『いちご100% ~名脇役は青春の主役になれるか~』   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第十九話 それぞれの放課後

 翌日の昼休み。

 

「境野君、行こ」

 

「ああ」

 

 四限目が終わり、西野と一緒に四組を出る。

 

 入学してまだそれほど経っていないが、昼休みの行動はすでに決まりつつあった。

 

 まず三組へ向かう。

 

「小宮山」

 

「おう」

 

 教室の入口で声をかけると、小宮山が弁当を持って出てきた。そのまま三人で七組へ向かい、大草を拾う。

 

「次は八組か」

 

「毎日ちょっとした移動だよね」

 

 西野が笑う。

 

「クラスが綺麗に分かれたからな」

 

「俺だけ三組だしな」

 

「俺も七組だぞ」

 

 そんな話をしながら八組へ向かう。

 

 教室を覗くと、真中は自分の席にいた。

 

「真中」

 

「お、来た!」

 

 こちらに気づき、真中が弁当を持って立ち上がる。

 

「東城、行こうぜ」

 

「うん」

 

 東城も席を立つ。

 

 少し離れたところにいた北大路が、そんな真中をちらりと見た。

 

「何だよ、さつき」

 

「別に。あんた、昼休みになると元気ね」

 

「どういう意味だよ!」

 

「そのままの意味よ」

 

「お前なあ!」

 

「真中、置いてくぞ」

 

「待てって!」

 

 相変わらず賑やかな二人を横目に、六人で八組を出る。

 

 そのまま、いつもの中庭へ向かった。

 

 木陰のベンチ周辺に着き、それぞれ弁当を広げる。

 

「そういえば境野君」

 

 西野が俺を見る。

 

「今日、忘れてないよね?」

 

「調理部だろ」

 

「よし」

 

「信用ないな、俺」

 

「確認しただけ」

 

 西野が笑う。

 

 すると向かいに座っていた真中が箸を止めた。

 

「本当に行くんだな」

 

「昨日言ってただろ」

 

「そうだけどさ……二人で?」

 

「そうだけど?」

 

 西野が首を傾げる。

 

「何、淳平君も来たいの?」

 

「えっ!?いや、俺は……」

 

「真中は映像部だろ」

 

「そうだよ!」

 

 俺が言うと、真中の顔が一気に明るくなった。

 

「俺は映像部!」

 

「昨日からそればっかりだな」

 

「当たり前だろ!高校入ったら絶対入りたいって思ってたんだから!」

 

「もう見に行ったの?」

 

 東城が尋ねる。

 

「いや、まだ」

 

「場所は?」

 

「…………」

 

 真中が止まる。

 

「知らないのか?」

 

「今日、黒川先生に聞くんだよ!」

 

「最初から聞いとけよ」

 

「うるさい!」

 

 西野が吹き出し、大草も笑う。

 

「でも真中君、ずっと映画撮りたいって言ってたもんね」

 

 東城がそう言うと、真中がすぐに頷いた。

 

「おう!」

 

「いい部活だといいね」

 

「ああ!」

 

 分かりやすく嬉しそうだ。

 

「東城は今日は文芸部?」

 

 大草が聞く。

 

「今日はないよ。活動は週に二回くらいだって」

 

「毎日じゃないんだな」

 

「うん。家でも書けるから」

 

 東城はそう言って少し笑った。

 

「境野は今日調理部見に行ったら、二つ掛け持ちか?」

 

「まだ入るとは決めてない」

 

「境野君なら入りそうだけど」

 

「なんで西野が決めるんだよ」

 

「だって興味あるんでしょ?」

 

「まあな」

 

「ほら」

 

 何が「ほら」なんだ。

 

「大草は今日もサッカー?」

 

 真中が聞く。

 

「ああ。放課後は練習」

 

「小宮山は?」

 

「まだ決めてねえ」

 

「じゃあ俺と映像部――」

 

「行かねえ」

 

「まだ最後まで言ってねえだろ!」

 

 笑い声が木陰に広がる。

 

 同じ高校へ入った六人。

 

 昼になればこうして集まるが、放課後に向かう場所は少しずつ違い始めていた。

 

 放課後。

 

 大草はそのままサッカー部の練習へ向かい、東城も今日は文芸部の活動がないので帰ることになった。

 

「じゃあね、境野君。西野さん」

 

「また明日ね、東城さん」

 

「ああ、また明日」

 

「俺は適当に部活見て回ってくる」

 

 小宮山もそう言って別れる。

 

「じゃ、俺も行ってくる!」

 

 真中が勢いよく言った。

 

「映像部?」

 

 西野が聞く。

 

「おう。まず黒川先生に聞いてくる!」

 

「場所分かるといいね、淳平君」

 

「任せろ!」

 

「何を任せるんだよ」

 

「細かいことはいいんだよ!」

 

 真中はそう言って校舎の方へ走っていった。

 

「じゃあ私たちも行こっか」

 

「だな」

 

 俺と西野も調理部の活動場所へ向かう。

 

「境野君って、普段どんな料理作るの?」

 

 歩きながら、西野が聞いてくる。

 

「普通の家庭料理。和食が多いかな」

 

「やっぱりおばあちゃんに教わったの?」

 

「最初はな。あとは自分で覚えた」

 

「一人暮らしだもんね」

 

「毎日外で食べるわけにもいかないし」

 

「でも毎日ちゃんと作ってるの、すごいと思う」

 

「慣れだよ」

 

「そういうものかなあ」

 

「西野は?」

 

「私?」

 

「料理するって言ってただろ」

 

「するよ。毎日じゃないけど」

 

「得意なのは?」

 

「得意ってほどじゃないけど……クッキーとか」

 

「へえ」

 

「今、意外って思ったでしょ」

 

「思ってない」

 

「絶対思った」

 

「思ってないって」

 

「顔に出てた」

 

 俺はそんなに顔に出る方だっただろうか。

 

「でも、お菓子作るのは結構好きかも」

 

「食べる方じゃなく?」

 

「境野君?」

 

「冗談」

 

「もう」

 

 西野が頬を膨らませる。

 

 だが、すぐに笑った。

 

「作ったものがちゃんと形になるの、楽しいんだよね」

 

「料理もそうじゃない?」

 

「そうなんだけど……ちょっと違うっていうか。ほら、お菓子って見た目もいろいろできるじゃん。クッキーなら形を変えたり、ケーキなら飾り付けたり」

 

「ああ」

 

「そういうの考えるの、楽しそうだなって」

 

「なるほど」

 

 味だけじゃなく、見た目も含めて作る。

 

 本人もまだはっきり分かっていないようだが、普通の料理より製菓の方に興味が向いているのかもしれない。

 

 そんな話をしているうちに、調理部の活動場所へ辿り着いた。

 

「ここだね」

 

「だな」

 

 中から甘い匂いが漂ってくる。

 

 それに気づいた瞬間、西野の表情が変わった。

 

「……なんか作ってる」

 

「みたいだな」

 

「入ろ、境野君」

 

「急に積極的になったな」

 

「いいから」

 

 今度は俺が引っ張られる形で、中へ入った。

 

「失礼します」

 

「失礼しまーす」

 

 中では何人かの上級生が調理台を囲んでいた。どうやら今日は焼き菓子を作っているらしい。

 

「見学?」

 

「はい。一年四組の西野つかさです」

 

「同じく四組の境野新です」

 

「二人とも調理に興味あるの?」

 

「私は……お菓子作りがちょっと」

 

「俺は普段から自炊してるので、家で作るのとは違うものを覚えられればと思って」

 

「一年生で自炊してるの?」

 

「一人暮らしなので」

 

「へえ。じゃあ結構できそうだね」

 

「普通ですよ」

 

 そう答えると、西野がこちらを見る。

 

「境野君の『普通』は信用しない方がいいですよ」

 

「お前までそれ言うの?」

 

「お前まで?」

 

「昨日、東城にも似たようなこと言われた」

 

「じゃあ二票だね」

 

「何の投票だよ」

 

 上級生が笑う。

 

「仲いいね、二人」

 

「同じクラスなので」

 

「中学も一緒だったんです」

 

 西野が続ける。

 

「今日はちょうど焼き菓子を作ってるんだけど、よかったら少しやってみる?」

 

「いいんですか?」

 

「もちろん」

 

「やります!」

 

 返事が早い。

 

「境野君もやるよね?」

 

「そのために来たようなもんだしな」

 

 エプロンを借り、手を洗う。

 

 活動は週に一、二回程度。作るものによって多少変わるらしい。

 

 文芸部との掛け持ちも問題なさそうだ。

 

 上級生から説明を受けながら作業へ加わる。

 

「境野君、やっぱり手際いいね」

 

「毎日やってるからな」

 

「本当にそれだけ?」

 

「それだけ」

 

「怪しい」

 

「何がだよ」

 

 俺が生地を扱っている横で、西野も教わりながら作業を進めている。

 

 最初こそ慎重だったが、すぐに慣れてきた。

 

「……こっちの方がいいかな」

 

「何が?」

 

「並べ方。ほら」

 

 西野が焼く前の生地の位置を少し変える。

 

「こっちの方が綺麗じゃない?」

 

「確かに」

 

「でしょ?」

 

 満足そうに笑う。

 

 昨日言っていたことを思い出す。

 

 味だけじゃない。

 

 形や見せ方を考えること自体が好きなのかもしれない。

 

 焼き上がった菓子が並べられると、西野は嬉しそうに眺めていた。

 

「楽しそうだな」

 

「楽しいよ」

 

 即答だった。

 

「境野君は?」

 

「俺も結構楽しい」

 

「お、素直」

 

「何だよ、それ」

 

 その後も上級生から活動内容を聞いた。

 

 普段の料理だけでなく、時期によっては菓子やパンを作ることもあるらしい。

 

 西野は特に製菓の話へ食いついていた。

 

「境野君」

 

「ん?」

 

「私、ここ入ろうかな」

 

「いいんじゃない?」

 

「境野君は?」

 

 少し考える。

 

 文芸部には入る。

 

 調理部も週一、二回程度なら掛け持ちは十分できる。それに、一人で料理するのとは違って、誰かと作るのも思っていた以上に面白かった。

 

「俺も入ろうかな」

 

「ほんと?」

 

「ああ」

 

 西野の顔がぱっと明るくなる。

 

「じゃあ一緒だね」

 

「同じクラスで、同じ部活か」

 

「境野君は文芸部もあるけどね」

 

「そっちもな」

 

「二つ掛け持ちかあ」

 

「活動日が重ならなきゃ問題ないだろ」

 

「忙しくなりそうだね」

 

「まあ、二つくらいなら」

 

 それくらいなら、どうとでもなる。

 

 そう思った。

 

________

______

____

 

 

 その頃、真中は職員室を訪れていた。

 

「失礼します」

 

 中を覗き、八組の担任を見つける。

 

「黒川先生」

 

「ん?」

 

「あの、ちょっと聞きたいんですけど」

 

「なんだ?」

 

「映像部って、どこにあるんですか?」

 

「映像部?」

 

 黒川先生が顔を上げる。

 

「ああ……以前はそんな部あったかもな」

 

「以前!?」

 

 思わぬ返事に、真中の声が裏返った。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!俺、映像部に入りたくて泉坂に来たようなもんなんですよ!」

 

「大げさだな、お前は」

 

「大げさじゃないですよ!」

 

「分かった分かった」

 

 黒川先生は軽く受け流すと、席を立った。

 

「来い」

 

「え?」

 

「知りたいんだろ?」

 

「あ、はい!」

 

 職員室を出ていく黒川先生を、真中が慌てて追いかける。

 

「先生、映像部の場所知ってるんですか?」

 

「まあな」

 

「じゃあ今もあるんですよね?」

 

「行けば分かる」

 

「何なんですか、その言い方……」

 

 黒川先生はそれ以上説明せず、そのまま廊下を歩いていく。

 

 やがて一つの部屋の前で足を止めた。

 

「ほら」

 

「ここですか?」

 

 真中が扉の横に掲げられた札を見る。

 

『コンピューターグラフィック部』

 

「…………」

 

 沈黙。

 

「先生」

 

「何だ?」

 

「ここ、映像部じゃないですよ」

 

「今はCG部だな」

 

「CG部!?」

 

 真中が黒川先生へ詰め寄る。

 

「映像部は!?」

 

「だから、名前が変わったんだよ」

 

「名前が!?」

 

「活動内容も昔とは違うけどな。映像作品も作ってるみたいだぞ」

 

「映像作品……」

 

 真中がもう一度、部屋を見る。

 

 だが、その顔にはどうにも納得できないものが浮かんでいた。

 

「俺がやりたいのはCGじゃなくて、映画なんですけど……」

 

「だったら自分で中を見て判断すればいいだろ」

 

「……そうですけど」

 

「せっかく来たんだ。見てけ」

 

 黒川先生はそれだけ言うと、さっさと踵を返した。

 

「あ、先生!」

 

「何だ?」

 

「先生、やけに詳しいですね」

 

 黒川先生の足が一瞬止まる。

 

「そうか?」

 

「そうですよ」

 

「気のせいだろ」

 

「ええ?」

 

 それ以上答える気はないらしい。

 

 黒川先生は片手を軽く上げ、そのまま廊下を戻っていった。

 

「……何なんだ?」

 

 残された真中は首を傾げる。

 

 そして、改めて目の前の札を見上げた。

 

「コンピューターグラフィック部……」

 

 どうにも自分が思い描いていたものとは違う。

 

「……まあ、見るだけ見てみるか」

 

 真中は扉へ手を伸ばした。

 

________

______

____

 

 

 調理部の見学を終え、西野と校舎を出る。

 

「楽しかったね」

 

「ああ」

 

「次の活動、何作るんだろ」

 

「もう入部する気満々だな」

 

「境野君だって入るんでしょ?」

 

「そのつもり」

 

「じゃあ同じじゃん」

 

 西野が笑う。

 

 高校に入って、文芸部。

 

 そして調理部。

 

 前の人生なら、放課後の大半は仕事か、そのための準備に使っていた。

 

 役を覚え、現場へ行き、誰かの物語の中で自分の役目を果たす。

 

 今は違う。

 

 小説を読むために文芸部へ行く。

 

 料理を覚えるために調理部へ行く。

 

 誰かに求められた役ではなく、自分で興味を持って、自分で選んだ。

 

「境野君?」

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや。高校生活、結構忙しくなりそうだなって」

 

「まだ始まったばっかりだよ?」

 

「もう部活二つだぞ」

 

「あはは。確かに」

 

 西野が楽しそうに笑う。

 

「でも、いいんじゃない?」

 

「何が?」

 

「忙しい方が、高校生っぽくて」

 

「そんなもん?」

 

「そんなもん」

 

 根拠はなさそうだ。

 

 でも、悪くない。

 

「じゃあまた明日、境野君」

 

「ああ。また明日」

 

 分かれ道で西野と別れる。

 

 文芸部と調理部。

 

 二つくらいなら、問題ない。

 

 さすがにこれ以上、部活が増えることもないだろう。

 

 ――この時の俺は、本気でそう思っていた。




次回は映像研究会発足?

では、また∠( ゚д゚)
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