わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
「因みにその人、ステゴロでも十分強いぞ」
などと山名部長が仰る……。
「いや、あくまで剣術の範疇の組手だよ?」
などと化物は答える。
「まあいいか……ちょっと様子を見に来ただけのつもりなのに、どうしてこうも力を使わされてるんだ……」
はぁ……とため息を吐く逸見さんはいつになく疲労困憊だった。
少なくとも、もう聖剣も輝剣解放もできないだろう。
……よし。一年六人、やってやろう!
「――『抜剣。レーヴァティン』」
もはや試合開始も持たずに終わりの炎を打つ戸枝さん――に、一瞬で近寄る逸見さん。
「あー……まあ"勝負"ならいいか」
なんか疲れて雑になっているのか、口調も弱々しい。
――けれど、その振り下ろされる『世界の終わり』も、『どうせ斬られたら人は死ぬだろ』くらいのノリで回避される。
おまけにその振り下ろされた剣の切っ先を踏みつけて固定し、戸枝さんの身体を腕ではじき飛ばす。
「――『抜刀。クサナギ』!」
「――『抜剣。ムラサメ』」
「よっと」
詠唱破棄した『クサナギ』はあっさりと最小限の動きだけで回避される。
さらには居合で飛んできた里見さんには、もっと一歩間合いをつめて、剣を振りぬいた腕を掴んで、そのまま一本背負い。
「さて、次は……」
とか言いながら、逸見さんはこちらに迫ってくる……!
「――『抜刀。クサナギ』!」
「だろうね……ほっと」
しかし、詠唱を完了して剣を振りぬくより前に腕を掴まれた。
――さらには『クサナギ』を解放したままグルンと回された。
『視界範囲内距離無視切断』が、一回転したのだ。
倒れていた戸枝さんも、里見さんも、不可視になっていた六条さんも……ついでに影に潜んでいた望月さんもそれで落とされる。
「あとは、よっこいせ」
そしてそのまま腰を抱かれて、足払いを喰らって転ばされる。
……わたしは、身長的にも敵わない。しかも身動きがとれないように、かかとでみぞおちを踏まれてしまう……。
「ちぃっ……『抜剣。エクスカリバー』!」
そして、唯一生き残った寄藤さんは、聖剣を解放して一気に詰め寄る。
その速度は速い。なにしろあの剣は『逸見明音の剣術』だ。
一方の本家本元である逸見さんは、徒手空拳。
……なんか色々あべこべではあるが、しかし、たとえ逸見さんでも自分の剣術を自分に向けられたら――!
「――ほ」
パンっと目の前で猫騙しを喰らって動きを止めたところを蹴り飛ばされた。
「はい、おしまい……ふうさすがに疲れたあ……」
「ちょっと覗きにに来ただけなのに……」とかぼやいていた。