わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
佐守と別れた望月は、戸枝や水野と集合した。どうも相手の狙いは佐守だったらしく、こちらを狙っている気配はない。
なので、望月はしばらく隠れて様子をみていた。……のだが、どうにもおかしい。
戦闘の様子がおかしい……というか。
戸枝と水野の様子がおかしい、というか。
さっきから、たまに佐守や魔狼も何度かなっていたように、薄墨に必殺の攻撃をした瞬間に動きがぴたっと止まってしまう。
その間に、薄墨時雨は攻撃を避け、薄墨が無事な位置に逃げた直後に、また二人が動き出す。
なるほど? あれが『勝てない』なんとかいう『異能』の正体だろうか?
なぜ自分だけが動けているのかは謎だが、ともかく自分も参戦しよう――と思いながら。
どうせならびっくりさせてやろうと、薄墨時雨が戸枝と水野の動きを止めて、ひょこひょこと動いているところで。
「やあ」
などといって、道端からぬるりと登場してみたり。
「――なっ、なぜ、私だけの時間を!?」
「うわ、素で言ってるのはじめてみた」
ケタケタ笑いつつ、本気で焦っている薄墨部長の体をそのまま細い足で蹴り飛ばす。
「うぐっ……」
彼女が蹲ったところで、二人の時が動き出した。
恐らくは驚いているだろう。これまで戦っていた敵が急にうずくまって倒れていて。
その横には――
「望月さん!」
「望月!」
「ああ、遅くなったね」
「話は後だ! あとは望月、絶対コイツを逃がすなよ!」
水野部長の声はいつになく余裕がない。
「くっ……そんなもの――!」
薄墨の周囲に複数の黒い壁が浮かびあがった。おそらくは自分の『吸血の影』と同じような『異能』で壁を作った。
なにせ悪魔の『異能』である。多少はなんでもできるのだろう。それこそ、自分と似たような技も出せる。
だが、それ以上に重要なのは、『戯曲の悪魔』薄墨時雨が、この戦闘で初めて防御態勢をみせたこと。
――つまり、この杭は彼女に届く。
「ふうん、じゃあ僕はこっちでお相手をしようか」
言って、もはや漆黒の長杭となった刺突剣を構える望月。
戦いは、水野、戸枝、望月の三名で薄墨を狙うという構図。
しかし、これまでにないほど様子がおかしいい。
特に、これまであれほど余裕ぶっていた薄墨が、明らかにうろたえていた。
どれもこれも、望月だけが『悪魔』にはまらないという構図のせいで、彼女だけが『悪魔』を、薄墨の『私だけの時間』を、すり抜けてくる。
では、薄墨は望月だけを気にすればいいかというとそうでもなく、『私だけの時間』が解除された時に、相手の攻撃が当たる場所に自分がいたら無意味である。
これまでは、周りを気にすることなく下準備だけしていればよかった彼女が。
今は周りも気にして望月も気にしての『戦い』を強制されている。
だというのに、いくら待ってもハマらない。
薄墨にとっては恐怖だが、望月にとってはどうでもいいことだ。むしろよく見れば大したことのない相手――自分一人でも負けることはな――
「くそっ、なんで……なんで勝てると思わないのですか……!」
「……は」
一瞬、望月の動きがとまる。
『悪魔』に捕まったわけではない。
捕まったとすれば、それはむしろ、己の中の影に。
「……ああ、そうかい。そういうことですか。へえ~……」
それが『条件』だと理解させられてしまったら、色々なことに合点がいってしまう。
この空間の中で自分だけが『悪魔』の『契約』が実行されない理由。
山名が散々、自分に『勝てるか』問いかけ続けた理由。
――曰く、吸血鬼は鏡に映らないという。
それは嘘だ。きっと彼らは鏡が嫌いなのだ。
自分の醜さなんて直視したくないから。
だというのに佐守あおという、母音二つ、無駄のない名前の少女に切り刻まれてしまっては、もう逃げられない。
吸血鬼とは、『不老不死』を謡いながら、真実は誰かの生き血を吸い続けないとまともに立ってもいられない、『不完全な不死者《はんぱもの》』である。
なんだ、どこかの誰かにそっくりじゃないか。
『僕は負けてない』と詠いながら、真実は誰かの勝ちを吸い続けないとまともに立ってもいられない、『勝てるとは言えない
「……あおちゃん、本当に恨むよ」
恨むけれど、感謝もしている。……だが、山名は後で絶対に殴る。
どう取り繕ったって分かっている。もう『異能』がそれを示している。
『異能』は魂の形。つまり、この『負けないけど、勝てもしない異能』こそが自己。
「その半端者こそが己」だと、もうハッキリしたのだから。
「――『僕』は、確かに『吸血鬼』だ」
そう認めた途端、望月の魂の形と、『異能』の形がピタリとハマった。
初めて詠唱した時と同様、それ以上の魔力の流れ。周囲から吸い取った力で己の力も強化するその『異能』は、この『偽りの夜』にこそ、完全に覚醒した。
「なにが、どう……!」
「あはは、まあ気にしないでおくれよ、どうせ僕は取るに足らないとか思ってたんでしょ?」
哄笑しながら刃を振るう。人形のような顔が恐怖に歪む。
これまでずっと戦いの『勝ち』を取り上げてきた臆病者だ。
もしかしたら、ちゃんと戦闘もしていなかったのかもしれない。
「ああ、そうやって相手の同士討ち待ちか、あるいは根気負け狙いかな? ははは、中々性格の悪い『異能』だねぇ」
「ど、どっちが……! さっきから、妙に体が重いと思ったら……!」
「はは、まあまあ。そんなの大したことないよ。僕に直接触れるか、この杭の方がよっぽどだ」
とにかく彼女は逃げていく。他の、水野や戸枝など、取るに足らぬという様子で。ひたすらに、望月だけから逃げていく。
「――ただし」
ぬるりと、望月の体が足元の闇に溶け。
その後ぬるりと、薄墨の後方に現れた。
「やあ、死んでね」
笑いながら、雑に杭を打ち付ける望月。
「…………!」
薄墨は全力で影の盾を生み、防御しようとするが――
「なんだその壁、舞台背景じゃあるまいに」
影ならばむしろ得意分野。――否、半端な己そのもの。
即席で生み出された影の壁など、その杭一本分ほどの深度もない。
「もう少し抵抗がほしいな、三年五指なんでしょ? ああ、まあもう種明かしすればそれも怪しいなあ?」
彼女だけの時間を、本来は彼女だけが動ける時を飄々と歩きながら、その半端者の影は、常にへらへら笑っている。
「見てみれば、時を止めるっていうのもあやしい。よく考えれば本当に時が止まるなら、お前が動く必要はない」
わざわざ安全地帯に移動して、スマートな風の雰囲気を装ってから解除だとか。
あるいは、一度、移動してから『わざわざ元のところに戻って、元のポーズを取りなおす』とか。
「なにより、観客席の方々は全員、『止まった時』でも動いているしね?」
つまりそういうことだ。
止まるのは、『契約』した『相手』のみ。他の物体や観客は依然変わらず。
であるならば――
「じゃあ、時間どうこうなんて関係ないな。大方、ただ条件に乗った相手の意識を数秒奪う『異能』ってところ?」
まさにペテンだ。悪魔の嘘だ。
偽りの夜に相応しい『異能』だとは思う。
しかし、こうして種をあかされてしまえば……!
「さあ、ほら、逃げた逃げた! あはは、にしても弱いなぁ!」
「あなたが……! いつまでも変な奴、だから……!」
「あは、そのとおりだよ」
そう、変な奴だ。自分は。
まだ彼女の悪魔に捕まらない。いまだに『勝て』ると思えていない。
のらりくらりとしただけの、どこまでも中途半端な吸血鬼。
「……でも、大概あんたも同じだと思うよ?」
ふいに、空が明るくなった。続けて『脱落』のブザーがなる。
日を喰らう狼、『スコル』、日陽の魔力が吸収されつくして限界を迎えたのだ。
それどころか、日が明るくなった途端に、続けて『脱落』のブザーが二回。
さらに遅れてもう一回。それらはすべて、ここにはいない巻物高校のもの。
「おや、どうやら影絵の魔物たちは消えてしまったみたいだね」
所詮半端者。なにを用意していたのか知らないが、この『偽りの夜』がないと自爆するような馬鹿共しか用意されていなかったようだ。
その瞬間の薄墨の壁を作っていた影も消え去り――
「しまっ……!」
「……でも、残念。僕の影(やみ)は、君のよりは深い」
晴天の空の下、いまだに影を広げている望月の『異能』は深く、薄墨の足を捉えて。
「あ、足が……!」
「じゃ、さよなら。悪魔を騙るゴシック趣味のいかれ女。君の『戯曲』も、もう幕引きの時間だよ」
どすっと。動けない薄墨を捕まえて、望月の『杭』が彼女の心臓を貫いた。
「ははっ」
思わず笑ってしまう。
ここまでのすべての馬鹿げたことに。だが、これでようやく勝――
◇
――『勝てる』と、思いましたね。
◇
「…………」
やっと、望月の足がとまった。
「ふう……ま、まったく……手間取らせて……くれました……」
すっかり夜も上がり、望月の影に捕らわれながらも、薄墨は望月を睨む。
胸に突き刺さった杭をなんとか抜いて、それを今度は望月、本人に向ける。
「誰が……ゴシック趣味のいかれ女……ですか……この、臆病者が……!」
とはいえ、さすがにここまで臆病者だとは思わなかった。
だが、さすがにここまでくれば彼女も『勝ち』を望んだようだ。
心臓を貫いて、しばらく経って、ようやく。
「でも……私は、まだ……はっ……」
奪い取った杭を、『吸血鬼』(はんぱもの)の胸へと押し込む。
ああ、これでようやく勝ち――
◇
――『勝てる』と、思ったな?
◇
「は――?」
「あはははは……! ありがとう、新しい『眷属』さん! こんな面倒な『異能』までくれて!!」
またも杭を打ち返されている。心臓に刺さった望月の影杭は、しかし自分のモノのように、まるで痛くない。
「な、ど、どういう……」
目の前でげらげらと笑う。笑うと同時に、もうそろそろ飽きてくる。
飽きてくると同時に、鏡をみているようで辛くなってくる。
「なあ……あんた、あんたの血のついていた杭を、よりにもよって僕の心臓に刺したね?」
自らの血を、相手の――ましてや吸血鬼の体内に流し込む。
――立派な血液の交換。
つまり望月の吸血鬼の能力、『眷属』の対象だ。
「あーあ。これであんたも半端な不老不死だ! おめでとう薄墨さん!」
「は……は、ぁ…………?」
――だが、それは同時に新たなる無間地獄の始まりを意味している。
不老不死同士、互いに命を共有し合う同士となったのに、『勝てる』時には意識を失う。
そして復活する頃には、もう片方の回復もしているだろう。
「薄墨さん、どうする? 僕はそういう無駄な永遠にも付き合うけど? 少なくとも、ここのみんなを吸い上げるまではさ」
心臓に突き刺さった杭ごと、ぐいっと彼女の体を抱きかかえる。
腕を彼女の背中に回して、子どもを抱っこするように持ち上げる。
「は、はなし……!」
「ああ、でももうイヤかい? ペテンのバレた舞台に立ち続けるほど、君は強くもない」
彼女の力が暴走しているのか、こうしている間にも何度も悪魔の言葉が互いの脳内を反響する。周囲の人達も止まったままで、動いているのは自分と薄墨のみ。
「君の『戯曲』も君自身も、僕の影で包んであげようか。辛いだろう、嫌な素顔を晒すほど、自分がイヤになることもない」
「な、何を……あんたみたいな、半端者と一緒にしないでくださいな……」
「自分は半端者ではない?」
あくまで、悪魔を騙るのか、と望月は問う。
「あ、当たり前です」
「じゃあなんで『異能』、『メフィストフェレス』にしない?」
「…………!」
「『デア・ドクトル・ファウスト(親愛なるファウスト博士)』なんて、どうとでも取れるような名前をつけて、断定できる名前を避けた。そのくせ妙に拘ってやがる。そんなに立派なお名前なら、ちゃんと名乗りをあげなよ」
だが、それはできない。彼女にはできない。
吸血鬼だなんだといいながら『デア・ナハト(親愛なる夜)』なんて、彼女以上にどうとでも取れるような名前をつけて、断定できる名前を避けた。そのくせ、嫌になるほど拘った名前を名乗るものだから、分かる。
結局、真っ向から否定されると怖いからだ。嫌いな己を見られたくないけど、なんとなく『強そうな雰囲気』は残しておきたい、見栄っ張りの半端者。
「でも、残念! さすがにここまできたらもう客席も君の『戯曲』には飽き飽きだ!」
この怪獣大バトルの中で、童女のような姿、異国情緒のある人形めいた少女が、ひとりで『戯曲』の夜を広げて、スタスタ怪獣たちの中を颯爽と歩いていく光景は、一見すれば確かに魔的で魅力的だ。
だが、この長い時間くりかえされていたのは――
――ひょろい白貌が、小さな少女を延々追いかけまわしているだけの光景。
ひょろいの白貌は自棄になってけらけらと笑っている。
逃げる少女には魔的な微笑みもなく、魅力的な様子もなく。
ただ、追いかけてくる異形におびえる、ゴシック趣味の小柄な十八歳でしかなく。
「ほら、帰っていく客も見えるぞ。仕方がないな。種も開けた舞台でいつまでも踊ってる方が悪いさ」
「あっ……あ……」
「でも、大丈夫」
「ひ……いっ……」
笑う。笑いながら、ぎゅうっと強く自分の体に、少女を抱きしめた。
「僕だけは、君を永遠に愛してあげるよ」
声音だけは優しく、ただしやっていることはベアハッグ。
バキバキと割れる骨の音は、どちらのものか。肉体的な限界は、吸血鬼とその眷属になったことでかなり上がっているため、どちらが勝つかは分からない。
ただ――少なくとも精神は、薄墨の方が先に限界を迎えたらしい。
「ま、負け! ……私の負けです!」
少女が叫んだと同時に、周囲に広がっていた幕のような影は溶け。
『戯曲の悪魔』の『異能』の効果は消えて、望月干果も、望月干果に眷属にされていたものたちも、元通り。
日は昇り、『夜のロンドン』なんて舞台セットはとうに消えて。『戯曲』も幕引。
後に残ったのはただ本当に子供のように泣きじゃくる薄墨時雨と――
「おえ、おええええ……」
「望月さん……!?」
真っ青な顔で嘔吐する、望月の姿だけだった……。
◇
「おかえり――ぐ」
「ただいま帰りましたこれは感謝の一発です」
もう自分では動けない望月さんを、戸枝さんとわたしの二人で抱えて控室まで戻ったら。
控室を開けた途端に望月さんが山名先輩をぶんなぐった……!
な、なんで……い、いや、えっとあの……!
「り……理由のない暴力はいけないと思います……!」
「君が言う?」
「はぐ」
「佐守さんの言う通りですわ」
「戸枝さんならまあ……癪だけど。でも、一応理由あっての一発だよ。っていうか、あんたもいつまで倒れてんだよ。今の僕のへなちょこパンチじゃ大した効き目ないって分かってるからな!」
「……バレたか。なんなら目を焼かれた方がまだ痛い」
そう言って、すっと立ち上がる山名先輩。
本当に特に痛みとかもなさそうで、ただ殴られた箇所を「いてー」とか言いながら擦っている。
「一応、殴られても仕方ないだろうな、ということはした自覚はあるから」
「だからって開き直るなよ。あともう一個……あんた、どこかのタイミングでコッソリ僕に自分の血を入れたな?」
合宿中か。戦闘のタイミングか。
あるいは日常のいずれか。ともあれ、まだ消化しきっていないところにこっそりと山名先輩は望月さんの内側に、自分の血を仕込んでいた……?
「合宿中にお前に解体道具とか沢山飲まれたし。そのタイミングかな」
「あんな前ならもうとっくに消化してるし……まあ時期はもうどうでもいいよ。とにかくあんたは、あの時、僕があおちゃんを眷属にした時に、実は一緒に眷属化していた」
え?
「うん、まあ。もう脱落だったから、口出しはしてなかったけど」
だから念話でも静観を決め込んでいた。という山名さん。
「……じゃああんた、ここまで計算済みか?」
「どういう形で、いつかまでは分からないよ。ただ、お前が念話系の『異能』を覚えてくれると、色々便利になるなと思ってはいた」
そのために、あらかじめ仕込んではいた。なんてしれっと言う山名先輩に、望月さんは「はぁ」と大きなため息を吐く。
なんだかよくわからない会話だった。
というか今回は、全体的に、わたしには難しくてよく分からない勝負だった……。
結局わたしと戦っている人も、太陽が戻ってきたタイミングで姿が見えちゃって、一刀両断したんだけど。
「ああ……あおちゃんと戦ってたアレね……。なに? どうせ『ジャック・ザ・リッパー』とかでしょ…」
夜のロンドンだし、という望月さんに、山名さんはしれっと。
「そんな大層なもんじゃない。あれは『透明人間』だよ。有名なところだとウェルズの小説だが、もっとふわっとした、透明人間って概念。夜明けにビックリして『異能』を解除したんだろ」
「……はあ?」
「他にも『ゾンビ』と『キョンシー』がいたけど、こっちは両方太陽光で堕ちた」
「……なんで? あんなに夜に拘るなら、それこそ『切り裂きジャック』とか『フランケンシュタインの怪物』とか……」
「多分だけど、薄墨よりも目立つからじゃない? だって圧倒的に有名だろ、そいつらの方が」
なにせロンドンの夜。思いつく怪異はそれこそ多数。
そんな中で『メフィストフェレス』なんて、大した名前ではない。
自分が主役の『戯曲』を喰われてしまうような『異能』は入れないのが薄墨さんだという。
「あの舞台を維持する装置、『スコル』はともかく……他は全部、薄墨時雨の『戯曲』のための、名もなき端役だった、ってことね……」
なんだかなぁとぼやくのは、でもそんな彼女の戯曲を漆黒の影で上書きした望月さんだ。
そんな望月さんに、山名先輩は「ところで、望月」と聞いて。
「お前、『異能』を『ノスフェラトゥ』とかにしないか?」
のすふぇらとぅ? って首を傾げていると、横から戸枝さんが「不死者のことですわ」と教えてくれた。
へえ~。
「より吸血鬼に近い意味合いだ。少なくとも、ただの夜よりは圧倒的に。その分吸血鬼の弱点も強くでるだろうが、それを差し引いても、今より圧倒的に強くなる」
「どうだ?」なんて軽い感じで聞いてる山名先輩に、望月さんは「はあ……」と大きく息を吐いて。
「……あんた、眷属化もしてたなら僕とあっちの悪魔先輩の会話も聞いてただろ、全部」
「そうだな。私だけが唯一『眷属化』をして『悪魔とは契約していない』っていう立場だったから」
なので、わたし達が止まっていた間の様子も見える。
彼女たち同士の会話も。
「…………はあ~……もう、自傷行為はうんざりなんだって!」
望月さんは大きく息を吐くと、床の上に大の字になった。
「だからさ~、不死者なんていね~の~!」
なんか、叫んでいた。
「大体、ブラム・ストーカー以降の創作だし……怪物なんて大体フィクションで」
なんか叫びながら、両手両足でばたばたと暴れていた。
「幕が開いている間は、それっぽく見せているけど、幕が堕ちたら――」
それから、ぱたんとその腕が、まるで死人のように落ちて。
「ただの半端な役者が一人、だよ……」
ぱたり、と。なんだか泣きそうな表情を浮かべながら、笑っていた。