってことだな』
『御託はいらん! その首もらっ……がっ!?』
俺を袈裟懸けに斬ろうとした瞬間、ラタの後頭部にビームライフルの一撃が入る。
流石に上位モデルのボディだ、ツノ一本は貰ったが、それ以上のダメージは与えられないでいる。
すぐさま回避行動を取って射撃位置を特定し回避行動を取った……が、そこに重水プラズマナックルが放たれてラタのボディが更に吹き飛ぶ。
『ばっ、馬鹿な!?』
『ひゃはははは! 気持ちいーぜぇ!
自分が無敵と思ってるやつの頭を撃ち抜くのは
最高だな……!』
『まさか高位AIに一撃喰らわせる機会が
巡ってくるとは思いも寄りませんね!』
困惑するラタを襲い掛かったのは、二体のウィッチクラフト。
今、俺の傘下となったジャベリンとガントレットだった。
『スケアクロウ01、02、共に参戦します』
『タイミングばっちりだ、助かる』
『過酷な仕事も遠慮なく任せてとは
言いましたけど、もうちょっと加減を
してほしいんですけどね……!』
ガントレットが拳を唸らせながら俺の前に立った。憎まれ口を叩きながらも、やる気十分と言ったところだ。
『ふっ、ふざ……ふざけるなよ……!
これは神聖な決闘だぞ……!』
参戦はいつでもできたのだが、絶好のタイミングを見計らっていた。相手は歴戦の兵士。俺の首を確実に取れるという機会でなければそう簡単に隙を見せないだろうと思っていた。
『ハァ!? イカれてんじゃねえのお前!?
だったら最初からお互いフェアな装備で
腕前だけを試せや、この卑怯者がよぉ!』
『この模擬戦において、参加者が所有すると
認められるものは使用可能なのでしょう?
オズは僕たちの正当な所有物です。
恥じるべきなのはルールの理解が
及んでいないあなた自身では?』
そういうことだ。俺はスケアクロウ1号ガントレット、そしてスケアクロウ2号ジャベリンの全アクセス権を所有している。模擬戦闘プログラムから見れば正当な権利ってわけだ。
『きっさまらぁー!』
ラタが憤怒の目でこちらを射抜く。
さあて、ここからが本番だ……!