わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
後日談:『秋原の神剣』シリーズ
後日談:『秋原の神剣』と『洛陽の妖刀』
『国異』終了後。
どの道、もう数日は東京にいるつもりではあったが、その練習場に呼び出しを喰らった、洛陽の村田知子二年生。
お相手は今年優勝の秋原『冬の狙撃手』山名有為。隣には、あの『白夜の聖剣』を墜とした一年生が一人いる。
色々と聞きたいことはあるが、まずは一言。
「なんでだよ……」
本気も本気でイヤそうにボヤく村田に、山名はいつも通りの顔で当人も理解してなさそうな佐守あお一年生を前に出す。
「いや、こいつの『異能』が発現して……あと何か『秋原の神剣』だと呼ばれて調子乗ってるからな。軽く鼻っ柱を折ってやってくれ」
「というよりも教えてやってくれ」と、山名は言う。
「他校の一年に教えることなんぞない。そもそも戦闘バリエーションなら諸星の方がいいだろ」
「白夜は今それどころじゃないだろ」
「それもそうだわ……」
「あと、私だと完封できる。望月だと泥仕合だし、戸枝も火力が極端過ぎて打ち合いにならん」
至極まともに話している山名。新部長になったばかりなのによくやれる。
これ以上寝不足になりたくない村田は端的に問う。
「分かった。このガキをやればいいんだな」
「ああ。後なんかお前から見て適当に教えられるところあったら教えてやって」
「雑にぶん投げんなよマジで」
やっぱりこいつも秋原である。
「……まあいいか。えっと、佐守? ちゃんとやるぞ」
「え……い、いいんですか……?」
と、なにやら躊躇い気味だった。
なるほど、確かにあの決勝戦で見せた『異能』はまあまあ脅威だ。
だから、『一発で決められる』とか思っているんだろうし、実際にそうである。
「いいよ。山名に口じゃ敵わん。あと眠い」
言って、村田は試合用の模擬剣を構える。
「――『抜刀。ムラマサ』」
ムラマサに詠唱は無い。
対象に応じて、自動的に魔力を得られるのだから自力を上げる詠唱は不要なのだ。とはいえ刀が鋭くなるだけで特に能力もないのだが……。
そんなわけで刀を抜いた村田だが、佐守あおもまだためらい気味。
とりあえず模擬剣を構えてはいるが――
「ほら、お相手してくれるぞ。やれ、佐守」
「……分かりました」
明らかに分かってない様子で、彼女は模擬剣を構え。
「――『斐川の化身に、手向けよう』」
静かな詠唱は、歌というより鎮魂歌。
なので――
「――よ」
「『わたしは、彼の尾より生まれ――うわぁ!?』
ひょいと詰め寄り剣を振り下ろすが、ちゃんと防いできた。
ふむ、剣は結構しっかりしている。
「あの……! え、詠唱中に斬りにくるのはどうかと……!」
「いや、撃つって見えてるなら撃たせないだろ」
なにしろ相手は『視界範囲内剣軌道上道理無視切断』とかいう不条理だ。
しかし、今のに対応できるのはそれなりに上手い。
「――『抜刀。クサナギ』!」
「おっと」
詠唱破棄で放たれる斬撃を避ける村田。
詠唱破棄しても、元の佐守の魔力量が高いだけに相応の火力は出ている。
……出てはいるが、それも避ける。
だって『クサナギ』の能力は要するに、『バカ強い剣の間合いが視界範囲まで伸びるだけ』なのだから。
なんなら普通の間合いで戦えば、これは『異様によく斬れる剣』でしかない。
「あー……どうするかなぁ」
絶対切断剣が、さらに射程を無視して襲ってくる。
鍔迫り合いも出来ないのは十分に脅威だなぁとか思いつつ躱していると、佐守当人は不満気だ。
「あの! 真面目にやってくれませんか!」
「真面目にやってんだよ、馬鹿」
「ば……!? 『抜刀。クサナギ』!!」
「おお、速い」
間合いを取って、一気にクサナギを放つ佐守。
なるほど、この対応速度はいい。詠唱破棄でも十分火力を出せると知った直後から、もう使いこなしている。
――だが。
「はいよっと」
クサナギの斬撃を躱す。どうせ佐守あおの剣筋は変わらん。
「――『抜刀』」
――まで、佐守が言ったところで一気に距離を詰めて。
「ほら」
ついでにそのまま振り下ろそうとしていたクサナギを握る手を片手で止めて――
「よいしょ」
ムラマサの切っ先を、佐守の首元に当てる。
それだけで、佐守あおは無力化できる。
目を白黒させている佐守の眼前に切っ先を示す。
「はい、おしまい。……んで、なに? これを教えてどうすんだよ」
「あー……あれだ。佐守、お前はやっぱ遠くから撃て。認識される前に撃て。それが一番速い」
山名がもう面倒くさい運用法を思いついていやがる。
来年にはこれに『秋原の熱剣』まで飛んでくると思うと、もう頭が痛くなりつつ、なんか不満そうな佐守についでに言っておく。
「あのな……別に山名の言うことは聞かんでいいぞ。いや、実際に一番有効なんだが」
「え」
「斬りたいって顔してるから、取り合えずそこの運用法だけ教える」
なんで自分が他校の一年生について教えないとならんのだ? などと思いつつも、村田は適当に答える。
「……とりあえず剣やるならもっと基礎磨け。動きが全体的に荒い。足回りも腰の動きも揃ってない。そんなんじゃ『白夜の聖剣』でなくても払える」
まあ、言っているのはただの二年生の上位層なのだが。
「で、でも、わたしは剣で――」
「……だからちゃんと『斬り』たいなら基礎磨けつってんの」
「いや、佐守。お前はとりあえず『見えたら斬れ』でいい」
「山名もいらん口出しするな……ともかく、まず基礎の基礎。『クサナギ』も……そうだなぁ、怖い技ではあるが、それだけにお前の振り方が分かりやすい。例えば鍔迫り合い中に『クサナギ』されたらちょっと困る」
まあ多分受け流せるだろうが、などとも答える村田。
「あとはシンプルに弱い……。もっとがんばんな、一年生」
「……は、はい!」
意外と素直だな、この狂犬。などと思いつつも、村田ははあっと息を吐いてから山名を見た。
「これでいいか」
「ううん、まあ……いいのか?」
「銃想定すんなよ……剣なんだからこいつ……」
まあ、他校の生徒に教える分には、この程度で十分だろう。
「ふむ――じゃあもう少し遠間から始めてくれんか」
「イヤだよ、避けるのが面倒臭い……そもそも、この前決勝したばっかりだろ。なんで今やってんだ」
とりあえず数日は東京に居残るつもりではあったが。
その間に来年の秋原の指針に付き合う理由は、村田にはない。マジでない。
「あ~……じゃあ村田、あとで秋原に来てくれる? 基礎剣術教えられるやつ、うちにあんまりいなくて」
「広島までいきたくねぇよ~……」
頼むからこれ以上面倒事がやって来ないことを祈りながら、村田は帰路につくのだった。
■
後日談:『秋原の神剣』と『白夜の綺羅星』
『国異』終了後の数日。
白夜高校は東京にある。なので他の全国から集まってくる面々より学園が近い。
その練習場で。
「じゃ、やろうや」
と笑う、自称『白夜の綺羅星』、『ジュワユース』の諸星阿左美さんがいた。
しかも、すでに諸星さんはジュワユースを抜いている。
シャルルマーニュ十二勇士の逸話を適宜呼び起こすという『異能』が爛々と輝いている。
「なんでですか?」
思わず問い返してしまうわたし。しかし、諸星さんの答えは端的だった。
「なんせうちの部長――いやもう先輩か……はしばらく寄藤の見舞いで大変だからな! それに白夜も若干お通夜ムードだ。それを放置するのはちょっと格好悪い」
「う……」
「おっと、だから敵討ちというわけじゃないぞ。気にすんな一年生! なんなら大体目に付いた連中には声をかけてる」
「わぁ」
なんだこの人……。
まあいいんだけどさ……現状水野元先輩というクズ以外の秋原の人たちも見てくれているし。
あと、白夜の人達とかも……あれ、これって敵情視察になるのでは?
「まあいいですけど……じゃあ、加減しませんよ?」
「おうよ。私も格好いい感じで来てくれると助かる。それから、あとで望月さんともやらせてもらう」
「絶対に嫌です」
凄い。あのへらへらした望月さんが真顔で即答した。
「ふむ! まあいいか! まずその神剣討伐だな! ちゃんと詠唱は待つぞ」
「なぜなら詠唱中に斬りかかるのは格好悪いから」なんて言って『ジュワユース』を構えてくる諸星さん。
よし、ならば――
「――『斐川の化身に、手向けよう』」
鎮魂歌を唄う。
「『わたしは、彼の尾より生まれた『出雲国の剣』、だから』――」
どう狙えばいいんだ、これ――なんて思いつつ――
「――『抜刀。クサナギ』」
とりあえず諸星さんの首に向けて一気に斬り落とした。
「『ローラン』!」
が、その道理を無視する斬撃はなんか不屈の剣で“流され”た。
「……!?」
「対応が遅いぞ! 一撃技ならその後を考えろ! 『アストルフォ』!」
ひゅんっと一瞬で飛んでくる諸星さんの剣。
切り上げをどうにか刀で防ぐが、なぜか急に『わたしの足』から力が抜けて転がり落ちた。
「ああ、それな。『落馬の槍』だとかの力が乗ってるんだ」
とか山名先輩は言ってるけど、わたしは完全に横転して。
「ふうむ」
すっと目の前に突き出される『ジュワユース』に、全然対応できなかった。
「うん、やっぱり基礎がまだまだだな! もう少し頑張れ」
「いや、うちでは狙撃運用する予定だ」
なんか山名先輩が勝手に決めてるし……。
「なんでだよ。『秋原の神剣』は正面に立って撃つのが格好いいぞ! うちの化物みたいな部長もぶっ倒したんだからな!」
「だから絶対皆そこを狙ってくるだろ……。いや、そうか……? 餌が増えたのか……?」
などと、ぶつぶつ言ってる山名先輩。多分ロクなことを考えてない。
でもこの諸星さんに賛同するのもなんか嫌だなぁ……って想うわたしなのだった。
■
後日談:『秋原の神剣』と『冬の狙撃手』
『国異』、数日後。広島、秋原女学園に戻ってから。
なぜかわたしが対峙している相手は山名部長……。
彼女の『異能』は『モシン・ナガン』などという伝承とは程遠い狙撃銃。
それから『ハントレス』などという、『狩人』という曖昧な概念。
少なくとも『神剣』だのなんだのと、真正面から打ち合う『異能』でも性格でもない。
なにより『勝つ手段』をある程度整えないと、まともにやりあえない平凡さ。
故に現状は斥候・狙撃・隠密・指揮などの裏方をほぼ全部纏めているのだが――
「じゃ、やるぞ佐守」
「なんで、ですか……?」
試合場に二人きりで呼ばれたかと思えば、答えはとても端的だった。
「だってお前、剣だろう。お前相手に一応何合か付き合えるのは私だけだ」
「まあ、そうですけど……山名部長は狙撃手ですよね」
それに、山名部長が堕ちると秋原はとても困る。何しろ裏方の戦術負担をほぼ一人で担っている。
だけど――
「わたしとこの距離でやりあったら、負けません?」
一応……多分傲慢ではないはず。
けれど山名部長は首を振った。
「まあそうだな。なので『やれるもんなら』やってみな?」
「はい……?」
「そら」って言って、両手を拡げる山名部長。
片手には鉈を持っているけれど、でもそれだけだ。
明らかな挑発。
「……本当にいいんですね!?」
などと答えながらも、冷静に、冷静に……!
「だから良いっていってんだろ。『雑魚』」
めちゃくちゃ、挑発された。
「はぁ……!」
もういいや。これを斬れば終わるんだし――!
「――『抜刀』」
わたしの握る模擬剣が、神威の太刀へ変化する。これで『剣軌道上を道理を無視して斬り捨てる』……!
詠唱破棄ではあるけれど、山名部長相手ならこれで十分――!
「『クサナ』」
「そこ」
「――へ?」
前に踏み出した足元にガシャンって何かがかかる。
――これは、獣用のトラップ?
ああ、そういえば『ハントレス』って狩人道具色々呼べるって聞いてたけど、でもいつのまに――
「どうした。どう動く?」
「……! このぐらいっ!」
別にクサナギでなくても、多少の魔力を込めれば斬れるはず……!
だって山名部長の魔力量は平凡。わたしの魔力をぶつければ圧し折れる。
だって言うのに山名部長は言う。
「なあ、ところでこっち見なくて大丈夫か?」
「え?」
「もう私は銃の間合い。お前はどうする?」
「……え」
そういえば、確かにしばらく山名先輩相手を忘れて――
いや、でも動きが見えるのならば――!
「――『抜刀。クサナ」
「今度こそ斬りにくるだろうな。だから斬る」
剣を振り終える前に、鉈で斬りかかってくる山名先輩。
剣じゃなくて腕を、その鉈で止められる。
「あいた……っ!」
利き腕を負傷した。
その上、山名先輩はまだ見てるだけ。
えっと、えっと――
「じゃあこっちで『抜刀』――!」
だから即座に左手だけに持ち返してクサナギを撃つ。
これなら、さすがの山名部長でも――
「持ち替え早いのは偉い――『必当。モシン・ナガン』」
山名部長は詠唱破棄で狙撃銃を呼んだ。
――でも詠唱破棄だ。山名部長の魔力は平凡であり、平均。
それ故に『スコープ』しか呼べないことを、チームであるわたしは知って――
「ほら」
「あいたっ!?」
雑に、スコープをぶん投げてきた!?
さすがに予想外すぎて、それを頭にぶつけられて動きが止まる。
その隙に――
「はいよ」
続けて、鉈の一撃がわたしの左肩に。
「いてっ」
脱落するほどの一撃ではないけど、ちゃんと関節とか狙った一撃。
しかもそのまま鉈は首の方に向けられている。
「さて、どうする?」
「……降参します」
ぽいっと模擬剣を投げすてる。
めちゃくちゃ癪だけど……!
「なんですか。私のクサナギ、全然振れませんでしたよ!?」
『剣の軌道上を道理を無視して切断する』という『異能』。
その不条理を発動させてすらもらえなかった。
この距離から始めたにも関わらず。
「ああ。一撃で私は死ぬ。だから、完封させてもらった」
「先輩は何を言っていますか?」
などと問いかけてみても、山名部長は気づかない。
「うぅ~……う~! も、もう一戦!」
「いいけど……今度は銃の間合いでやるか。お前にも覚えさせたい」
どうせ本戦じゃ狙撃運用だ。と、山名部長は言う。
戦略的には正しいんだろうけどさぁ!
そもそも、主戦場である狙撃戦でないのに完封された……。
「……わかりました。剣じゃないならいいです」
「え~……なんで不服そうなんだよ。私だって、近距離で教えたいことあるんだぞ」
獲物の追いつめ方とか――なんていいながら鉈を模擬剣に戻す山名部長。
その顔は大変不満そうだったが、わたしの方がよっぽど不満だった……。
■
後日談:『秋原の神剣』と『鶴久の絶剣』
『国異』、数週間後。
秋原の『冬の狙撃手』、山名有為二年生に呼び出された『鶴久の絶剣』武光奏。
彼女の『異能』は『デュランダル』などという、単純に折れないだけの不屈の剣。
本当に「以上、それだけ」で他に説明不要な代物なので、基本的に前衛である。
――なので。
「じゃ、佐守とやってくれんか」
「いいよ~」
答えは大変軽い。このフットワークの軽さは武光奏の長所である。
まあ短所でもあるのだが。だってこいつ忠犬連れてきてるし。
「とりあえず一戦するけどそれでもいい?」
「おう。でも遠間からやらせてやってくれ。近距離でやったら佐守じゃ敵わん」
若干、佐守の肩が跳ねている。多分敵わんと言われたのが癪に障ったのだろう。
「でも、わたし斬れるなら斬りますよ」
「だから、斬れるなら斬ってみろよ」
だが、それも踏まえて二年最高峰の『鶴久の絶剣』と直接対決する機会を与えてやりたい。
あと単純に山名が見たい。性能把握をしておきたい。
「ただこっからよーいどんでお前が敵う術がない。一旦見とけ」
「なるほど……?」
本当によく分かっていないのだろう。佐守は首を傾げている。
一方の
「両者位置についたな~!」
「は~い!」
「いいよ~!」
場所はただの遮蔽のない広い練習場である。
一番『クサナギ』が本領発揮出来る場所だ。
とりあえず佐守の方には特に何も言わない。
「んじゃ試合開始~!」
「はいよ。では『鶴久の絶剣』――いざ参る」
などとふざけたことを抜かしながら即座に視界から消える馬鹿。
「…………!?」
佐守が動揺しているのを「だろうなぁ」と思いながら見ている山名。
だってあいつはまず視界から消える。馬鹿縮地ですっ飛んでくる。『デュランダル』を持って飛んでくる。
馬鹿縮地はあの『白夜の聖剣』でも見えない。
二年生以上の上位陣は大体この辺で飛んでくるのが分かっているのだが、佐守には無理だろう。
「どうするんだろうな~」
珍しく他人事の山名。
本戦なら別に適当な身内が斬られてる間に撃ち抜けばいいが、今回はそれができぬ。
「ば、『抜刀。クサナギ』!」
「ほっと」
軌道上を軽く避ける武光。当たり前である。これは馬鹿だが二年最高峰。村田や諸星ができることをできぬ道理もない。
「お~い! もういいの~!」
武光もなんとなく加減はしてくれているのだろう。
馬鹿縮地で即効間合いを詰めればよかろうに、一応回避し続けてくれている。
「……あ~。あれだ佐守。回りながら斬りな~!」
などと、一応秋原側として助言しておく山名。
視界範囲斬撃なのだから、一回転しつつ横に斬れば全範囲攻撃になる。
見た目は大層格好悪いが。
「……『抜刀。クサナギ』」
凄い不承不承な感じで言ったことをちゃんとする佐守。
しかし武光奏はそれを避ける。多分普通にしゃがんで避けている。
であれば動きは止まるはずだが、もう馬鹿縮地で消えている。
「えっと、えっと……」
「武光を人間だと思うな~! それバケモンだから、化生討伐なら神剣の分野だろ~!」
「聞こえてるぞ山名~!」
聞かせてんだよと思いつつ、やはり佐守単独ではこの化生は討伐できぬか、と山名は思う。
「まあいいか……じゃあもういいぞ~!」
そう叫ぶ山名。
「ほっ――!」
――気づけばもう佐守の目の前にいる『鶴久の絶剣』。
「ひぇっ!?」
などと分かりやすい反応する佐守、模擬剣で防御態勢を取っているのは偉い。
しかし相手は『デュランダル』、決して折れない不屈の剣。
当然のようにぶった斬られて――
「はいおしまい」
とんっと佐守の肩に乗せられる『デュランダル』。
「いてっ」
「ああ、えっと……。こ、降参……?」
両手を上げる佐守だが、状況がまだよく分かっていないようだ。
そら、ほとんど視界にいなかったんだからしゃあないと思う山名。
「ううん……ってなると~……」
「悩んでるところ悪いけど、ウチのも見てくれん?」
ウチの、というと里見志野一年生であろう。
納刀から縮地とかいう軽い化物ではある。
山名は『狩人』であり『剣士』ではない。
なので仕掛けでやれるならまだしも、いざ尋常になどされれば負けるが。
「まあいいけど。銃の間合いでやらせろよ」
「だめだよ。撃ち抜かれたら人間はおしまいなんだから」
「お前今、過去一矛盾した発言してるぞ」
「なんだよ人を化物見る顔して……」
化物だと自白したばかりなのに化物扱いに不満気な武光。
しかし、やはり『クサナギ』では『
それが確認出来ただけでも儲け物ではある。
そもそも『絶剣』相手に正面勝負できるのは二年以上、村田やら諸星くらいだが。
とりあえず盤面を戸枝に焼かせて見えたらクサナギが最適か……。
「まあいいか。んじゃやらせてもらうよ」
適当に『ハントレス』を抜いて、『絶剣の忠犬』とやらを相手にする。
しかし里見志野一年生は『ムラサメ』を抜いているのにまだ不満気である。
「……やるんですか」
「やるよ。……えーっとそうだな。因みに準決で『鶴久の絶剣』を狩ったのは私だ」
「――『消す』」
「よいしょ」
「……!?」
優勝秋原の二年生。部長になった山名は縮地抜刀術とかいう馬鹿を鉈でアドリブで防ぎきる。
『鶴久の絶剣』とかいう化物ならまだしも、里見一年程度の縮地なら大体見切れる。というか分かりやすすぎる。
「はいそこ」
「……!?」
あとは、こいつは唐突なものに弱いので、ガシャンとまた罠。
「あいよ」
ぺしっと鉈を叩きつける山名。
まだ『国異』も終わったばかりだが、ここで怪我されて秋原の責任問題にされても困るので適当に。
「はい、まあこれでいいだろ」
と言って、ぽいっと鉈を捨てて『異能』を閉じる山名だが、よりにもよって納得していないのが『鶴久の絶剣』である。
「一発じゃん。もうちょい殺陣してやってくれよ!」
「え~……まあもう何合かは打ち合えるけど……」
別に打ち合う理由がない。山名は『狩人』であり『剣士』ではない。
しかしこの武光奏、実に剣鬼である。
「あ、じゃあ今度は二体二でやろうぜ。あ、戸枝とか望月とか呼んできてもいいよ」
「う~~ん……」
珍しく、困る山名。
呼び出した側な手前、強く「帰れ」とも言えぬ。
「わかった……んじゃ満足するまで付き合う」
「うん。つうかあたしらの寝床貸して。何も予定たててない」
「まじかよお前」
来年『鶴久の絶剣』は普通に注目選手になるだろう。
その中身がこの馬鹿なのが、何とも言えない山名なのだった。