RAINY CROWN(Re:make) 作:KAMENRIDER
雄英高校の入学試験から数日が経過し、ついに合否通知が届く日がやって来た。
朝から天之助は落ち着かなかった。筆記試験については手応えがあったし、実技試験でも仮想敵を相当数破壊したうえ、負傷した受験生の救助まで行っている。普通に考えれば十分な成績を残せたはずなのだが、いざ結果を待つ側になると「絶対に受かっている」と断言する勇気はなかなか出てこない。
法「今日あれが届くんだよなぁ……」
玄関先に立ったまま、天之助は門の向こうへ続く道を何度目になるか分からないほど見つめていた。
来ない。
まだ来ない。
郵便配達の姿どころか、それらしい音すら聞こえてこない。
法「大丈夫かなぁ……。受かってるよな? いや、でも0Pヴィランぶっ壊したしなぁ……。あれ余計なことした判定になってたりしないよな?」
試験終了直後にも思ったことだが、改めて考えると不安になってくる。
普通の仮想敵を倒すだけなら何の問題もない。しかし0Pヴィランは、そもそも「逃げること」を前提とした試験用ギミックだった。それを天之助は純粋な好奇心から《雷落槍》で機能停止させている。
教師側からすれば、実力を評価する以前に「何でこいつは倒す必要のないものまで壊してるんだ」と呆れられていても不思議ではない。
法「……落ちてたら笑えないな」
そんな最悪の想像をしているうちに、胃の辺りが妙に重くなってきた。
背後から足音が近付き、母さんが玄関へ顔を出す。
母「天くん、まだそこにいるの?」
法「うん」
はあ「朝からずっと待ってるじゃない。そんなに玄関を見張ってても、郵便屋さんが早く来てくれるわけじゃないわよ?」
法「いやぁ…それは分かってるんだけどさぁ……」
天之助は困ったように頭を掻く。
法「こういうのって、結果を見るまで安心できなくない?」
母「それはそうだけど、天くんはちゃんと頑張ったでしょ?」
母は穏やかに笑いながら、天之助の肩を軽く叩いた。
母「試験の日だって帰ってきた時に『出来ることは全部やった』って言ってたじゃない。だったら、後は自分を信じて待てばいいのよ」
法「自分を信じる、かぁ……」
母の言っていることは分かる。
十年間、何もせず過ごしてきたわけではない。勉強も個性の修行も身体作りも、自分なりに可能な限り積み重ねてきたつもりだ。
それでも。
法「ん。……ちょっとトイレ行ってくる」
母「あら?」
法「腹が落ち着かん」
結局、精神論では生理現象に勝てなかった。天之助は玄関から離れ、そのまま廊下を早足で進んだ。
数分後。
法「はぁ……」
用を済ませて手を洗いながら、鏡に映った自分を見る。
法「緊張し過ぎだろ、俺」
前世を含めればそれなりの精神年齢になっているはずなのだが、こういうところは年齢など大して関係ないらしい。
合格しているのか。
落ちているのか。
その結果一つで、今後の三年間どころかヒーローになるまでの道筋そのものが大きく変わる。
法「早く戻ろ」
いつまでも洗面所にいても仕方がない。そう思って玄関へ戻ると、何故か母が一通の封筒を手にしていた。
母「あ、天くん! ちょうど良かったわ」
法「え?その手に持ってるのって、まさか…」
母「今届いたのよ。雄英高校から」
法「…………」
数秒間、封筒を見つめる。
次に母を見る。
もう一度封筒を見る。
法「俺がトイレ行ってる間に!?」
母「ええ」
法「タイミング悪っ!」
よりによって、朝からずっと玄関で待っていたが離れた数分だけを狙ったように届くとは。
法「できれば俺が直接受け取りたかったのに……」
母「そこ重要なの?」
法「何となく!」
母さんが苦笑する。まあ、届いたものは仕方がない。むしろここからが本番だ。
法「よし……開けよう」
天之助達はそのままリビングへ移動した。
テーブルの上へ封筒を置き、慎重に中身を取り出していく。入っていたのは入学関係の書類と思われる紙が数枚。
そしてもう一つ。
法「……これだな」
手のひらより少し大きい程度の薄型端末が入っていた。原作の記憶から、これが合否通知を再生する端末なのは知っている。とはいえ、自分宛てに届いたものを実際に手にすると妙な緊張感がある。
母「これを起動すれば結果が分かるの?」
法「多分ね」
母「押してみたら?」
法「……母さん、軽く言うねぇ」
指先を端末のスイッチへ添える。そこで一瞬だけ躊躇するが、いつまでも眺めているわけにはいかない。
法「えい」
意を決して起動した。端末の表面が明るくなり、立体映像が空中へ投影される。そこへ映し出されたのは――。
『やあ、法雨天之助君!』
法「お」
『鼠なのか、犬なのか、それとも熊なのか。色々と言われる僕の正体は――雄英高校校長、根津さ!』
母「…………っ!」
息を呑んだのは天之助ではなく、隣にいた母だった。次の瞬間、天之助の背後へ素早く移動する。
法「…母さん?」
母「天くん……ちょっと前に立って」
法「何で?」
母「見たくないの」
法「校長先生だよ?」
母「ネズミはネズミでしょう!?」
そうだった。母は昔から鼠が大の苦手である。可愛らしくデフォルメされたキャラクターでも嫌がるくらいなので、人語を話しスーツを着た根津校長でも駄目らしい。
法「いや、でも根津校長は鼠なのか犬なのか熊なのか本人も曖昧な――」
母「鼠に見える!」
法「あ、はい」
天之助は素直に母の視界を遮る位置へ移動した。
何とも締まらない状態になってしまったが、映像の根津校長は当然こちらの事情など知らず話を続ける。
根『では、早速君の試験結果について伝えよう』
さっきまで笑っていた天之助の表情が自然と引き締まる。
根『まず筆記試験だが――全五科目、満点』
法「……よし」
拳を小さく握る。勉強に関してはかなり自信があったので驚きこそしないが、それでも努力が数字として評価されるのは素直に嬉しい。
根『そして実技試験。君のヴィランポイントは百二十ポイント』
「百二十……」
思ったより取っていた。試験中は倒した数を逐一数えていなかったので、正確な点数までは把握していなかった。
法『ただし、雄英の実技試験は敵を破壊する能力だけを評価するものではない。君は試験中、負傷した複数の受験生を安全な場所へ移動させ、その場で治療まで行っている。そして最後には巨大ギミックを単独で停止させ、周辺にいた受験生への危険も排除した』
画面へ、試験中の映像が次々と映し出される。足を負傷した受験生へ駆け寄り、《雨冠》で傷を治療し、そして0Pヴィランへ《雷落槍》を叩き込む天之助が映っていた。こうして第三者視点で見ると、我ながら随分好き放題やっている。
根『以上を審査した結果、君には救助活動ポイント九十点が与えられた』
法「九十!?」
流石に驚いた。そして戦闘点と合わせれば――。
根『合計二百十ポイント!今年度雄英高校ヒーロー科一般入試――主席合格だ! おめでとう、法雨天之助君!』
法「…………」
根津校長が楽しそうに笑う中、一瞬だけ頭が真っ白になる。
合格。
それだけでも十分嬉しいと思っていたがそれも主席。
二百十ポイント。
自分が想像していた以上の結果に気付けば立ち上がっていた。
法「ぃよっしゃああああ!!」
両腕を思い切り上げる。
雄英へ行ける。十年間目標にしてきた場所へ、正式に入学できる。
母「やったじゃない、天くん!」
背後から母が嬉しんで抱きついてくる。
母「しかも主席でしょ!? 凄いじゃない!」
法「うん、ありがとう!」
母「速くお父さんにも連絡しなくちゃ!」
母は相変わらず天之助を盾にして根津校長の映像から顔を隠しながら、片手で携帯端末を取り出した。
法「器用だな……」
天之助が苦笑しているうちに父さんへ繋がったらしい。
母「もしもし? あなた? 天くん、受かったわよ!えぇ!それだけじゃないの。主席だって!」
直後。
父『何ぃぃぃぃ!?』
端末から父の大声が響いた。勿論スピーカー設定ではない。普通に通話しているだけなのに、天之助の位置まで聞こえてくる。
法「父さん声デカっ!」
父『やったな天之助! 凄いじゃないか! 主席だぞ主席!』
法「う、うん。ありがとう!」
父『今日は早く帰るからな!』
法「…職場の人びっくりしてるだろうな……」
簡単に想像できる。突然職場で叫び出した父を、周囲の人達が何事かと見ていることだろう。そして自慢するだろう。そうして家族全員が合格の喜びに沸いていたところで、映像の根津校長が再び口を開いた。
根『それと、法雨君。君にはもう一つ伝えておきたいことがある』
法「ん?」
天之助は改めて端末へ向き直る。
根『今年の試験では、君と次席の受験生との間にかなり大きな得点差が生じた。そして戦闘能力だけでなく、救助、判断力、筆記成績まで含めて教師陣で協議した結果――君へ一つ提案することになった』
法「提案?」
何だろう。原作にはなかった流れだ。少なくとも天之助の記憶では、一般入試の合格者へこうした個別提案が行われる展開はない。
根『法雨天之助君。君を雄英高校ヒーロー科の特待生として迎えたい』
法「……特待生?」
その言葉に思わず聞き返す。
根津校長の映像は、用意された資料を表示しながら説明を続ける。
根『簡単に言えば、通常の合格者とは別枠で入学する特別待遇の生徒だね。もちろん、授業そのものに極端な差を設けるつもりはない。ただ、一定の条件下での設備利用や補助制度など、学校側からいくつかの優遇措置を受けることができる』
法「へぇ〜……」
正直、天之助もそこまでの評価を受けるとは思っていなかった。
根『本来、ヒーロー科一クラスの定員は二十名だ。しかし今回、君を特待生として別枠で受け入れるため、既存の合格者を一人削るようなことはしない』
法「なるほどねぇ」
そこでようやく理解する。つまり転生者としてこの世界へ入り込んだことで、本来存在した一枠を奪うのではなく、クラスそのものを一人増やしたということだ。
それなら天之助としても気が楽だった。自分が受かったせいで、本来雄英へ入るはずだった誰かが不合格になったのだとしたら、どうしても心のどこかへ引っ掛かりが残る。
根『それだけ君の将来性を、我々雄英高校が高く評価したということでもある』
根津校長の口調が少しだけ真面目になる。
根『強力な個性を持つ者は珍しくない。しかし力を持ちながら、自分の得点とは直接関係のない負傷者へ迷わず手を差し伸べることができる者は、決して全員ではない。君が試験で見せたものが、本当にヒーローとしての資質へ繋がっているのか。それをこれから三年間、僕達にも見せてほしい』
先ほどまで浮かれていた気持ちが、少しだけ引き締まる。評価された。それ自体は嬉しい。しかし同時に、それだけ期待されているということでもある。
入学試験で良い点数を取ったからといって、ヒーローになれたわけではない。
むしろスタート地点へ立つ資格を得ただけだ。
根『改めておめでとう、法雨天之助君。君は特待生として、雄英高校ヒーロー科への入学が正式に決定した。君のこれからの成長を期待しているよ!』
法「……はい。よろしくお願いします。」
録画映像なのは分かっている。それでも自然と返事をしていた。その後は入学式の日程や必要な持ち物、制服、校内規則などについて細かな説明が続き、全ての映像が終了する頃にはかなりの時間が経っていた。
母は端末の画面から根津校長が消えたことを慎重に確認してから、ようやく天之助の後ろから出てくる。
母「終わった?」
法「終わったよ」
母「もう校長先生映らない?」
法「多分ね」
母「良かったぁ……」
法「そこなの?」
息子の主席合格より鼠への警戒心の方が強いように見える。もっとも、数秒後にはすぐにいつもの笑顔へ戻った。
母「今日はお祝いね!天くんの好きな物、いっぱい作るから!」
法「お、マジで!?」
それは非常に嬉しい。その日の夕食は、文字通り食卓へ乗り切らないほど豪華になった。唐揚げ、ハンバーグ、魚料理、サラダ、スープ、炊き込みご飯、それにデザートまで用意され、帰宅した父まで途中から調子に乗って追加の料理を買ってきたため、最終的にはちょっとした宴会のようになっていた。
父「天之助、改めておめでとう!」
法「ありがとう、父さん」
父「主席だぞ! 凄いなぁ!」
法「もう何回言うんだよ」
父「何回でも言うさ!」
父は完全に上機嫌であり、母さんも嬉しそうに笑っている。前世では経験できなかった光景だ。自分のことを、こうして心から喜んでくれる家族がいる。そのことが、主席という数字より何倍も嬉しかった。
法「…頑張って良かったな」
母「何か言った?」
法「いや、何でもない」
今はただ、この時間を楽しもう。雄英へ入れば、これまでとは比較にならないほど忙しい日々が始まる。原作を知っている天之助には、それが単なる学生生活では終わらないことも分かっている。
敵連合。
USJ。
ステイン。
林間合宿。
神野。
そして、その先にも数え切れないほどの事件が待っている。しかし、それはまだ少し先の話だ。その晩だけは余計な未来を考えず、家族三人で雄英合格を祝った。
◇
そして迎えた、雄英高校への初登校日。
法「……よし」
鏡の前で制服の襟を整える。グレーを基調とした雄英高校指定の制服。前世では画面越しに何度も見た服だが、実際に自分が袖を通していると妙な感覚がある。
母「似合ってるじゃない」
部屋の入口から母さんが嬉しそうに顔を出す。
法「そう?」
母「うん。写真撮っていい?」
法「今?まあいいけど」
母はすぐさま携帯端末を取り出し、何枚か写真を撮り始めた。
法「五枚くらいでいいって」
母「でもせっかくの初登校なのよ?」
法「何十枚撮る気?」
母「後で選ぶの」
止めても無駄そうなので諦める。父まで横から加わり始め、最終的には玄関前で家族写真まで撮る羽目になった。
母「持ち物は確認した?」
法「したよ」
母「教科書は?」
法「入ってる」
母「筆記用具は?」
法「ある」
母「ハンカチ」
法「ある」
母「ティッシュ」
法「ある」
母「お弁当」
法「今日は要らないよ?」
母「あ、そうだったわね」
母さんは完全に息子の初登校へ浮かれている。天之助は苦笑しながら靴を履き、背負った鞄を確認する。
《雨傘剣天雨》も忘れていない。普段なら目立つため専用のケースへ収納しているが、雄英には持ち込み許可を申請済みだ。
法「じゃあ、行ってきます」
母「ええ、行ってらっしゃい。気を付けてね」
父「しっかり勉強してこいよ!」
法「父さんはもう少し高校生の息子を信用してくれ」
父「何歳になっても息子は息子だ!」
法「はいはい」
二人へ手を振り、家を出る。朝の空気は少し冷たい。けれど不思議と気分は軽かった。
いよいよ始まる。雄英高校での生活が。
これから先、原作で知っている以上の苦難にぶつかる可能性もあるだろう。
法雨天之助という本来存在しなかった人間がいる以上、物語が全く同じように進む保証などどこにもない。
それでも今は、不安より楽しみの方が大きい。
法「まあ、何とかなるだろ」
いつもの調子で歩き続けた。
◇
法「……改めて見ると、やっぱりデカいな」
雄英高校へ到着し、天之助は巨大な校舎を見上げる。入試の時にも来ているので初見ではない。それでもこれから毎日ここへ通うのだと思うと、見え方が少し違った。校門を潜れば、同じ制服を着た生徒達が次々と校舎へ向かっている。
皆それぞれ会話をしたり、スマートフォンを確認したり、緊張した顔で案内表示を見たりしていた。
法「俺は……1-Aだったな」
校内案内を確認しながら廊下を進む。そして目的の教室を見つけたところで、足が止まった。
法「……相変わらず扉デカいな。バリアフリーなんだろうけど。」
目の前にある1-Aの扉は、一般的な教室の入口とは比較にならない大きさだった。様々な体格や個性を持つ生徒へ対応するための設計なのだろう。
合理的ではある。合理的なのだが。
法「これ、初見だと教室の扉に見えないよな」
天之助はしばらく扉を見上げた後、腕時計を確認した。
まだ中へ入るわけにはいかない。事前に学校側から、天之助だけ少し遅れて教室へ入るよう指示されているからだ。
本来一クラス二十人のところへ、特待生として追加された二十一人目。その事情を担任から先に説明しておきたいらしい。
法「……これ地味に緊張するな」
初日からクラス全員の視線を浴びながら後入りすることになる。普通に最初から座らせてくれた方が気楽なのだが、学校側の判断なら仕方がない。
扉の横で待っていると、中から複数の話し声が聞こえてきた。随分賑やかだ。前世の記憶通りなら、もう飯田と爆豪辺りでひと悶着起きている頃かもしれない。
やがて騒がしかった教室内の声が少し収まる。続いて、気怠そうな男の声が聞こえた。
相「……まず最初に一つ説明しておく」
来た。
相澤消太。
この一年A組を担当する担任教師だ。
相「本来、ヒーロー科は一クラス二十名だ。ただ今年は少し事情が違う」
教室内が少しざわつく。
相「入学試験で特例扱いになった生徒が一人いる。学校側の判断で既存の合格者を削らず、特待生として追加した結果、このクラスだけ二十一人になった」
ざわめきが更に大きくなった。そりゃそうなる。入学初日にいきなり「お前達とは別枠の特待生がいる」と言われれば気になるのが普通だ。
相「そういう訳で……法雨。入ってこい」
法「…はい」
遂に呼ばれた。一度だけ深呼吸する。大丈夫だ。試験で巨大ロボへ突っ込むより遥かに安全だ。なのに何故か、こちらの方が緊張する。
法「スゥーーー…よし。」
意を決して扉を開いた。
法「失礼します」
教室へ一歩入る。
直後。
二十人分の視線が一斉にこちらへ向いた。
「「「「「…………」」」」」
予想していた。
予想していたはずなのだが。
法(うわ、めっちゃ見られてる)
心の中で呟く。知っている顔が並んでいる。
緑谷出久。
爆豪勝己。
麗日お茶子。
飯田天哉。
轟焦凍。
八百万百。
切島鋭児郎。
蛙吹梅雨。
そして他の1-Aメンバー。
前世では物語の登場人物として知っていた者達が、今は現実の人間として俺を見ている。
妙な感覚だった。相澤先生も眠たそうな目で俺を見る。
「こいつがさっき話した二十一人目だ。法雨、適当に自己紹介しろ」
法「適当にって……」
本当にこの人らしい。天之助は教壇付近まで進み、改めてクラス全体へ向き直った。
法「えー……初めまして」
一瞬だけ言葉を考える。変に格好をつける必要もない。天之助は軽く下げる。
法「法雨天之助です。学校側の事情で特待生扱いになったらしくて、このクラスだけ二十一人になったみたいです。俺自身は普通に皆と同じ一年生として過ごすつもりなんで、あんまり特別扱いせず接してもらえると助かります」
そこで少し笑う。
法「これから三年間、よろしくお願いします」
頭を下げると、教室内から様々な声が返ってきた。
「よろしく!」
「よろしくねー!」
「よろしくお願いします」
「特待生って凄くない?」
「入試何点だったんだ?」
「チッ女子じゃねーのかよ!」
当然ながら興味津々らしい。最後のは明らかに違うが。特に何人かは、今にも質問を投げ掛けてきそうな顔をしている。飯田などは既に手を上げる準備までしていた。相澤先生が先に遮った。
相「質問は後にしろ。時間が勿体ない」
言いながら、大きな袋を床へ置く。袋から取り出されたのは雄英高校指定の体操服だった。
相「法雨も含めて全員、これに着替えてグラウンドへ出ろ。」
そう言われクラスメイト達がざわつく。その中天之助だけは何が始まるのか知っていた。
法(やっぱり来たか)
個性把握テスト。
相澤消太という教師を象徴する、雄英高校一年A組最初の授業。そして原作では、最下位になった者を除籍すると宣言してクラス全員を震え上がらせた試験でもある。
相「説明はグラウンドでする。さっさと動け」
それだけ言い残し、相澤先生は教室から出ていった。
法「……早いな」
天之助は渡された体操服を見る。
これまで十年間、自分の個性を鍛えてきた。入試ではある程度成果を出せた。
しかし、今日からはもう受験生ではない。雄英高校ヒーロー科の生徒だ。学校側から主席、そして特待生として評価された以上、最初の授業から腑抜けた結果を出すわけにはいかない。
法「んじゃ、全力で行くか」
もっとも、問題が一つある。天之助の《雨冠》には、十年間の修行で増やしてきた能力がかなり多い。
雷化。
水圧。
風。
雨。
治癒。
その他にも、個性把握テストへ応用できそうな使い方はいくつもある。
法「ん〜……どれ使おう」
全力を出す。それ自体は構わない。しかし下手な使い方をすれば、学校の設備を初日から壊しかねない。
法「ま、加減も実力のうちってことで」
そう自分へ言い聞かせながら、俺は他の生徒達と共に更衣室へ向かった。こうして法雨天之助の雄英高校での最初の一日が、本格的に幕を開けた。
(;´∀`)