わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
「うん。やってるかな」
などと物凄い気軽にやって来たのは『白夜の聖剣』逸見明音さん。
もはや『当人が伝説』になってしまったわたし達のラスボスが、またも「よっ大将やってる?」くらいのノリでエンカウントしてきた……。
「なにゆえここに……」
思わず聞いてしまうわたしに、逸見さんは相変わらずの自然体で。
「いや、なんか愉しげな集いがあると諸星から聞いたから。受験勉強の息抜きにね?」
息抜きで来ていい人ではないのでは……?
「あと寄藤の容態も気になる。……なんか私の剣術を再現するとか変な『異能』を出したみたいだけど」
「変ではないですが……!?」
この人本当に自然体に化物なのに自然体な人なんだよなぁ……。
などと思っていると、山名部長が声をかけた。
「あー、じゃあ逸見先輩と一年生チームでやってくれません? うちの試合場でちゃんとフィールド作るんで」
「えー……まあ、うん。いいけど、私一人?」
「構わんでしょ。いいハンデですよ」
「……『秋原の熱剣』は十分一撃死なんだけどなぁ」
などと言いつつも特に否定しない……。
「まあいいよ。ここ最近後方指揮の方が多かったし……最後もまあへとへとだったから」
そうだ……わたしが決勝戦でこの人を倒せたのはそもそもへとへとだったからだ……。
それも一撃だけ、ちょっとだけ超えただけ。
万全の『白夜の聖剣』に、今どう挑めるのか……。
「うん。それじゃあせっかくだ。――『彼方の果て。湖の底。常世を越えて飛び立とう』」
多分必要ないだろうに、目の前で詠唱を見せてくれる。
「『花園の門よ開け。今ここに王が選ばれる』」
無駄もなく、隙もなく、美しく。
「――『抜剣。エクスカリバー』」
その剣は、彼女を選んだ。
「――『集え円卓。この剣に覚えがあるならば』」
さらにまだ見せてくれる……。
一応試合開始前なのに。
「『騎士の本懐。常勝の伝説よ。今ここに刻まれた証を示せ』」
瞬間、逸見さんの剣から十二本の自立稼働する剣が別れ――
「――『召集。ナイツ・オブ・ラウンズ』」
色とりどりの絢爛な十二輝剣が、召喚された。
「さて……そこそこ適当に選んだが、まあいいか"勝負"をしよう。とりあえず試合開始地点に移動するよ」
だというのに相変わらず自然体。
もうやっぱり化生だよこの人もこの人で……。
◇
今回のフィールドは『山岳』。
……これが良いのか悪いのか、自分にはよく分からない。
だって相手は一人で十三の『異能』を扱える不条理だ。
一応『クサナギ』でザクッと両断できるけど、多分避ける。もう分かった。
開始ブザーがなると寄藤さんが酷いため息をつく。
「まさか逸見先輩に剣向けるとはねぇ……」
ちっとか舌打ちしつつ、模擬剣を掲げた。
「――『彼方の果て。憧憬の煌めき。夢を抱えて飛び立とう』」
例の『白夜の聖剣』逸見さんの剣術を、魔力消費して再現するとか言う意味不明な『異能』を。
「『再誕の門よ開け。今ここに
もう待ってる暇とかないのだろう。
「――『抜剣。エクスカリバー』」
件の剣聖の『異能』を抜く。
あと六条さんももう『ロビン・フッド』で不可視になってるし、望月さんも『デア・ナハト』してる。
わたしと戸枝さんは一発ごとに詠唱が必要な一撃技タイプなのでまだ抜いてない。
……いや、戸枝さんはもう全身炎ガードしてるけど。
「……どうします? ていうか寄藤さんなら、多少弱点とか知りません……?」
「……知らない。というか弱点だと思ったものをひょいと飛び越えていくから、あの人」
それもそうだった……。
困った――
「いや、まあ私は人間だから普通に弱点はあるよ?」
――とか、いきなり話に割り込んでくる最強!?
「――『抜刀。クサナギ』!」
「よっと」
ひょいと避けられる。
「――『抜剣。レーヴァティン』!」
「『サー・ベディヴィエール』。『一度目の返却だよ』」
終わりの炎が輝剣の一つに吸われる。
さらに寄藤さんの胸ぐらを掴んで――
「『サー・ラモラック』、君の脚で飛ばしてくれ」
一本の輝剣が寄藤さんを蹴り飛ばした……!
「あとは『サー・トリスタン』、君なら見えるだろ?」
とか言う不条理。あっという間に不可視の六条さんは一本の輝剣に貫かれる。
「で、『サー・ガラハド』。その聖なる身にて闇を払え」
「いってぇ……!」
とか望月さんも吹き飛ばされて……。
「『サー・ガウェイン』、『サー・ランスロット』。君らの武勇でやってしまえ」
などと仰る不条理から飛んでくる輝剣二本で、一瞬でわたしと戸枝さんも倒された……。
……ブザーが六回。遅れて鳴った。
完封である……。
◇
「とりあえずおもろい試合にはなったな」
と、山名部長は仰るが、どこがおもろい試合だったのか……。
「判断が遅すぎだ。この人開幕直後から『トリスタン』ぶち抜くような人だぞ」
ちなみにいきなり混ざって見えたのは、『ローエングリン』とやらの翼で滑走して真っ直ぐに試合開始地点に跳んできてたらしい……。
なので、開始位置で悠長に話し合ってた時点でもう負けだった……。
一方の不条理は――
「ううん……もう少し剣術勝負をしたかったが……」
などと仰っていた……。