わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
「ちょっとだけ、お話をしない?」
……と、望月さんに部屋に誘われたのは、二回戦の日の夜。
つまりわたしが……あの、あれ。彼女の『眷属』にされた日の夜。
そこに、ひとりでいくのは、とても怖い……。なので戸枝さんも連れて……というか、お願いして、ついてきてもらって、望月さんの部屋に行った。
「あれ。あおちゃん以外には用はないんだけどね……」
「私だって、そこまでついてくるつもりはありませんでしたが……あんなに頼まれては」
だって、今の望月さんと二人きりはちょっと……。
しかも、ちゃんと夜だし……。
「大丈夫だよ、もうあんなことはしないからね」
「も、望月さん……!」
「ああ、ごめんごめん! 僕とあおちゃん二人の秘密だったね! あの夜のことは……いやあ、佐守さんから、積極的だったなあ!」
「……望月さん。『斬って』いいですか?」
この人はもうダメだ。今すぐ口封じをするしかあるまいと模擬剣に魔力を込めようとしたところで。
「……佐守さん、待ちなさい」
「ん」
「よし。いい子。……まったく。そう簡単に斬ろうと思わないでください」
「はい……」
「ふーん……随分と扱いが違うなぁ? 僕はあおちゃんの深い所や、その白い肌まで味わい尽くしたってのに」
「すみません、『斬ります』」
「待ちなさい。……あー、そうね。『吸血鬼の眷属』になっていたんですものね。そりゃあ体液の交換はあったんでしょうね」
うんうん、と理解を示す戸枝さん。
わたしは非常に焦っているのに、戸枝さんは何か冷静だ……。
「恨ましい? なら、君も僕の眷属にしてあげようか?」
「お断りします。いえ、大会中に必要なら血くらい自傷してあげますが。変な倒錯趣味に私を巻き込まないで」
変な……倒錯……趣味……。
へ、変な倒錯趣味……。
戸枝さんに、変な倒錯趣味って言われた……。
「まあ、今はそれでもいいけどもね」
しかも望月さんまで……! じゃあなんですか、わたし一人恥ずかしい想いになっただけなんですか……!?
「今はって言ったじゃん。あの時はまだ『吸血鬼』っていうのと『僕』が嚙み合ってなかったから、ただの血液の交換じゃ上手くいかなかったよ」
つまり、あれはわたしの眷属化以上に、自身を吸血鬼とするのに必要な行為だったと、望月さんは語った。
……必要だったなら、まあ、いいけど。
「……そういえば、『異能』が安定しましたね。これまでののらりくらりとした雰囲気は……いえ、依然として変わらないのですが、その曖昧さがより……霧がかって見えているような」
「さすが『熱剣』。よく見てる。さすがに魔力量が莫大に増えるとかはないけどね。これで色々、『やれること』が増えると思うよ?」
「であれば、なおさら控室での山名先輩の提案を飲むべきでは? 『デア・ナハト』なんて……そういえばどうして英語とドイツ語を混ぜてるんですの? みたいな曖昧な名前より、『ノスフェラトゥ』の方が――」
「……さすが『熱剣』。よく見てる。でも、僕はそれをやれない……というか、やると逆に『固定』される。そうなると、僕は多分弱くなる。いつまでも半端者じゃないとね、ダメなんだよ」
それと『異能』名は若気の至りだよ。と望月さんは、なんとも言えない自嘲を浮かべる。
「まあいいや。別に僕の『異能』について、どうこう話すつもりはなかったからさ。あくまで用があるのは、君だよ、あおちゃん」
「な、なんですか……?」
戸枝さんの背中に回りつつ、望月さんを睨む。
しかし彼女の視線は、わたしではなくて、わたしの後ろの方を見ていた。
……? 別になにもいない、けど――
「ああ、ごめん説明不足で。あおちゃんていうか、あおちゃんの中の人に用があるんだよね。そうだな、今呼び出せる?」
「え、えっと……『大蛇さん』?」
『……浮気魔の言葉など、聞くに堪えん。まして、御前を畜生に落とした者など』
出てきた。しかもちょっと怒ってる。
よっぽど望月さんの契約をわたしが受け入れたのが、お怒りポイントらしい。
「ふむ……やっぱり今も聞こえるなあ……。そうなると、戸枝さん、血をくれる?」
「え?」
え、ついに望月さんを斬る時が来たの?
「いいですわよ」
そんな望月さんの気軽な提案にも、戸枝さんは特に気にした風もなく指先の爪であっさりと、自分の人差し指の先を斬り上げた。
それでも十分らしく、綺麗すっぱり切れたかすり傷から、血が滲んできている。
「これで、よろしくて?」
「うん、まあいいんだけど……。本当に、その即決力には畏れいるよ」
無造作に伸ばされた戸枝さんの指から零れる血液を、望月さんは膝をついて下から拝領する。
……なんだか逆じゃない? いや、戸枝さんは常に
「…………うん。よし、繋がった。これで戸枝さんも、僕の眷属だ」
「みたいですわね……この程度の繋がりならいくらでも燃やせますが……ああ、これ逆探知した着火もできますわね」
「どうして敵視点で見るんだよ……だから怖いって……。まあ、そうだな、一応全員つながったことだし、せっかくだからみんなで呼んでみようか」
「みんなで?」
「おーろーちーさーん!」
『……貴様に呼ばれる筋合いはないぞ。半端者』
ぬっと、一匹の大蛇の幻影が、わたしの頭上に浮かぶ。
本当に、本当に怒っているらしい。大蛇さんのこんなに低い声は、初めて聞いた。
と、戸枝さんが何故か口元に手を当て驚いていた。
「まあとにかく、こちらが『大蛇さん』。あおちゃんの中の人」
「えーと! 限りなく説明が少ないと思うんですが、こ、これは……!」
「――ああ。貴方は蛇口ですのね」
『……現状はな。さすが『熱剣』だ。『アレ』に届くのは、御前のようなものなのだろうな』
なんか、凄い短い会話で、状況を理解しあっている。凄い。
大蛇さんも戸枝さんには好印象らしい。明らかに望月さんへと対応が違う。
ただ……その『熱剣』こと戸枝小春さんは、大蛇さんに別の感情をいだいているようだった。
「貴方が……件の村の儀式で生まれた魔性ですわね?」
質問は、もはや詰問に近かった。その声に乗っているのは、まぎれもない怒り。
彼女の誇りの焔が、その信念にかけて『大蛇さんは許してはいけない』と言っている……!
「ちょ、ちょっと待ってください……! え、ええっと……! 色々と説明を――」
「説明?」
ぎろり、と睨んでくる戸枝さんは、少し怖い。
その憤怒が、わたしを想ってくれているからこそだとしても。
『そう急くな。御前は、枷であってくれ。あおがそう望んでいる』
と、よく分からない言い回しだったけれど、戸枝さんには伝わったのか。
「……なるほど。貴方自体は……ああ、そう」
『うん。別にあの儀式で生まれたモノではない。呼ばれたモノだ。それがまあ、大層……そうだな、しっちゃかめっちゃかになって、己は中途半端にここに居ついている』
「――ですが。貴方が佐守さんの魔力に蓋をしているのに変わりはない。ここで私が貴方を斬れば、問題ないのでは?」
え。いや、それは、ちょっと……! それはちょっと!
『……そうだな、多少の問題はあるが。“交じり”も覚えた今ならば……御前が己を斬り捨てて、あおの主となってもよかろう』
なによりも、あお自身が望んでいると。
大蛇さんは、わたしの内側に潜んでいるからか、わたしよりもわたしに詳しい。
でも、それはダメだ。
だって、わたしと大蛇さんには、大事な“約束”があるんだから……!
「約束?」
『……あおが、至高に達した時に、己が喰ってやるという“約束”だ』
「はい?」
首を傾げる戸枝さんとは対照的に、望月さんは「予約済みだったか」と溢す。
「ところでその倒錯した約束はなに? 君とあおちゃんの“約束”?」
『そのとおりだ。あおは、そのために人生を愉しむ。今日を愉しみ、明日を望む、健やかなる贄となるために。そして、あおの魂が至高に至った時、己は――あおを喰らうと約束した』
「ああ、殺し愛ってやつじゃん」
「僕、こういうの古いインディゲームとかで見た事ある」とか、なんとか言っていた。
本当にこういう時、この人って適当……。
「……正気ではありませんわね、お二人とも」
『だろうよ。己もそう思う』
「そもそも、どうしてそのような約束を?」
と、戸枝さんはこちらを振り返る。え、わたし……?
「それが『強制』であるなら、私がその縁を『終わらせます』」
「えっ……」
『ああ、届くだろうよ。世界を焦す御前の剣なら、己如き水流の化身なぞ』
「ま、待って待って……! 戸枝さん、待って!」
慌てて止める。それは本当に、彼女はできるし即断即決なのが良い所なのだけど、大蛇さんの話だけは、止めたい。
「……どうして? このままでは貴方は食われてしまうのですよ」
「え、えっと……でも、今の彼を消し去られると、わたし、無能に、戻って……! そ、それに……今の約束は、わたしと『彼』のもの、で……」
『……そうだったな』
そうだよ。
なにつらつら話してんだよ、この蛇。これは“わたしたちの秘密”じゃん。
それを、なんでわたし以外にもつらつらと……!
「え」
「いいね、いよいよ似てきた。あー、ていうかファウスト博士もそんな話だっけ? 至高の時に悪魔に魂を奪われるとかの」
と、望月さんはすっかり楽しむモードだ。なんならポテチまで持ち出して、完全な観客者モード。
あなたがこの状況を産んだんですけどね?
「ああ、うん。分かっているよ、んじゃ~一応当事者として聞くけどさぁ。『強制』じゃないなら、どういう“約束”をしたの?」
え、それは……。
「わたしを、彼に食べてもらう“約束”……」
「……そんだけ? 理由は?」
「理由、と言われても……」
最初はもう、これが『運命』だと受け入れていた。
『運命』だから、仕方がないって。
でも、彼の言い分だと――
『理由など、ない。己はそういうものだ。差し出された贄を喰うものだ』
「そのような方には思われません。貴方には知性があります。下手をすれば、佐守さんより」
……酷い。
「そんな貴方がそのような“約束”をした理由は、何」
『……………』
「ここは黙秘、ですか……それでは、佐守さんはどうしてそんな約束を?」
「え?」
首を傾げる。戸枝さんの表情は、少しだけ……怒っていた。
それから、凄く悲しそうだった。
「分かりますか。貴方が喰われるということは、死ぬということです。あなたは、今……その……」
『死にたい』と。人生の終焉を、未来の遮断を、生の拒否を、佐守あおは望むのか、と。言葉は選んでいたけれど、要するに
『佐守あおは自殺志願者か、そんなにも追いつめられてしまっているのか』。
そう、彼女は問うている。
終わりの焔が、『そんな終わらせ方は認めない』と、明確に、拒んでいる。
……でも、その心配は必要ない。
わたしは永遠に満たされることはないのだから、至高に達しないのだから、大蛇さんの食いでは、きっと出来ないよ。
でも、うん。わたしは、許されない事を、あの村でしたんだから。
だから、罪を償わないと。
「……わかんない。少なくとも『運命』なんかのために、死にたくはない」
「では――」
「だけど、わたしは……彼と“約束”したから」
わたしが斬り殺しちゃった村の人々のためにも。
ここで、生きていくわけにはいけないから。
「…………それは、私が『友だち』であること、よりも重要?」
「……なおさら、大事かも」
『熱剣』に隣立つのに、罪人ではだめだ。『終の熱剣』は、悪を許さぬ人だ。
気高くて、誇り高くて、いつも凜としていて格好いい。
正義の味方、『みんなのヒーロー』じゃくても、『わたしのヒーロー』。
だから、わたしという罪を裁いてほしい。
「…………あのね、佐守さん」
戸枝さんが、わたしの前に膝をつく。
それから、ぎゅっと……今度は前からちゃんと。
彼女に、戸枝小春に抱き締められた。
暖かくて、華奢だけど確かな芯のある焔。
「貴方は、私の『友だち』です」
「うん」
「『友だち』が、『死にたい』なんて言っていたら、心配します」
ぐっと、強く抱きしめられる。心臓の鼓動がとくんとくん。
わたしの胸を挟んでも聞こえてくる。
……ああ、本当に心配してくれてるんだなあ。
どこか他人事めいた望月さんと違って。
戸枝さんの優しさは、きっと色んな方面にも向けられているけど、今の彼女は、戸枝小春はこんなにもわたしを想ってくれる。
『友だちだから』と、それだけの理由で、わたしだけをこんなにも心配してくれている。
それが、凄く……なんていうか、嬉しくて……。
嬉しいけれど、泣きそうで。
そんなあなただから、なおさらわたしは――やっぱりあなたと隣立てない。
『あー……一先ず、だ。もし今ここで己を斬るなら、色々決め直さねばならん』
と、そこで大蛇さんの声が聞こえた。
『そこの熱剣が言っていたとおり、己は、あおの魔力の蛇口だ。なので、今己が消えると』
あって。そういえば、前に大蛇さんが言ってたことを思いだした。
「たしか、また無能に戻るとか……」
『現状だと、己が消えても、もう無能には戻らん。……むしろ、今の状態で無理矢理に己を抜けば、ただ単に、あおが己の化身となる』
「どういうことですの?」
『つまり、溢れる魔力で力いっぱい暴れ回る、水害の化身だ。もうちょくちょく兆候は見えているが……。うん。もうこの娘の心は、己でも抑えきれん時が稀にある』
「「あー……」」
と、なぜか戸枝さんと望月さんが同時に頷いていた。
『……なので、しばらくは己があおを抑える楔になる。それでよいか『熱剣』よ。……案ずるな、“約束”の時以外で、己が喰いに出る時はない』
大蛇さんの言い方は、まるで――『だから、それまでにこの子を守る算段をつけてほしい』なんて、言っているようで。
わたしを食べに出てきた蛇さんが、今、一番わたしの心配をしている。
わたしを喰らうといった大蛇さんが、今、一番わたしを守ってくれているようで……。
「……下手に口を出しても、解決しない問題であることは、分かりました」
『うん』
「…………ですが、私は」
『うん。いざとなれば、あおを守ってくれ。その『熱剣』は、きっとあらゆる災厄から、あおを守ってくれるはずだ』
「……人を傘みたいにいうんですのね。それに、なんだかその態度はあの『聖剣』逸見明音さんに似ていらっしゃる。……いえ、伝承の存在相手に何を言っているんでしょうか」
『うん。やめてくれ。己はあんな規格外の化物ではない』
伝承に住まうモノが、今を生きる逸見明音を化物と呼ぶ。
もうどれだけ規格外なんだよ、あの人…………。
『ともあれ』
そういう大蛇さんの声が消えかけている。
ただしくはわたし以外の人から、だけど。
要するに、望月さんの念話でつながっている状態――眷属化の影響が、ようやく消え去るということで。
『今の御前らは、こんなところで話し込んでいる暇はなかろうよ。まだ明日も戦いがあるのだろう』
「まあ……そう、ですが。大会なんかよりも、佐守さんの方が――」
『あの海神は、そうは思っておらん。アレはあおを使いきるつもりだからな。なので、気をつけろ』
しれっと警戒対象に入っている水野部長。それから大蛇さんは――
『やれ生娘どものチャンバラごっこなど、と思っていたが、これが存外、見ていて飽きん。……己は、汝らの優勝を楽しみにしておるぞ。中つ国を流れる川の子らよ、その底力、存分に見せてやれ』
結構地元びいきな大蛇さんは、そんな俗っぽいことを言って消えていった。
正確には、わたし以外に聞こえなくなった状態に戻った……と言うべきか。
だから、ここにはいつも通りのわたしと、いつも通りの戸枝さんと、いつもどおりの望月さんの三人だけ。
「……はぁ~怖かった。あの蛇、僕にだけマジで殺気放ってくるんだもん」
それはまあ、仕方ないのでは……?
「あおちゃん、親御さんがいるならいってよ」
「親後さんではないんですけど……」
「似たようなもんじゃん。君の心の奥にまで居座っちゃって、まあ」
たしかに。
「……何となくですが、状況は掴めました」
と、相変わらず他人事な望月さんとは違い、わたしの友だちの戸枝さんは、ううんと首を振って。
「佐守さん」
急に真剣な声と顔で、見つめられる。睨まれる。
いつかの時のように。
「……確かに私達は、普段から、命のやり取りのようなことをしています」
戸枝さんの声は、先生みたいにしっかりと。
「……ですが、それはあくまで『スポーツ』。命の危機に関わるような怪我人が出たら当然中断しますし……もちろん、命を亡くすようなことは、あってはならない」
そんな、当たり前のことを言ってから、彼女は――
「私は、友だちが死んだら、悲しみます」
そんな、当たり前だけど、わたしには意味の分からないことを、真っ直ぐに顔を見て、悲しげにいう。
けれど、よくわからない。
だって、わたしはむしろ、戸枝さんの誇りを穢さないためにも――
「佐守さん、それは」
「ああ、じゃあこう考えてみなよ?」
と、急に割り込んできた友だち未満の望月さん。
「ほら……ええとなんだっけ。『君にとっての戸枝さん』が『君を想って死んだら』。君はどう思う?」
戸枝さんはそんなこと――と思ったけど、戸枝さんなら一目散にしそうだな。
でも、それなら……。
「みんなを殺して、わたしも一緒に死にます」
「マジかよ、無駄死にどころか八つ当たりだよ」
「ううん。うん。みんなは八つ当たりにはなるけど、最後は無駄死にじゃないよ」
だって、この『熱剣』が、『罪人を守るために死ぬ』なんて、あっちゃならない。
それなら『罪人も死ぬべき』だ。
「…………そうか、そうか、そうだねえ~」
いい加減面倒くさくなったのか、へっと鼻息を挙げて望月さんは背中を向けてベッドに横たわる。
「あのさ~、一応僕も、ちゃんとあおちゃんの心配をしてるんだからね?」
「うん、知ってる。ありがとうごめんね」
「あ~……やっぱり半端者の声じゃこの程度か。いいよ、君が死んだら僕のペットにしてあげる。狼少女のあおちゃん、可愛かったしさ」
「それじゃあ絶対、望月さん以外のところで死なないとだね」
「やめて」
わたしと望月さんの声を斬り捨てたのは、『熱剣』。
『熱剣』の誇りの焔も、どうしてだか小さくみえて……。
「…………分かりました」
『熱剣』はうんと首を縦にふってから、わたしの方を向いた。
「貴方が罪人なら、わたしの焔で間違いなく、奥の大蛇さんごと…………あとついでにその不死者ごと『終わらせて』さしあげましょう」
うしろで、「八つ当たりされてる……」とか望月さんがぼやいていたけれど。
でも、その決意、決断、その妥協なき正義の在り方は、間違いなく戸枝小春さんだ。
「……そうですわね。私は『終の熱剣』。私だけの春に、罪人は不要です」
「うん」
「……でも、ね?」
ぎゅっと、彼女はわたしを抱きしめた。
穢れの多い体なのに。もうとっくに穢れしかない冷え切った死人の体なのに。
彼女の熱はそんなわたしに、熱をくれるよう。
「あなたの『友だち』として……『友だち』に生きていてほしいと思うのは、おかしくないでしょう」
…………その言葉を。本当にうれしく感じてしまって。
うれしく感じると同時に、痛くなった。
きっとわたしが生きているかぎり、彼女は『
だから、そんなわたしの誇りの焔は、見たくない、から……。
……大蛇さん。
『うん』
…………“約束”忘れないでね。
『……うん』
◇
――毎■、毎■夢を■る。
いつも■まって同じ■。
わたしは■い■にいて、■燭の■が■りの■々の■元を■らしている。
■顔。笑■。■顔。■顔。
■茎を出して■いながら、みんながわたしを■って/■っている。
良く■まれてくれた/■えてほしい。
大事に■ってほしい/早く■食になってほしい。
大■に、■切に、いつその■が来てもいいように。
■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。■■。
■■に、■しく、■らかに/■らわしいものを■ざけるように、■もわたしに■れようとしない。
――だから、そんなものみたくもないから。
わたしは儀式用に積まれた剣を手に取って、村に出たんだ。