わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで 作:遠野静
「よしせっかくだ、寄藤と稽古でもしよう……『抜剣。エクスカリバー』」
ヒョイッと詠唱破棄して件の聖剣を抜く逸見さん。
何故秋原で白夜の二人がやってるのだろう……。
「何分加減の出来ない性質だが。"勝負"をしよう」
と言いつつ、寄藤さんに剣先を向ける逸見さん。
寄藤さんはもう「エクスカリバー」を抜いている
――だから、
「……行きます」
全力で、その伝説を上回ると告げる。
その構えはもう狼だ。
「はぁ……!」
荒々しい喧嘩殺法と逸見さんの剣術が混ざり合う。
四足に近い低姿勢から一気に逸見さんの剣術が斬り上がる。
この一瞬に限り、間違いなく寄藤さんは、『寄藤環』は『逸見明音』も知らぬ至高に至り――
「捻れてるなあ」
――雑に、剣の切っ先を蹴り飛ばされた。
それだけで低姿勢だった寄藤さんは倒れる。
「して、こうかな」
ピタッと聖剣の切っ先を、寄藤さんの頭上で寸止めする逸見さん。
「……はい。ここまで。これ以上は、"勝負"ではなく"一方的な暴力"だ」
そう言って剣を下ろす『白夜の聖剣』。
「うん。ちなみに何かを勘違いがあるようだが、そもそも、ただの高校三年生の私がすべての剣を知るわけもないだろ?」
「単に初見の技もその場その場で見切ってるだけだよ」とか言ってるし……。
「因みに寄藤、今の剣の対処はもう少し最適化できるよ。構えた時点で斬れる」
とか、最適解まで既に考えている。
「……先輩、もう卒業じゃないですか」
「なら勝ち逃げするよ。……まあ、そもそも加減も出来ないのだが私は」
何を当たり前のことを……みたいに言っていた。
「ま、模倣も借物も悪いことではない、というか当然だよ。……そもそも、私の剣だって誰かからの習い物だよ?」
と、まあよく考えれば当然のことを言う逸見さん。
「『君の剣』とか、それはただの素人の棒振りだよ。……何故かそれを勘違いしてる輩が多くて私は不思議なのだが。さっきも言ったが、今のは型が捻れてた。身体に良くない。やめなさい」
「本当に何故だ……?」と、首を傾げつつ。
「私の教えたことも有用なら使え使え。むしろ真似してくれて嬉しいぞ。なんなら私も学習中だ」
「ついでに剣の友達も君より多いぞ。示現流とか笠原に習ってるし」
なんて……もう剣聖の域に達しながらもまだ発展途上の『白夜の聖剣』なんて伝説は笑いつつも。
「……ただし、"勝負"と"暴力"を間違えることだけは、やめなさい。いつかみたいに自分の命を削るような真似を、絶対に君の牙だとか『そんなもの』を美談にするな。私は泣くぞ」
と、危うい狼に釘を刺していた。