わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで   作:遠野静

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後日談:『一年生混成チーム』と『二年混成チーム』1

「んじゃまあ一年混成と二年混成でもやるか。ちゃんとフィールドも用意して」

 

 などと軽いノリでとんでもない事を言い出す山名部長。

 

「二年チームは私と、鶴久の武光と、白夜の諸星と、洛陽の村田と、宝徳の千与で五人。一年生チームは秋原の佐守、戸枝、望月の三人。後は宝徳の六条と……あー、鶴久の里見と白夜の寄藤もいるか」

 

「ああ、別に僕は抜けていいですよ」

 

 速攻で面倒事から抜け出そうとする望月さん。

 でも……。

 

「いやまあよかろ。よいハンデだ」

 

 などと仰る……。六体五でちょうどいいと……。

 

「本当にいいんですね? 加減できませんよ?」

 

 そう聞くのは戸枝さん。一キロ燃やし尽くす終わりの魔剣。

 

「大丈夫だ。そもそも加減なんてこのメンツにない」

 

「失敬だな、私はあるよ」

 

 『鶴久の絶剣』とか言う化物が何か言っているが、山名部長は聞いてなかった……。

 

「まあとにかくやるぞー! 練習だからって手は抜くなよー! 本戦の気持ちでこいよー!」

 

 などと抜かしてなんかどっかに行く山名先輩……多分フィールドの準備をしに行ったのだろう。

 この状況でわたしはどうしたら、というかどうすれば?

 そう思っていると『秋原の熱剣』こと戸枝さんがコホンと咳をして。

 

「じゃあ……とりあえずいきましょうか」

 

 というのだった。

 

◇

 

 一応改めて、冷静にメンツを見てみる。

 まず当然『秋原の熱剣』戸枝さん。規格外の魔力量を持ち、『異能』は『レーヴァテイン』

 『一キロを終わらせる炎』とか言う意味のわからんわたしのヒーロー。

 

 それから……わたし、佐守あお。『秋原の神剣』って呼ばれてるけど、個人的には『熱剣の影』のほうが好き。

 戸枝さんと並ぶ規格外の魔力量を持って、『異能』は『クサナギ』

 『視界範囲にある剣軌道上を、道理を無視して切断する』、とんでも技。

 

 それから『秋原のジョーカー』、望月さん。基礎魔力は平凡だけど、『異能』は『デア・ナハト』

 『影の中にいるものから魔力をドレインし、さらに吸血鬼っぽいものを色々使える』というなんか器用貧乏の局地みたいな頼れる友だち。

 

 ここまでが秋原メンツ……これだけでも倒せそうだけど今回は――

 

 寄藤環さん。『白夜』の一年生。わたしや戸枝さんと同じ規格外の魔力量を持ち、『異能』は『エクスカリバー』。

 『『白夜の聖剣』なんていう、生きる伝説になっちゃった人の剣術を再現する』。もちろん聖剣属性有。

 

 里見詩乃さん。『鶴久』の一年生。魔力量とかは平凡だけど『異能』は『ムラサメ』、『化生殺しの太刀』だ。さらに当人も『居合』使いで『縮地』も使える。普通に剣士として強い。

 

 六条霞さん。『宝徳』の一年生。魔力量は平凡。『異能』は『ロビン・フッド』……あまり良く知らないけど、どうやら不可視化するのとボウガンとか使えるらしい。技術は高い。

 

 これが一年メンツ。六人中三人が規格外だ。

 では二年メンツは……。

 

 まず我らが山名部長。『冬の狙撃手』の異名を持つ彼女は『モシンナガン』『ハントレス』という二つの異能を使う。ただ魔力量は平凡。『ハントレス』も、『狩人』っていう曖昧な概念を身に纏うだけ。

 

 それから諸星さん。『白夜』の現部長。『白夜の綺羅星』の異名を持ち、魔力量は平均より高い。『異能』は『ジュワユース』。

 『シャルルマーニュ十二勇士の逸話』を適宜入れ替え、その力を剣に乗せることができる……らしい。

 

 それから村田さん。『洛陽の妖刀』。魔力量は平均だけど『異能』の『ムラマサ』は相手の魔力に応じて土地から魔力を吸い上げて同じくらいにしてくれるんだとか。でも剣術は自前。

 

 それから須藤さん。『宝徳の名弓』。魔力量は平均的で、『異能』は『扇的当』――いわゆる与一の弓。『仲間の異能や魔力を束ねて撃てる』らしいんだけど、命中補正はないらしい。

 

 ――そして『鶴久の絶剣』武光奏さん。二年生の規格外の魔力量を持つ。

 けれど彼女の『異能』『デュランダル』は「折れない、以上」ただそれだけ。

 代わりに剣術が……おかしい。一挙一動縮地とかいう、良く分からないことが出来る……。

 その『馬鹿縮地』は、『白夜の聖剣』と呼ばれた逸見さんでも見えないそうだ。

 

 でも、規格外の魔力量も範囲も、一年生のほうが高い。

 勝てる……とは言い切れないが、うまくやれば勝てる気がする。

 

◇

 

 ……結果選ばれたフィールドは『ビル群』だった。

 遮蔽も多いし、戸枝さんの熱剣も発揮し辛い。

 逆に影が多いから望月さんには得意分野……かも。

 

「とりあえず」

 

 そううちの秋原代表は言う。

 

「ええと、私が纏めるということでよろしくて?」

 

「まあいいけど。なんでそんな不安そうなのよ」

 

 食いつくのは白夜の狼、寄藤さん。

 それに戸枝さんは視線を外しながら。

 

「いえ……指示出しは初ですので。逆に皆さんに対応できる方は?」

 

「…………」

 

 ……沈黙。

 

「では、まずみなさん望月さんの影に血を落として、眷属になってください。それで念話ができます」

 

 他校生もいるから、ちゃんと説明する戸枝さん。

 その後、試合開始のブザーが鳴った。

 

「それから――ぐっ!」

 

「戸枝さん!?」

 

 と、戸枝さんの身体にいきなり黄金の剣が刺さってる……!

 

「あー……! 望月さん、頼みます!」

 

「マジで言ってる? ああクソとりあえず遮蔽に身を隠せみんな!」

 

 一年生側の脱落ブザーは一年の『新しい伝説』、戸枝さんだった……!

 

◇

 

 とりあえず影に身を隠したけど……今の一撃は……?

 いくら油断してるからって、今の戸枝さんを一撃で落とす手段とかそうそう……。

 

(よ、与一の弓……『扇的当』です……多分)

 

 六条さんの声が念話で聞こえる。

 

(『仲間の魔力や異能を束ねて撃つ』、それで向こうのデュランダルかジュワユースか……)

 

(はっなるほどね……ていうかガチじゃん)

 

 寄藤さんの舌打ちが聞こえる。

 

 それに答えるように望月さんが言う。

 

(とりあえずまともな剣なら、寄藤さんなら付き合えるでしょ、逸見さんの剣術使えば――)

 

(まともじゃない剣しかいないでしょ)

 

(そうね……えーーああ、もうあれだ! あおちゃんにクサナギでビル群スパッしてもらうか!)

 

 雑……しかし確かに今のわたしなら、フル詠唱ならやれるはず……。

 

(わかりましたよ。やってきます)

 

 高度を奪われるのはまずい。

 だって相手は山名先輩だ。須藤さんだ。村田さんだ。

 諸星さんに――『鶴久の絶剣』とか言う化物だ。

 

 山名先輩の手駒が多すぎる。

 故に――

 

「――『斐川の化身に、手向けよ――」

 

 鎮魂歌を、歌おうとした瞬間――

 

「動きが遅い!」

 

 ビル群の頭上から諸星さんが飛んできた……!?

 

「ば、」

 

「対応も遅い。それと影ならお前もだな」

 

「いてっ!?」

 

「あうっ」

 

 あっという間に脱落ブザーが二回。わたしと望月さんの分……!

 

 さらには――

 

「――『削す』」

 

 ムラサメを持って居合縮地で跳んできた里見さん……。

 の、影からヒョイッと足を出されて転ばされる。

 

「よっ」

 

 それは村田さんだった。村田さんはそのままムラマサを倒れた里見さんに突き落とした。脱落ブザーが鳴る。

 

「ちぃっ……『抜剣。エクスカリバー』!」

 

 詠唱破棄して聖剣を、その『伝説の剣術』を呼ぶ寄藤さん。

 ……だけど。

 

「ほい」

 

 ――ぬるりと。真下から高速で飛んでくる『鶴久の絶剣』。

 『鶴久の絶剣』の縮地は、『白夜の聖剣』にも見えない。

 それが斬り上げ、エクスカリバー毎両断した。

 これで脱落ブザーは五回……!

 残るのは六条さん……は!

 

「――『わたしは「はい積み」

 

 詠唱に割り込むタンっと短い銃声。

 山名先輩……多分わざわざここまで来なくても良かっただろうに、姿を出して。

 ……それで、試合は終わった。

 

◇

 

「さて……ほな課題わかるやつおるかー?」

 

 ……一年生全員、正座させられていた。

 山名部長はこれといったことをした、というふうもなく自然体。

 それに応じるのは、戸枝さん。

 

「……指揮の遅さ、でしょうか?」

 

「いやお前の指揮は正しい、ただあんな道端でやったのは間違い」

 

 そう言ってから、今度は戸枝さん以外の方に向く。

 

「さて、お前らは? 『異能』の強さも魔力も、うちの佐守と寄藤は規格外だ。こっちはまあ諸星は高めだが、 『鶴久の絶剣(バケモノ)』くらいしかいない。でもこいつは『折れない、以上』の化生だ」

 

「……連携の欠如とか」

 

 ちっと舌打ちをしながら寄藤さんが言う。

 けれど山名部長は首を横に振った。

 

「まあクサナギ解放しようとしてただろ、あれはいい」

 

「判断の遅さ……?」

 

 一応聞いてみるが、それも首を横に振られた。

 

「まあ雑だが正しい」

 

 「ただし」と山名部長は言葉を切って。

 

「『遮蔽に逃げた』。そこからどうして動かんかった? 『戸枝が撃たれた』時点でこちらからお前らの動きは丸見えだ。そこに入り込んだなら、そこに行くに決まってる」

 

 ……そうですけど。

 そういうことですか? 

  

「あとは分かりやすい。エクスカリバーは化物でぶった斬れる。忠犬は足回りが弱い。六条については……私が行く必要は無かったが……まあ教訓ついでにな」

 

 これも練習だから、とか言う山名先輩は気づかない。

 これでもエースであり伝説になったり、規格外三名とかいう超火力を一度も撃たせなかった事実に……。

 

「だから撃てるなら撃たせんよ。平凡な私じゃ死ぬもん」

 

 「ついでにビル群だと不可視も面倒だから早めに処理させてもらった」とかしれっという。

 

「あとは、もう少し盤面を俯瞰でみな……やっぱり残りの一枠、この視野が欲しいなぁ……火力はもう十分だ」

 

「我は有為の幼馴染みだからこそ言うが、無理だぞ?」

 

 などという須藤さんの言葉も気にせず……むしろ「もう少し張り合いがあると思ったんだが……」とか呟いている山名部長なのだった……。

 

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