わたしは剣。――無能だった少女が、異能者たちの全国大会で運命を斬るまで   作:遠野静

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第9話 合宿と、修行と、わたしの帰還(中編)

 夕方が過ぎて、夜。公民館で待っているとみんなが帰ってきた。

 帰ってはきたんだけど……なんか様子が変で……。

 

「あ、おかえり――」

 

「ただいまですわ」

 

 わたしの声に答えてくれたのは、ぼろぼろの戸枝さんと。

 

「や~、ただいま~……はあ、流石に『熱剣』相手は疲れるねえ」

 

 見た目だけ疲労をみせながら。

 けれど、実際は殆ど消耗していなさそうな水野部長と。

 

「ただいま」

 

 凄く端的に答えつつ、全身の土を払う山名先輩と。

 

「…………」

 

 ……まったく返事をしない、ボロボロの望月さんだった!

 

(ちょっと山名! お前さぁ~!)

 

 急に脳内に念話が入ってくる。水野部長の『異能』だ。

 雰囲気的に、わたしだけでなくて山名先輩にも――それから、戸枝さんにも届いている。

 要は望月さんだけ外されてる状況だけど、それも仕方がない。だって――

 

(あれ、どうすんの。もうふてくされてんだけど? お前が相手したよね?)

 

(いや……ちょっと発破をかけたつもり、だったんですけどね)

 

 どうやら話を聞く限り、山名先輩が望月さんと戦ったらしい。

 そうなると、水野部長が戸枝さんの相手……? それでかすり傷ひとつ負ってないのは、凄いと思うけど――

 

(褒めてくれてありがとうね佐守ちゃん。でもそんな話じゃないんだ、今は先に望月をどう元気づけるかの方が大事!)

 

 それはそう。でも、その隙間に山名先輩の声が割って入る。

 

(いや、それはいらないと思いますけど……)

 

(なんでですの。これから合宿なんですのよ? なのに、あんなに苛立ちを露わにされたら、こちらも気になります)

 

(あー、それはごめん……ごめんだけど、こればっかりは望月が自分で超えなきゃいけない壁だからさ。今はもう少しそっとしておいて)

 

 山名先輩には分かっているみたい。形は違うけど遠距離系の『異能』を使うからなのか、それとも対戦した時になにかあったのか。

 

(両方かな。ひとまず、先輩。望月は放置でお願いします。他の練習に支障をきたすようなら、また私から言うんで)

 

(…………うーん。まあ、山名が言うなら、それでいいとしよう)

 

 でも、本当に問題があるようなら部長権限で停止するからね。と言い残して。

 それから、部長はわたしの方を見て、口を開いた。

 

「佐守ちゃん、もう平気?」

 

「あ、はい……村は、見てないから分かりませんけど……ひとまずは」

 

「おっけおっけ。なら君の修行はとりあえず明日からね。大丈夫、公民館の運動場だけで完結するようにしているし。…………あと君の村燃えたし」

 

「はい?」

 

 なんかすごいこと、聞いた気がするんだけど。

 

「………コホン」

 

 と、詳しい話を聞く前に戸枝さんが割って入ってきた。

 

「佐守さんの課題は、『基礎と体力』を身につけること……でしたわね? それでは、私と望月さんは? 今日はひとまず、互いにお相手いたしましたが」

 

「うん。それも単純だ」

 

 そう、へらへら笑いながら、部長は答える。

 

「『戸枝と望月』のふたりで、『あたしと山名』に勝つこと。勝てなくても、一か月以内にその辺ぐらいまでは迫ってもらう」

 

 要はバディとバディ。まあ、戦い方的に必然相手は限られるんだろうけど。

 

「大したことはしなくていいよ。全力で、頭を絞って、あたし達に勝ってみな? あるいはあたしが絶不調な時を神様にでもお願いするか」

 

「先輩。それだと私が頭を悩ませることになるんですけど……」

 

 と、山名先輩はイヤそうに答える。

 イヤそうに答えるが、止めはしない。……つまり部長が使えない日でも動く案が、山名先輩には幾つかあるってこと?

 

「この人に付き合わされてたら、強制ね。案とか大したもんじゃないけど」

 

 あれ、念話じゃないのに伝わってる……!

 

「そんな分かりやすい顔されたら、誰だってさすがにね……」

 

「――ああ。話は分かりました」

 

 そう言って、望月さんは先に部屋に戻っていく。温泉とかは、使うつもりないみたい。

 そもそも、今の彼女って――なんだか彼女らしくないというか。

 あの、いつもの余裕が、ない。

 

「――大丈夫なんですの?」

 

「大丈夫、だと思う……た、多分……」

 

 焚きつけ過ぎたか? と頭を抱えている山名先輩。

 そもそもこの合宿ってチームワークがどうこうの話じゃなかったっけ?

 

 明らかにバラバラなんだけど明日から本当に何とかなるのかな……。

 

◇

 

 翌日も、朝から水野部長とわたし以外の三人は廃村の方へと向かう。

 水野部長もこの後行くらしいけど、そうなると、いよいよわたしだけ一人になってしまう。

 

「あの、水野部長……? それで、わたしはなにをすれば」

 

 基礎を学べと言われたけど。

 その基礎を教えてくれる人が、今はいないんですけど。

 

『己がいるぞ』

 

 蛇さんはなんか変な技ばっかり教えてくるじゃん。

 

『むう……必要なのだが』

 

 確かに、『薙ぎ』も『払い』もなければ、皆のためにはなれなかった。

 特に『薙ぎ』。相手の剣を軽くいなす技。あれがないと戸枝さんには勝てなかったし、『絶剣』に突き殺されて終わってた。

 それと『払い』――踏み込んでの広範囲への大きな斬撃。あれは役には立たなかったけど、役に立った。

 

 でも――

 

「わたしひとりじゃ、またただの棒振りなんですけど」

 

「佐守ちゃんなら、魔力を込めて物理で殴るだけでも十分脅威だけどね~。とはいえ、ここから勝ち上がるなら最低限の剣術は必須だ」

 

「剣」

 

 そういえば――

 

「わたし、剣だけなんですか? 水野部長は槍だし、山名先輩も狙撃銃だし……」

 

 他にも、『国異』に出場する『異能』使いは、必ずしも剣が主武装じゃない。

 あの鶴久の目黒先輩がいい例だ。けれど、水野部長は言った。

 

「いいや、君は剣だよ。そうでないといけないし、そうでないとならない」

 

 ――と、なにか確信めいた事を言って。

 

「……まあ直感なんだけどね~? 逆に君さ、剣以外を振るう自分って想像できる?」

 

「う、ううん……?」

 

 剣以外の武器……銃とか、槍とか? 他にも色々あるんだろうけど、思い浮かばない。

 チェーンソーとか……って思ったけど、あれも大雑把に見たら剣かも……。

 

「そういうわけで、君には『剣の基礎』を覚えてもらいます。

 そして、そのためのゲストも用意しました。はいどん!」

 

 じゃじゃーんっと。先輩が言って、廊下から『ソレ』は出てきた。

 ぬっと。

 

 なんか、真っ黒いひよこ……頭……? の着ぐるみを頭にかぶって。

 全身真っ黒のジャージをした、つまりは怪人である。

 

 ――黒ひよこ怪人が、のっそりと上からわたしを見下ろした。

 

「ひっ……!?」

 

「おいおい佐守ちゃん。これから教えてくれる人に、そんなにビビんなくてもいいじゃ~ん」

 

 水野部長は当たり前みたいに告げる。

 でも、普通にビビるよ? 田舎の公民館の廊下の角から、黒いジャージで頭にひよこの被り物をした怪人が出たら。

 背丈は――男性としては平均くらいなのかもだけど。少なくとも小柄なわたしにはかなり高いし。

 

「……いや、これは燕だ」

 

「つ、つばめ……?」

 

 つばめって、あのつばめ?

 ああ、だから黒いのか――ってそうではなく……!

 

「燕マン、語尾語尾」

 

「ああ、うん。……これは燕だっぴ」

 

 ぴって言ってる! 何か変な語尾付けてる!

 声音からして女性――だと思うんだけど、なんかちょっとなんか、かなり変!

 

「あの、先輩!」

 

「はいはい」

 

「本当にこの燕怪人がわたしに教えてくれるんですか!?」

 

「燕怪人じゃなくて、燕マンだっぴ。……うん? よく考えたら、燕ウーマンじゃないのか、水野」

 

「多様性多様性。性別不詳の怪人なのがいいんじゃん」

 

 なにがいいんですか?

 

「ともかく、いいかい佐守ちゃん。この燕マンさんは、とても剣の達人です」

 

「は、はあ……」

 

「ただ、わけがあって顔を出すわけにはいきません」

 

「諸事情でプライバシーは保護させてもらうっぴ」

 

 何か軽いなこの怪人……。

 あと水野部長を水野呼びしてるってことは三年生の誰か?

 あとその恰好で剣振れるの?

 

「ぴ。剣のことならまあ、そこそこだっぴ。少なくとも、これぐらいへっちゃら……いや、やっぱり見えにくいな……」

 

「先輩! なんかダメそうなんですけど、この怪人!」

 

「大丈夫大丈夫。少なくとも基礎を教えるくらいなら、今のままでもいけるやつ――と」

 

 先輩が時計を見る。

 時計は、既に八時になっていた。

 

「じゃあ、また夜ね~。それまでみっちりしごかれること~」

 

 脱兎とはまさにこのこと。

 

「え、ええ~~……!」

 

 水野部長は笑顔で、他三人の向かった廃村の方へと走っていって――

 

「じゃあ、始めよう。たった二週間にはなるけれど、それでもただの棒振りよりは、少しはマシになると思う。……ぴ」

 

 公民館には、わたしとこの燕の怪人が、残されたのだった……。

 

◇

 

 公民館の運動場で、わたしと燕の怪人……えっと、燕マンさんは試合用の模擬剣を握っていた。

 

 どうしてこうなった。

 あと本当に脱がないんだ、それ。

 わたしの頭がクエスチョンマークで埋め尽くされているというのに、燕さんはいたくマイペースかつ自然体に剣を構えて。

 

「まずは、基本的なところから始めよう。君も構えてみて。……ぴ」

 

「あ、はい……」

 

 言われた通り、見よう見まねで剣を握る。魔力は特に込めない。剣の基礎を学ばないといけないのだから、それ以外は余分だ。

 

 互いの距離は切っ先が触れ合うか、それぐらいの距離。

 でも、燕さんが――

 

「ふむ……」

 

 とくぐもった声が聞こえたと思ったら、わたしの手から剣が『消えた』。

 

「は、え……?」

 

 驚くわたしの横で、ゴロンゴロンと転がる剣。

 ――消えたんじゃない、弾かれたんだ。

 そう、思った時にはもう、燕さんの剣の切っ先がわたしの喉元に突き付けられていた。

 

「やっぱり、基礎的な構えがなってない。それじゃいくら力強く握っても、何度でも弾けるっぴねぇ」

 

「は、はあ……!?」

 

「怒ったっぴか? ならもう一度試してみるっぴ。……というか、打ち込んできてもいいっぴ。私は立ったままだから、どこからでも掛かってくるっぴ」

 

 そう言って、再び剣を正眼に構える燕さん。

 結構、今のは癪に障った。

 それなら、言われたとおりに思いっきり斬りかかってあげましょう。

 ついでにその変な燕の頭の中身も、見てやる……!

 

「後悔しないでくださいね……!」

 

「後悔はしなくていい。反省は必要だっぴが」

 

 そういう話じゃない! と思いつつも、わたしは落とした剣を握り直して、再び燕さんと向き合った。

 どこからでも、と彼女は言った。それなら真横からでも文句はありませんよ……――!

 

「…………っ!?」

 

 しかし、剣を向けた瞬間、動きが止まる。

 燕さんの切っ先は真っ直ぐにわたしの喉に向けられている。

 

 もちろん距離は遠い。まだ剣も触れないぐらい。

 だけど、彼女の方が背は高い。腕も長い。

 だから、わたしが『突き殺す前に突き殺される』。

 

「…………う、えっと」

 

 横に逃げる。けれど燕さんの切っ先はぴったりと。

 少し後ずさる。それでも燕さんの切っ先はぴたり。

 

 背後に回り込もうとする。それでも。

 

 ――そして再び、剣先が触れ合う距離になった瞬間。

 

「――――ぴっ」

 

「うっ……!」

 

 ふざけた掛け声とともに、また『弾き飛ばされた』。

 

「な、な……!」

 

「驚くことではないっぴよ? ただちょっとした梃子の原理っぴ」

 

「そ、それでわたしの剣だけが飛んじゃうのは……!?」

 

 おかしい、のでは――

 

「うん。それじゃあ構え方から始めようっぴ」

 

 燕さんは剣をおろすと、わたしの方にやってきた。

 ……一五六センチのわたしに、一七十前後の燕の着ぐるみが迫ってくるのは、やっぱりちょっと怖い。

 

「まず、構えてみて。……ぴ」

 

「え、えっと……」

 

「それ。両手が鍔で密着してる。つまり、剣の支えが一点に集中しちゃってるっぴ」

 

 それでは、せっかくの柄の意味がない。と、燕さんは教えてくれる。

 

「右手は前、鍔の付近。左手は柄頭をしっかりと支える。これだけで、剣は硬くなるっぴ」

 

 ……燕さんに言われたとおりに剣を構える。

 そうしたら、なんとなく切っ先がふらふらしなくなった気がした。

 

「あとは肩かな。全体的に腕が硬いっぴね。……うーん。一旦、深呼吸」

 

「え、こうですか――」

 

 すうっと大きく息を吸って、それから息を吐いた。

 肩から余分な力が抜けていく。いい感じに、腕のこわばりも消えてくれた。

 

「うんうん。それそれ。剣は肩じゃなくて腰。腹に力を込めて、剣を全身で支える。……うん、いい感じだっぴ。後はその姿勢をキープできるようになれば、かなり形はよくなった。もう一つは、右手――鍔側には力を籠めないこと」

 

「え、えっと……こう、かな?」

 

 言われた通り、左手で柄頭をちゃんと支えて。

 右手は鍔の辺りで、あまり力を入れないで。

 肩じゃなくて、お腹に力を入れて、前を見つめる。

 

 たったのそれだけで、わたしの構えはかなりよくなった。

 流水の中でも一本。倒れない木のように。

 

「うんうん。中々筋がいいっぴ。……じゃあ、今度はまた私と構え合ってみよう」

 

 そう言って燕さんは、再び剣を構えた。

 わたしの『かなりよくなった』っていうレベルじゃない。

 けれど、一応は『同じ構え』だ。

 

 これまでは土俵にも立てていなかったけれど、やっと土俵に立てた感じ。

 

「――さあ、そのまま剣で打ち込んでみるっぴ」

 

「よし――」

 

 言われなくても打ち込むつもりだった。

 切っ先が触れた瞬間、あの圧が加わるけれど、ちゃんと支えた剣は、それくらいでは弾かれない。

 

「てやぁ!」

 

「おっと」

 

 燕さんの着ぐるみの頭をぶん殴ろうとしたんだけど、その前に剣が割り込んで防がれる。

 

「うんうん。足さばきはおかしいけど……でもやっぱり筋がいいっぴ。剣の握り方を教えるだけで、こんなに強くなるなんて――」

 

 感動していた。

 これまで、ひたすら魔力でぶん殴っていたわたしが、今、『ちゃんと剣を振っている』。

 それを、この燕さんにちゃんと褒められている……!

 

「よしよし、いい感じだっぴ。じゃあ次は足さばき」

 

「足……?」

 

「うん。この前の練習試合で、『鶴久の絶剣』、見たでしょ? ……ぴ」

 

 ああ、あの瞬間移動みたいな『術』を使う人――

 

「術とかいうけどね、あれもあくまで『歩法』だっぴ。………いや、あれはちょっと逸脱しすぎてるから参考にできないんだけど」

 

 覚えられるかと聞いたら、覚えられないと燕さんは即答した。

 確かに剣の極致だと言ってたし、そうなのかもしれないけれど――

 

「でも、あんなのに至らなくとも、足さばきだけで君の動きはもっとよくなる」

 

「ほんと?」

 

「ほんと。よく考えて。どたばた走るのと陸上選手の走り方、同じだと思う?」

 

 ……全然違う。

 

「それと同じ。陸上選手は走るのに特化した形だから、アレも参考にならないけれど。

 剣士には剣士の足さばきがある。そんな風に基礎を覚えていけば、君は間違いなく『剣』になれるっぴ」

 

「ほ……本当ですか!」

 

「……って、水野は言ってたっぴ」

 

 部長の言葉かぁ~~!! じゃあちょっと分からないなぁ~!

 

「ふふ。そのために、この二週間があるんだっぴよ?」

 

 燕さんは楽しそうに笑っていた。いや、顔は見えないけど。

 

「水野がどれぐらいを意識して私に任せたのかは知らない。知らないけど、私はこの二週間で、全力で君に技を教える。どうせなら、水野を驚かせてやりたいっぴ」

 

「あ、あの部長……驚くかなぁ?」

 

 何か想定外があっても、それもありだと笑いそうなんだけど。

 そう言うと、燕さんはわたしの肩をぽんと叩いて。

 

「――だから、驚かせてやりたいんだっぴよ」

 

 着ぐるみに隠れて、顔は見えない。けど、この人は――なんかなんだろう。

 

 ……凄く、落ち着く。

 

 わたしに優しくしてくれる人は、これまでにもいた。

 でも、それは強者の余裕でしかなくて、ただ私を取るに足らないと思っているからだった。

 

 けれど燕さんからは、そんな雰囲気は一切ない。

 ちゃんと私を『ひよっこ』として、『一人前』にしてやる。っていう気概と想いを感じ取れた。

 

 だからなのかも。

 

「わかりました……じゃあえっと、燕さん! 今度はどうすればいいんですか!」

 

「うん。素直になってくれたのは嬉しいっぴ。――じゃあ、次はその構えのまま一時間」

 

「え?」

 

「動いちゃだめ。力を入れたらだめ。私がちょっかいをかけるかもだけど、ちゃんとそれも払う。その態勢を維持したままで、一時間。私が依頼されたのは、剣の基礎と体力づくりだっぴ」

 

「そ、そんな……!」

 

「あ、切っ先がブレたっぴね」

 

「…………!」

 

「そうそう。ちゃんと立て直せるのは、偉い。ただそれだけで、人は君に『斬りかかれなくなる』」

 

「……どういうことですか?」

 

「私と向かい合ってた時、どう思ったっぴ?」

 

「え、怖い……」

 

 だって、何処を向いても切っ先が必ず自分の首を狙っているのだ。

 無策で斬りかかれば、先に首を突かれる。

 じゃあその邪魔な剣をどかしても、すぐ同じ構えに戻られるからやっぱり脅威は変わらない。

 

「あ――」

 

「そういうこと。ちゃんと剣さえ構えていたら、普通の人は真っ向から打ち込めない」

 

 自殺志願者なら別だけど、と物騒なことを言ってから、燕さんも剣を構える。

 

「だから、今日の君の課題は、とにかく剣を握り続けること。そして相手を逃さないこと。集中力を切らないこと。――簡単に見えるけど、これが一番疲れるんだっぴ」

 

「わ、わかりました……!」

 

 凄い。本当に、基礎の基礎から教えてくれている。

 逆にこれまでのわたしがどれだけ、乱暴に戦っていたのかもよく分かる……!

 

 こんなふざけた燕のきぐるみさん相手に、手も足も出ない。

 それが、わたしの本当の実力。本当の技量。

 それなら――

 

「絶対、モノにしてやる……!」

 

「うん、その意気だっぴ。……でも、今ので肩に力が入ったっぴねえ」

 

「…………!」

 

 前途は、多難そうだけど……。

 

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