『いちご100% ~名脇役は青春の主役になれるか~』 作:Gussan0
AIでちょっと試験的に書いてみたっていう。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
放課後。
運動部の掛け声が遠くから聞こえてくる中、文芸部の部室には紙をめくる音だけが静かに響いていた。
俺――
もっとも、うちの文芸部が毎日全員揃って熱心に文学について語り合うような部活かと言われれば、答えは否だ。各々が本を読んだり、何かを書いたり。たまに感想を話したり。基本的にはそんな緩い部活だった。
俺としても、そのくらいがちょうどいい。
ページを一枚めくる。
そのとき――カツン、と小さな音がした。
視線は本から動かさない。音源は右斜め前。机の脚に何かがぶつかり、床を転がる。重量は軽い。音からして金属ではない。
おそらく――。
「東城」
「……え?」
俺の声に、少し離れた机に座っていた女子生徒が顔を上げた。
長い黒髪。眼鏡。そして、前髪の下からこちらを覗く大人しそうな瞳。
東城綾。同じクラスであり、同じ文芸部に所属している女子だ。
「消しゴム。机の下」
「え?」
「右足の近く」
東城が足元を見る。
「あ……」
机の下に転がっていた消しゴムを拾い上げた。
「ありがとう、境野君」
「どういたしまして」
それだけ答えて、本へ視線を戻す。
しばらくして。
「……よく分かったね」
「ん?」
「消しゴム」
「ああ。落ちた音がしたから」
「音……?」
「机の脚に一回当たってから、そっちに転がった」
「……そこまで分かるの?」
「慣れればな」
「慣れ……」
東城が困ったような顔をしている。
まあ、普通は慣れないか。俺は内心で苦笑した。
「それより」
「え?」
「随分集中してたな」
「……!」
東城の肩が目に見えて跳ねた。分かりやすい。
さっきから彼女が向かっているのは教科書でもなければ、読書用の本でもない。一冊のノートだ。
俺が部室に来てから、すでに何ページも文字を書いている。途中で何度も手を止め、考え込み、また書き始める。時折、数行前まで戻って文章を消す。
読書感想文でも宿題でもない。以前から薄々気づいていた。
「東城って、小説書いてるだろ」
「――っ!?」
ガタン!
今度は消しゴムどころではなく、東城自身が机を揺らした。
「な、な、なんで……!?」
「声でかいって」
「ご、ごめんなさい……!」
反射的に謝ってから、東城は慌ててノートを胸元に抱え込む。そんな必死に隠さなくても。
「安心しろ。中身は見てない」
「ほ、本当に……?」
「人の書いたものを勝手に読むほど趣味悪くないよ」
「じゃあ、どうして……」
「文芸部で毎日のようにノートへ文章書いて、途中で何度も読み返して、悩んでは書き直してる。そりゃ何か書いてるとは思うだろ」
「…………」
東城はしばらく黙っていた。やがて、おそるおそるノートから顔を出す。
「……変じゃない?」
「何が?」
「小説を書くの」
「文芸部員が?」
「そうじゃなくて……私なんかが……」
なるほど。そっちか。
俺はようやく本から顔を上げた。東城と目が合う。すぐに彼女の視線が僅かに下へ逸れた。
「別にいいだろ」
「え……?」
「小説書くのに資格なんかいらないし」
「…………」
「好きだから書いてるんだろ?」
「……うん」
「だったら十分じゃないか」
そう言って、俺は再び本へ目を落とした。
別に慰めたつもりはない。本当にそう思っただけだ。
芝居だってそうだった。最初から上手い奴なんていない。やって、失敗して、悩んで、またやって。それを何度も繰り返す。
結局、物を作る人間にできることなんて、それだけだ。
「……境野君」
「ん?」
「もし……」
東城が何かを言いかける。だが、止まった。
「いや……なんでもない」
「そうか」
聞き返しはしなかった。言いたくなったら言えばいい。
人間、話したくないことまで無理に聞き出されるのは面倒なものだ。ましてや創作物なんて、本人にとっては裸を見られるより恥ずかしいことだってある。
俺にも覚えがある。台本を初めて書いたときなんて、知り合いの脚本家に見せるまで三日悩んだ。
……まあ、それは随分と昔の話だが。
いや、正確には――前の人生での話だ。
境野新、十五歳。中学三年生。
それが今の俺だ。
そして俺には、この十五年とは別に、もう一人分の人生の記憶がある。
前世。そんな胡散臭い単語を使うしかない。
前の俺は、芸能界という場所で長く飯を食っていた。俳優、舞台役者、声優、ナレーション。頼まれれば大抵なんでもやった。
主演を務めたことがないわけではない。だが世間から評価されたのは、どちらかといえば脇役としてだった。
主役の隣にいる男。犯人を追い詰める刑事の上司。主人公を鍛える師匠。途中で死ぬ親父。裏切る仲間。頼れる隣人。ラスボスの右腕。
そんな役を何十年と演じ続けた。
ありがたいことに『あの人が脇にいると作品が締まる』なんて言ってもらえる程度には評価された。そして、それなりに長い人生を送った末に死んだ。
次に気づいたときには赤ん坊――なんて劇的なものでもない。
俺が前世を思い出したのは八歳の頃だ。それまで境野新として普通に生きていた俺の中へ、ある日突然、何十年分もの記憶が流れ込んできた。
あのときは本気で死ぬかと思った。
いや、一度死んでるんだけどな。
そしてもう一つ。
前世の記憶を取り戻してしばらく経った頃、俺はこの世界について奇妙なことに気づいた。
きっかけは、本当に些細なものだった。
同じ学校に――東城綾という少女がいた。
最初は偶然だと思った。珍しい名字ではあるが、あり得ないほどじゃない。
ところが、その後。
真中淳平。
西野つかさ。
そんな名前まで耳に入った。
ここまで揃えば、さすがに偶然では済ませられない。
前世で読んだことのある漫画――『いちご100%』。
どうやら俺は、その世界に生まれ直したらしい。
……とはいえ。
だからどうした、という話でもある。
目の前にいる東城は紙とインクで描かれたキャラクターじゃない。話せば返事をする。笑う。困る。恥ずかしがる。そして、自分に自信がない。
俺にとっては同じクラスと部活に所属している、一人の女の子だ。
だから原作を知っているからといって、彼女たちの人生へ好き勝手に口を出すつもりはなかった。
そもそも、もう一度、中学生相手に青春の恋愛劇をやれと言われても困る。
肉体年齢十五歳。
精神年齢については――考えるのをやめよう。虚しくなる。
「境野君?」
「ん?」
「……なんか、すごく疲れた顔してるけど」
「人生について考えてた」
「じ、人生……?」
「気にするな」
「……?」
東城がますます不思議そうな顔をした。その顔がおかしくて、少しだけ笑う。
「そろそろ帰るか」
「あ……もうこんな時間」
東城も時計を見る。ノートを鞄へ大切そうにしまい、立ち上がった。
「じゃあ、また明日」
「ああ。また明日、東城」
「うん」
東城は小さく笑って部室を出ていった。
俺も少し遅れて本を鞄へしまう。窓を閉め、部室の鍵を確認する。忘れ物――なし。
廊下へ出た。
そして、数歩歩いたところで足が止まった。
「…………」
風。
窓の隙間から吹き込む空気。遠くから響く運動部の声。そして、階段を駆け上がる足音。
一人。男子。かなり急いでいる。
その足音には聞き覚えがあった。
「真中……?」
真中淳平。同じ学年の男子だ。
何をそんなに急いで――。
そこまで考えたところで。
カラン。
微かな音。
上。屋上方向。
何か軽い物が落ちた音だった。
「…………」
屋上。
真中淳平。
そして東城綾。
頭の中で三つの情報が繋がる。忘れていた記憶が、一気に浮かび上がった。
「ああ……」
そういうことか。
俺は階段の先を見上げた。
追いかけることはしない。
あそこから始まるのは、俺の知る限り――真中淳平の物語だ。
だったら俺が割って入る理由はない。
静かに鞄を肩へ掛け直す。
「……始まったか」
俺はまだ知らなかった。
このとき、自分が知っている物語を、自分とは関係のないものだと思っていた。
自分はただ、その傍らにいるだけなのだと。
前の人生と同じように。
誰かの物語を支える――脇役なのだと。
そう思っていた。
ちょっとAI使ってみたかったので書いてみました。
評判良ければ続けてみるかも?