――一方、時を同じくして。
「っ……!」
ライダーのマスター――タウは、ライダーへ降りかかる圧倒的なまでの未知なる攻撃の雨を前に、怒りとも恐怖ともつかない声を漏らした。
ライダーが交戦しているのは、キャスター。白い髪に白いスーツを着込んだ、上から下まですべて純白のマスター――クオンが従える、対照的な黒衣の魔法使いのサーヴァント。
その攻撃自体はいい。キャスターの仕掛けてくる攻撃の全貌が掴めないだけだ。
この分からない状況でも、相手の攻撃自体は命中したとて痛くはない。
だが――キャスターが何をやっているのか、まったく掴めない。
そして命中するのだ。因果を乗り換え、あらゆる攻撃をすり抜けるはずのライダーに。
「さて、そろそろ戯れはここまでと致しましょう、主殿」
「そうだね。ボクが悪いけど少し遊びすぎたかな? そっちもじれったいんじゃないかい、ライダーと
「……やはり、本気ではありませんでしたか」
ライダーがサングラスの位置を整える。
「勿論です。本気であれば、こんなままごとのような攻撃は行いませんから」
その手に握っている大きな杖を軽く振る。周囲にいくつも存在していたコミカルなオブジェクトがふわりと消え去った。
一昔前の3Dレンダリングのような、少し安っぽい質感の星型、ハート型などさまざまなオブジェクト。先程からキャスターはこれを無数に召喚し、ライダーへの攻撃を行っていた。
「ちなみにこれも主殿の趣味ですよ。手遊びに簡素なオブジェを作っていたところたいそうお気に召したようで」
「ま、うちに飾らせてもらったのはもうちょっとキレイだけどね」
そんな戦場に似つかわしくない会話をそばに、タウは分析を試みる。
あの安っぽいオブジェが雨あられとぶつけられるだけなら、まだいい。しかしどういうわけか、オブジェの攻撃は『巡り廻る■重の宿命』をもってしても回避不可能。
ライダーの体へぶつからないという因果に乗り換えたはずなのに、当たる。バーサーカーの時には『乗り換えられる因果をそもそも潰される』ことで回避ができなかったのに対し、こちらは『乗り換えたはずなのに当たる』。
ダメージはスポンジを投げつけられた程度でしかなかったので、当たってもまあ痛くはない。だが、理解ができない。これが一番、恐ろしい。
そしてたった今、キャスターが宣言したのは戯れの終わり。つまり――。
「ライダー! これ以上は――」
「逃がすと思うかね? 真名解放――『
撤退を図ろうとしたライダー。だが、それは突如として周囲の世界を絵の具のように塗りつぶした、引き込まれるように果てしない星空に阻まれる。
いつのまにかクオンの手には、黒い小さな箱のようなものが浮かんでいた。
「ふ、少し街を探してみたら見つけた骨董品さ。『シールダー』クラスの成田の宝具らしい」
「何をっ……!?」
「なあに、単純な話さ。脱出が不可能な空間だよ。まあ一応、ボクの持ってるコレを壊せば脱出は可能だが――」
動こうとしたライダーを阻むのは、キャスター。
「主殿はこの戦いを所望です。ですから、お付き合いお願いできませか?」
「……」
「では一曲、失礼――『綴り逝く白亜の鐘、そして■』」
暗い夜空の上から、滲み出るように白い無数の文字が現れる。
そしてそれはかすかな旋律を紡ぎながら、静かな雨のように降りはじめ……。
「っまずい、ライダー! この宝具の効果は――!!」
「――こ……れ、は――あが――っ」
滲み出た白い文字に触れた瞬間、ライダーが意味をなさない嗚咽を漏らす。
「ぐ――ぉあ――ま――だ……!」
「おや、予想以上のタフネスだ! 生憎これ以上の精神拘束は持ち合わせてないし、なら正面から戦うしかないな!」
「ええ」
キャスターが杖を向け、ライダーは震える腕を押さえつけてハンドルを握る。因果の乗り換えは、なんとか。
だが、次に放たれた攻撃はやはり――
「ッ――!」
定まったはずの因果を無視して、ライダーの体を貫いたのだった。
――ライダー陣営が脱落。
――残るはセイバー、アサシン、キャスターの三騎となった。