いちご100% ~名脇役は青春の主役になれるか~   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第二十八話 増えた放課後

 映画が完成した翌日。

 

「おはよう、境野君」

 

「おはよ」

 

 教室に入ると、西野がいつものように声をかけてきた。

 

 ここまではいつも通り。

 

「今日、調理部だよね?」

 

「ああ」

 

「終わったら映研行く?」

 

「……行くんじゃない?」

 

「何で疑問形なの?」

 

「まだ慣れてないんだよ」

 

「何が?」

 

「俺が映研の部員ってことに」

 

「ああ」

 

 西野が納得したように頷き――笑った。

 

「私も」

 

「お前もか」

 

「だって昨日入ったばっかりだもん」

 

 そりゃそうだ。

 

 俺は文芸部。

 

 調理部。

 

 そして映像研究会。

 

 高校一年で三つ掛け持ち。

 

 前世を含めても、ここまで節操なく部活に入った経験はない。

 

「でも」

 

 西野が鞄を机に置く。

 

「ちょっと楽しみ」

 

「映研?」

 

「うん」

 

「昨日までずっといたじゃん」

 

「そうだけど」

 

 西野は少し考える。

 

「部員として行くのは初めてでしょ?」

 

「……そんな変わるか?」

 

「変わるよ」

 

「そういうもん?」

 

「そういうものです」

 

 妙に偉そうに言われた。

 

「それより調理部」

 

「ん?」

 

「今日、新入部員のあれでしょ?」

 

「ああ」

 

 そっちもあったな。

 

 調理部は毎日活動するような部ではない。掛け持ちしている生徒もいるため、基本的には週一回きちんと参加すれば問題なし。

 

 ただし、新入部員には一つだけ恒例がある。

 

 ――自分で一品作ること。

 

 料理でも菓子でも構わない。

 

 何が作れるのかを見るというより、料理にどう向き合うのかを見るためらしい。

 

「西野は決めた?」

 

「うん」

 

「何作る?」

 

「内緒」

 

「何で」

 

「境野君こそ」

 

「俺?」

 

「何作るの?」

 

「普通に作るよ」

 

「だから何を?」

 

「内緒」

 

「あ、真似した」

 

「そっちが先だろ」

 

「ふふ」

 

 西野が笑った。

 

 放課後。

 

 調理室に入ると、すでに何人かの部員が準備を始めていた。

 

「新入部員はこっちねー」

 

 先輩に呼ばれ、俺と西野は並んで説明を受ける。

 

 使用する材料は事前に申告したものが用意されている。制限時間内なら何を作ってもいい。

 

 完成したものを先輩たちが試食する。

 

 それだけ。

 

「緊張する?」

 

 隣の西野に聞く。

 

「ちょっと」

 

「意外」

 

「何で?」

 

「料理好きなんだろ?」

 

「好きだから緊張するの」

 

「なるほど」

 

「境野君は?」

 

「別に」

 

「またそれ」

 

「料理で緊張することないし」

 

「自信あるんだ」

 

「それなりに」

 

 前世では一人暮らしの期間も長かったし、役作りで料理を覚えたこともある。

 

 今世でも一人暮らしだ。

 

 できない方が困る。

 

「それじゃ、始めてくださーい!」

 

 一斉に動き出す。

 

 俺も材料を手元へ寄せた。

 

 作るのは――オムライス。

 

 凝った料理にする必要はない。

 

 玉ねぎと鶏肉を切り、フライパンを熱する。

 

 油。

 

 鶏肉。

 

 玉ねぎ。

 

 炒めながら隣を見る。

 

「…………」

 

 西野は真剣だった。

 

 普段の柔らかい雰囲気とは少し違う。

 

 計量。

 

 混ぜる。

 

 確認する。

 

 また混ぜる。

 

「境野君」

 

「ん?」

 

「見ないで」

 

「何で」

 

「気になるから」

 

「別に盗まないよ」

 

「そういう意味じゃないって」

 

「はいはい」

 

 自分の作業へ戻る。

 

 ケチャップライスを仕上げ、一度皿へ。

 

 問題は卵。

 

 熱しすぎない。

 

 溶いた卵を流し込み、固まり始めたところを箸で混ぜる。

 

 形を整え――。

 

「よっと」

 

 ライスの上へ。

 

 ナイフを入れる。

 

 ふわりと開いた卵が、ケチャップライスを覆った。

 

「…………」

 

 隣から視線を感じる。

 

「何?」

 

「上手」

 

「どうも」

 

「それ、お店で見るやつじゃない?」

 

「普通だろ」

 

「普通じゃないよ」

 

「そう?」

 

「そう」

 

 西野が妙に納得してくれない。

 

「西野は?」

 

「もうちょっと」

 

 見れば――。

 

「フルーツケーキか」

 

「うん」

 

 焼き上がったスポンジ。

 

 クリーム。

 

 果物。

 

 なるほど。

 

「将来の練習?」

 

「……まあね」

 

 西野が少し照れたように笑う。

 

「私、お菓子作るの好きだから」

 

「いいんじゃない?」

 

「え?」

 

「好きなもん仕事にできたら楽しいだろ」

 

「…………」

 

「何?」

 

「ううん」

 

 西野が笑った。

 

「ありがとう」

 

 何で礼を言われたんだ?

 

 完成後は試食。

 

 俺のオムライスを食べた先輩が、しばらく黙った。

 

「……境野君」

 

「はい」

 

「本当に一年生?」

 

「戸籍上は」

 

「何その答え」

 

 笑われた。

 

 西野のフルーツケーキも評判は良かった。

 

「西野さん、これ自分でよく作るの?」

 

「家でも時々」

 

「へえ。綺麗にできてるね」

 

「ありがとうございます!」

 

 嬉しそうだ。

 

 こういう顔を見ると、本当に好きなんだろうなと思う。

 

 片付けまで終わった頃には、それなりの時間になっていた。

 

「じゃあ行こっか」

 

「どこに?」

 

「映研」

 

「本当に行くんだ」

 

「部員でしょ?」

 

「昨日までなら帰ってたのにな」

 

「昨日入ったんだから当たり前じゃん」

 

 西野に急かされる形で、二人で部室へ向かう。

 

 扉を開けると――。

 

「遅いぞ!」

 

 真中がいた。

 

「何で待ち構えてんだよ」

 

「今日から正式に部員増えただろ!」

 

「だから?」

 

「なんか嬉しいじゃん!」

 

「お前、昨日からずっとそれだな」

 

「いいだろ!」

 

「淳平君、東城さんたちは?」

 

 西野が部室を見回す。

 

「東城は文芸部。さつきは――」

 

「来たわよ」

 

 直後、扉が開いた。

 

「お」

 

「何よ」

 

「いや、本当に来たなって」

 

「部員になったんだから来るでしょ!」

 

「西野と同じこと言ってる」

 

「え?」

 

 西野が笑う。

 

「私も境野君に同じこと言った」

 

「へえ」

 

「何でそこで意気投合するんだよ」

 

 北大路が鞄を置く。

 

「で?」

 

「何が?」

 

「今日は何するの?」

 

「…………」

 

 真中が止まった。

 

「決めてないの?」

 

「いや」

 

「決めてないのね」

 

「昨日映画完成したばっかりなんだから仕方ないだろ!」

 

「じゃあ何で遅いって怒ったのよ!」

 

「みんな集まりたかったから!」

 

「子供か!」

 

 北大路の突っ込みが飛ぶ。

 

「まあまあ」

 

 外村が奥から顔を出す。

 

「今日は今後の映像研究会について考えればいい」

 

「今後?」

 

「ああ」

 

 外村がニヤリとする。

 

「せっかく部員も増えたんだ。次はもう少し本格的な活動を――」

 

「次の映画?」

 

 西野が尋ねる。

 

「それもある」

 

「それも?」

 

「まあ、待て」

 

 嫌な予感がする。

 

 こいつがこの顔をしている時は、大抵ろくでもないことを考えている。

 

「その前に」

 

 扉が開いた。

 

「遅くなってごめんなさい」

 

 東城だった。

 

「東城!」

 

「真中君、声大きいよ」

 

「あ、ごめん」

 

 その手には文芸部で使っている鞄と、一冊のノート。

 

「東城さん、お疲れさま」

 

「西野さんも」

 

「文芸部?」

 

「うん」

 

 東城が俺を見る。

 

「境野君、今日は来なかったね」

 

「今日は調理部」

 

「あ、そうだったね」

 

「俺も掛け持ちだからな」

 

「大変そう」

 

「東城も今から同じだろ」

 

「あ……」

 

 今気づいたらしい。

 

「そうだった」

 

 小さく笑う。

 

 文芸部。

 

 調理部。

 

 映像研究会。

 

 それぞれ別の場所にいたはずの人間が、放課後になるとここへ集まってくる。

 

 昨日までは映画を作るためだった。

 

 今日は違う。

 

 もう撮影は終わっている。

 

 それでも、みんなここにいる。

 

「じゃあ」

 

 真中が全員を見る。

 

「今日は何する?」

 

「だから決めてないのかよ」

 

「これから決める!」

 

「堂々と言うな」

 

「次の映画でも考える?」

 

 西野が言う。

 

「それもいいな!」

 

「ちょっと休みなさいよ」

 

 北大路が呆れる。

 

「昨日一本完成したばっかりでしょうが」

 

「じゃあ何する?」

 

「知らないわよ」

 

「お菓子でも食べる?」

 

 東城が提案する。

 

「あ」

 

 西野が鞄を見る。

 

「ちょうどあるよ」

 

「何が?」

 

「今日作ったやつ。余った分、少し貰ってきたの」

 

「マジ!?」

 

「食べる?」

 

「食べる!」

 

「真中、反応早すぎ」

 

「いいだろ!」

 

 西野が包みを取り出す。

 

「境野君のオムライスは?」

 

「持ち歩けるか」

 

「あはは、そっか」

 

「境野、オムライス作ったの?」

 

 真中が食いつく。

 

「新入部員の課題でな」

 

「俺も食いたい」

 

「何でだよ」

 

「今度作ってくれよ!」

 

「嫌だよ」

 

「即答!?」

 

 笑い声が部室に響く。

 

 次の映画を撮るわけでもない。

 

 会議をするわけでもない。

 

 ただ集まって、喋って、小分けした菓子を食べる。

 

 そんな放課後。

 

 俺は西野から渡された菓子を一口食べる。

 

「どう?」

 

「うまい」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

「よかった」

 

 嬉しそうに笑う西野。

 

 向こうでは真中と北大路がまた何かで言い合っている。東城はそれを見て笑い、外村は――。

 

「…………」

 

「外村」

 

「何だ?」

 

「何企んでる?」

 

「失礼だな。俺は映像研究会の未来について考えているだけだ」

 

「その顔で?」

 

「顔は関係ないだろ」

 

 絶対何か考えてる。

 

 まあ、それはその時になってからでいい。

 

 一本の映画を作るために集まっただけだったはずの俺たちは、映画が終わってもこうして集まっている。

 

 どうやら俺の放課後は、前より少し忙しくなりそうだった。




ちょっと短いですはい。

でら、また∠( ゚д゚)
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