「成田……博幸!?」
僕の後ろから声をかけたのは、他でもない成田博幸。
しかし、その姿は見たことのない姿――暗い色のコートに身を包んだ、存在を誰にも感じさせないほど静かで、そして狩人のように鋭い目をもった成田博幸。
この雰囲気……でも彼はアサシンじゃないはずだ。アサシンはこの前会ったときは、シルクハットを被ったスーツ姿だった。それにこちらが持っているのは銃ではなく、弓。
「アーチャー……!?」
「63の弓兵ですが、よろしくお願いします」
そう呟くと、『アーチャー』は小さく会釈をしてみせた。
アーチャークラスの成田……カメラはアーチャーじゃないのか。いや、同じクラスのサーヴァントが同時に二騎存在して――。
「あれま。わたしが頑張るからって言ってたんですけど……」
「いえ。私はあくまでサーヴァント、主の危機に参ぜずして、何が下僕でありませか?」
「……まったくもう」
カメラが、自身の右手で左手をそっと触れた。そして次の瞬間、そこにぼんやりと浮かび上がったのは、デジタルカメラのような形をした赤い令呪――
「まさか――マスターだったのか!?」
「そうです、わたしはアーチャー陣営のマスター、カメラ。こういう能力を、人間のマスターとして披露するのは流石にまずいかなとも思ったので、サーヴァントのフリをしてました」
カメラが嘘について少し申し訳なさそうに頬をかく。
あんな身体能力がどこから……バーサーカーを序盤は圧倒してたのもそうだし、なんなら足がへし折れても一瞬で治癒してたレベルだ。僕の知らない魔術とでも言われればそうかもしれないが。
そして、カメラのサーヴァントである本物のアーチャーが、毅然とした態度でヴァーサーカーへ向かい合う。結界はもう壊れる。
「話は聞いていました。私が、この霊基そのものを『
「自爆特攻する気かオマエ……! おいカメラ、どうなんだ! いいのかよ」
「……ふぅ。まあ、最善策がそれですね。わたしからも令呪三画全部を費やして、支援しましょう。本当にいいですか、アーチャー?」
「お願いできませか」
では、とカメラがその腕を掲げた。
「わたし、カメラがここで令呪により命じます――敵を吹き飛ばしてください、アーチャー!!」
「応えましょう」
一気にすべての令呪が風に吹かれるように消え去ったのと、バーサーカーが結界をすべて砕いたのは同時だった。
そしてアーチャーが蒼白い炎を矢へ灯し、そしてそれは弓へ、そしてアーチャー自身にさえ広がる。あまりに非現実的で美しく、そして花弁が落ち去るかのように儚い炎。
「宝具……『|遍く聞こゆ、■月の音』――!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!」
その矢はただ無垢な力の奔流となり、その生命すらも薪として巻き込み放たれる。ただ、バーサーカーを穿ち貫くためだけに。
「では、さようなら――マスター」
「ええ」
そして、周囲をただ穏やかで、そして眩しい烈光が包みこんだ――。